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映画『失われた少女』あらすじネタバレと感想。ラスト結末も

  • Writer :
  • 糸魚川悟

ライアン・レイノルズとサミュエル・L・ジャクソンが共演した『ヒットマンズ・ボディーガード』(2017)やウィル・スミス主演の『ブライト』(2017)のように、Netflix独占配信映画では今や、ハリウッドスター出演作が多く制作されています。

しかし、それと同時に林遣都が主演した又吉直樹の小説の実写化ドラマ『火花』のように、世界各国の特色と雰囲気に満ちた作品も配信され、様々な色を楽しむことが出来るストリーミングサービスとなってきています。

そんなわけで、今回は映画としてはあまり馴染みのない、スペインとアルゼンチンが共同で制作したサスペンス映画『失われた少女』の魅力とあらすじを紹介させていただこうと思います。

映画『失われた少女』の作品情報

【公開】
2018年8月(Netflix独占配信)

【原題】
Perdida

【監督】
アレハンドロ・モンティエル

【キャスト】
ルイサナ・ロピラト、アマイア・サラマンカ、ラファエル・スプレゲルブルド、ニコラス・フルタード

【作品概要】
フロレンシア・エチェべスの小説「Cornelia」を原作とした実写化作品。

映画『失われた少女』のあらすじとネタバレ

14年前、コルネリア少女が社会学習で訪れたアルゼンチンで行方不明となり死亡扱いとなりました。

コルネリアの母クララは遺体が見つからなかったことから単なる事故死では納得がいかず、コルネリアの親友であり刑事でもあるマヌエラに捜査するように何度も頼んでいました。

コルネリアの追悼ミサで使用されたコルネリアの写真が、初めて見る写真だったため、違和感を覚えたマヌエラは翌日その写真を調べに行きますが家族と名乗るスキンヘッドの男に既に持ち去られていました。

14年前の社会学習で共にアルゼンチンを訪れたかつての友人たちに話しを聞きに行くマヌエラ。

しかし、友人のレオノーラはコルネリアの事件を既に過去のものとして扱い、息子のロドリゴの事が気になって仕方がない様子でした。

スキンヘッドの男ことアダルベルトと、アダルベルトにコルネリアの写真を取りに行かせた謎の女シレナは少女たちを売春させています。

7年前、売春組織のエジプト人に用済みとして始末されそうになった売春婦のシレナを助けたアダルベルトは、同じく売春婦のルクレシアと共にエジプト人を追い、アルゼンチンへと渡った過去がありました。

検察官からの取り調べを無視し、突っかかる相棒のマルティンを攻撃したことで職場での立場が危うくなるマヌエラは上司のラモンにある可能性を示します。

コルネリアは14年前、宿からマヌエラたちと外出した後、一度宿泊した宿に戻り、その後に森へと出かけ行方不明となったとされていましたが、そもそも外出後宿に戻ってなどいないのでは、とマヌエラは当時コルネリアの捜査をしていたラモンに疑問を投げかけます。

かつて、マヌエラは事件の捜査をするラモンに教えを請い、警官となった過去があり、彼のことを絶対的に信頼していました。

しかし、ラモンはマヌエラの発言を取り合おうとせず、自力での捜査を進めざるを得なくなったマヌエラは、当時の自分と友人たちの取り調べ記録を確認します。

コルネリアを含んだマヌエラたちは宿から外出後、バーでお酒を飲んだ後、宿の女将の息子アリエルのトラックで外出後、同トラックで宿に戻り、翌朝コルネリアがいなくなったことに気が付いたと証言していました。

マヌエラは情報屋のアリーナに、出資者不明のコルネリアに対する追悼広告の正体と、スキンヘッドの男が頭にしていた刺青を探らせます。

アリーナの調査で精神病院で隔離されている「ゴースト」とあだ名をされる女性がスキンヘッドの男と同じ刺青を腕にしていることが分かります。

部屋に引きこもり、部屋中に絵を描くその女性の絵の中からコルネリアと書かれた人物画があることを発見したマヌエラは毎年「ゴースト」に面会に来ている女性がいることを知ります。

その女性は毎年10月18日に彼女に会いに来ているナディーンと名乗るスペイン人の女性であると分かり、この女性がコルネリアの失踪に深く関与していると確信したマヌエラは彼女を取り調べようとラモンに掛け合いますが、コルネリアの事件の再捜査に批判的はラモンは承諾してはくれませんでした。

かつて人身売買組織のエジプト人の男に命を奪われそうになっていたシレナとアダルベルトは、今もそのエジプト人の男に従属的な関係を強要されていました。

アリーナの調べでナディーンは名前だけの存在で偽名の可能性が高いと分かります。

アダルベルトや「ゴースト」の刺青が船乗りなどに有名な伝説の存在である、「人魚(シレナ)」の刺青であることに辿り着くアリーナでしたが、マヌエラが不在の最中にアダルベルトに襲われ殺されてしまいます。

アリーナ殺害の現場に駆けつけたラモンに、独自調査の結果起きた悲劇であると停職を言い渡されるマヌエラ。

アリーナの最後の調査でナディーンが飛行機のチケットを取っていたことを知ったマヌエラは、ナディーンの痕跡を追いアルゼンチンに向かいます。

マヌエラを監視していたマルティンはそのことを知りラモンに報告します。

一方、シレナとアダルベルトはエジプト人の男に、アリーナを殺したことで痕跡がバレたことに激しシレナを殺害しようとしますが、逆にシレナに刺殺されるのでした。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『失われた少女』ネタバレ・結末の記載がございます。『失われた少女』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

14年前の宿泊先に訪れたマヌエラは、事件の再調査であると宿の女将に話しますが、女将に出された紅茶を飲むとやがて昏睡してしまいます。

エジプト人の男の死体発見現場でナディーンの痕跡を見つけたマルティン。

車の中で目を覚ましたマヌエラは女将の息子アリエルによって倉庫のような場所に監禁されます。

アリエルが宿に戻ると女将は何者かに殺害されていて、アリエルも何者かに射殺されます。

監禁されていたマヌエラのもとに現れたのはシレナでしたが、マヌエラは彼女がコルネリアであることに気がつきます。

コルネリアは自分を見捨てたマヌエラを恨んでおり、マヌエラに事件の真相を語り始めます。

14年前、アリエルを追ってバーの裏側に来たコルネリアは、レオノーラをレイプしているアリエルを目撃してしまいます。

人身売買組織とつながりのあったアリエルは、処女だったコルネリアを売春婦として人身売買組織に売ったのでした。

「ゴースト」はコルネリアの売春婦仲間ルクレシアであり、処女でなかったことから解放されたレオノーラは、定期的にコルネリアと連絡を取っており、追悼ミサでのマヌエラが見たことのない写真も彼女が用意したものでした。

エジプト人の男の殺害現場にあった写真から痕跡を辿ったマルティンはアルゼンチンの宿までたどり着き、アリエルの死体を発見します。

コルネリアが去った後、マヌエラを始末するためやってきたアダルベルトを撃退しましたが、アダルベルトはマヌエラの持っていたビール瓶で自殺してしまいます。

その現場に訪れたラモンにナディーンがコルネリアであることを伝えるとラモンはその場を去りました。

しかし、その後に現れたマルティンがラモンが来たことを知ると、ラモンが危険であることマヌエラに告げますが、マルティンはラモンに撃たれてしまいます。

ラモンこそが人身売買組織とのつながりを持ち、コルネリアの事件を隠蔽しようと裏で糸を引いていた人物だと知ったマヌエラはラモンを射殺し、息のあるマルティンと共にアルゼンチンを出るのでした。

帰国したマヌエラは、コルネリアこそ見つからないものの一応の事件の解決をクララに報告します。

自宅に戻り、事件の記録や関係者の情報を眺めるマヌエラはあることに気が付きます。

出資者不明の追悼広告の内容ががイリーナの息子ロドリゴの歳を指し示すものであること、ロドリゴの誕生日が10月18日であること、イリーナとコルネリアは繋がりがあったこと、毎年10月18日には欠かさずコルネリアがスペインを訪れていたこと。

すべての要素を繋げると、ロドリゴはイリーナの息子ではなく、コルネリアの息子であることをマヌエラは確信します。

10月18日、イリーナから本当のことを聞き出すマヌエラ。

イリーナは自分のせいであるにもかかわらず、コルネリアだけが悲惨な目にあっていることを罪として抱えており、彼女の息子を育てることを快諾しており、コルネリアの追悼広告と称し、ロドリゴの誕生日の祝福メッセージをコルネリアに送っていたのでした。

ロドリゴの誕生パーティの客のなかに変装したコルネリアを発見したマヌエラは、14年前マヌエラとコルネリアが友情の証としてつけていたペンダントをコルネリアがロドリゴに渡しているのを目撃します。

会場を去ろうとするコルネリアを追いかけ再会するマヌエラ。

彼女との関係は二度と戻るものではないと確信していたマヌエラは、友情の証として14年間大事にしていたペンダントをコルネリアに返し、その場を去るのでした。

映画『失われた少女』の感想と評価

サスペンスやミステリーなど、刑事物や事件の捜査物の作品は、捜査の過程を重厚に描くことであったり、意外性抜群のオチや猟奇性の高い事件の真相があることが人気が出るための重要な要素であることが多いです。

今作は、主人公の女刑事マヌエラが14年前の親友の失踪を誰の制止も聞かず追い続ける、と言う私情に満ちた展開であり、また親友のコルネリアがどうなってしまったのか、や真の黒幕の存在は比較的想像がたやすい作品です。

そう言った事件の展開そのものも、キャラの魅力や伏線の出し方が上手く退屈はしないのですが、とにかく驚かされるのは事件の裏にある「最後の真相」です。

突拍子もないオチと言うわけではなく、違和感のある伏線や証拠の数々が、その真相に正当性を出していて、「コルネリアの失踪事件」に残された違和感をきっちりとまとめあげていることに思わず感嘆してしまいました。

物語のテーマの1つでもある「友情」にも決着がつくラストも見どころで、しっかりとした余韻が残る1作でした。

まとめ

普段あまり馴染みのないスペイン、アルゼンチン映画。

『失われた少女』は日本で大旋風を巻き起こしている『カメラを止めるな!』(2018)のように、世界の各地で意欲に富んだ作品が次々と作られていることが分かる作品であり、それでいてスペインやアルゼンチンの街並みを楽しめる良質なサスペンス映画でした。

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