ウォーターゲート事件を内部告発したFBI副長官の目線で映像化。
『コンカッション』や『パークランド ケネディ暗殺、真実の4日間』のピーター・ランデスマン監督が徹底的なリサーチの末に脚本を書き上げた映画『ザ・シークレットマン』をご紹介します。
1.映画『ザ・シークレットマン』の作品情報
【公開】
2018年(アメリカ映画)
【原題】
Mark Felt: The Man Who Brought Down the White House
【監督】
ピーター・ランデズマン
【キャスト】
リーアム・ニーソン、ダイアン・レイン、マートン・ソーカス、アイク・バリンホルツ、トニー・ゴールドウィン、ブルース・グリーンウッド、マイケル・C・ホール、ブライアン・ダーシー・ジョーンズ、ジョシュ・ルーカス、エディ・マーサン、ウェンディ・マクレンドン=コービ、マイカ・モンロー、トム・サイズモア、ジュリアン・モリス、ケイト・ウォルシュ、ノア・ワイリー
【作品概要】
アメリカ合衆国で初めて任期途中に辞任へと追い込まれたリチャード・ニクソン大統領。
その引き金となったウォーターゲート事件と、事件の全容を白日の下に晒し、ディープ・スロートと呼ばれた告発者の全容を描いたサスペンス映画。
フェルト役を『シンドラーのリスト』や『96時間』で知られるリーアム・ニーソンが演じ、その妻オードリー役を『トスカーナの休日』のダイアン・レインが務めています。
演出は『コンカッション』や『パークランド ケネディ暗殺、真実の4日間』のピーター・ランデスマン。
2.『ザ・シークレットマン』あらすじとネタバレ
FBI副長官のマーク・フェルトは、ホワイトハウスの上層部から煙たがられながらも、圧力に屈する事無く正当な捜査を貫き、その姿から「FBI捜査官の鑑」と言われていました。
ある日、フェルトの元にFBIの長官、ジョン・エドガー・フーバーが死去したという知らせが入ります。
フェルトは早急に機密書類を破棄し、長官の引継ぎ体制に入ります。
次期長官はフェルトと思われましたが、FBI長官代理として、ニクソン大統領の忠臣であるL. パトリック・グレイが派遣されます。
これまでFBIの幹部は全員叩き上げでしたが、ホワイトハウスの息がかかった部外者が長官代理に就任した事に、フェルトは不満を抱きます。
帰宅したフェルトに妻オードリーは退職を勧めますが、フェルトは「まともな長官が現れたら」と拒みます。
また、フェルトの娘ジョアンが家出をして1年間音信不通となっており、オードリーの精神状態は不安定になっていたのです。
その夜、1本の電話がフェルトにかかってきます。
「複雑な内容なので、現場に来てほしい」との連絡に、フェルトはウォーターゲートビルに向かいます。
現場には民主党本部に侵入し、盗聴器を仕掛けようとした5人の男が逮捕されていました。
5人は全員が元CIAに属し、中には元FBIだった者までいることから、フェルトは事件の異常性を感じます。
早速、捜査の指揮を執るフェルトでしたが、グレイは48時間で捜査を打ち切るように指示を出します。
グレイのオフィスに大統領法律顧問のジョン・ディーンの姿を見た事から、ホワイトハウスによる捜査妨害の可能性を感じたフェルト。
彼は対抗策として、ある行動に出ます。
3.映画『ザ・シークレットマン』の感想と評価
20世紀後半のアメリカ政治史上、重大な事件の1つと言われているウォーターゲート事件。
謎の密告者「ディープ・スロート」の存在が、人々の関心を集め続け、30年間謎の存在とされていました。
本作は2005年7月に、自らディープスロートだと明かした、マーク・フェルトの目線でウォーターゲート事件を描いています。
何故、マーク・フェルトは機密情報を外部に漏らしたのか?
劇中で「FBIは家族同然だった」というセリフを、さまざまな人物が言っている事から、フェルトはアメリカ政府の関係者によって破壊され始めた、FBIという組織を守る為の行動だったと思います。
最後はFBI長官代理となったグレイに命じられた、汚れた仕事の始末を一手に引き受けて、フェルトは有罪となってしまいます。
本作で脚本と監督を務めたピーター・ランデズマンは、フェルトを「自己犠牲の精神がある人物」と評しており、アメリカ人というよりもむしろ日本人に近いと感じています。
組織の中で1人苦しみ続けるフェルトの姿は、私たち日本人にもが共感できる部分があります。
ただ、鑑賞される際には「ウォーターゲート事件」に関わった人たちや、時代背景などを少し予習しておくと良いでしょう。
まとめ
本作は、報道記者でもあったピーター・ランデズマンの徹底的なリサーチにより制作されました。
フェルト役を演じたリーアム・ニーソンもフェルトを、徹底的に研究したそうです。
表情を顔に出さず、常に周囲を観察していたというフェルトを完全に再現しています。
本作でリーアム・ニーソンが表情を変えるのは3回だけですが、ちょっとした動きでフェルトの心理状態を観客に伝えており、演技派俳優の実力を見せつけています。
演技を活かしたカメラワークでは、FBI捜査官同士が疑心暗鬼に陥る場面や、フェルトが新聞記者と密会する場面などは、画面全体が手持ちカメラで撮影された映像となっており、ドキュメントのような緊張感のある映像となっています。
自らの信念を貫くため、大統領という絶対的な権力に挑み失墜させたマーク・フェルトを、緊張感のある映像で静かに描いた『ザ・シークレットマン』、2月24日(土)より新宿バルト9ほかで公開中です。