映画『68キル』は、2018年1月6日より特集上映「未体験ゾーンの映画たち2018」で公開されています。
日本版ポスターのデザインは、映画ライターの高橋ヨシキさんが手掛け、「ちょっと待て、その優しさが命取り!トチ狂った世の中では、こっちも狂わなければ殺られてしまうのだ!」とコメント!
マシュー・グレイ・ギュブラー絶叫主演!トレント・ハーガ監督のアクションスリラー『68キル』を紹介します。
1.映画『68キル』の作品情報
ご存知!高橋ヨシキさんデザインの『68キル』ポスター
【公開】
2018年(アメリカ映画)
【原題】
68 Kill
【脚本・監督】
トレント・ハーガ
【キャスト】
マシュー・グレイ・ギュブラー、アナリン・マッコード、アリーシャ・ボー、シェイラ・バンド、サム・イードスン、ジェームズ・モーゼ・ブラック
【作品概要】
2017年に応募総数約8000本の中から上映されたサウス・バイ・サウスウエスト映画祭で観客賞を受賞した新感覚アクションスリラー。
『悪魔の毒々モンスター 新世紀絶叫バトル』や『デッドガール』『ザ・スリル』で高い評価を受けている脚本家、トレント・ハーガが監督・脚本を務め、強盗計画が思わぬ方向へ転がっていく様子をスリリングに描いています。
2.映画『68キル』のあらすじ
気が弱くて心優しい冴えない男のチップは、美しい容姿と凶暴な性格を併せ持つ恋人の娼婦ライザに、自身の稼ぎのない事から頭が上がらない毎日を送っていました。
2人は家賃の支払いにも困るほど苦しい生活を送っており、貧乏な生活に嫌気が差したライザは、自身の客であるケンが高級車を買うために貯めていた現金6万8千ドルを奪う事を計画します。
当初は反対していたチップですが、ライザに押し切られ、渋々計画に参加します。
その夜、ケンの屋敷に侵入したライザとチップですが、当初は6万8千ドルを盗み出すだけの計画だったはずが、就寝していたはずのケンが起きていた事で計画が破綻。
ライザはケンと彼の妻の命を奪い、そのまま6万8千ドルを盗み出します。
躊躇なく2人を殺めたうえに6万8千ドルを手にし、嬉しそうにしているライザの姿に恐怖を感じるチップですが、ケンの屋敷にはバイオレットという女性が住んでおり、殺害した現場を目撃してしました。
チップとライザは、逃げようとするバイオレットを捕まえると、気絶させて車のトランクの中に押し込み逃走します。
ライザはバイオレットを、猟奇的な趣味を持つ殺人鬼の兄のドウェインに売りつける事を考えました。
ライザの考えに反対するチップですが、ライザは聞き入れてくれず、逆に脅してきたため、チップはライザを気絶させます。
彼は拳銃と6万8千ドルを奪い、バイオレットを連れてその場を逃げ出します。
バイオレットの美しい容姿に魅了されたチップは、始末することも逃がすことも出来ず、そのまま一緒に逃走することにします。
天真爛漫なバイオレットは気が強く機転の利く女性で、すっかりチップはバイオレットに惹かれしまい、泊まったモーテルで一夜を過ごします。
次の日の朝、激しい頭痛を感じて目を覚ましたチップは、自分の荷物も6万8千ドルも消えている事実に気付きます。
バイオレットの姿が見えなくなっていたことから、すぐに彼女を疑ったチップですが、バイオレットはバスタブで変わり果てた姿となっていました。
ライザの犯行だと確信したチップは、電話でライザを問いただしますが、否定されます。
心当たりはもう1人、昨晩モーテルに到着する前に立ち寄ったガソリンスタンドの店員モニカでした。
モニカは、チップが大金を所持しているのに気付き、口止め料を要求してきましたが、バイオレットによって止められていました。
チップはバイオレットの復讐と6万8千ドルを取り返すため、モニカの捜索を開始します。
一方でチップの一連の仕打ちに怒り狂ったライザも、チップを探していました。
策も武器も持たないチップの運命は?
6万8千ドルは誰の手に渡るのでしょうか?
3.映画『68キル』の感想と評価
ドラマ『クリミナル・マインド FBI 行動分析家』のドクター・リード役で知られるマシュー・グレイ・ギュブラーを始め、『新ビバリーヒルズ青春白書』でナオミ役を演じるアナリン・マッコード。
また、Netflixのドラマ『13の理由』で主要登場人物の1人を演じ高い評価を得ているアリーシャ・ボーなど、注目の若手俳優が出演している『68キル』。
映画の序盤では、犯罪に巻き込まれていくチップの様子をコミカルに、テンポよく描いています。
しかし、後半は一転してサスペンスやホラーのテイストを散りばめながら、理不尽さを加速させながらスリリングな展開で描いています。
トレント・ハーガは監督はそのことについて、次のようにインタビューで答えています。
「重要だったのは、スピード感に溢れ、予測不能で、クライム、コメディ、ロマンス、ホラーの要素を持っていること。このコンセプトに沿って、脚本からキャスティング、音楽と衣装などすべてを選択していった」
確かに試みは成功していて、その迫力はスクリーンから伝わってきました。
また、本作の最大の特徴は、男性が女性に振り回されている様子。強烈な個性と強さを持つ女性たちが、常にチップを狂わせる展開になっています。
プロデューサーのトラヴィス・スティーブンスは、本作『68キル』を次のように語っています。
「私たちは今、ジェンダー・パワーシフトの時期に生きていて、女性と男性の関係性は大胆に逆転しようとしています。このテーマについて探求することは、本当に魅力的でした」
つまり、主人公のチップは、意識的に女性から苦しめられるスリラー展開を背負うことで、観客にテーマを伝えようという意図があるようです。
これまでのホラー映画やサスペンス映画は、女性が絶叫するシーンが多かったですが、本作『68キル』で絶叫しているのは常にチップだということなのでしょう。
この性別を逆転させた台本も今の時代を感じさせる、面白い試みだと感じました。
また、凶暴な女性ライザを演じたアナリン・マッコード、天真爛漫なバイオレットを演じたアリーシャ・ボー、ゴスロリの危険な女性モニカを演じたシェイラ・バンド。
彼女たちの3人が、それぞれ個性の異なる女性を魅力的に演じた点に要注目です。
だからこそ、3人の女性に振り回される、男性チップの絶叫する姿を見ているだけでも楽しめますよ。
まとめ
本作『68キル』は、定番では女性が苦しめられるスリラー映画の台本にある“性別を裏返すとどうなるか?”ということに挑んだ映画です。
しかし、男性のチップも振り回され続ける訳ではなく、あるキッカケで理不尽な状況に戦いを挑むようになり、確実に成長する姿を見せてくれます。
また、トレント・ハーガ監督は、本作を鑑賞した男性や女性の観客たちの姿について、「沢山の人々が、この映画は何を意味しているのか、話しながら劇場から出て来るのを見て、僕は満足している」と語っています。
特に映画のラストシーンでは、人によって解釈の仕方が違うのではないかと思います。
どのように感じるかによって、この作品の印象が決まるのではないでしょうか。
ジェットコースターのようなスピード感のなか、個性の強いキャラクターよる様々な魅力や、多くのメッセージを持つ『68キル』。
是非、劇場で体験して下さい。