『ゴーン・ガール』や『ゾディアック』などホラーにも近い作風を想像するかたもいるかもしれない、デヴィット・フィンチャー監督。
そんなフィンチャーが今から15年ほど前に製作した『パニック・ルーム』は、以外にもハラハラドキドキの密室心理戦がテーマになっている、少し珍しい作品です。
1.映画『パニック・ルーム』の作品情報
【公開】
2002(アメリカ)
【原題】
Panic Room
【監督】
デヴィット・フィンチャー
【キャスト】
ジョディ・フォスター、フォレスト・ウィテカーバーナム、ジャレッド・レト、クリステン・スチュワート、パトリック・ボーショー、アン・マグナソン、イアン・ブキャナン、アンドリュー・ケビン・ウォーカー、ポール・シュルツ、ドワイト・ヨアカム
【作品概要】
自宅にある避難シェルター『パニック・ルーム』と、越してきたばかりの豪邸という限られた舞台で、強盗3人組と母娘がアイデアと心理戦で立ち向かう心理密室サスペンス映画。
フィンチャー自身、『パニック・ルーム』は商業映画というように、フィンチャー作品の中では見やすく、主演のジョディ・フォスターと、適役のフォレスト・ウィテカーの絶妙なキャラもポイント。
2.映画『パニック・ルーム』のあらすじとネタバレ
夫の不倫で離婚したサラは、その夫に購入させた大豪邸に娘のサラと越してきます。
大きなリビング、当時住んでいた富豪の老人が足の不自由のため備えたエレベーター、そして「パニック・ルーム」という有事に備えたシェルターのようなものがあり、そこには家中に設置してある監視カメラ映像を映すモニターがありました。
シェルターは全体を頑丈な鉄板で囲ってある部屋で、中には非常食や防災グッズ、扉はセンサー式で、人を感知して重たい扉に挟まれるのを防ぐようになっています。
試しに入ってみるメグですが、彼女は閉所恐怖症のため、あまり冷静でいられなくなります。
越してきた日の夜、サラを寝かしつけ、メグも防犯装置の設定だけしてひとまず眠りにつきます。
すると自宅付近に不審な人影が現れ、中の様子を確認すると防犯装置を強引に解除し、豪邸の中に入ってきます。
そのうちの一人、ジュニアという男はこの豪邸に住んでいた富豪の甥です。
彼はおじが隠した財産がパニック・ルームにあることを知っており、仲間を連れてその財産を盗みにきた首謀者でした。
一緒にいる大柄の黒人・バーナムは警備会社に務め、この家にもあるパニック・ルームの設計に携わったことから、ジュニアに誘われ計画に乗りました。
ところが、バーナムはまだこの豪邸に人が住んでいないから計画に乗ったのに、不動産会社の手違いで、もうメグたちが住んでいることに気づきます。
おまけにジュニアは何の知らせも無く、覆面を付けたラウールという男まで連れてくる始末。
不安を感じたバーナムは温厚な性格もあって、この計画から降りると言います。
しかしジュニアに家族を養うためには金が要るだろうといわれ、しぶしぶながら犯行を続けることに。
メグは強盗が入ってきたことに気づく様子もなく、トイレに行きベッドに戻ります。
しかしドアが開いたままのパニック・ルームを閉めに行くとき、モニターに移った3人に気づきます。
慌ててサラを起こしに行くも三人に気づかれ、とっさの判断でメグはサラとともにパニック・ルームへ逃げ込みます。
以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『パニック・ルーム』ネタバレ・結末の記載がございます。『パニック・ルーム』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。
これで財産を盗むことが困難になった3人。
メグもルーム内にある内線を使って、犯人に罵声を浴びせ続け撤退するよう訴えます。
豪邸のほうからの声は、パニック・ルームに聞こえないので、ジュニアは筆談を心がけます。
内容は「危害は加えない」というもので、当然メグら信用しません。
とにかく2人に出てきてもらわないと、財産は盗めないと言うバーナム。
同時にパニック・ルームから出てきても、逃げられる可能性も考え3人は家の出入り口を塞ぎます。
気性の荒いジュニアは壁や下の階の天井を突き破って、パニック・ルームに穴を開けようとします。
しかし、設計を把握しているバーナムは別の方法で2人を出そうとをします。
それはパニック・ルーム内にある通気口を探し、そこへガスを徐々に送り込むというものでした。
メグたちは臭気に気づき、なんとか通気口をガムテープで塞ごうとします。
しかしラウールはさっさと済ませようとガスを大量に送り込み、ルーム内のガムテープは風圧で剥がれてしまいます。
その勢いでは死んでしまうと、止めさせようとするバーナムですが、ラウールは聞かず、ジュニアは壁に耳を当てて中の様子を知ろうとします。
メグはいよいよ強硬手段に出ます。
それはライターを通気口付近で付けて、返り討ちにしようとするもでした。
実行すると、メグも吹き飛ばされたものの、向こう側の部屋では、壁際にいたジュニアがモロに爆風に巻き込まれ、事態は急展開します。
これでもモメ始める3人組みは、パニック・ルームがある部屋から離れていきます。
モニター越しにその様子を見計らって、メグは部屋にある電話機を回収します。
しかし、中では電波が届かず使えません。
そこで、別の部屋から強引に電話線を引っ張ってきて、受話器に繋げる作戦に出ます。
ジュニアたちも対抗して、部屋中を電話線がないか探し回ります。
やっとのことで電話線を繋ぎ、警察に電話するメグですが、通報の途中で電波が悪くなってしまいます。
次に彼女が欠けたのは分かれた夫・スティーブンでした。
彼には何とか状況を伝えましたが、助けに来てくれる保障はありません。
打つ手がなくなった上、通報された可能性も考えたジュニアは既にこの計画にやる気をなくし、さらには財産は放っておいても自分に一定の額が入ることを口にします。
それを聞いて、本来の財産の計算をするバーナムらは、ジュニアが本当の財産の額を偽って、自分だけ多く手にしようとしていたことを知ります。
このことでさらにモメる3人ですが、気にせず撤収しようとするジュニアを、ラウールは銃で撃ってしまいます。
凶悪なラウールの一面を見てしまったバーナムは、ラウールに脅され犯行を強制させられます。
しかし、その時一人の男がやってきます。全員状況が読めず、ひとまず取り押さえられる男。
そして男に警察に通報したかを、拷問にかけながら聞きだすラウール。
男は「通報していない」と力なく答えます。
バーナムは男の身分証を、カメラ越しに掲げます。
それはメグの元夫・スティーブンでした。
電話を聞きつけ駆けつけてくれたものの、ひどく暴行を受けてしまいます。
さらに、サラは持病の糖尿病により血糖値が下がり、発作を起こしてしまいます。
外の2人の隙を着いて何とかインスリン注射器を回収するメグですが、拘束された夫と服を入れ替え待機していたラウールに出し抜かれ、今度はバーナムらが中に入り込みます。
その際、ラウールはメグとのもみ合いで拳銃を落とし、メグはパニック・ルームから締め出されますがインスリンをなんとかパニック・ルームの中に滑り込ませます。
さらにその拍子でセンサーに感知されなかったラウールは鉄の分厚い扉に腕を挟まれます。
息も絶え絶えなラウールは警察を呼べば娘の命はないと脅し、メグは娘に注射を打たないと承知しないとぶつかり合います。
バーナムはその性格ゆえ、サラに注射を打ちます。
サラは「ありがとう」と感謝を述べるのでした。
するとインターホンが鳴り、モニターを見ると警官二人が玄関に立っていました。
スティーブンが警察を呼んでいないといったのはハッタリだったのです。
娘の命がかかっているので、メグは演技でなんとか警官に帰ってもらおうとします。
様子がおかしいと気づいた警官の一人は、何とか上手く状況を知ろうと工夫を凝らしますが、それでもメグに帰るよう言われ、撤収します。
メグはいよいよ最後の賭けにでます。
スティーブンの腕を椅子に固定し、ラウールの落とした拳銃を握らせるとハンマーでカメラを全部壊していきます。
そして鏡をたちどころに割って身を潜めます。
一方パニック・ルーム内の金庫を開けることに成功したバーナム。
中をあけると、一見何もないように見えますが、底を取り外すと銀行債2200万ドルが束になって隠れていました。
もうモニターでメグの動向を知れなくなった2人はサラを連れてパニック・ルームを出ます。
道中鏡を踏んだことで、メグに居場所を突き止められます。
2階まで降りると、拳銃を構えて座っていたスティーブンが、2人めがけて発砲します。
誰にも被弾しませんでしたが、2人が動揺している隙をついて、メグはラウールめがけてハンマーを振り下ろし、ラウールは打たれた反動で一階へ落下します。
バーナムはその隙をついて逃亡を図ります。
しかしラウールは再び2階へ這い上がってきて、スティーブンをなぎ倒し、メグを押さえ込み殴りつけようとします。
サラも止めに入りますが、なすすべも無くなったその時、逃げたはずのバーナムが戻ってきてラウール向けて発砲しました。
驚くメグとサラに「もう心配ない」と言い、バーナムは再び逃げようとしますが、先ほど来た警官が機動隊とともに突入してきます。
結局バーナムは逃げ切ることが出来ませんでした。
助かったメグとサラは、スティーブンに必死に呼びかけますが、返事はありません…
数日後、メグとサラは公園のベンチで不動産情報を読み、穏やかな様子で新しい住まいを探すのでした――。
3.映画『パニック・ルーム』の感想と評価
今作でまず最初にすごい!と思ったのが、メグがサラをつれて強盗から逃げるシーンです。
2人はエレベーターで逃げようとしますが、強盗は手分けして階段で追いかけます。
降りる階で待ち伏せしている強盗から逃れるために、今度はエレベーターを非常停止し、強引に逃げるなど次から次へと展開していくのに、移動距離にしてわずか1階だけという。
パニック・ルームに入る前からこの地味なシーンにもかかわらずテンポの良い展開には息を呑むと同時に、この後の展開に期待せずにはいられなくなります。
首謀者ジュニアは運も頭も悪くて、ときどきギャグみたいになるときもありますが、しぶしぶながら参加したバーナムがものすごく手際よく対応して行く様は、見ていていっそ気分が良いです。
ジュニアが遊ぶ金欲しさで、バーナムは家族を養うため・・・動機の違いが犯行のポテンシャルに響いたのでしょうか?
元夫・スティーブンの安否は作中で明確にされていませんが、まだ傷も治っていないのに、穏やかに部屋探しをしている様子を見ると、スティーブンは一命を取り留めたんだろうな、と考えることができました。
まとめ
デヴィット・フィンチャーと聞くと、『エイリアン3』で主演のシガニー・ウィーバーに「あんたが一番エイリアンよ!」と言われたり、『ゴーン・ガール』のベン・アフレックとは撮影で被るの野球帽のチームが好きじゃないという理由で揉めたりと、その奇人っぷりが先立って取っ付きにくいイメージがあるかもしれません。
しかし『パニック・ルーム』は監督のことを知らなくても純粋に入り込める良作だと思います!
フィンチャー作が気になる人は、まずこの作品から見てみては?(それでも今作でジョディ・フォスターは妊娠中なのに体を張ったシーンを演じてるわけですが…汗)