是枝裕和の最新映画『三度目の殺人』が、2017年9月9日(土)に公開。
弁護士が殺人犯の心の奥底に潜む真意を、弁護する立場から見つめる姿によって、新たな真実を想像する法廷サスペンス。
キャストは是枝監督と2度目のタッグとなる福山雅治が弁護士を演じ、殺人犯は日本を代表する大御所の役所広司が演じます!
CONTENTS
1.映画『三度目の殺人』の作品情報
【公開】
2017年(日本映画)
【脚本・監督】
是枝裕和
【キャスト】
福山雅治、役所広司、広瀬すず、斉藤由貴、吉田鋼太郎、満島真之介、松岡依都美、市川実日子、橋爪功
【作品概要】
『そして父になる』の是枝裕和監督と福山雅治が、ふたたびタッグを組んだ作品で、是枝監督自らオリジナル脚本で挑んだ法廷心理ドラマ。
第74回ヴェネツィア国際映画祭のコンペティション部門に正式出品。
是枝組には初参加となる役所広司が殺人犯の三隅役で福山雅治と初共演を果たしました。また、『海街diary』の広瀬すずが重要な鍵を握る被害者の娘役を演じています。
2.『三度目の殺人』の福山雅治(重盛 役)
福山雅治(ふくやま まさはる)は、1969年2月6日長崎県長崎市生まれ。
日本のシンガーソングライター、俳優、写真家などで知られています。所属事務所はアミューズ。
1990年にシングル「追憶の雨の中」で歌手デビュー。
1993年に大人気を博したテレビドラマ『ひとつ屋根の下』に出演して、NHK紅白歌合戦にも出場を果たしました。
1994年に、シングル「IT’S ONLY LOVE」がミリオンセールスを達成。その後も、1995年に「HELLO」2000年に「桜坂」などを大ヒットさせます。
俳優としても多くの連続ドラマで主演を務め、2007年に東野圭吾原作のテレビドラマ『ガリレオ』、
また、2008年に同シリーズの直木賞受賞作を映画化した『容疑者Xの献身』で演じた天才物理学者の湯川は当たり役となりました。
2010年にNHK大河ドラマ『龍馬伝』で坂本龍馬を熱演して人気を博しました。
そんな福山雅治が今作『三度目の殺人』のロケ地に訪れた場所のひとつには、福山雅治の座ったシートがある喫茶店がありますよ。
場所は埼玉県川口市にある西川口並木商店街の「喫茶アルマンド」。実は筆者も知っているお店で懐かしいですね。
お近くに行かれた際は、ぜひ、“福山シート”を訪ねてみてはいかがでしょう?
是枝監督作品(今秋公開予定)での福山雅治さんが撮影で座ったシート♥
『喫茶アルマンド』(西川口並木商店会)のマスターから撮影の様子をいろいろお話してもらえますよ。 pic.twitter.com/xfuPXfIoov— neo 川口 (@neo_kawaguchi) 2017年2月21日
3.福山演じる弁護士の重盛は、容疑者を前になぜ揺らぐか
今回の福山雅治の演じる役どころは弁護士の重盛です。
三隅という容疑者に会うまでの弁護士の重盛は、容疑者の抱えた真実にこだわるのではなく、弁護を行う自分の勝利にこだわる男でした。
しかし、役所広司演じる容疑者三隅の揺れる心の奥底にある真実に惹かれ出し、弁護士にとってはこれまでにない事実を思い知ることが今作の見せ場のです。
弁護士が容疑者の奥底にある真実と初めて向き合う。それはこれまでにない事実であることでなおさら惹きつけられるに違いありません。
重盛は踏み込んではいけない、人間の奥底にある業という最も恐ろしい真相を見つけてしまうのが結末という展開何でしょうね。
そんな福山雅治は、弁護士の重盛を演じるにあたり、次のように述べています。
初めてご一緒させていただく役所さんとの読み合わせは、とても緊張感のある時間でした。より深く、さらに研ぎ澄まされた是枝監督の演出に応えられるよう精一杯演じられたらと思っています。
すでに脚本の読み合わせ段階から、役所広司との緊迫のある演技合戦。法廷劇での弁護士と容疑者の掛け合いの出来が楽しみですね。
天才物理学者や弁護士など、年齢を重ねてもイケメンで知的な探究心を持つ役柄は、福山雅治の十八番といったところです。
魅力的なのは間違いありませんね。
4.俳優対決!福山雅治VS役所広司はどうなる⁈
映画『三番目の殺人』で演出を務めたのは是枝裕和監督。現在の日本映画界の重鎮で後輩監督達を牽引するような立場の映画監督です。
俳優・福山雅治を通して今作について是枝裕和監督は次のように述べています。
福山さんにオファーをするにあたり、近年描いてきたホームドラマに一度区切りをつけ、かねてより挑戦したいと考えていた法廷劇を選びました。
そして福山さんに対峙する殺人犯役を、監督としてはある種の覚悟が必要な俳優である役所さんにお願いしました。
弁護にあたり真実を知る必要はないと考えていた主人公が、犯人と交流していくうちに事件の真実を知りたいと思うに至る過程を描く心理劇です。
役所さんの胸を借りるかたちで、福山さんをいじめ、揺さぶっていきたいと思います。
福山さんと役所さんの本読みで感じた「この二人の組み合わせは新鮮で面白い」という、ドキドキした僕自身の感触をどう本編に刻んでいけるか、悩み苦しみ、楽しみにしながら脚本の最終仕上げを現在行っているところです。
是枝裕和監督がホームドラマに区切りをつけた心境地の作品とは、是枝ファンにとって、見逃す事の出来ない作品ですね。
また、是枝監督が語るように、福山雅治と役所広司が魅せる演技合戦は、やはり大きな見どころのようです。
さらに是枝監督はドキュメンタリー出身ならではのリアリティにはこだわる作家でもあります。
映画制作にあたり、弁護士や検事たちへの入念な取材を行い、実際に作品の設定通りに弁護側、検事側、裁判官、犯人、証人役に分かれて模擬裁判を実施したようです。
その稽古でそれぞれから出てきたリアル感のある反応や行動、言動までも脚本に要素として取り込み、本物さながらの緊張感を演出すること行なったそうです。
やはり、是枝監督の日本映画界の枠に収まりきれないスピリッツを感じます。映画公開が楽しみですね。
また、1995年に「金のオゼッラ賞」を受賞したデビュー作『幻の光』以来22年ぶりとなる、2回目の第74回ヴェネツィア国際映画祭の正式出品されます。
是枝監督はそのことについて、次のように述べています。
ヴェネツィア映画祭への参加は、デビュー作以来なので、22年ぶりになります。やはり、自分自身の映画監督としてのキャリアがスタートした場所なので、今回の参加は、より感慨深いものがあります。
自分としては、今までにないチャレンジを数多くしたので、その作品がどのようにイタリアの地で受け入れてもらえるのか、楽しみにしています。
是枝裕和監督の今作『三度目の殺人』がどのように海外で評価され、また、映画賞の受賞があるのか、今後を見守りたいですね。
また、福山雅治はヴェネチア国際映画祭コンペ正式出品決定の知らせに、次のように述べています。
「お声がかかったら嬉しいですよね」と撮影中に監督と話していたことが現実になりました。監督、おめでとうございます!是枝監督、最新にして最深のテーマを扱った今作がヴェネチアでどう観られるのか?その瞬間に立ち会えることに期待と緊張が高まります」
さて、第74回ヴェネツィア国際映画祭は8月30日から9月9日まで開催。(現地時間)結果は最終日に発表ですよー!
5.映画『三度目の殺人』のあらすじ
法廷の弁護の勝訴にこだわりを持つ弁護士の重盛が、弁護を担当することになってしまったの容疑者の三隅。この容疑者には30年前にも殺人前科がある人物でした。
仕事を解雇された工場の社長を殺めて、その死体に火をつけた容疑で起訴された三隅。彼は犯行も自供し、死刑はほぼ確実でした。
しかし、調査を進めるにつれ、弁護士の重盛には違和感のようなものが芽生えていきます。
三隅と会うたびに動機が曖昧に変わり、なぜ殺したのか…?本当に彼が殺したのか…?謎の多い三隅に呑まれているのか…?
他人の弁護に真実などは必要ないと信じていた弁護士の重盛が、初めて容疑者の心の真実を知りたいと願うようになります。
やがて、三隅と被害者の娘の咲江に接点があることが明らかになるのです…。
5.映画『三度目の殺人』の感想と評価
今作『三度目の殺人』は、これまでの是枝裕和監督をも凌ぐの最高傑作と呼べる作品ではないでしょうか。
あなたは結末を見てどのような作品に感じられましたか?
さて、役所広司が演じた三隅を食品加工会社の山中社長の命を奪った真犯人なのでしょうか。
上記にある写真は『三度目の殺人』のイメージビジュアルです。
これは原作本の表紙にもなっていて映画全体の物語を象徴したデザインであり、テーマを読み抜くために関わりのあると言えます。
あなたが真犯人は誰?真相は何なの?と感じたのでしたら、このビジュアル写真をこそが答えだと思って良いでしょう。
役所広司、広瀬すず、福山雅治の頬には殺人を犯したメタファー(暗喩)である返り血を浴びています。
今作『三度目の殺人』では、タイトルが示すように殺人は3度おこなわれます。
・1度目の殺人は、役所広司演じる三隅が北海道で犯した殺人事件。
・2度目の殺人は、広瀬すず演じる咲江が父親の命を奪った殺人事件。
・3度目の殺人は、“真実”に向き合う必要などないという無関心が招いた殺人公判。
といえるでしょう。
作品冒頭シーンの夜の河原で眼を光らせた三隅、事件の真相が見え始めた時にインサートされた夜の河原シーン咲江、そして、結末で裁判の判決が下された後の重盛と、3人がそれぞれ頬を拭うショットが映像にも登場します。
もちろん、福山雅治演じた重盛の頬には返り血はありませんが、あのショットは観客のあなたの心象にだけ見えるように象徴させてものでした。
他にも、2度目の殺人の罪を背負うことを決めた三隅が身辺整理したなかで、6匹いたカナリアのなかで1匹のみ逃したことも、メタファーとさせたのは罪を背負わせず逃がした咲江のことを指しています。
この作品で是枝監督は、重ね合わせていくことで三隅と重盛の共感関係を親密にさせていきます。
重盛の娘と三隅の娘、それと咲江。また、接見の場でのガラス越しで手を重ね合わせる行動、また接見したガラスに映る2人の姿(擬似オーバー・ラップのような表現)など、これまでにはない多彩な演出を随所に見せてくれます。
この映画を観ていて思い出したのは、芥川龍之介の小説『羅生門』であり、黒澤明監督の1950年公開の映画『羅生門』。(ちなみに羅生門の原作と映画は内容が違っています)
映画の構造で“真実”が何であるか分からない点は、映画『羅生門』そのものでした。
また、黒澤明監督はこの映画『羅生門』でヴェネツィア国際映画祭金獅子賞を獲得しています。
さて、是枝監督は第74回ヴェネツィア国際映画祭のコンペティション部門で受賞なるのでしょうか?実に楽しみですね!
映画のラスト・ショットで、福山雅治の演じた重盛が十字架を比喩した交差点に立つシーンは、もう正に芥川龍之介が推敲を重ねて選び抜いた『羅生門』最後の一文、「下人の行方はだれも知らない」。
是枝裕和監督、円熟期に黒澤明監督と肩を並べた1本!それが『三度目の殺人』と言えるでしょう。
6.まとめ
この作品は弁護士重盛役に福山雅治に大いに注目しましょう!
その福山演じる重盛に対峙する容疑者に役所広司、物語の鍵を握る被害者一家の斎藤由貴と広瀬すずの関わりにも事件の真相が何かありそうですね。
また、重盛の事務所に所属する若手弁護士に満島真之介、そのほか市川実日子や橋爪功など、日本映画界を代表する名優が是枝組に参加しています。
弁護士重盛の視点から絡んだ人間模様の糸口を一つ一つ解いていったラスト結末に、それまで見えていた事実が次々と変容していくこととは何か?
容疑者三隅が犯人なのか?それとも、真犯人は他に存在するのか?そいつは捕まるのかあ?裁かれるのか?
福山雅治主演!是枝裕和の最新映画『三度目の殺人』は、2017年9月9日(土)より全国公開です。
ぜひ、お見逃しなく!