連載コラム「最強アメコミ番付評」第35回戦
こんにちは、野洲川亮です。
今回は2019年7月に、アメリカ・サンディエゴで行われた「コミコン・インターナショナル」にて発表された情報とその後の続報を基に、マーベル・シネマティック・ユニバース「MCUフェイズ4」のラインアップを紹介していきます。
『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)と『スパイダーマン/ファー・フロム・ホーム』(2019)で大きな区切りをつけたMCUシリーズ、その次回作以降、フェイズ4のラインアップから新たなアベンジャーズの行方を占っていきます。
MCUフェイズ4の2020年公開情報
映画『ブラックウィドウ』2020年5月1日公開予定
『アイアンマン2』(2010)でMCUに初登場以降、アベンジャーズの中心メンバーとして活躍してきた女スパイ、ブラックウィドウ(スカーレット・ヨハンソン)が、フェイズ4の先陣を切って初の単独主演を飾ります。
『エンドゲーム』の戦いでソウルストーンを手にするために犠牲となったブラックウィドウですが、この作品では彼女がロシアでスパイ活動をしていた過去が描かれます。
『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』(2015)では、ワンダから受けた精神攻撃により、ロシアでスパイとなるための訓練をしていた回想シーンや、セリフで過去に言及することはありましたが、明確に彼女の出自が描かれるのは初めてとなります。
スーパーパワーを持たないヒーローであるブラックウィドウが主人公とあって、CGではない生身のアクションが楽しめるサスペンスものとなりそうです。
アベンジャーズ結成以前からの旧知の中である、ホークアイ(ジェレミー・レナー)の登場も期待されますが、これでブラックウィドウの物語が終りとなるのか、それともまた新たな形でのスタートとなるのかも合わせて注目しましょう。
テレビドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』2020年秋
2019年11月、アメリカでサービス開始予定のディズニー+ではMCU初のドラマ化作品です。
「キャプテン・アメリカ」シリーズで、キャプテンを支える名脇役ファルコン(アンソニー・マッキー)とウィンターソルジャー(セバスチャン・スタン)がコンビを組むバディものとなります。
『エンドゲーム』の戦いを終えて、インフィニティストーンを過去へ返しに向かったキャプテン・アメリカは、そのままタイムスリップした過去にとどまり、自分の人生を生きた老人の姿でファルコンとウィンターソルジャーの前に現れました。
そこでキャプテンの象徴である盾を継承し、二代目キャプテン・アメリカとなるファルコン、タイトルから察するに、この作品の中でファルコンからキャプテン・アメリカへの成長が描かれることになるでしょう。
相棒となるウィンターソルジャーは、かつて洗脳されヒドラの暗殺者としてアイアンマンの両親を殺害するなどの重苦しい過去を持ち、『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016)では、彼の存在がアベンジャーズ分断のきっかけとなりました。
その『シビル・ウォー』で、アベンジャーズ分断を仕組んだヴィランのジモ(ダニエル・ブリュール)が出演することも明らかになっており、シリーズでも評価の高い『キャプテン・アメリカ/ウィンターソルジャー』(2014)のような、謎解きも含んだポリティカリーサスペンスが楽しめるかもしれません。
映画『エターナルズ』2020年11月6日公開予定
既存のキャラクターが主役を担う前述の2作品とは違い、新キャラクターたちがメインとなる『エターナルズ』。
エターナルズはアメコミファンにとってはおなじみの存在で、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』(2017)で、主役のスターロード(クリス・プラット)の父親とした登場したヴィラン、エゴ(カート・ラッセル)は宇宙誕生から生きてきた天界人セレスティアルズですが、コミックではセレスティアルズが生み出した種族こそエターナルズという設定になっています。
また、アベンジャーズ最強の敵サノスも、エターナルズの末裔であることはよく知られています。
そのため、公開まで内容に関する情報が伏せられていた『エンドゲーム』で、エターナルズが登場するのでは?と予想したファンも数多くいました。
『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018)で、サノスの故郷であるタイタンが荒廃した様子が描かれましたが、その謎もこの作品で明らかになるでしょうか。
キャスト自身が「エターナルズは不死身の存在」、「数千年の物語でMCU最初期のキャラクター」というキーワードを語っており、大いに想像をかきたてられます。
エターナルズを演じるのは、アンジェリーナ・ジョリー、リチャード・マッデン、マ・ドンソクなど、超豪華なキャストで、まだ馴染みのないキャラクターたちを魅力的に演じてくれることが期待されます。
MCUフェイズ4の2021年公開情報
映画『シャン・チー』2021年2月21日公開予定
マーベル初のアジア系ヒーローを演じるのはシム・リウ、彼が演じるシャン・チーはいわゆる超能力を使ヒーローではなく、カンフーを武器に戦う肉体派ヒーローです。
原題には「Ten Rings(テン・リングス)」という言葉が含まれていますが、これは『アイアンマン』(2008)でアイアンマン(ロバート・ダウニー・Jr)を拉致したテロ組織の名前です。
テン・リングスの首領はマンダリン、『アイアンマン3』(2013)でもベン・キングズレーが演じて登場したキャラクターですが、このマンダリンは偽者であり、この作品ではトニー・レオン演じる本物のマンダリンが登場することも決定しています。
『スパイダーマン/ファー・フロム・ホーム』(2019)でも、過去のアイアンマンの因縁がドラマに繋がる展開がありましたが、この作品でも亡きアイアンマン(またはその関係者)が残したものが同様のドラマへと繋がることも考えられるでしょう。
テレビドラマ『ロキ』2021年春
「マイティ・ソー」シリーズでは、主役のソー(クリス・ヘムズワース)を喰わんばかりの存在感を発揮していた“イタズラの神”ロキ(トム・ヒドルストン)。
『アベンジャーズ』(2012)では、ソーだけでなくアイアンマン、キャプテン・アメリカ、ハルクたちアベンジャーズを向こうにまわし、堂々たるヴィランぶりで観客を楽しませてくれました。
そんなロキも『マイティ・ソー バトルロイヤル』(2017)ではソーと和解し、ヒーローじみた言動も見られていましたが、その矢先『インフィニティ・ウォー』でサノスに殺害されてしまいます。
今度は得意の死の偽装をしている様子も無かったことから、MCUシリーズから完全に退場してしまったかと思いきや、『エンドゲーム』でタイムスリップしたアベンジャーズのストーン奪還作戦中、偶然スペース・ストーンを手にした“改心前のロキ”は、ストーンの力で逃亡してしまいます。
この作品では、そんなロキがタイムトラベルをしながら、地球の歴史の転換点に立ち会うという内容になっているそうです。
トム・ヒドルストンはロキ役で一躍スターの仲間入りを果たし、「007」シリーズのジェームズ・ボンド候補に挙がる程の存在となりました。
そんなヒドルストンが演じるロキが、どんなイタズラを仕掛けて我々を騙してくれるのか期待しどころです。
テレビドラマ『ワンダヴィジョン』2021年春
発表されたラインアップの中で、最も内容の想像が及ばないのがこの作品『ワンダヴィジョン』でしょう。
そもそものところで、タイトルロールを演じるヴィジョン(ポール・ベタニー)は『インフィニティ・ウォー』の戦いで、額のストーンをサノスにもぎ取られ死亡しました。
ストーンの力による消滅ではなかったため、『エンドゲーム』での“ハルクの指パッチン”により、ヴィジョンが復活することはありませんでした。
この謎も含めてポール・ベタニーは、「アメリカン・シットコムとアクションが融合した作品」と語り、さらにファンを困惑させています。
続けて、「マイティ・ソー」シリーズ2作品に、ジェーン(ナタリー・ポートマン)の親友として登場したダーシー(カット・デニングス)と、『アントマン&ワスプ』(2018)でアントマンを監視していた捜査官ウー(ランドール・パーク)のキャスティングも発表されています。
両者ともコメディリリーフとして印象深いキャラクターですが、これまでワンダ(エリザベス・オルセン)とヴィジョンに関わることはなかったため、これまた作品の謎を深める情報となっています。
作品構造自体にミステリー的な仕掛けが施されているのか? これまでのMCUシリーズにはなかったものを見せてくれるでしょう。
映画『ドクターストレンジ・イン・ザ・マルチバース・オブ・マッドネス』2021年5月7日公開予定
まず印象的なのは、前作『ドクター・ストレンジ』でも語られていた、マルチバースの存在をクローズアップされることを思わせるタイトルです。
マルチバースとは多元宇宙という意味で、自分たちが生きる宇宙以外にも複数の宇宙が存在するということで、日本ではパラレルワールドや並行世界と言えばわかりやすいでしょうか。
例えばMCU作品ではありませんが、『スパイダーマン:スパイダーバース』ではある出来事がきっかけで、別バースにいるスパイダーマンたちが集結するという展開がありました。
他の作品同様に、具体的な内容は明かされていませんが、前作に続いて監督を務めるスコット・デリクソンと主演のベネディクト・カンバーバッチは共にホラーテイストが盛り込まれることになると述べています。
また、ワンダの登場と『ワンダビジョン』との関連性があることも伝えられており、“カンバーバッチとオルセンの共演するMCU初のホラー作品”への期待は高まるばかりです。
テレビアニメ『ワット・イフ』2021年夏
フェイズ4唯一、そしてMCU初のアニメーション作品となる『ワット・イフ』。
長い歴史を誇るMCUシリーズに置いて、重要だった瞬間をピックアップし、「ワット・イフ=もしもこうだったら」という展開が描かれていきます。
近年では新作が公開されるたびに、ファンの間でストーリー予想が数多く飛び交うようになってきているMCU、もしかするとこのアニメ作品では、そんなあなたが予想、妄想したようなストーリーが見られるかもしれません。
登場する各キャラクターの声優は、映画で演じた俳優たち本人が就くと発表されていますが、サノス、ヨンドゥ、キルモンガーといった、もう見られないと思っていた名ヴィランたちが再び目にすることができるのは楽しみです。
ちなみに、現時点で発表されているストーリーは「もしもペギー・カーターが超人血清を打っていたら?」というものがあり、彼女はスーパーヒーロー、キャプテン・ブリテンとして登場するようです。
また、コミックファンにも人気がある、ヒーローたちがゾンビ化するという設定の『マーベル・ゾンビーズ』も、同作品でのアニメーション化が発表されています。
テレビドラマ『ホークアイ』2021年秋
ブラックウィドウと同じく、スーパーパワーを持たないヒーローとして、初代アベンジャーズメンバーを務めてきた弓の名手、ホークアイ(ジェレミー・レナー)。
『エンドゲーム』では家族を失った悲しみから、ダークヒーローであるローニンとして、無軌道に悪人を殺し、その手を血で染めてしまいましたが、最後にはアベンジャーズへ舞い戻りました。
そんなホークアイを演じたジェレミー・レナー自身が語ったこの作品は、「スーパーパワーを持たないヒーローとは?」を継承する物語になるそうです。
ケイト・ビショップというキャラクターを、2代目ホークアイとして育てる展開が用意されているらしく、そのケイトの役割を担うのはホークアイの娘であるライラでは?と噂されています。
『エンドゲーム』オープニングで、ホークアイがライラに弓矢を手ほどきするシーンがあり、これがライラがホークアイを継ぐ伏線なるのかもしれません。
もしかすると、成長したアントマンの娘キャシーもヒーローとなりコンビを組む、なんていう長寿シリーズならではの楽しみもあったりするかも?
映画『ソー ラブ・アンド・サンダー』2021年11月5日公開予定
キャプテン・アメリカ、アイアンマンと共に“BIG3”として、アベンジャーズを引っ張ってきたソーは、『エンドゲーム』では戦いに傷つき、精悍でたくましいビジュアルを失った姿を見せました。
そんなシリーズ第4弾では、かつてのヒロインであるジェーン(ナタリー・ポートマン)の復帰が決定しており、さらにはジェーンがムジョルニアを手にして新たなるソーになる、という驚きの展開もタイカ・ワイティティ監督の口から発表されています。
また、前作『マイティ・ソー バトルロイヤル』で好評を得た、ワイティティ監督の演出による会話劇で見せるコミカルさも継承されているでしょう。
『エンドゲーム』で、ソーから新アズガルドの王を譲り受けたヴァルキリーの再登場も決定しており、二人のソーを相手にどのような役割を演じるのかも見どころでしょう。
おそらくはクリス・ヘムズワースが演じるソーの最終作となるであろう(ガーディアンズ3での登場もあるかも?)この作品で、今度はどんな“ソーっぷり”を見せてくれるのか、注目が集まります。
さらに3作品が追加発表!ブレイド参戦決定!スパイダーマンは離脱?
また、フェイズ5以降の登場となりますが、アカデミー賞俳優マハーシャラ・アリを主演に迎えた『ブレイド』の製作も発表されています。
『ブレイド』は1998~2004年にウェズリー・スナイプス主演で3作品が製作されたシリーズで、雑誌『映画秘宝』のアメコミ人気キャラクターアンケートでは、並み居る人気キャラクターを抑えて堂々1位に輝いています。
MCUでは初の映画化となり、新たな超人気キャラクターになることが大いに期待されます。
さらに、ムスリムのパキスタン人の女の子カマラ・カーンが、キャプテン・マーベルにインスパイアされた『ミズ・マーベル』、元傭兵マーク・スペクターが自身の想像上のヒーローたちと戦う異色のヒーロー『ムーン・ナイト』、そしてハルクのいとこである、ジェニファー・スー・ウォルターズが女性版ハルクとなる『シー・ハルク』の3作品も追加発表されました。
いずれも初登場のキャラクターとなりますが、バックボーンに既存のヒーローたちとの関連が深く、その繋がりがどのように表現されるかもポイントでしょう。
最後に、残念なニュースとして、トム・ホランド版「スパイダーマン」がMCUを離脱するかもしれないということが伝えられました。
まだ確定ではないようですが、スパイダーマンの権利を持つソニーとマーベルの間での交渉が難航しており、トム・ホランド自身も明言は避けつつも、これを匂わせるような発言をしています。
『スパイダーマン/ファー・フロム・ホーム』も、まだまだMCUの世界で活躍することを思わせるラストだっただけに、ファンとしてはどうか大人の事情を乗り越えてほしいと願うばかりです。
次回の「最強アメコミ番付評」は…
いかがでしたか。
次回は、10月4日公開予定の『ジョーカー』公開に先駆けて、過去作から見るジョーカーの魅力に迫っていきます。
お楽しみに!