Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

連載コラム

Entry 2018/09/28
Update

『キックアス』『ヒーローマニア-生活-』感想と比較考察。なりきりヒーローが行き着いたそれぞれの答え|最強アメコミ番付評8

  • Writer :
  • 野洲川亮

連載コラム「最強アメコミ番付評」第8回戦

こんにちは、野洲川亮です。

2018年9月は『キャプテン・マーベル』、『ダークフェニックス』の予告解禁で、大いにテンションが上がっております。

さて、これまでの連載ではMCU作品を中心に取り上げてきましたが、今回は少し趣向を変えて、アメコミ作品から生まれた邦画作品を紹介していきます。

2010年に公開された『キックアス』は、当時スーパーヒーロー映画の新機軸として話題になり、アーロン・ジョンソン、クロエ・グレース・モレッツの主役二人をスターダムへのし上げました。

そして、そんな『キック・アス』の強い影響を受けた、邦画『ヒーローマニア生活』が2016年に公開されました。

同じ“スーパーヒーローアクション”を描いた両作品から、見えてきたものとは?

【連載コラム】『最強アメコミ番付評』記事一覧はこちら

スポンサーリンク

映画『キック・アス』とは

『キックアス』は2008年コミックが映画に先行する形で刊行されます。

そして2010年に映画が公開されるのですが、当初製作は難航しました。

”少女が悪党を殺害していく”という過激な内容も影響して、映画会社からの出資が得られず、マシュー・ヴォーン監督自身が資金調達し、自主映画として製作、公開に至ります。

「キングスマン」、「X-MEN」シリーズの監督も務めたヴォーンの演出と言えば、軽快でスピーディーなアクションに、ド派手な音楽を掛け合わせるのがおなじみです。

今作はそんなヴォーン演出の源流とでも言うべき、アクションが連発されます。

『キックアス』で描かれるヒーロー像は、それまでの特殊能力を有する、いわゆる”スーパーヒーロー”とは一線を画するものでした。

オタクで喧嘩も弱いデイヴ(キックアス)は、手作りスーツと武器を手に、持ち前の正義感のみで悪党たちに立ち向かっていきます。

まだ小学生ながら父親に戦闘を仕込まれた”殺人少女”ヒットガールは、スタイリッシュなアクションで、ためらいなく敵をあっという間に殺戮していきます。

倫理的にあまりにも逸脱し、しかし究極のカタルシスを得られるその内容は、ヒットガール=クロエ・グレース・モレッツのキュートも相まって観客に受け入れられます。

意外?にも原作はキックアスより早かった! 『ヒーローマニア-生活-』とは

『キックアス』刊行の3年前、2005年に連載がスタートしたのが、福満しげゆき原作の漫画『生活』です。

途中、連載中断などを経て、偶然にも『キックアス』映画化と同じ年、2010年に単行本が発売されました。

映画化は2016年5月、東出昌大、窪田正孝、小松菜奈、片岡鶴太郎4人が自警団を結成し、マナーの悪い小悪党たちを成敗し、吊るしていく”吊るし魔”として活動していきます。

彼らの行動動機となるのは、キックアスとは違い、正義感ではなく上手くいかない自らの生活へのうっぷん晴らしや私欲によるものです。

主人公たちが立ち向かうのは、日常生活における様々な理不尽であり、それらはより一般の観客に距離の近いものとして、強い共感を呼び起こします。

アクションも、窪田正孝の強烈な身体能力を持ったものこそ見栄えしますが、ヒットガールのような超人が登場しないことで、やはり観客に実感を伴わせるものでした。

東出昌大が演じるうだつの上がらない情けない男も、うまく活かしたキャスティングです。

この主人公の行動動機が情けないことも、“誰しもが抱える弱さ”として共感を呼びます。

スポンサーリンク

”特殊ではない一般人たち”の正義と矜持

(C)福満しげゆき・講談社/映画「ヒーローマニア 生活」製作委員会

前述してきましたが、どちらの作品にも共通しているのは、主人公がスーパーヒーローならぬ一般人、普通の人々だということです。

“気持ちの出発点”こそ違うものの、彼らは世の中にはびこる理不尽に心を砕かれています。

そして、無力な自分を呪い、現状を打破することを祈っているのです。

許せなかったが、立ち向かえなかった鬱屈を晴らすため、あることをきっかけに”なりきりヒーロー”として活動を始めるのも同様です。

さらに、映画中盤で自分が得た力以上の、より強大な暴力によって挫折、絶望するところも両作品の共通点で、そこからヒーローとしてどんな答えを導き出すのか?

というラストへ至る展開も、やはり共通したテーマとして描かれています。

興味深いのは、挫折を経た主人公が最後にどのような道を歩むのか?が全く違う描き方をされているということです。

ラストで行き着く答えの違い

自らのミスにより、ヒットガールの父親を死なせてしまったキックアスは、ラストでは不文律であった”殺し”を解禁し、盛大かつ爽快な方法で
映画的なカタルシス満載に、悪人たちをブチ殺していきます。

観客としては、得も言われぬカタルシスと倫理観の狭間に立たされる微妙な心境で、このラストをもって、作品の賛否もかなり変わってくることでしょう。

さらに続編の『キックアス/ジャスティス・フォーエバー』(2013)でも、キックアスはなりきりヒーローの責任と向き合うことになります。

『ヒーローマニア-生活-』の主人公も、仲間の敵討ちのために立ち上がるまでは同様ですが、そのクライマックスはスタイリッシュさとはかけ離れた、トンカチや包丁などを使用した、“一般人の喧嘩の延長”のような泥臭い殺し合いです。

製作時『キックアス』が念頭にあったという豊島圭介監督ですが、ラストでは同じように明確なカタルシスを提示することなく、主人公たちをより滑稽に、より現実的な人間としての”次の一歩”を描き幕を閉じます。

日米の差、ヒーロー観の違いなど、様々な差異を感じることが出来るラストは、同じテーマから違う答えへ行き着いた、それぞれのスタッフの思いを感じることが出来ます。

どちらかしか見ていない、という方にはこの機会にぜひ見てほしい作品。どちらも見ていない場合は、興味を持った方からお先にどうぞ!

次回の「最強アメコミ番付評」は…

いかがでしたか。
次回の第9回戦では、『ヘルボーイ』から見るギレルモ・デル・トロ監督を紹介していきます。

お楽しみに!

【連載コラム】『最強アメコミ番付評』記事一覧はこちら

関連記事

連載コラム

【映画ジョーカー特集】バットマン歴代の“恐怖のピエロ”一覧解説。怖さとキャラの秘密を紹介|最強アメコミ番付評36

連載コラム「最強アメコミ番付評」第36回戦 こんにちは、野洲川亮です。 今回は2019年10月4日公開、ヴェネツィア国際映画祭でアメコミ映画史上初の、コンペティション部門最高賞にあたる金獅子賞を受賞し …

連載コラム

実写『シャザム!』あらすじと内容解説。映画化はスーパーマンより先だった“元”キャプテン・マーベル|最強アメコミ番付評30

連載コラム「最強アメコミ番付評」第30回戦 こんにちは、野洲川亮です。 今回は4月19日に公開される『シャザム!』の作品情報を解説していきます。 DCEUに登場した異色のスーパーヒーローの歴史と、DC …

連載コラム

【スーパーナチュラルシーズン14】第1・2話ネタバレあらすじと感想。ドラマの見どころ解説も|海外ドラマ絞りたて3

連載コラム『海外ドラマ絞りたて』第3回 『スーパーナチュラル』のフィナーレ、シーズン15の撮影が現在進行中。主演の2人ジェンセン・アクレスとジャレッド・パダレッキが望む限り、番組は続くと製作側から言わ …

連載コラム

映画『サイバー・ゴースト・セキュリティー』あらすじネタバレと感想。キャストにモニカベルッチやデビッドウェナムも参戦|未体験ゾーンの映画たち2020見破録30

連載コラム「未体験ゾーンの映画たち2020見破録」第30回 「未体験ゾーンの映画たち2020見破録」の第30回で紹介するのは、異色の設定で悪魔と対決するアクションホラー映画『サイバー・ゴースト・セキュ …

連載コラム

NETFLIX『攻殻機動隊SAC_2045 シーズン1』ネタバレ感想と考察。キャラの魅力を引き出したアニメシリーズとは|SF恐怖映画という名の観覧車100

連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile100 遂に当コラムも今回で100回目を迎えます。 新型コロナウイルスという新たなる人類に対する脅威の発生が映画やドラマ、アニメ界に大打撃を与え …

U-NEXT
架空映画館 by ReallyLikeFilms Online
【Cinemarche】今週のおすすめ映画情報
凱里(かいり)ブルース|2020年6月6日(土)よりシアター・イメージフォーラムほかにて全国順次ロードショー予定!
映画『異端の鳥』TOHOシネマズ シャンテほか近日公開予定
映画『朝が来る』TOHOシネマズ 日比谷ほか近日公開予定
ドラマ『そして、ユリコは一人になった』
【玉城ティナ インタビュー】ドラマ『そして、ユリコは一人になった』女優として“自己の表現”への正解を探し続ける
【ビー・ガン監督インタビュー】映画『ロングデイズ・ジャーニー』芸術が追い求める“永遠なるもの”を表現するために
オリヴィエ・アサイヤス監督インタビュー|映画『冬時間のパリ』『HHH候孝賢』“立ち位置”を問われる現代だからこそ“映画”を撮り続ける
【べーナズ・ジャファリ インタビュー】映画『ある女優の不在』イランにおける女性の現実の中でも“希望”を絶やさない
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
アーロン・クォックインタビュー|映画最新作『プロジェクト・グーテンベルク』『ファストフード店の住人たち』では“見たことのないアーロン”を演じる
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
【平田満インタビュー】映画『五億円のじんせい』名バイプレイヤーが語る「嘘と役者」についての事柄
【白石和彌監督インタビュー】香取慎吾だからこそ『凪待ち』という被災者へのレクイエムを託せた
【Cinemarche独占・多部未華子インタビュー】映画『多十郎殉愛記』のヒロイン役や舞台俳優としても活躍する女優の素顔に迫る
日本映画大学
国内ドラマ情報サイトDRAMAP