目的不明の凶悪犯が指名したのは心に傷を負った交渉人
『コンフィデンシャル/共助』などで知られる人気俳優ヒョンビンが、初の悪役に挑戦!
『私の頭の中の消しゴム』、『Be with you~ いま、会いにゆきます』の演技派女優ソン・イェジンが交渉人を演じ、人質犯(ヒョンビン)と対峙する!!
究極の心理サスペンス映画『ザ・ネゴシエーション』をご紹介します。
映画『ザ・ネゴシエーション』の作品情報
【公開】
2019年公開(韓国映画)
【原題】
The Negotiation (협상)
【監督】
イ・ジョンソク
【キャスト】
ヒョンビン、ソン・イェジン、キム・サンホ、チャン・ヨンナム、チャン・グアン、チョ・ヨンジン、ジョン・インギョム、チェ・ビョンホンモー
【作品概要】
『コンフィデンシャル/共助』のヒョンビンが初の悪役に挑戦。「私の頭の中の消しゴム」のソン・イェジンが心に傷を抱えた交渉人を演じる究極の心理サスペンス。制作は、『国際市場で逢いましょう』『コンフィデンシャル/共助』『それだけが、僕の世界』等大ヒット作を数多く手掛けるJKフィルム。
映画『ザ・ネゴシエーション』あらすじとネタバレ
ソウル良才洞で人質事件が発生し、非番だったソウル市警危機交渉班警部補ハ・チェユンは呼び出しを受け、現場に到着しました。
班長が外から説得を試みていましたが、犯人たちは外国人で、英語が苦手な班長は交渉に一苦労していました。
そのため、留学経験があり英語が堪能なチェユンが呼び出されたのです。しかし班長は、彼女に機会を与えず、部隊を突入させようとしていました。
チェユンは、言葉での交渉が必要だと主張し、30分だけ時間をくださいと班長に談判します。
許可がおり、交渉の任を得たチェユンは犯人と信頼関係を築こうと試みて、家の内部に入りました。
犯人は2人組で、2人とも男女ひとりずつの人質に刃物をあてていました。「逃走用のヘリを準備しろ」と叫ぶ犯人に、条件としてまず女性を解放するよう呼びかけますが、事件を報道するニュース番組に警察の特殊部隊が武装して待機している映像が映し出されたのを観た犯人は興奮しだします。
その時、班長の支持で、窓際の犯人が狙撃され、もうひとりが女性の人質を連れて、奥の部屋に逃走しました。
一斉に武装した警官が突入してきました。チェユンが奥の部屋に駆け込むと人質の女性が喉を切られて倒れていました。
タイ、バンコク。男性がひとり、強面な男たちから逃走しようとしていましたが、捕らえられてしまいます。ヤクザ風の男たちは男性に「イ・サンモク記者だな?」と尋ね、男性はうなずきました。
チェユンは人質を助けられなかったことを悔やみ、交渉の仕事は自分に向いていないと辞表を出しますが、班長は受け取ってくれません。
その時班長に連絡が入りました。海外での仕事の呼び出しがかかったらしく、戻ってから話そうと言うと立ち去りました。
家でくすぶっているチェユンのもとに、アン・ヒョクス警部が訪ねてきました。ソウル市警庁長から直々呼び出しがかかったというのです。
聞けば、ミン・テグと名乗る男が交渉人としてチュエンを指定してきたのだそうです。
具体的なことを何も教えてもらえず、いきなりモニターの前に座らされたチェユンは最初、事態を把握できずにいましたが、どうやらこの男はクアラルンプールやタイを拠点とするマフィアのボスで、タイで韓国人の人質を取り、なにかを要求しようとしているようでした。
モニターに映るミンは、のらりくらりとチェユンたちを翻弄し始めます。人質の顔を見た一同は驚きます。人質は班長だったからです。
「俺と腹を割って話せるか? 一点の曇りもなく正直に」とミンはまっすぐ目を見て話しかけてきました。
チェユンは頷きますが、警視庁側には公表できない事情がありすぎるのでした。
韓国政府はミンの居場所をタイのある孤島であると特定し、空軍特殊部隊を現地時間の22時に送り込むという極秘作戦を進めていました。
あと14時間。チェユンには時間を稼ぐようにという命令がくだされていました。
ミンは大韓日報のユン社長を呼ぶように要求してきました。ユン社長はゴルフの真っ最中でヘリコプターに連れられてやってきました。
モニターにはひどく痛めつけられたイ記者の姿がありました。
「大丈夫か?」とユン社長が尋ねると、イ記者は気丈に大丈夫だと応えました。
ミンは、社長にイ記者のこれまでのスクープを教えてくれと言い、社長はいくつかのスクープをあげましたが、ミンはやけにすらすらと出てくるじゃないかと言うのでした。
まるで始めからわかっていたようじゃないかというミン。「本当におたくの記者か?」
庁長が横から口をはさむと、「今、社長と話しているんだ」とミンは怒って興奮しだしました。
ミンはイ記者の足を撃ち、応えなければ次は頭を撃つぞ、と言って、再び大韓日報の記者か?と尋ねました。
記者じゃないと叫んだ社長は外へ連れ出されました。
「嘘はつかないと約束したよな」というミンに「知らなかった」とチェユンは応えるしかありません。
「あれほど言ったのに」と言うとミンは班長を撃ち殺しました。チェユンはショックを受け、思わず「このイカレ野郎」と呟いていました。彼女は泣き崩れます。
その頃、空軍特殊部隊は、タイ上空を飛行中でした。作戦まであと9時間です。
モニターが切られ、チェユンは「イの正体は? 知ってたんですね。一体誰です?」と回りに叫びました。
背広姿の男たちが姿を表し、あとの交渉は我々がやりますと言って、チェユンは外に追い出されました。
同じく外に出されたハン課長がチェユンを追ってきました。ミンは国際犯罪組織の武器密売業者のリーダーであること、国家情報院がイをタイに送り込み捜査させていたことを女性は告げました。
チェユンは危機交渉班の若手を呼び、密売情報からミンに関するものを全て探すよう命じました。
その頃、モニターの前には国家情報院の男性が2人陣取り、ミンと交渉していました。「韓国製武器を取引しているだろう? イを解放して情報を渡せば見逃してやる」と男たちは言いました。
そんな2人の言葉を嘲るように、ミンは新たな人質の姿を見せました。旅行客らしい家族連れでした。
「ハ警部補を連れてこい!30分を過ぎたら人質を殺す」と言って電話は切られました。
そのころ、特殊部隊はマラッカ海峡上空にいました。隊員はパラシュートで海に降り、ボートに乗り込み、島へと向かいました。攻撃時間まであと4時間となっていました。
再び呼ばれたチェユンは、全ての情報を共有し、ミンの相手は私だけにと要求しました。「誰であろうと邪魔したら切ります」と言う彼女を見て、国家情報院の男たちは引き上げて行きました。
モニターの向こうで、子どもに泣かれ、ミンは動揺しているように見えました。ミンは母親と子どもを別室に移しました。
「なぜ私を呼び出したの?」という問には応えず、ミンは「ナインエレクトリスク社」のク・グァンス会長を呼べと要求してきました。
実はミンはク・グァンス会長の手下的存在でした。ですが、途中、2人の間に軋轢が入り、グァンスが、ミンを当局に密告。ダミー会社を使い、脱税をしていたことを告白し、当局と取引をしたことがわかっていました。
その頃、ヒョクス警部は、家に戻った大韓日報の社長を尋ねていました。社長は、安全なところに家族を避難させようと車に乗せたところでした。社長はユン・パク次長に支持されたことを証言します。
今回の特殊部隊投入の予算もク・グァンス会長が全額出していることをチェユンは聞かされます。
ミンは元上司に丁寧な言葉を使いながら「シャングリラの口座が凍結された」と訴えました。「すぐに戻してやる。私の名が抜けたせいだろう」とク会長は応えました。
さらにミンはク会長にヒョンジュを殺した理由は?と問いかけました。ク会長はそんな名前の人間は知らないと応えました。
ミンはチェユンにもヒョンジュを知っているかと問いました。「知らない」と答えると、「現場にいただろう。良才洞の殺人事件だ」とミンは応えました。忘れもしない、交渉に失敗し、全員を死なせてしまったあの事件です。ヒョンジュはあの時殺された人質の女性だったのです。
「現場で絵を見たか?」とミンはさらに尋ねてきました。チェユンは観たと応えました。「持ち主は?」という問いには「亡くなったから・・・」と応えると、「隣りにいるぞ。共同所有者の一人だ」という答えが返ってきました。
ク会長はヒョンジュなど知らぬとつっぱねますが、ミンは、秘密の金庫の中に数十億の絵画が隠されており、密かに売り渡され、資金洗浄に利用されていたことを暴露します。
「私が私腹を肥やしていると?」とク会長が言うと、ミンは、ある会話の録音を流しました。
それは、ク会長が大統領府国家安保室の社長ファン・ジェイクらとアメリカから戦闘機を輸入する際に不正を働き、多額の金を手にしたというスキャンダラスな会話でした。
用心深いク会長はいつでも会話を録音しているのだとミンは言います。「全員まとめて逮捕できるか?」とミンはチェユンに問いかけました。
「録音ファイルは証拠として弱い」とチェユンは応え、ミンを説得しはじめました。「こんなやり方はあなたには合わない。絵画を受け取った人を教えて。絵画の持ち主と受け取った人を捜査します。」
庁長が彼女に変わり、ミンに必ず捜査すると語り始めました。その時、ハン課長が、この交渉がライブ中継されていることに気が付きます。
「韓国の警察が嘘をつくと思いますか?」そうとは知らずに庁長はミンに語りかけていました。
テレビでも人質事件が報道され始めました。「動画の拡散を食い止めろ!」と秘書官が叫びました。
「ファン室長、観てますね。一時間以上連絡が取れないと、人質を一人ずつ殺す」とミンはファン室長に語りかけました。
モニターを観ていたファン室長は、「ク・グァンスを主役にシナリオを書き換えろ」と部下に命じていました。「小娘ひとり、まともに消せないとは!」
映画『ザ・ネゴシエーション』の感想と評価
序盤、タイで、ジョン・インギョム扮する記者が拉致される場面で、男たちが屈強な姿をさらしていますが、サングラスをかけたヒョンビンが現れると、そのショットで全てをさらっていきます。
ヒョンビンが2017年に出演した『コンフィデンシャル/共助』(2017/キム・ソンフン)では、ヒョンビン扮する北朝鮮の刑事に、皆が皆、「かっこいい~」とつぶやいていたのが思い出されます。
ドラマ『シークレット・ガーデン』(2010)や、『アルハンブラの宮殿の思い出』(2018)、映画『スウィンダラーズ』(2017/チャン・チャンウォン)などで、様々な役を甘いマスクで魅力的に演じてきた彼はここでも圧倒的にかっこいいのですが、本作では、初めて悪役に挑戦しています。
この悪役が大変はまっています。やけにフレンドリーだったり、急に凶暴性を爆発させたりと、モニター越しの彼は、掴みどころがなく、人々を翻弄します。
彼の目的は何か、そしてこの交渉の席を取り巻くわけのわからない不穏さはなんなのか? 物語は思いがけない方向へと向かっていきます。
一方、彼から交渉人に指定される女性はソウルの人質事件の交渉に失敗し、職を辞そうとしていた女性です。
彼女自身、この仕事は向いていないと言っているように、沈着冷静な雰囲気はなく、どちらかといえば、感情豊かな、優しい女性に見えます。
交渉相手からも「あなたは向いていない」と言われており、自他共に向いてない人物が主役というのも面白い設定です。
扮するは2003年の作品『ラブストーリー』(クァク・ジェヨン)、2004年の『頭の中の消しゴム』(イ・ジェハン)などずっと第一線で活躍している女優・ソン・イェジンです。
ある意味、この女性は、ストーリーの概要から一番離れた場所に置かれているといえるでしょう。ことの真相が明らかになるにつれ、正義感と使命感が沸き起こり、次第に熱くなっていく姿とソン・イェジンのイメージが重なります。
主役の2人に加え、Netflixのドラマ『キングダム』や、イ・ソンミン主演の映画『目撃者』(2018/チョ・ギュジャン)での活躍が記憶に新しいキム・サンホや、チャン・グァン、チェ・ビョンホンモーら韓国映画界の名脇役たちが、さすがの演技を見せています。
冒頭のショッキングなエピソードから、ラストシーンまで、一度も緊張が途切れることのないスリリングな演出も素晴らしく、悪と善の境目がなくなっていくストーリー展開に目が離せません。
第一級のサスペンス映画に仕上がっています。
まとめ
監督のイ・ジョンソクは、『国際市場で逢いましょう』で助監督、ファン・ジョンミン主演の『ヒマラヤ~地上8,000メートルの絆~』では脚色を担当し、キャリアを磨いてきました。本作が監督デビュー作となります。
イ・ジョンソク監督は、臨場感を与えるために、役者も実際にモニター越しに演技させたそうです。今後の活躍が楽しみな監督がまた一人登場しました。
韓国映画ファンのみならず、アクション映画、サスペンス映画好きの方々にも是非みていただきたい作品です。