FILMINK-vol.23「James McAvoy: Stand by It」
オーストラリアの映画サイト「FILMINK」が配信したコンテンツから「Cinemarche」が連携して海外の映画情報をお届けいたします。
「FILMINK」から連載23弾としてピックアップしたのは、 映画『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』に出演しているジェームズ・マカヴォイ。
大人になったビル役を演じたマカヴォイのインタビューをお楽しみください。
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CONTENTS
本作での物語のきっかけは
人気俳優ジェームズ・マカヴォイはピエロが怖いそうですが、大ヒット映画の続編『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』には楽しんで参加することができたそうです。
──大人になった“ルーザーズ・クラブ”が今どこで何をしているか教えてください。彼らは社会で成功したのでしょうか、それとも“ルーザーズ”(負け犬)の名前を守っているのでしょうか?
ジェームズ・マカヴォイ(以下マカヴォイ):そうですね…、本作はこのポイントについては原作に沿っていると言えます。デリーの街に残ったマイクを除き、彼らは皆成功をおさめました。
スティーヴン・キングが行った最も興味深いことの一つは、彼らが外に飛び出して、ルーザーズが大きな成功をすることを示している点です。何人かは世に名が知られているほどです。そして皆子どもを持っていない、これも特徴の一つとでしょう。
──本作のきっかけは、マイクからの「デリーに戻ってきてほしい」という電話ですよね。俳優としてこのキーはどのようにお考えですか?
マカヴォイ:とても良いと思います。俳優にとって最高の瞬間は、何か新しいことが起こり、キャラクター自身も変化を遂げる時です。演じるキャラクターは挑まれたことで、今までとは違う何かに変身しなければなりませんから。マイクからの電話はビルにとって、自身の重要な基盤となるようなこと、自分の人生に密接なキーを思い出させる瞬間でした。
映画にはただ思い出すだけで今の状態を全てひっくり返すような記憶の数々がたくさん描かれています。それは演じていてとても楽しかったです。それから「ああ、このシーン見たことがある!」ってなるようなショットもね。
──大きな変更点だったり、ファンにとって衝撃的なことはありますか?
マカヴォイ:それはここではお話できません…!いろんなところで叩かれちゃうから(笑)。
ですが、原作からの変更点は多いです。もちろん前作もまったく原作通りというわけではありませんが、ファンの方にとっては忠実だと感じるところも多かったのではないでしょうか。スティーヴン(・キング)は前作を絶賛していました。それは映画が最高という究極の印だと思います。続編となる本作も原作と異なる点は多いですが、必要な演出です。
前作との違いについて
──ビルは吃音症のキャラクターですが、演じることは難しかったですか?
マカヴォイ:ほとんどの人々は言葉がうまく出ず、どもってしまう経験をしていると思います。映画で何が面白いかって、自分がかつて吃音だったことをビルが25年間のうちに忘れてしまっているところです。これがデリーという町の持つ不思議な力であり、演じるにあたって興味深かったところです。
27年間吃音を抱えている人物を演じることとは異なり、“吃音だったことを忘れている人物”を演じるわけですから。
──前作はアンブリン・エンターテインメント(スティーヴン・スピルバーグが設立した『E.T.』『グーニーズ』などの製作会社)作品のような少年たちの成長譚として、ただのホラー映画とは一線を画し評価されました。今回の作品は他のジャンルから影響を受けていますか、それとも直球のホラー映画となっていますか?
マカヴォイ:何とも言えません。私は「IT」は本、最初の映画、それからTVシリーズも大成功を収めたと思います。その理由は人間関係や友情、絆について探求したことです。それが「IT」を動かす力です。
人間関係の描写はホラー映画やその他の作品に成功を与えます。基本的に同じようなことです。観客に感情移入させて驚きを与える、思入れのあるキャラクターを殺したりもする。アンブリンの作品よりも前に、スティーヴィン・キングが少年たちの成長、冒険ものを発表していたんじゃないでしょうか。『スタンド・バイ・ミー』や「IT」など多くのものを。
彼は少年たちの絆や関係を描いていましたが、今回は大人たちの関係についてです。このような物語で素晴らしいところは、子どもの頃に精神的に成長する必要があり、戦士のように戦わなければいけないというところです。大人になったらそんなことはできません。
本作でビルたちは子どもの頃のようにすぐ戦う準備ができない。だから少し童心に帰るんです。本作は成長譚というよりは“年齢の破壊”そういったところでしょうか。
本作の素敵なポイントの一つは“ルーザーズ”が再びグループに戻り、少年時代に戻ったように振る舞うところです。私は本の中でキャラクターたちが、めちゃくちゃ危険な状態にある時に何かをただ単に“IT”と呼ぶところが好きです。何でもクレイジーな言い訳がその後できますから!(笑)
スティーヴン・キングの観察眼
──あなたはホラー映画の大ファンですか?またホラー映画に出演することが好きですか?
マカヴォイ:今まで本当にホラーとは縁が無かったんです。ホラーは私を必要としていないと感じてきました。
今回、『スタンド・バイ・ミー』での経験のような“何か”の時間を共に過ごした友人たちと映画を作っているような思いがしました。『スタンド・バイ・ミー』のように、彼らは自分自身の恐怖と立ち向かうからです。
まっすぐな“ただのホラー映画”への出演はあまり考えていません。キャラクター皆が怖がって走り回っているような映画に私が出演しても、正直、それが楽しんでもらえるか分からないんです。
だけれどいち観客としてはホラー鑑賞を楽しんでいます!俳優としては、しっちゃかめっちゃかな状況で走り回る男になりたいかどうか…考えさせて下さい(笑)。
本作を更に高めているのは人間関係の細かな描写です。スティーヴン・キングは人間のさまざまな状態をクレイジーなくらいに観察しているので、全キャラクターの詳細がよく分かります。
スティーヴンは時々「10年間も毎日毎日座って仕事をするっていうのは老人にとって…」なんて説明したりするので、「ペニーワイズの所へ帰りな!」というノリで彼を批判することもあるんです。私は彼のジョークが大好きですよ(笑)。
スティーヴンは全代表作でキャラクターの詳細を豊かに描いていて、素晴らしいことです。
いろんなホラー映画は、うーん、楽しいですけれど、3、4か月後には退屈になっているかも(笑)。
共演者との絆を強めたのは?
──前作の子役たちの相性は皆素晴らしかったですよね。今回撮影現場では俳優陣とどのように過ごされましたか?
マカヴォイ:リハーサルをたくさんして、一緒に夕食を食べ、ボーリングをして、くだらないことをして、そしてよく酔っ払いました!お酒は大人にとって打ち解けるいい方法ですよね。チーム精神を高めてくれます。
出演者の間の友情、絆は本当に重要なことです。ジェス(ジェシカ・チャスティン)のことはよく知っています。一緒に仕事をするのはこれで3回目かな。ビル(・ヘイダー)とも以前共演したことがあります。他のメンバーもとてもオープンですぐに関係を深めることができました。
なかなかアンサンブルの一部に入ろうとしない役者もたまにはいますが、本作のメンバーは皆で団結しました。これは素晴らしいことです!
──スティーヴン・キングが撮影場所を訪れるという話はありましたか?
マカヴォイ:私は来ないことを願っていました。なぜかって?ちょっと怖いからですよ!
以前映画『つぐない』の撮影中、原作者のイアン・マキュアーンがセットに訪れた時は、逃走しました。お会いして「君は私が書いたキャラクターのイメージと違うね」なんて思われたくないですし…。
──本作のペニーワイズに関する思い出はありますか?
マカヴォイ:1990年の『IT』でペニーワイズを演じていたティム・カリーは私にとって大きな存在でした。みんなで集まって映画鑑賞したんです。何歳の時だったか、確か小学生だったかな。まだ幼い時に観ました。
8歳くらいの、かつての自分のような子どもたちが「あ、ペニーワイズだ!」と口にしているのを見たことがあります。映画を観たかと聞くと、全然そんなことなかったりするんですが…。
自分の子どもがペニーワイズを見ることを考えると「いやいや、絶対にありえない」とも思います。でも『IT』の映画を見たことのない子どもたちでさえみんなペニーワイズ、ペニーワイズ、ペニーワイズって彼の存在に夢中ですよね。
ピエロや怖い道化師はなぜこうも想像力を魅了するんでしょうか。私はピエロが好きだったことが一度もないので、サーカスも好きじゃありませんでした。本当に彼らが狂ってると思っていたんです。何でそう思ったかは分からないんですが、恐ろしいピエロは私たちの想像力をがっしり捕まえるんでしょうね。
ビル・スカルスガルドとの距離感
──ハロウィーンに何か仮装をしたことは?
マカヴォイ:「スタートレック」のミスター・スポック!一度シラチャー・ソースのボトルの格好をしたこともあります。…船乗りもあるかな。後は吸血鬼もあります。コスチュームを持っていなかったので、ただ顔を白く塗って黒い口紅をつけました。それだけです!
──前作ではペニーワイズ役のビル・スカルスガルドが意図的に子役たちから離れていたことが知られていますが本作でも同様でしたか?
マカヴォイ:ええ。本当に彼は反社会的な恐ろしい恐ろしい男です。嘘です、彼はすごくクール!(笑) 私たちとよく話をして、とても社交的でした。
前作ではペニーワイズがどのように見えるか、どのようなものになるか、子どもたちに理解させないために距離を取っていたのでしょう。
私たちキャスト陣は「この前の映画観たよ!」っていう気楽な感じですし、ペニーワイズがどのようなものかも知っていますから、存在を隠しておく意味はあまりありません。おそらくビルはある種のやり取りを他のキャストともして安心したのだと思います。
──オリジナル版の映画では絵画から恐ろしいことが起こり、ペニーワイズがハンセン病患者に変わる描写があります。本作でも彼が何者かに変身を遂げる、新しい描写があるのでしょうか?
マカヴォイ:はい。ですが、今は何も言うことができません!悪魔に立ち向かう、結末に近いシーンで最高にクールな出来事が起こります。ペニーワイズはもう本当にうんざりするくらい怖い、大きなことをしでかすんですよ。
FILMINK【James McAvoy: Stand by It】
英文記事/Gill Pringle
翻訳/Moeka Kotaki
監修/Natsuko Yakumaru(Cinemarche)
英文記事所有/Dov Kornits(FilmInk)www.filmink.com.au
*本記事はオーストラリアにある出版社「FILMINK」のサイト掲載された英文記事を、Cinemarcheが翻訳掲載の権利を契約し、再構成したものです。本記事の無断使用や転写は一切禁止です。
映画『IT イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』の作品情報
【日本公開】
2019年(アメリカ映画)
【原題】
It: Chapter Two
【原作】
スティーブン・キング
【監督】
アンディ・ムスキエティ
【キャスト】
ビル・スカルスガルド、ジェームズ・マカヴォイ、ジェシカ・チャステイン、ビル・ヘイダー、イザイア・ムスタファ、ジェイ・ライアン、ジェームズ・ランソン、アンディ・ビーン、ジェイデン・リーベラー、ワイアット・オレフ、ソフィア・リリス、フィン・ウルフハード、ジェレミー・レイ・テイラー、チョーズン・ジェイコブズ、ジャック・ディラン・グレイザー
【作品概要】
前作から27年後の2016年に設定され、ルーザーズ・クラブの面々も大人になって登場します。
アンディ・ムスキエティ監督と脚本ゲイリー・ドーベルマンが続投。
映画『IT イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』のあらすじ
静かな田舎町で、連続児童失踪事件が再び起きました。
27年前の約束を果たすため、ルーザーズ・クラブのメンバーは町に戻ることを決意し…。