現在も日本各地で公開中の『フリー・ファイヤー』は、2017年に見るべき映画!
GW映画として4月29日より公開されている今作品は、製作総指揮マーティン・スコセッシ&監督ベン・ウィートリーのタッグという見逃せない映画!
2016年に第41回トロント国際映画祭ミッドナイト・マッドネス部門で最高賞にあたる観客賞を受賞は伊達じゃない。
廃屋工場の密室銃撃戦を上回る粋な会話の攻撃&応酬を見逃すな!
CONTENTS
映画『フリー・ファイヤー』の作品情報
【公開】
2017年(フランス・イギリス合作映画)
【監督】
ベン・ウィートリー
【キャスト】
ブリー・ラーソン、アーミー・ハマー、キリアン・マーフィ、シャルト・コプリー、ジャック・レイナー、サム・ライリー、マイケル・スマイリー、バボー・シーセイ、エンゾ・シレンティ、ノア・テイラー、パトリック・バーギン、トム・デイビス、マーク・モネロ
【作品概要】
『タクシードライバー』『沈黙』などのマーティン・スコセッシ監督が製作総指揮を行い、その下で『ハイライズ』のベン・ウィートリー監督が演出を務めた。
『ルーム』のブリー・ラーソン、『コードネーム U.N.C.L.E.』のアーミー・ハマー、『チャッピー』のシャルト・コプリー、『インセプション』のキリアン・マーフィたち豪華キャストが集結したクライムアクション。
2016年に第41回トロント国際映画祭ミッドナイト・マッドネス部門で最高賞にあたる観客賞を受賞。
映画『フリー・ファイヤー』のあらすじとネタバレ
1978年アメリカのボストンの夜。
1台のキャンピングカーを慌てて走知らせるボンクラ男のスティーヴォと相棒バーニー。
彼らはIRAメンバーのクリスとフランクに会うために車を運転していました。
スティーヴォはバーニーに、昨夜に若い娘を痛めつけていたらその従兄弟という男に殴られたと、パンダのような顔に見える痣を見せます。
頭痛も酷くの怒りが治らないスティーヴォは今度アイツに会ったら始末してやるとバーニーに喚いています。
一方で待ち合わせ場所の郊外にある倉庫には3人のギャングがいました。
仲介者の美女ジャスティンとキレ者のハンサムガイのクリス、そしてステーヴォの妻の兄フランクがキャンピングカーの到着を待っています。
ようやく、ボンクラ男の2人が運転する車が到着。
すると、倉庫街の奥から交渉相手の売人オードがやって来ます。
オードは待っていた彼ら5人に盗聴器を隠してないか身体検査を終え、5人を倉庫の奥へと連れていきます。
廃屋工場の奥では武器商人のヴァーノンという南アフリカ訛りのひどい男と、その仲間で元ブラックパンサー党員のマーティンが待っていました。
ヴァーノンは取引の銃をクリスたちに確認させようと、一丁の自動小銃を木箱から取り出しながら、外のワゴン車には同じものがどっさりあると自慢げに言います。
しかし、IRAの武闘派クリスの要求しておいたアメリカのアーマーライト社のM16自動小銃(M16A1)ではなく、 それはイタリアのベレッタ社のAR70自動小銃でした。
南アフリカ訛りのヴァーノンは、交渉相手のクリスから利益をピンハネしようと企み、頼んであった自動小銃と違うものを抜け目なく持って来てあったのです。
異様な緊張感の雰囲気が銃の取引の現場にいた2つのギャンググループを包みます。
交渉のを取り持つ女性ジャスティンは、これだけの大量の銃はないという空気感を変える助言を告げると、クリスはAR70自動小銃の試し打ちを要求。
工場の廃屋内で連射撃ちを行い、その機能性に納得したクリスはOKと告げ、銃の購入を決めて現金の入ったブリーフケースをヴァーノンに渡します。
その後、大量の銃を積み込んだワゴン車に乗った長髪ハリーとゴードンが、「ジョン・デンバーの流行ソング」をカーステレオで流しながら登場。
すると、ボンクラ男のスティーヴォの顔色が変わります。彼が昨夜、トラブルを起こした相手がヴァーノンの仲間ハリーだったのです。
ハリーから気が付かれないように目の合わないように避けていましたが、ハリーの方もステーヴォの存在に気が付き詰め寄ります。
それぞれのギャングたちがスティーヴォとハリーを止め、ステーヴォがハリーに謝る事になりました。
しかし、スティーヴォがハリーに、従妹をナンパしてどのように痛めつけたかを挑発して自慢します。
周りが制止するのも聞かず、怒りを爆発させたハリーは銃を取り出し、スティーヴォに発砲。
すると今度はスティーヴォが発砲して打ち返すと、その弾丸は誤ってヴァーノンの肩に当たってしまいます。
もはや交渉は決裂、ボンクラ男スティーヴォとイケてない長髪のフォークソング好きなハリーの諍いがもとでギャング10人は銃撃戦を始めます。
現金の入りのブリーフケースを持つマーティンは頭部を撃たれ転倒。
大金が地面に転がっている中での銃撃戦という様相になり、ヴァーノンが必死にブリーフケースの確保を仲間に命じます。
何も武器を持っていなかったバーニーは怯えて、出口の方へ逃げ出そうとしますが、ヴァーノンが背後からバーニーを殺傷。
すると、今度は2つのギャンググループを背後の陰から狙撃手2人が両グループを狙い発砲開始。
ますます混乱するギャングたちは誰が敵で味方か分からぬ状態になりますが、2グループで先ずは狙撃手に反撃します。
狙撃手のうちの1人のジミーが倒され、もう1人も弾が命中、傷ついて思わず助けの声をあげたことで、オードが知り合いのハウイーだと気が付きました。
ハウイーは雇われこの場所にいるすべて殺傷して、現金を持ち逃げすることを告白。
誰が黒幕で雇われたを告げようとすると、クリスのギャングたちの誰かに命を絶たれます。
クリスは仲介者の女性ジャスティンをこの場所から逃がすことを提案します。
敵対するヴァーノンも同意すると、弾の痛手を追っていた彼女は足を引きずりながら逃げていきます。
しかし、ゴードンはそうはさせじとばかりに、ジャスティンの命を奪おうと必死に追いかけます。
すると、銃撃戦の真っ最中、突然、工場にあった電話が鳴り響く……。
映画『フリー・ファイヤー』の感想と評価
『フリー・ファイヤー』を製作総指揮したのはマーティン・スコセッシ。映画ファンなら誰もが知る20世紀最後の巨匠と呼ぶのにふさわしい監督です。
そんなマーティンの信頼するエージェントが引き合わせたのが、『キル・リスト』『サイトシアーズ~殺人者のための英国観光ガイド~』『ハイ・ライズ』などでカルト的人気を誇るイギリスのベン・ウィートリー監督。
この作品は上映時間90分のほとんどが銃撃戦という触れ込みで宣伝された、70年代ルックなブラックなアクションコメディー。
一体どのような見どころがあるのか深掘りをしてみましょう。
①密室劇のギャングスター・ムービー『レザボア・ドッグス』との違いは?
『レザボア・ドッグス』(1992)
まず、“密室劇で銃撃戦”と宣伝の内容を聞いた際に、多くの映画ファンなら、1992年に公開されたクエンティン・タランティーノが、監督・脚本・出演の三役を務めた秀作『レザボア・ドッグス』を頭に思い浮かべることでしょう。
今回紹介する『フリー・ファイヤー』を劇場で見る前に良からぬ心配をしたのは、クエンティン作品と似ていたらどうしよう?という訳の分からない不安。
しかし、映画がはじまるとそんな不安は吹き飛びました。なぜなら、キャンピングカーに乗った2人のボンクラなチンピラの話している会話が粋だったからです。
なるほど、この作品はの面白くなるぞ!上手い具合に会話のやり取りで、状況の雰囲気や各自のキャラクターの人物背景を語っているなと思ったからです。
また、会話にある言葉で次の展開の前振りをうまく混ぜているところも絶妙です。(何度か見てチェックすると面白いですよ)
それでも不安が払拭されたわけではありません。
工場内に入ってからサスペンスフルな展開になり、銃撃戦が始まって、しばらくして、またも不安なのが回想シーンがくるかこないかです。
でも、回想シーンは出てきません。『フリー・ファイヤー』の凄いところは回想シーンがないことなんです。
もちろん、現在の映画で回想シーンを面白く見せられる監督には、クエンティン・タランティーノ監督やガイ・リッチー監督のように、オリジナリティのある独自の回想シーンへの誘いで、十八番芸の演出を見せる天才監督もいます。
しかし、往々にして回想シーンを入れることで、それまでの物語の流れにあったリズムを壊す監督が多いのも事実です。
サスペンス映画に回想シーンは不必要だと言われています。
そのことを指摘したのは、サスペンス映画の神様アルフレッド・ヒッチコック監督です。
『フリー・ファイヤー』は回想シーンでキャラクターの過去に触れなくても、各自それぞれのキャラクターが会話にあるセリフや演技で、観客に思い浮かべることを可能にしています。
それによって、サスペンス映画をより活き活きした作品へと見せてくれているのです。
今作を見た観客がなかなか死なないと、まどろっこしいと思う人がいるかもしれませんが、それ自体、ベン・ウィートリー監督が仕掛けたサスペンスに見事はまっているのです。
そのイライラもサスペンス映画の重要な味付けポイントです。
ぜひ、瞳を大きく開け、耳をかっぽじって粋な会話にある言葉の情感や情報、それを日常性に見せれる演技力に要注目です。
②70年代のマイノリティーが集結する巧みさ!
『タクシードライバー』(1976)
今作の製作総指揮を務めたマーティン・スコセッシといえば、名作『タクシードライバー』。
主人公のキャラクターは、ベトナム帰りの元海兵隊員であったトラヴィス・ビックル。
彼はニューヨークのタクシー会社でドライバーとして働いていましたが、その社会背景の中でマイノリティーの状況からラストにかけてパッションを静かに爆発していくインパクトのある人物でした。
社会(政治)と個人は繋がり、その両面から人間の心情が見えてくるという特徴を見せてくれた作品でもありました。
『フリー・ファイヤー』に登場するキャラクターたちの色は、会話にあるセリフの言葉で人物背景に触れていることは前に指摘しました。
しかし、それだけではなく、それぞれに割り振られたマイノリティという立場にも見どころがあります。
フリスとフランクはIRA組織のアイルランドの同胞。
ジャスティンは紅一点の女ギャング。
ヴァーノンは南アフリカ出身の訛りの酷い白人。
黒人のマーティンは元ブラックパンサー党員…。
他にも、フォークソング好きのチンピラのオードはどうにか大悪党ヴァーノンに認めてもらいたい。
スティーヴォは義理の兄に良いところ見せたいチンピラでした。(ファンデーションメイクでゲイというメタファーでもある)
これらの弱者の人たち70年代という激動の時代を生き、なんとかのし上がりたいという欲望を。現金や銃火器の必要性とうまくマッチングさせて密室でありながら、閉じずに社会性や世界観を見せていたところは巧みと言えるでしょう。
また、弱いからこそ、またはマイノリティーだからこそ、心底から相手を信用できないという状況。そこを作っている点もサスペンス映画の緊張感を生むポイントと言えます。
③あなたは『フリー・ファイヤー』の中に何本の70年代映画を思い起こしました?
『ジョーズ』(1975)
この作品の物語の展開やセリフに70年代のどんな映画へのオマージュが入っていたのでしょうか。
いくつ見つけられましたか?
例えば、1975年の映画『ジョーズ』に似たシチュエーションはお分かりですよね。閉ざされた空間でボンベですよね〜。
セリフの中にある言葉では、1975年の『アイガー・サンクション』、1978年の『ゾンビ』など、特に出てくる必要もないのですが、やはり今回は口撃の映画でもありますから、入っていましたね。
男性の方ならクリスとオードが仲直りして、一先ずは手打ちにしようという場面(ゲイっぽく)で、多くの70年代の映画の登場人物を脳内にフラッシュバックさせたのではないでしょうか。
しかし、あの三角関係は女性ジャスティンによって打ち砕かれます。
男たちの淡い夢。それも70年代の映画の香りと言えるでしょう。
他にも映画ファンのために隠し味を探して見てくださいね。
まとめ
映画『フリー・ファイヤー』は、2017年の海外作品では年間ベスト級な作品なのは間違いありませんね。
また、この作品ほど、近年映画作りのお手本になる映画はありませんよ。
ぜひ、製作総指揮マーティン・スコセッシ&監督ベン・ウィートリーのタッグという見逃せない映画です!
ベン監督は、マーティン・スコセッシに敬意を表し、「彼はエネルギーの塊みたいな人で、映画のことなら何でも知っている。映画の神様でもあり、偉大な映画作家だ」と語っています。
この作品、見逃してしまうには惜しいですよ。ぜひ、劇場でご覧ください!オススメの1本です!