スペイン出身の女優アナ・アセンシオが自身の経験を基に描いたサスペンス・スリラー『モースト・ビューティフルアイランド』。
2020年はアメリカで大統領選挙があります。アメリカが抱える目下の課題は「移民問題」。世界最大数の移民国家とも言われている、アメリカの大統領選の争点が、この移民に対する処遇だそうです。
今回ご紹介する『MOST BEAUTIFUL ISLAND モースト・ビューティフル・アイランド』はその夢をつかむためにアメリカに渡った“移民”女性の物語です。
本作はスペイン人である監督のアナ・アセンシオが移民として渡米し、体験した生活がベースに構成されていて、バイトの着想も似たような経験から脚本を書おろしています。
来日した際のインタビューでは演じたい役をやるには、自分で脚本から監督をやるしかないと決心したと答えています。
ニューヨークのアンダーグラウンド感を出すためにロケ先を探した際には、現場で銃弾が目の前をかすめる恐怖を体験をしたとも語っています。
そんなアメリカ・ニューヨークに潜む、アンダーグラウンドでのできごとを描き、サウス・バイ・サウスウエスト映画祭で審査員大賞を受賞した作品です。
CONTENTS
映画『MOST BEAUTIFUL ISLAND モースト・ビューティフル・アイランド』の作品情報
【公開】
2019年(アメリカ映画)
【監督・脚本】
アナ・アセンシオ
【原題】
MOST BEAUTIFUL ISLAND
【キャスト】
アナ・アセンシオ、ナターシャ・ロマノヴァ、ニコラス・トゥッチ、ラリー・フェッセンデン、アミ・シェス、デビッド・リトル
【作品概要】
スペインのマドリードが出身のアナ・アセンシオ監督は、2001年にアメリカへ移住し女優を目指しました。本作はそのアナ・アセンシオが主演で監督と脚本も手掛けた初作品となり、2017年のサウスバイサウスウェスト映画祭にて審査員大賞を受賞しました。
制作スタッフには、『ステイク・ランド』(2010)、『肉』(2013)、『ABC・オブ・デス2』(2015)のラリー・フェッセンデン、撮影に『チャンネル・ゼロ』『コイン強盗クラブ』のノア・グリーンバーク、編集には『世界で一番パパが好き』(2004)のフランシスコ・ベロが参加しています。
キャスティングは『サプライズ』(2013)のニコラス・トゥッチ、『タイムクエスト』(2000)のカプリス・ベネデッティ、製作スタッフとしても名を連ねた『喰らう家』(2015)のラリー・フェセンデンなど、ホラーやサスペンスに携わった個性派俳優が、アンダーグラウンドの世界を怪しく演出します。
映画『MOST BEAUTIFUL ISLAND モースト・ビューティフル・アイランド』のあらすじとネタバレ
故郷のスペインで娘ソフィアを幼くして、不慮の事故で亡くしたルシアナは、その悲しみから逃れるために単身ニューヨークへと、可能性をもとめて渡米してきました。
ところがそのことで悪夢に悩まされ不眠症に陥ります。しかし、悪夢の原因は他にもありました。それはルシアナが渡米した方法が“不法”であるということです。
不眠や栄養不良のせいでルシアナは体調を崩します。友人でロシア人移民のオルガの紹介で、ホロヴィッツという医師のところへ行きますが、保険に入れないため診療費は支払えません。
オルガに紹介されたルシアナは、なんとか診察してもらえると思って訪れましたが、「治療費の払えない者は患者ではない」と診察を拒否されました。
その上、不法移民のルシアナにはまともな仕事などはなく、ある仕事といえば、低賃金の客引きや富裕層の子供を見るベビーシッターなどでした。
たまに『卵子提供者に8000ドル』など仕事ともいえない高額な求人もありますが、それには移民がアメリカで合法的に働くことのできる、社会保障番号が必要でした。
携帯電話も止められ、その日に食べるものにも困窮するルシアナは、オルガから急に仕事が入ったけど、今日は用事があって行けないから代わりに行ってほしいと言われます。
その仕事とはあるパーティーに行き、ミニドレスを着て華を添えるだけで、2000ドルを即金でというアルバイトです。
高額報酬の裏には何かあると思っているルシアナは迷いますが、背に腹は代えられず、バイトをしにパーティー会場へ向かいます。
映画『MOST BEAUTIFUL ISLAND モースト・ビューティフル・アイランド』の感想と評価
アメリカのニューヨークといえば「夢や希望」の可能性を秘めた都市であり「自由」というイメージがあります。
移民と呼ばれる多くの人は学問や芸術などを学んだり、仕事をしながら生活する目的を持ってきます。
ところが学業や就業を目的とした場合は、合法的な手続きとビザが必要となり、滞在期間なども決っています。
そのいずれからもはずれてしまい、そのままその国に留まってしまうとその人は“不法滞在”の「不法移民」という扱いになってしまうのです。
アメリカは多くの移民を受け入れてきてしまったため、国民に対する仕事量や移民達への補償などで、経済に大きく影響が出ています。
国民からは不平や不満の声が出ているため、大統領選挙の近いアメリカにとっては政策の面でも重要な課題になっています。
なので不法に滞在している外国人の多くは、違法薬物を使用したりホームレスになってしまう現実も多くあるといえるのです。
移民(不法移民)の問題点や実態はもはやアメリカだけのことではなく、ヨーロッパ全土や日本にも及んでいます。ただ、アメリカには「可能性」を期待する人が多く、外国人に寛容なイメージが無いわけではありません。
しかし、ハイリスクローリターンというのが現実で、もし地下社会を見たならばどう這い上がるのか?その怖さを伝えた映画です。
まとめ
本作はアナ・アセンシオ監督の実体験に基づくことを脚本にしているので、監督自身も女優になる夢をもって渡米し、移民ならではの貧困も体験したのでしょう。
また、外国人移民の友達との出会いやアルバイトの経験から、作品に結び付くヒントも多くあったと考えられます。
作中のルシアナが「今はこの街に可能性を探すのに疲れた」と言った言葉は、アメリカで暮らす移民が感じている気持ちなのかもしれません。
そして、ニューヨークはアンダーグラウンドな世界はあって当たり前に感じます。本作も観進める間に、人身売買や売春などを想像してしまった人も多いでしょう。
それとは違った内容でしたが、むしろ「こんな世界もあるのか!?」という別の驚きもある映画でした。