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Entry 2019/10/22
Update

『死体語り』評価レビューと解説。心霊ホラーで死者と対話する男の悪夢と現実

  • Writer :
  • 金田まこちゃ

スペイン・バルセロナ近郊のリゾート地シッチェスで毎年10月に開催されている映画祭「シッチェス映画祭」。

「シッチェス映画祭」で上映された、選りすぐりの作品を日本で上映する「シッチェス映画祭」公認の映画祭「シッチェス映画祭ファンタステック・セレクション」が、東京と名古屋、大阪で開催されます。

今回は「シッチェス映画祭ファンタステック・セレクション」上映作品となる、死体と会話をする能力を持つ男が遭遇する、悪霊の恐怖を描いたホラー映画『死体語り』を、ご紹介します。

映画『死体語り』の作品情報


Globo Filmes, Casa de Cinema de Porto Alegre and Canal Brasil

【公開】
2019年公開(ブラジル映画)

【原題】
The Nightshifter

【監督・脚本】
デニソン・ラマーリョ

【キャスト】
ダニエル・デ・オリベイラ、ファビウラ・ナシメント、ビアンカ・コンパラート

【作品概要】
犯罪が多発する街を舞台に、死体と対話する能力を持った男が遭遇する恐怖を描いた、ブラジル製の心霊ホラー。監督と脚本を担当したデニソン・ラマーリョは、本作が長編デビュー作となります。

映画『死体語り』あらすじ


Globo Filmes, Casa de Cinema de Porto Alegre and Canal Brasil
犯罪が多発している街で、法医学研究所の職員として働くステニオ。

ステニオは、死体安置所に運び込まれて来る死体を、検視の為に解剖しており、連日夜勤が続いていました。

また、ステニオには、他の人間には無い特殊な能力があります。

それは、死体と話ができるという事。

この特殊能力により、身元不明の死体でも、ステニオは遺族を探し出す事ができていました。

ステニオには、妻のオデッテと、2人の子供がいますが、連日夜勤続きで、異臭を放ちながら帰宅するステニオを、オデッテは良く思っていません。

オデッテが、子供に厳しい態度で接しており、子供もオデッテへ反抗的な態度を見せている事から、家庭の雰囲気は最悪になっていました。

ある日、ステニオは、死亡した麻薬組織のボスの弟、スージョの解剖を行います。

スージョの死体は「自分は何者かに密告されて殺された」事をステニオに語りますが、ステニオは「自業自得」と感じて、まともに相手をしません。

ですが、スージョの死体は「オデッテが不倫をしている」と、ステニオに伝えます。

当初は、スージョの話を信じなかったステニオですが、実際にオデッテが不倫をしている現場を、ステニオは目の当たりにします。

オデッテの不倫相手は、ステニオが仕事帰りに立ち寄っている、バーのマスターでした。

オデッテの裏切りに、激しい怒りと悲しみを感じたステニオは、スージョの兄で麻薬組織のボス、ジョナスに近付きます。

ステニオはジョナスに「自分はスージョの兄弟分だ」と嘘を吐き、スージョとジョナスの「兄弟しか知らない秘密」を話し、ステニオはジョナスの信頼を得ます。

ステニオはジョナスに「バーのマスターが、スージョを密告した」と嘘の情報を伝えます。

ジョナスは、バーのマスターを襲撃しますが、その現場に一緒にいたオデッテも巻き込まれてしまい、命を落とします。

オデッテの死を悲しむステニオですが、バーのマスターの娘、ララをベビーシッターとして雇い、再び死体解剖の為、連日夜勤の生活を送るようになります。

ですが、ジョナスの死体から聞いた「兄弟しか知らない秘密」をスージョに伝えた事は、死体と話す能力を持つ者が守らなければならないルール「死者から聞いた秘密を、口外してはならない」を破った事になります。

ルールを破ってしまったステニオの周囲で、徐々に奇怪な出来事が起こるようになり…。

『死体語り』感想と評価


Globo Filmes, Casa de Cinema de Porto Alegre and Canal Brasil

死体と話せる能力を持った男の心霊ホラー

死体と話をする能力を持つ法医学研究所の職員、ステニオが遭遇する恐怖を描いた、ブラジルの心霊ホラー映画『死体語り』。

死体安置所で働く主人公が、死者の声を聞く物語と言うと、2003年から2005年まで放送されたアメリカのテレビドラマ『トゥルー・コーリング』を連想する方も多いのではないでしょうか?

しかし、本作は「死者を救済する為に奮闘する主人公」を描いた作品ではなく、「生きている人間のドラマ」が物語の主軸となっており、死者と話ができるステニオの能力は、物語を面白くする為の、1つの要素でしかありません。

物語を動かすのは、生きている人間の嫉妬や、怒りなどの、どちらかというと負の感情です。

負の感情が動かす物語に、心霊要素が絡む事で、独特の悪夢的な世界観が広がる作品、それが『死体語り』です。

悪夢と現実が交差する展開

本作の主人公ステニオは、死体解剖の為、連日の夜勤を続けており、精神的に疲弊している男です。

作中でも、置き場がない程の死体が運び込まれる場面があり、犯罪が多発する街での勤務で、ステニオが疲弊していく様子が描かれています。

そして「死体と話せる者」のルールを破った事をキッカケに、ステニオの周囲に心霊現象が多発する事になります。

「主人公以外は、心霊現象に気付いていない」という、心霊ホラー映画の王道とも呼べる展開がありますが、ステニオの周囲の人間も、夜勤続きで精神的に疲れているステニオを、心配するだけでなく、異常さを感じて距離を置くようになります。

作品の構造も、観客に「どちらが本当か分からない」と感じさせる、悪夢と現実が交差する展開となっていきます。

現実とも夢の世界とも分からない世界を、主人公と観客が一体となって体験する作品と言えば、不眠症になった男を、クリスチャン・ベイル主演で描いた2004年のサスペンス作品『マシニスト』があります。

『マシニスト』では、ラストで主人公の現実をはっきりと見せていましたが、『死体語り』では、どのような結末を迎えるのでしょうか?

ルールを破った者が迎える驚愕の結末

本作でステニオは「死者から聞いた秘密を、口外してはならない」というルールを破りました。

これにより、死者の霊による、怪現象に襲われる事となります。

ですが、ステニオは、死者とのルールの他に、自身の怒りに任せて、人間としてのルールも破っています。

ステニオが、ジョナスをけしかけた事で、ララは父親を失う事となりました。

死せる者と生ける者、両者のルールを破ったステニオが、最終的に迎える運命は?

終盤の物語の主軸となる部分ですので、注目していただきたいです。

まとめ


Globo Filmes, Casa de Cinema de Porto Alegre and Canal Brasil
本作は心霊ホラーとしての恐怖と、精神的に極限まで追い詰められたステニオが、精神的に不安定な部分を見せていく、サスペンス映画としての恐怖もあります。

いくら働いても裕福になれず、妻にも裏切られ、疲労が蓄積していく、ステニオが徐々に壊れていく姿が描かれています。

どこまでが心霊現象で、どこまでがステニオの異常な行動なのか?という、境界線が曖昧になっていく恐怖は必見です。

『死体語り』は「シッチェス映画祭ファンタスティック・セレクション」にて上映される作品で、10月よりヒューマントラストシネマ渋谷、シネ・リーブル梅田、名古屋のシネマスコーレの3劇場で開催されます。

ステニオを苦しめる悪霊の正体も、ステニオが抱いた負の感情が原因の人物ですので、そこも注目して下さい。

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