海外で絶大な人気を誇る英国製SFオムニバスドラマ『ブラック・ミラー』。
前回ご紹介したシーズン1の第1話「国歌」では、SNSの普及による大衆の「悪意の麻痺」による危険性が、現代社会により近い世界観で描かれていました。
一方、第2話での物語では、想像も出来ないような「管理社会」を舞台にしているのですが、その内容はどこか現代社会に生きる我々の心に強く刺さるものになっていました。
そんなわけで、今回は今や人気俳優のダニエル・カルーヤがかつて出演していたシーズン1の第2話「1500万メリット」のあらすじをご紹介していきます。
CONTENTS
海外ドラマ『ブラック・ミラー シーズン1 「1500万メリット」』の作品情報
【原題】
Black Mirror “Fifteen Million Merits”
【公開】
2011年
【監督】
ユーロス・リン
【キャスト】
ダニエル・カルーヤ、ジェシカ・ブラウン・フィンドレイ、ルパート・エヴェレット、ジュリア・デイビス
【作品概要】
第1話である「国歌」よりも前に書かれていたとされる脚本を、ドラマ監督として確かなキャリアを積むユーロス・リンが制作した第2話。
『ゲット・アウト』(2017)で各国の様々な賞を受賞しただけでなく、アカデミー主演男優賞にもノミネートすることになったダニエル・カルーヤが主演を勤めたエピソードでもある。
海外ドラマ『ブラック・ミラー シーズン1 「1500万メリット」』のあらすじとネタバレ
一面が液晶で囲まれた部屋で日々を過ごすビング。
完全管理されたこの社会では、何をするにもメリットと言う電子通貨が必要になり、そのメリットは自転車による発電をすることで得ることが出来ます。
死んだ兄の遺産を引き継ぎ1500万ものメリットを持つビングは、自転車での発電をしながらもアバターの着せ替えなど、与えられる娯楽にあまり興味が無く、空虚な毎日を過ごしていました。
この世界では発電が出来ないほど肥満体となった人間は、黄色い服を着せられ「レモン」という蔑称で呼ばれ、下級階層で働くことを余儀なくされます。
ある日、トイレで歌を歌う女性のアビに心惹かれたビングは、彼女が自販機の動作不良により買ったものが出てこず、困っているところを助けます。
何気ない身の上話しの後、ビングはアビに「ホットショット」への出演を訴えます。
「ホットショット」はオーディション番組で、そのオーディションに見染められた人間はこの世界での名声と、莫大な財産を約束されます。
21歳になり自転車を漕ぐ仕事を始めたばかりのアビは1200万メリットと言う莫大な出場権を買える訳もなく、ビングの話しを一笑に付します。
しかし、ビングはアビの代わりに1200万メリットを支払うと提案。
何故そんなことをするのかと問うアビに、ビングは「この空虚で似非だらけの世界で、アビの歌声だけがリアル」だったことを熱弁し、彼女に了承を取りつけます。
夜、自室から「ホットショット」の出場権を購入しようとするビングはその価格が1200万メリットから1500万メリットにあがっていたことに驚きながらも出場権を購入しアビにプレゼントします。
翌日、オーディション会場に向かうアビとビングは行きのエレベーターで2人手をつなぎます。
オーディション会場の控室は途方もない人数の参加者がいて、長い待ち時間を覚悟していましたが、控室につくなり早々に呼び出しを受けるます。
アビの友人として、舞台裏までの同行を許されていたビングは舞台裏で彼女を励まします。
スタッフが参加者に「カップライアンス」と言う緊張を無くす薬を飲むことを強要し、彼女は少し意識が薄い状況下でオーディションに挑むことになりました。
海外ドラマ『ブラック・ミラー シーズン1 「1500万メリット」』の感想と評価
「本物」との出会いを通し、自分の中に生まれた「本物」の気持ち。
主人公のビングは、そんな「本物」の気持ちを最後の最後に爆発させますが、その結果は非常に人間的な終わり方を迎えます。
「レモン」のように意図的に下級階層を作るような徹底した「反抗精神」の「管理」が行われる世界で、それぞれが抱える「本物」の気持ちがいかにして「偽物」に変えられていくのか、がとても不気味に映っていました。
さらに、海外ではビングが物語の最後に見る自然の景色が「本物」の自然なのか「偽物」の自然なのか、が考察されています。
しかし、その議論に対し「It can’t be real, can it?(それは本当のことではないですか?)」と言うコメントがあるように、技術の進歩により「本物」と「偽物」の区別がどんどんとつきにくくなり、「1500万メリット」のような世界が近づいているのかもしれません。
まとめ
「完全管理」の世界を描いた第2話には、前述したもの以外にも様々なテーマが内包されています。
発電により手にできる「メリット」を使用し、実像の無いアバターの衣装を変え、自分自身ではないもので自己表現をしようとすることに対する皮肉であったり、「レモン」と言う差別階級を意図的に作ることで「支配」の形を強める社会構造であったりと観る人や回数により毎回違ったテーマを掘り出すことが出来る作品です。