FILMINK-vol.24「Sylvester Stallone: In The Blood」
オーストラリアの映画サイト「FILMINK」が配信したコンテンツから「Cinemarche」が連携して海外の映画情報をお届けいたします。
「FILMINK」から連載24弾としてピックアップしたのは、 映画『ランボー5/ラスト・ブラッド』主演のシルヴェスター・スタローン。
シリーズ5作目となったランボー役への思い、共演者への信頼など、映画内では見せないスタローンのお茶目な一面が見えるインタビューです。
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CONTENTS
体型を維持する秘訣は?
あのシルヴェスター・スタローンが「ランボー」シリーズ最新作、『ランボー5/ラスト・ブラッド』に戻ってきます。
スタローンはFilminkに、シリーズ一作目の映画や近況について、そしてジョン・ランボー役がいかにして成功に至ったかまでを率直に明かしてくれました。
──スタローンさん、相変わらず素晴らしい身体をしてますね!健康や体格を維持するために心がけていることは?
シルヴェスター・スタローン(以下スタローン):いやいや、あなたも素敵ですよ。
──冷蔵庫の中身を教えてください
スタローン:アイスクリームがたくさん入っています。でも、娘がアイスの管理しているので、食べようとすると殺されてしまうんですよ…。
私は毎日同じものを食べるようにしています。これを“競走馬のメンタリティ”と呼んでいます。彼らはレースのためにトレーニングをしているけど、その成果を出さなきゃいけない瞬間っていうのは突然にやってくるでしょ。
「月曜日はオーツ麦、火曜日はホットドッグ、水曜日はピザを食べて金曜日に走る」、そういう日替わりメニューは、やっぱりできないのです。とても大変なことですが、毎日同じ量を食べてエネルギーや身体の組成、見た目を維持を心がけています。
特にアクション映画やボクシング映画などの監督業をしている場合、私自身のカロリー消費はとても少ないこともあってヘロヘロになります。おすすめはできない食事法ですね。
ジョン・ランボーというキャラクターについて
──ジョン・ランボーというキャラクターはとても悲劇的です。彼のバイオレンスな行動の多くはトラウマから生まれていますが、同時にランボーに対する世間の認識は、“バッド・アス(悪いやつだけど、かっこいい)”タイプの男ですよね。多くの人が彼の暴力を賞賛しています。ランボーのキャラクターが持つ2つの部分をどのように調整して、演じていますか?
スタローン:ランボーは自分自身をバッド・アスだとは思っていないため、“見せびらかす”ことをしません。彼は特定の男性、マイク・タイソンをイメージしてくださいね。彼らに見られるような反動的な、戦闘機のごとく、アブノーマルな野蛮さを持っています。元軍人で俳優のオーディ・マーフィのような、ね。
ランボーはただの殺人マシンとして動いています。彼は肉体的な幸福を気にせず、死んでも構わないと思っているから容赦なく危機的な状況に自身を追い込みます。そして、彼はそれを受け入れているんです。そのような問題を克服するのはかなり素晴らしいことです。
同時に、実はランボーはかなり優しい男です。彼は誰のことを邪魔することもなく、いつも静かに話し、介入しようともしない、隅っこに佇む佇む紳士。
今回、キッチンでの非常に不安定な雰囲気のシーンがあります。ランボーはそこにいる女性に、ある愛情を抱いている。彼が彼女に「そんなに声を上げないでくれ」と頼むんですが、それは彼はある種の怒りを見るのが我慢できないからです。
だから暴力的かつバッド・アスな男であるランボーというキャラクターは、まだ存在し続けているのだと思います。彼がただの悪いやつだったら映画は1作で終わっていたでしょう。
──ランボーに妻も子どももいないこと、養子をもらうことは彼のキャラクターの理にかなっていると思います。家族のために働き、尽くす“ファミリー・マン”にランボーはなれないというアイディアはどのくらい考えられたのでしょうか?
スタローン:彼はペットさえも持たない男なんですよね!彼は自分以外に集中することができず、精神的に引っ込み思案で猫にも愛情を注ぐこともできない。ここも映画の奥深いところです。
彼が愛情について少しオープンになったり、ほのめかしたりするのは、本作が初めてかもしれません。
私はいつもランボーが16、17歳だった頃のことを考えていて、いつか誰かが前日譚を作ることを願っています。ジョン・ランボーはスポーツチームのキャプテンで、学校の人気者、スーパーアスリートだったけれど、戦争が全てを変えてしまった。きっと彼は完璧な男だったのにね。
ランボーのような人々に、以前お会いたことがあります。彼らは自分自身を労わることがまずできないから、他者に対しても気にかけることができないんです。それは非常に彼らを悩ませている。
前作『ランボー/最後の戦場』には、ジュリー・ベンツが演じるサラというキャラクターがいます。ジャングルの中を走っていてランボーが彼女の足を洗うシーンがあって、彼はサラにここにとどまって欲しいと望むのですが、彼女は「私の恋人はどうしていると思う?私の婚約者は?」と言うんです。
ランボーは彼は愛情に手を伸ばし、自分に彼女を殺させないでくれと願うのですが、それは叶いませんでした。
シリーズ第1作『ランボー』は失敗作?
画像:撮影中のスタローン
──80年代初頭の最初の『ランボー』を振り返ってみて、ジョン・ランボーの物語が何回も制作され、本作までたどり着くことを考えたことはありますか?
スタローン:ご存知かと思いますが、買い戻して燃やしてしまおうかと考えていたくらい、『ランボー』は完璧に失敗だったんです。これは冗談じゃないですよ!(笑) 。
ただただ誇張され、長すぎて、自分の国を攻撃するやつを見ているわけですから。だから11人もの役者がオファーを断ったんですよ(笑)。
それで1作目の製作終わりに私たちは3時間から約85分に短縮することを決めました。『ランボー』は説明もそんなに必要ありませんし、短くした方がいいと判断したんです。
さて、そうやって映画がなんとか完成したんですが誰も欲しがらず、配給会社を獲得できませんでした。オーマイゴッド!
私たちは「これが最後のチャンスかな…。20分くらい本編をくりぬいたダイジェスト版を、ポーランドとかロシアとかの会ったこともないような人たちに見せてこの映画を買ってもらおう」ということになったんです。私は配給会社の人たちに「みなさん、今まで見た中で最高の20分がここにありますよ」と宣伝しなきゃならなかった。
私自身は絶対見たくなかったんですけどね、だって最悪の20分っていう可能性がありますから。だから彼らが「これは最高すぎて顎が外れそう」と褒めて下さった瞬間は見られませんでした。
ですが、『ランボー』が公開されることにめちゃくちゃ興奮しました。そんな感じで『ランボー』は始まったわけですが、文字どおり最悪でしたよ。
その時に、全ての悪いことは良いことに変わるし、良いことは恐ろしいものを持っているという多面性を学びました。
共演女優はみなドルフ・ラングレン
──女性の共演者、アドリアナ・バラッザについてです。一緒のシーンの時に彼女をリラックスさせることができたと仰いましたが?
スタローン:いや、アドリアナは私を緊張させましたよ。いっつも一緒に働く女優さんはドルフ・ラングレン(空手家で愛称は“人間核弾頭”)みたいな人ばっかりですから!(笑) あとはランディ・クートゥアとかテリー・クルーズとかね。
この感じ、分かります?(笑) 犯罪者じゃないけどちょっと違うリーグのね。アドリアナも同じです(笑)。
──同じく共演のイヴェット・モントリオールもまた、リラックスしていたでしょうか?
スタローン:俳優はいい意味で、またある意味で不安定な仕事です。彼らは常に不安定なので常に良い状態であろう、上に行こうとするんです。「もっとできますか?」ってね、それはとても素晴らしいことです。
自信過剰な人はそんなこと思わないでしょうけど、アドリアナもイヴェットも向上心溢れる素晴らしい人たちです。俳優を見るとすぐ「スターがいる、彼/彼女は何かを持ってるに違いない」と感じてしまいます。
私はリチャード・コンプトンが書いてプロデュースしたちょっとお馬鹿な映画の『Macon County Line』(1974)をよく覚えています。そこには車と一緒に男が映っているわずか3秒ぐらいのシーンがあるのですが、私は「お、誰かがいる」とその時に思ったわけです。その男はニック・ノルティでした。それだけなんですが、何だか変じゃないですか?そこにいるのは映画スターですけど、ただ“人がいる”っていうだけなのに。
イヴェット・モントリオールを見た時にも私は「ああ、スターがいる」って思ったんです。物事を見たり学べたりすることに加えて、格好いい男性女性がたくさんいる映画という存在自体が非常にユニークな祝福です。
たまに象のような人もいますが、それも見ているだけで面白いです。言葉を使わずに存在のボリュームを上げることができる人々がいるわけですから。
エイドリアン・グランバーグ監督と作り上げた本作
画像:撮影現場でのスタローンとエイドリアン・グランバーグ監督
──ご自身が監督を務め、ファンから大好評だった前作『ランボー/最後の戦場』(2008)。本作『ランボー5/ラスト・ブラッド』を監督したいと願う人はいましたか?またエイドリアン・グランバーグを最終的に監督として採用したきっかけは何ですか?
スタローン:それはタイミングの問題で、私自身も別のことに取り組んでいたからです。エイドリアンの過去の作品『キック・オーバー』(2012)などを見て、きっと彼は良いパートナーとなり、何か良い提案を出してくれるだろうと思いました。
また彼は今までの作風を受け継ぐことにも敏感でした。『ロッキー』を監督のジョン・G・アヴィルドセンから引き継ぐことはとても大変でした。『ロッキー2』を監督した時に同じスタイルを維持する重要性に気づいたんです。
だからジョンのように監督し、なんとかうまくいき、『ロッキー3』ではロングレンズなどいろんなおもちゃを使って作り上げました。エイドリアンは独自のスタイルを持っていましたが、共に「ランボー」シリーズのスタイルを維持するように模索したから、うまくいったんでしょう。
このシリーズはいきなりダーレン・アロノフスキー作品のような素晴らしくドラマティックな作品に飛び込むことはできないし、とにかく「ランボー」の持ち味「うわ、衝撃的!」っていう雰囲気をそのままに、今までと似たような形でお届けできたらと考えています。
映画『ランボー5/ラスト・ブラッド』は2019年9月20よりアメリカにて公開。日本では2020年6月26日より公開予定。
FILMINK【Sylvester Stallone: In The Blood】
英文記事/Gill Pringle
翻訳/Moeka Kotaki
監修/Natsuko Yakumaru(Cinemarche)
英文記事所有/Dov Kornits(FilmInk)www.filmink.com.au
*本記事はオーストラリアにある出版社「FILMINK」のサイト掲載された英文記事を、Cinemarcheが翻訳掲載の権利を契約し、再構成したものです。本記事の無断使用や転写は一切禁止です。
映画『ランボー5/ラスト・ブラッド』の作品情報
【製作】
2019年(アメリカ映画)
【日本公開】
2020年6月26日予定
【原題】
Rambo: Last Blood
【監督】
エイドリアン・グランバーグ
【キャスト】
シルヴェスター・スタローン、パス・ベガ、セルヒオ・ペリス=メンチェータ、イヴェット・モンリール、ホアキン・コシオ、オスカル・ハエナーダ、ルイス・マンディロア、アドリアナ・バラッザ
【作品概要】
1982年に第1作が製作されたシルヴェスター・スタローン主演の「ランボー」シリーズ5作目。
牧場主マリア役で『バベル』(2006)『マイティ・ソー』(2008)のアドリアナ・バラッザ、孫娘ガブリエラ役で『ローライダー ~絆をつなぐ改造車~』(2017)のイヴェット・モンリール、ジャーナリストのカルメン役で『スパングリッシュ 太陽の国から来たママのこと』(2004)のパス・ベガが出演しています。
監督はメル・ギブソン主演『キック・オーバー』(2012)を手がけ、Netflixオリジナルドラマ『ナルコス』(2015より)で第2班監督を務めたエイドリアン・グランバーグです。
脚本はスタローンと、ドラマ『Absentia(原題)』(2017より)のマット・サーアルニックが共同執筆しました。
映画『ランボー5/ラスト・ブラッド』のあらすじ
ランボーは重度のPTSDに苦しんでおり、アリゾナ州の牧場で穏やかな日々を過ごそうとしていました。
そんなある日、牧場主マリアの孫娘ガブリエラがメキシコで姿を消します。
ランボーがメキシコへ渡ると、事件の背景には人身売買組織の存在がありました。
妹を誘拐されたジャーナリスト・カルメンとともに、ランボーは組織との戦いに身を投じていき…。