4月4日(金)より京都シネマ、4月5日(土)よりシネ・ヌーヴォ、第七藝術劇場、元町映画館にて公開
社会運動が高揚していた1970年代の日本。
新左翼過激派集団である東アジア反日武装戦線「さそり」のメンバー・桐島聡は、重要指名手配され逃亡の日々を送っていました。
いつ逮捕されるかわからない緊張感のなかで日雇い仕事を転々とする日々。「内田洋」という偽名で生活を始めます。
指名手配犯として身を潜め孤独に生きた男が見たものとは……。
若松プロの問題作を書き続け、監督として商業デビューなど活動する一方で、元日本赤軍という経歴を持つ足立正生が自身の半生も重ねて、東アジア反日武装戦線の元メンバー・桐島聡を描き出しました。
安倍晋三元首相の銃撃事件で逮捕された山上徹也容疑者をモデルに描いた『REVOLUTION+1』(2023)に次ぐ衝撃作。
映画『逃走』の作品情報
(C)「逃走」制作プロジェクト2025
【日本公開】
2025年(日本映画)
【監督、脚本】
足立正生
【キャスト】
古舘寛治、杉田雷麟、タモト清嵐、吉岡睦雄、松浦祐也、川瀬陽太、足立智充、中村映里子
【作品概要】
2024年、末期がんと診断され、余命わずかの患者が「自分の本当の名前は桐島聡だ」と明かし世間に衝撃を与えました。
指名手配犯として、身を隠しながら「内田洋」という偽名で半世紀にも渡り逃亡生活を続けた桐島聡。
その実態を明かすことなく息を引き取りましたが、自身も元日本赤軍という経歴を持つ足立正生監督が、監督自身の半生とも重ね合わせて描き出します。
主演を務めた古舘寛治が迫真の演技で、桐島聡の己の闘争、逃亡生活に対し自問し続ける姿を演じました。
映画『逃走』のあらすじ
(C)「逃走」制作プロジェクト2025
社会運動が高揚していた1970年代。
新左翼過激派集団である東アジア反日武装戦線「さそり」は、大企業に爆弾を仕掛ける計画を立ていました。
「人は殺さない」と誓っていたにも関わらず、爆弾の威力の設計のミスか、予想に反して大きな被害を出してしまいます。
東アジア反日武装戦線「さそり」のメンバーである桐島聡の部隊は計画を続行すべきか選択を迫られていました。
そんな矢先、あるメンバーを尾行し泳がせていた警察によって、一斉に逮捕されてしまいます。
逮捕を免れた桐島聡と宇賀神寿一は、神社でまた再会することを誓い、別々に逃亡することに。
桐島聡は、逮捕される緊張感のなか、日雇い労働者として各地を転々とし、次第に「内田洋」という偽名で工務店の住み込みとして働くようになります。
宇賀神との再会、今後の計画について話そうと思う桐島聡ですが、誓った場所に出向いても宇賀神の姿はありません。
緊張の逃亡生活の果てに桐島聡が見たものとは。
映画『逃走』の感想と評価
(C)「逃走」制作プロジェクト2025
長年指名手配犯として、各地でその顔とポスターが街中の至る所で目にした桐島聡。
そんな桐島聡を名乗る人物が突如出現したことに、世間は大きな衝撃を受けました。
半世紀にも渡り逃亡生活を続け、病院で末期がんで余命わずかとなった男が、桐島聡だというのです。
しかし、桐島聡は多くを語ることなく息を引き取り、被疑者死亡のため容疑に関しては不起訴となりました。
そもそも、桐島聡がなぜ指名手配犯となっていたのか、東アジア反日武装戦線「さそり」をはじめ1970年代の社会闘争の時代の空気を知る人物はそう多くないのではないでしょうか。
桐島聡死去のニュースを受け、様々なメディアで桐島聡をはじめ、東アジア反日武装戦線「さそり」について特集されました。
また、2025年7月に毎熊克哉が桐島聡を演じ、高橋伴明監督による『「桐島です」』が公開予定になっています。
そんななか、いち早く桐島聡について描いたのは、元日本赤軍という経歴を持ち、国際指名手配され、レバノンで逮捕、ルミエ刑務所で3年の禁固刑を受けた足立正生監督。
桐島聡は、逃亡生活についても何もかも話すことなく息を引き取ったため、劇中で描かれる逃亡生活は推測であり、監督自身の半生とも重なるものだと思われます。
逃走ことが、自身の闘争と信じ、逃走を完遂することが己の使命だと思う一方で、終わりにしたいと思う葛藤がありありと描き出されます。
一方で、逃亡生活の中に楽しみが一切ないわけでもなかったでしょう。
桐島聡が生前、飲食店やバーに出向く姿を近隣の人が見ており、特にジャズが好きだったという話も知られています。
そのような姿も本作に描かれているだけでなく、女性との交流も描かれています。
桐島聡自身は、1974年の8名が死亡、376人が負傷した三菱重工爆破事件とは無関係とされていますが、他の爆破事件に関与し、重傷者を1人出した容疑がかけられていました。
桐島聡という人間を、今の世の人はどう見るべきでしょうか。それは、1970年代の空気を知らない世代にとっては難しいものでしょう。
彼らが訴えていたものは何だったのか。その手段や、行ったことは被害者も出しており、正しかったとは言えないでしょう。
しかし、時代は変容し1960年代から続く学生闘争や、反日闘争は忘れ去られています。
そんな現代に、まさに当事者として生きた足立正生が、自分たちの生き様を伝えようと本作を作ったのかもしれません。
まとめ
(C)「逃走」制作プロジェクト2025
東アジア反日武装戦線「さそり」のメンバーであり、指名手配犯として半世紀に渡り逃亡生活を送った桐島聡を描いた映画『逃走』。
本作は、桐島聡という自身がどのような人物なのか他者の視点を交えて描き出すことはせず、他者との関係から必要以上に人間味を映し出していない印象を受けました。
主軸として描かれるのは、自問です。己のしたことを反省している様子とともに、捕まった仲間への罪悪感から逃走を完遂ことを己の使命としていました。
しかし、捕まるかもしれない緊張感を保ちながら孤独な生活を続けることは苦しい道です。
終わりにしたい気持ちと、当たり前の生活を送れてしまうことの後ろめたさ、様々な感情が桐島聡を追い込みます。
内面の葛藤という点においては、桐島聡という人間の内面を描いていると言えますが、そこには監督自身の思いも少なからず含まれていると思われます。
実録映画といえますが、その内実は監督の桐島聡への思いと、監督自身の半生が色濃く現れており、後半に行くにつれ監督な思いが強すぎるきらいがあります。
その意味では客観性のある映画とはいえず、距離を持ってみる必要もあるかもしれません。