数々の映画に出演し、今や日本を代表する名俳優となった佐藤浩市。
故・三國連太郎の息子ということでも知られていますね。
佐藤浩市は、東京出身で1960年生まれ。多摩芸術学園映画学科在籍中の1980年に、NHK『続・続事件』でデビューしました。翌年出演した映画『青春の門』では、ブルーリボン賞新人賞を受賞するなど、若いころから高い演技力が注目されていました。
父である三國連太郎とは、1986年の映画『人間の約束』と、1996年の映画『美味しんぼ』共演しています。このころはまだお互いにわだかまりが消えていなかったようですが、2000年代に入ると徐々に親子関係は改善の兆しを見せ、自然に和解するような形となったようです。
1994年の『忠臣蔵外伝 四谷怪談』で日本アカデミー賞主演男優賞を受賞、2003年の『壬生義士伝』では同賞最優秀助演男優賞を受賞するなど、数多くの映画賞に輝いた経験もあります。
その他の出演作には、『ホワイトアウト』、『亡国のイージス』、『誰も守ってくれない』、『少年メリケンサック』、『起終点駅 ターミナル』、『アンフェア』シリーズなどがあります。
佐藤浩市が出演している映画は100本近くにのぼりますが、今回はその中から5作品をピックアップしてお届けします!
CONTENTS
1.佐藤浩市が日本アカデミー賞最優秀主演男優賞に輝いた『64(ロクヨン)前編』(2016)
『64(ロクヨン)前編』の作品概要
2016年の日本映画。監督は、『アントキノイノチ』『ヘブンズ ストーリー』などの瀬々敬久。出演は、佐藤浩市、綾野剛、榮倉奈々、夏川結衣、窪田正孝、筒井道隆、坂口健太郎ほか。
「半落ち」「クライマーズ・ハイ」などで知られるベストセラー作家・横山秀夫の小説が原作。
佐藤浩市は第40回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞。他にも作品賞や監督賞など4部門にノミネート。
『64(ロクヨン)前編』のあらすじ
わずか1週間で終わった昭和64年。その年に発生した少女誘拐殺人事件・通称「ロクヨン」。事件は未解決のまま14年の時が流れ、平成14年、時効が目前に迫っていました。
かつて刑事部の刑事としてロクヨンの捜査にもあたった三上義信(佐藤浩市)は、現在は警務部の広報官として働き、記者クラブとの確執や、刑事部と警務部の対立などに神経をすり減らす日々を送っているのでした。
ある日、ロクヨンを模したかのような新たな誘拐事件が発生し…。
『64(ロクヨン)前編』のおすすめポイント
昭和から平成へと年号が変わる直前に起きた未解決の誘拐事件「ロクヨン」をめぐって、県警警務部の広報官を主人公に警察内部の対立や県警記者クラブとの衝突などを浮き彫りにした作品です。
佐藤浩市が魂のこもった演技を見せ、日本アカデミー賞主演男優賞に輝いています。
また注目すべきは物語の重要人物を豪華キャストで占めていること。よくぞここまで役者を揃えてくれたと感心するほど。それぞれが細かな心理描写を演じ切っています。
佐藤浩市は撮影中に、若手俳優たちに「全力でぶつかって来い!俺が全部受け止めてやる!」と力強い言葉を投げかけたのだそう。頼もしいその言葉を受けた若手俳優陣もかなり熱の入った演技を見せています。
見る者をぐいぐいと引き込むような重厚感、安定感ある演出が光っています。特に前編のラストシーンには特別なこだわりが感じられ、後編を期待させる素晴らしい繫がりになっています。
2.討ち入りで生き残った男二人の過酷な人生を描く『最後の忠臣蔵』(2010)
『最後の忠臣蔵』の作品概要
2010年の日本映画。監督は、TVシリーズ「北の国から」を手がけた杉田成道。出演は、役所広司、佐藤浩市、桜庭ななみ、安田成美、笈田ヨシ、山本耕史、伊武雅刀、風吹ジュン、田中邦衛ほか。
原作は、池宮彰一郎の同名小説。
第35回日本アカデミー賞作品賞、脚本賞など7部門にノミネート。
『最後の忠臣蔵』のあらすじ
赤穂浪士の吉良邸討ち入りで、大石内蔵助(片岡仁左衛門)率いる46名が切腹により主君に殉じた中、密かに生き残った瀬尾孫左衛門(役所広司)と寺坂吉右衛門(佐藤浩市)という2人の武士がいました。
討ち入りの事実を後世に伝えるため生かされた寺坂は、事件から16年後、討ち入り前夜に逃亡した瀬尾に巡り会い、瀬尾の逃亡の真相を知ります。
『最後の忠臣蔵』のおすすめポイント
「忠臣蔵」の後日譚であり、討ち入りの直前に大石内蔵助から密命を受け“死ぬことが許されなかった”赤穂浪士のふたり、孫左衛門(役所広司)と吉右衛門(佐藤浩市)の16年後を描いた作品です。
日本人が好きな赤穂浪士の吉良邸討ち入り事件を題材にした時代劇映画ですが、静かでアクションシーンも少なめ。役者の人たちの演技が際立ち、登場人物たちの心情が浮き彫りになっています。
主演の役所広司はさすがの演技力。信念を貫く、忠義の男を実直に演じています。佐藤浩市もストーリー上のカギとなる人物を熱演。この2人がストイックな武士の生きざまを見事に表現しています。
また、当時新人だった桜庭ななみも繊細な演技を魅せています。
日本人とは何か、生きるとは何か、しみじみと考えさせられる味わい深い作品です。忠臣蔵ファンはもちろん、時代劇に興味の無い人も必見の傑作です。
3. 佐藤浩市の“デラ富樫”は必見!!『ザ・マジックアワー』(2008)
『ザ・マジックアワー』の作品概要
2008年の日本映画。監督・脚本は、『ラヂオの時間』『THE有頂天ホテル』などの三谷幸喜。出演は、佐藤浩市、妻夫木聡、深津絵里、綾瀬はるか、西田敏行、小日向文世、寺島進、戸田恵子、伊吹五郎、香川照之ほか。
第32回日本アカデミー賞作品賞、監督賞、脚本賞、主演男優賞(佐藤浩市)、音楽賞にノミネート。
『ザ・マジックアワー』のあらすじ
舞台は守加護という港町。マフィア「天塩商会」のボスの愛人・マリ(深津絵里)に手を出した備後登(妻夫木聡)は、自分の命を見逃してもらうため伝説の殺し屋「デラ富樫」を連れてくるよう命じられます。
しかし一向にデラ富樫を見つけられない備後は苦肉の策として、売れない俳優・村田大樹(佐藤浩市)を映画の撮影と騙してデラ富樫に仕立てて乗り切ろうと画策します。
相手が本物のギャングとは知らずデラ富樫を演じる村田、村田と「天塩商会」に嘘がばれないよう四苦八苦する備後、村田をデラ富樫と信じる「天塩商会」の面々。
それぞれの思いやすれ違いが行き交う中、次々と予期せぬ展開が待ち受けているのでした…。
『ザ・マジックアワー』のおすすめポイント
暗黒界のボスの愛人に手を出した男が、命を助けてもらう代償に伝説の殺し屋を探し出す、三谷幸喜監督・脚本のコメディー・ドラマです。
佐藤浩市は、暑苦しい演技が得意な三流役者・村田を演じています。映画監督に成りすました備後(妻夫木聡)の口車に乗らされ、偽の映画でデラ富樫役として初主演を務めることになるのですが、偽・デラ富樫が演技しているとは知らない天塩(西田敏行)との嚙み合わないやり取りがなんとも面白い!
ベテラン佐藤浩市が三流俳優を演じているのも新鮮ですし、暗黒街のボスの前で、何も知らずに伝説の殺し屋を真剣に演じるオーバーアクションが最高です!
また、劇中に登場する映画は市川崑監督作のパロディで、三谷幸喜監督の映画愛も感じることができます。
キャスティングも完璧、映画ファンのハートをくすぐるような数々の仕掛けや脚本はお見事!としか言いようがありません。笑える映画を見たいときはぜひ!
4.伊坂幸太郎の人気小説を映画化!『陽気なギャングが地球を回す』(2006)
『陽気なギャングが地球を回す』の作品概要
2006年の日本映画。監督は、『ブタがいた教室』などの前田哲。出演は、大沢たかお、鈴木京香、佐藤浩一、松田翔太、大倉孝二、加藤ローサ、古田新太、大杉連ほか。
ベストセラーとなった伊坂幸太郎の同名小説を映画化。
『陽気なギャングが地球を回す』のあらすじ
他人の嘘がわかってしまう男(大沢たかお)とコンマ1秒まで正確に時を刻むことのできる体内時計を持つ女(鈴木京香)。演説をさせたら右に出る者はいない男(佐藤浩市)と若き天才スリ(松田翔太)。
この4人の天才達は「人を傷付けない」ことをポリシーとする銀行強盗。
ある日彼らはロマンあふれる強盗計画を実行に移すのだが、突如現れた別の強盗にあっさり大金を奪われてしまい…。
『陽気なギャングが地球を回す』のおすすめポイント
個性的な面々が大金を巡り右往左往する様子を描いた、伊坂幸太郎原作の犯罪映画です。
“「オーシャンズ11」に満足できなかった人へ”という文句が宣伝に使われていますが、泥棒たちが明るくスタイリッシュに描かれた映画だからでしょう。(伊坂幸太郎氏は意識していなかったようですが。)
佐藤浩市は、天才強盗グループの一人、止めどなく湧き出る泉のように言葉を紡げてしまう“演説の達人”響野を演じています。胡散臭い感じがたまりません。
大沢たかお、鈴木京香らとの掛け合いも絶妙で、スピーディな展開と痛快で先の読めない物語が展開していきます。CGなど演出が不自然な点も気になりますが、気軽に見れる娯楽作ですよ。
この映画がデビューとなった松田翔太の活躍にも注目!
5.北海道で第2の人生を歩む夫婦を描いた『愛を積むひと』(2015)
『愛を積むひと』の作品概要
2015年の日本映画。『武士の献立』『釣りバカ日誌』シリーズの朝原雄三。出演は、佐藤浩市、樋口可南子、北川景子、野村周平、杉咲花、森崎博之、吉田羊、柄本明ほか。
原作はアメリカのエドワード・ムーニー・Jr.の小説。
第18回上海国際映画祭・正式出品作品、第40回ブリュッセル国際映画祭外国映画コンペティション部門に出品作品。
佐藤浩市は、第40回報知映画賞 最優秀主演男優賞を受賞。
『愛を積むひと』のあらすじ
東京の下町で営んでいた工場をたたみ、残りの人生を北海道で過ごそうと決意した小林篤史(佐藤浩市)と妻の良子(樋口可南子)。
かつて外国人が暮らしていた家を手に入れて暮らす2人ですが、仕事一筋だったゆえに篤史は暇を持て余してしまいます。そんな彼のために良子は、家を囲む石塀作りを提案します。
しかし、良子は以前から患っていた心臓病を悪化させ、他界してしまいます。妻の死に深い悲しみに沈む篤史でしたが、彼女が死の直前につづった自分宛の手紙を読んだことをきっかけに、石塀作りを手伝う青年・徹(野村周平)との交流をもち、疎遠だった娘・聡子(北川景子)との関わりを取り戻していきます。
『愛を積むひと』のおすすめポイント
北海道で第2の人生を過ごそうとする夫婦が、改めて自分たちの愛情や絆を見つめ直す姿を描くヒューマンドラマです。
佐藤浩市、樋口可南子というベテラン俳優ならではの深い味わいを感じる作品です。佐藤浩市は、仕事一筋だった、実直で不器用な性格の夫・篤史を演じています。
東京で経営していた工場を畳み北海道に移り住んだ50代の夫婦。妻が病で亡くなり、残された篤史は悲しみに暮れますが、その哀切に満ちた表情や佇まいが妻への愛情の深さを感じさせ、見る人の胸を打ちます。
佐藤浩市と樋口可南子の、自然でありながら細やかで説得力のある演技はさすがです。また、若い野村周平や北川景子ら脇役たちとの関わりも素敵に描かれています。
人生を重ねた50代以上の方におすすめな大人の映画です。北海道の美しい自然にも癒されますよ。
まとめ
佐藤浩市の出演する映画から5作品をピックアップしてお届けしました。
武士から三流役者、刑事…どんな役もこなし、見る人の胸を打つような演技力は本当に凄い!の一言ですね。
2017年6月3日には最新作『花戦さ』が公開されます。
今後どのような役柄や演技でファンを楽しませてくれるのか、期待したいですね!