映画『15ミニッツ・ウォー』は2019年10月11日(金)よりロードショー!
アフリカ・ジブチで起きたバスジャック事件。テロリストが人質としたのは、罪のない子供たち。その子供たちを救うべく、女性教師と特殊部隊の面々は立ち上がったのでした。
1976年にフランス最後の植民地・ジブチで発生したバスジャック事件をもとに、圧倒的な緊張感とともにその現場の悲惨さ、そしてテロ対策で残った傷跡の教訓などを描いた『15ミニッツ・ウォー』。
本作はフランス系カナダ人監督のフレッド・グリヴォワ監督が製作を担当。『孤独の暗殺者/スナイパー』に続き、本作が長編監督作として2作目の作品となります。
キャストには『コール・オブ・ザ・デッド』などのアルバン・ルノワール、『パリ・ジュテーム』『オブリビオン』などのオルガ・キュリレンコらが名を連ねており、迫真の表情を見せています。
CONTENTS
映画『15ミニッツ・ウォー』の作品情報
【日本公開】
2018年(フランス・ベルギー合作映画)
【英題】
15 MINUTES OF WAR
【監督】
フレッド・グリヴォワ
【キャスト】
アルバン・ルノワール、オルガ・キュリレンコ、ケヴィン・レイン、ヴァンサン・ベレーズ、ジョジアーヌ・バラスコ
【作品概要】
1976年に起こったバスジャック事件で、腕利きのスナイパーたちによる対テロ特殊部隊がおこなった人質救出の模様をもとに描かれたアクションムービー。
『孤独の暗殺者/スナイパー』に続き、本作で長編作品2作目となるフレッド・グリヴォワが監督を務めます。
また、スナイパーのリーダーを『ゴール・オブ・ザ・デッド』『ザ・スクワッド』などのアルバン・ルノワール、『その女諜報員 アレックス』『オブリビオン』などのオルガ・キュリレンコが教師を担当します。
映画『15ミニッツ・ウォー』のあらすじ
とある朝を迎えたアフリカのジブチ。いつものようにスクールバスが子どもたちの送迎をする中、独立派武装組織がバスを占拠するという事件が発生します。
国境近くにバスを止め籠城したテロリストたちは、フランスからの独立や政治犯の即時釈放などを要求、それが退けられた場合に子どもたちの命はないと通告してきます。
学校で授業の準備をしていた女性教師(オルガ・キュリレンコ)は、子どもたちが時間になっても教室に訪れないことを不審に思っていましたが、やがて事の重大さを知り慌てて現場に。
そして意を決してバス周辺を囲う軍隊の制止をはらって自ら人質となり、子どものケアをさせるようテロリストたちに申し出ます。
一方、フランス政府は、ジェルヴァル大尉(アルバン・ルノワール)率いる腕利きのスナイパーで構成された特殊部隊をひそかに現地に派遣。テロリスト狙撃の準備は整うものの、フランス政府からの命令は一向に下りてきません。
やがて国境付近の様子は徐々に変化を見せ、事態は不穏な方向に。果たして子どもたちは無事に救出されるのでしょうか?そして女性教師の運命やいかに?
映画『15ミニッツ・ウォー』の感想と評価
強調されたメッセージ性
本作は、銃撃のアクションなど、エンタテイメントな部分に触れる箇所もありながら、一つの大きなメッセージが見えてきます。
それは映画『踊る大捜査線』の「事件は会議室で起きているのではない、現場で起きている」のような、緊張が蔓延したその現場そのものの場所と、そことは全く離れた、緊迫の空気などみじんも感じられない場所。
その二つの場所の温度差が生み出すものであります。
問題の解決を努めるのに後者の場にいる人間が決断を下そうとする。そしてその決断は、現場の状況を必ずしも的確に把握しきれない。そういったメッセージを強くはらませていることが見えてきます。
その要因としてあげられるのが、まさに「現場」で悪戦苦闘する人たち。
事態を収拾すべき集められた特殊部隊、対して子どもたちを人質にとったテロリストたち。それぞれにはこの事件に対する緊張した表情がある一方で、その裏にそれぞれのプライベートな一面があります。
それぞれのバックグラウンドや性質を映像の中で巧みに織り込み、見せることで彼らがなんらかの力に踊らされている様子が垣間見られてきます。
一方で人質の少年一人がけがをさせられる演出を作るなど、強く緊張感を煽る箇所もあり、凄惨な現場の状況を臨場感も豊かに演出しています。
何か一つの責務をどこかに求めることは、当時の事件ではできなかったかもしれません。
しかし、事件の問題点は果たして何だったのか?それを改めて今考えて皆で考えるべきであるということを、どう映像で訴えるべきなのか?
そういった主題を事件からしっかりと突き詰め、その命題を実現するために登場人物一人ひとりに対して大きく深堀りした様子もうかがえます。
架空のキャラクター
物語には、人質の子供たちの不安を取り除き、なだめるためと、自ら人質になる子どもたちの女性教師が登場します。
このキャラクターに関してグリヴォワ監督は、観客が感情移入できるようにするために、確かな現実感と体温を持ったキャラクターが必要だったと振り返っています。
もちろん、こういった現場で自ら人質を増やすという行為は、事件を解決しようとする側としてはご法度であり、どちらかというと現実味のないキャラクターではあります。
しかし、この物語で女性教師の有る無し、またその女性教師をテロリストたちが受け入れたか受け入れなかったか、などとさまざまなパターンを考えるとかなり物語の見え方も変わってきます。
もし人質を従えたバスの中に彼女の役割を果たす人物がいなければ、ストーリーとしてはもっとドライな、ドキュメンタリ―的な作品になっていたかもしれません。
この女性教師役を務めたオルガ・キュリレンコですが、非常に複雑な心境となるだろうとみられる彼女の心理状況を、敢えてシンプルに表現しているようでもあります。
そして、多くを狙わない一つの感情を示したその表情や物語の自然さを通して、見る側の共感を生み、大きく貢献しています。
物語の起伏を作る銃撃戦
そして、劇中の見どころは、やはりなんといっても狙撃シーン。特殊部隊がテロリストたちをその精巧な技術で一気に撃ち抜くわけですが、非常に洗練された演出が見られます。
実際のこうした現場での狙撃シーンにどれほど肉薄しているかは別として、ある意味優雅さすら感じられるほどの仕事ぶりを見せます。
その一方で、その一幕とは全く対照的な激しい銃撃戦もあり、カオス的なその現場の対比が物語の山谷をバランスよく構成しており、娯楽性を徹底的に排除した作品でありながら、物語の緊張感を最初から最後までしっかりと持続させる要因となっているようでもあります。
まとめ
実際に起きた事件をベースに物語を作ろうとすると、リアリティを崩さない構成を検討することが大きな課題になります。
本作『15ミニッツ・ウォー』も、さまざまなポイントでベースとなった事件に対し、実際にはいなかった登場人物、そして事実と若干異なる出来事などを組み込むことに、非常に悩んだであろうことが推測されます。
しかし、それをおそらくこの事件から得られた教訓をどう伝えるべきか?そういった目的に立ち返りながら、最後まで映画つくりにいそしんだことは作品からは見てとれます。
映画作品として十分に見ごたえがありながらも、見た後にそれぞれが考える材料をしっかりと与えており、決して派手さがあるわけではありませんが、非常に存在感のある作品であります。
映画『15ミニッツ・ウォー』は2019年10月11日(金)より公開されます!