映画祭の顔となる“コンペティション部門”に選出された日本映画たち。
2019年10月28日(月)~11月5日(火)の9日間で開催される、第32回東京国際映画祭。
毎年最も注目を集めているのがのコンペティション部門。
本年は、世界115の国・地域、応募作品1,804本の中から、厳正な審査を経た作品が選ばれる予定となっています。
そんな中、邦画作品2本が選出、発表されました。
まず1本目は、『百円の恋』(2014)で国内映画賞にて日本アカデミー賞を初め数々の脚本賞を受賞した足立紳が、脚本と監督を務めた『喜劇 愛妻物語』。濱田岳と水川あさみが夫婦役を演じます。
2本目は、手塚治虫の漫画を、実子である手塚眞が監督した『ばるぼら』。様々なタブーに挑戦した問題作に、稲垣吾郎と二階堂ふみが挑みました。
CONTENTS
映画『喜劇 愛妻物語』の作品情報
【監督】
足立紳
【キャスト】
濱田 岳、水川あさみ、新津ちせ
【作品概要】
映画『百円の恋』(2014)で国内映画賞にて日本アカデミー賞を初め数々の脚本賞を受賞した足立紳が、自身初の自伝的小説「喜劇 愛妻物語」を原作に、自ら脚本・監督を務め映画化しました。
うだつのあがらない脚本家の夫と、その夫を罵倒し続けながら家計を支える妻を通して描かれる夫婦賛歌です。
自らをモチーフに描かれた脚本家・豪太を、数々のドラマ、映画、CMで大活躍中の濱田岳、その妻・チカをコメディからシリアスドラマまで幅広く演じる女優水川あさみがコミカルかつ熱く演じており、笑い泣き必至の“人情派夫婦活劇”を描き出しています。
映画『喜劇 愛妻物語』のあらすじ
売れない脚本家・豪太とその妻チカは倦怠期の夫婦で、娘のアキと3人で暮らしています。
豪太はセックスレスに苛まれ、日々妻の機嫌を取ろうとしますが、チカはろくな稼ぎがない夫に冷たく当たります。
そんなある日、豪太のもとに“ものすごい速さでうどんを打つ女子高生”の話を脚本にしないかという話が。
豪太はこの企画を実現させ、あわよくば夫婦仲を取り戻すために香川への家族旅行を提案します。
しぶしぶ豪太の取材旅行に付き合うチカ。
しかし取材対象はすでに映画化が決まってしまっていました。
落胆しながらも学生時代の友人ユミの家を訪れるチカ。
その頃豪太はアキと海にやってきますが、スマホに夢中でアキを見失ってしまい…。
映画『喜劇 愛妻物語』監督・足立紳のコメント
この映画に出てくる柳田夫妻は、他人から見ればなぜ一緒に居続けるのか理解に苦しむような夫婦かもしれない。別れればいいのにと思われるかもしれない。罵り合いながら無理矢理一緒に居続けているような未熟な夫婦だ。でもそんな未熟な夫婦の無理矢理な絆というのも、もしかしたら強靭な絆なのかもしれない。夫婦という一対一の面倒くさい人間関係を諦めず、しつこく幸せになることを追い求める彼らの姿は滑稽で生命力に溢れていて、映画で描きたいと思った。そして近頃の日本の社会は未熟で不完全な人たちに不寛容すぎるから、許すことはもちろんのこと、許してもらおうとすることも大切だとこの夫婦を通して描きたかった。
映画『喜劇 愛妻物語』の選定理由について
『喜劇 愛妻物語』のコンペ部門選定理由について、東京国際映画祭の矢田部吉彦プログラミング・ディレクターはこう語りました。
『喜劇・愛妻物語』は足立紳監督の2作目であるが、脚本家として積み上げたキャリアを自虐すれすれのところで笑いに昇華させる技術に感服し、そして水川あさみと濱田岳のコンビからキャリアハイのド迫力演技を引き出した演出に敬意を表したい。シリアスな作品が多いコンペの中で台風の目となりうるコメディであると信じている。
映画『ばるぼら』の作品情報
【監督】
手塚眞
【キャスト】
稲垣吾郎、二階堂ふみ、渋川清彦、石橋静河
【作品概要】
2018年選出の『半世界』に続き、稲垣吾郎主演映画が2年連続のコンペ部門に選ばれました。
手塚治虫が70年代に発表していた、禁断の愛とミステリー、芸術とエロス、スキャンダル、オカルティズムなど、様々なタブーに挑戦した問題作「ばるぼら」。
映像化不可能とも言われた本作でしたが、手塚治虫生誕90周年を記念して初映像化されました。
監督は手塚治虫の実子であり、『白痴』(1999)でヴェネチア国際映画祭にて「FUTURE FILM FESTIVAL DIGITAL AWARD VENEZIA」賞を受賞し、『ブラックキス』(2006)では東京国際映画祭出品された、独特の映画美学により国際的に評価される手塚眞。
撮影監督にはウォン・カーウァイ監督作品の映像美で知られるクリストファー・ドイルを招き、世界最高水準のクオリティとなるアート・シネマに仕上がっています。
映画『ばるぼら』のあらすじ
人気小説家の美倉洋介は、新宿駅の片隅で、ホームレスのような酔っぱらった少女ばるぼらに出会い、つい家に連れて帰ります。
大酒飲みでだらしないばるぼらですが、美倉はなぜか奇妙な魅力を感じて追い出すことができませんでした。
彼女を手元に置いておくと不思議と美倉の手は動きだし、新たな小説を創造する意欲がわき起こるんです。
ばるぼらはあたかも芸術家を守るミューズのようで…。
映画『ばるぼら』監督・手塚眞のコメント
第32回東京国際映画祭に参加できることを光栄に思います。手塚治虫生誕90周年に念願の作品を映画化できたのは、まさに芸術の女神(ミューズ)が微笑んでくれた奇跡です。「ばるぼら」は手塚治虫の異色作と言われていますが、ぼくにはストライク・ゾーン。一筋縄ではいかない悪魔主義的な物語は、麗しい稲垣吾郎さんと二階堂ふみさんの身体を張った競演にクリストファー・ドイルさんの美学が絡まり合って、魅惑的な夢に変容しました。アートとエンターテインメントの境界を揺らぎつつ、その融合を目指した映画です。耽美的な愛と狂気の寓話をどうぞ味わってください。
映画『ばるぼら』の選定理由について
『ばるぼら』のコンペ部門選定理由について、東京国際映画祭の矢田部吉彦プログラミング・ディレクターはこう語りました。
『ばるぼら』は手塚眞監督が父・手塚治虫の原作を現代に映画で蘇らせ、稲垣吾郎と二階堂ふみという強力な俳優たちの姿をクリストファー・ドイルのキャメラで鮮烈に切り取るという、様々な点で非常に贅沢で幸福な作品である。耽美で幻想的、魔術的でエロティックな世界観の独創性が、近年の邦画において際立っている。手塚監督の到達点とも呼べる作品であり、コンペへの招聘が祝福となることを期待したい。
第32回東京国際映画祭の開催概要
【開催期間】
2019年10月28日(月)~11月5日(火)
【会場】
六本木ヒルズ、EXシアター六本木(港区) 、東京ミッドタウン日比谷 日比谷ステップ広場(千代田区)ほか
※詳細につきましては東京国際映画祭公式サイトにてご確認ください。
東京国際映画祭とは
参考動画:第31回東京国際映画祭(2018)開会式
東京国際映画祭(通称 TIFF)は日本で唯一の国際映画製作者連盟公認の国際映画祭です。
1985年、日本ではじめて大規模な映画の祭典として誕生した TIFFは、日本およびアジアの映画産業、文化振興に大きな足跡を残し、アジア最大級の国際映画祭へと成長しました。
いまや最も熱気溢れるアジア映画の最大の拠点である東京に世界中から優れた映画が集まり、国内外の映画人、映画ファンが新たな才能とその感動に出会い、交流する場を提供しています。
コンペティション部門について
2019年の1月以降に完成した長編を対象に、世界115の国・地域、応募作品1,804本の中から、厳正な審査を経た作品を上映します。
「世界の今」が垣間見られる上映作品の中から、国際的な映画人で構成された審査委員が各賞を選出します。