稀代のスーパーヒーローが映像化された『スパイダーマン(2002)』!
アメリカンコミックを代表するスーパーヒーローを実写映画化した『スパイダーマン』。
VFXにより描かれる圧巻の映像と従来のスーパーヒーロー映画のイメージを覆す深い人間ドラマは、後に展開される様々なスーパーヒーロー映画に大きな影響を与えることとなります。
そんな映画『スパイダーマン(2002)』のネタバレを感想評価を交えてご紹介します。
映画『スパイダーマン(2002)』の作品情報
【公開】
2002年(アメリカ映画)
【原題】
Spider-Man
【監督】
サム・ライミ
【キャスト】
トビー・マグワイア、ウィレム・デフォー、キルステン・ダンスト、ジェームズ・フランコ、クリフ・ロバートソン、ローズマリー・ハリス、J・K・シモンズ、ゲリー・ベッカー、ビル・ナン、ジャック・ベッツ、スタンリー・アンダーソン、ロン・パーキンス、マイケル・パパジョン、K・K・ドッズ、テッド・ライミ、ブルース・キャンベル、エリザベス・バンクス、ジョン・パクストン、オクタビア・スペンサー
【作品概要】
マーベルコミックスが誇る屈指のヒーロー、スパイダーマンの映画化した本作は『死霊のはらわた』(1981)などで知られるサム・ライミが取りまとめ、『ワンダー・ボーイズ』(2000)などで注目を集めたトビー・マグワイアがスパイダーマンこと、主人公のピーター・パーカーを演じています。
本作の悪役、グリーン・ゴブリン/ノーマン・オズボーン役に『プラトーン』(1986)などのウィレム・デフォー、ヒロイン、MJ役に『インタヴュー・ウィズ・ヴァンパイア』(1994)のキルステン・ダンスト、ピーターの親友、ハリー役に『DEAN ディーン』(2001)でゴールデングローブ賞を受賞したジェームズ・フランコなど実力派キャストが出演しています。
平凡な高校生、ピーターが突然、超人的な能力に目覚め、次第にニューヨークを守るヒーローへと成長していく姿を描き、その過程で経験する別れや葛藤など深い人間ドラマも必見です。
映画『スパイダーマン(2002)』のあらすじとネタバレ
ニューヨークに暮らす平凡な高校生、ピーター・パーカー(トビー・マグワイア)は隣に住む少女、MJことメリー・ジェーン・ワトソン(キルステン・ダンスト)に淡い恋心を抱きながらも、その想いを打ち明けられず、学校ではいじめられるさえない日々を過ごしていました。
そんなある日、社会見学で訪れた研究所で逃げ出した蜘蛛に嚙まれてしまいます。
その蜘蛛は遺伝子組み換えを行い人工的に多くの能力を付加させる実験用のスーパースパイダーと呼ばれる蜘蛛で、ピーターは体に異変をきたし、その夜、熱にうなされます。
翌朝、目覚めたピーターは驚くべき運動神経や、異常なまでに発達した五感、手首からは糸が飛び出し、壁も難なく登れる超人的能力を手に入れていました。
浮かれるピーターをよそに、親代わりである叔父のベン(クリフ・ロバートソン)と叔母のメイ(ローズマリー・ハリス)はピーターの変化を不安に思っていました。
その頃、ピーターの親友ハリー・オズボーン(ジェームズ・フランコ)の父、ノーマン・オズボーン(ウィレム・デフォー)は自身が経営するオズコープ社が開発している身体強化薬の研究が行き詰っており、早々に成果を出さなければ軍から融資を受けられなくなり、焦っていました。
ノーマンは研究者たちの反対を押し切り、未完成の身体強化薬を自身に投与、成果を軍にアピールしようとします。
しかし、薬を投与されたノーマンは凶暴化、投与に立ち会った研究員を殺害しますが、翌朝、自室で目覚めたノーマンは前夜の記憶がありません。
その頃ピーターはMJの気を引くため、自動車を購入する資金を工面するため、新聞で知った賭けプロレスへの参加を決意します。
プロレス当日、図書館へ行くと偽り、出かけようとするピーターを車で送るベンは最近様子がおかしいピーターを気にかけますが、ピーターは心無い言葉をベンに投げかけてしまいます。
ベンと別れたピーターは賭けプロレスに参加、見事、勝利しますが、賞金は思っていた額より少なく、主催者の態度もそっけないことに腹を立てます。
その時、男が現れ、賭けプロレスの売り上げを強奪、ピーターは男を止めることが出来ましたが、主催者への腹いせから止めませんでした。
会場を出たピーターは人だかりの真ん中で、何者かに銃撃されたベンが倒れており間もなく息を引き取ります。
ピーターはベンを殺害した犯人を探し、それらしき男を追い詰めます。
その男は、プロレス会場でピーターが見逃した男で、不慮の事故で男は死亡しますが、ピーターは自身の行動次第でベンは死なずに済んだのではないかと考えます。
その後、ピーターはベンの残した「大いなる力には大いなる責任が伴う」という言葉を胸に、スーツを纏い、ニューヨーク市民の平和を守る自警活動を行います。
ピーターはいつしか市民から「スパイダーマン」と呼ばれていました。
映画『スパイダーマン(2002)』の感想と評価
アメリカンコミックにおいてはいわずと知れたスーパーヒーロー「スパイダーマン」を実写映画化した本作、『スパイダーマン』。
かつては、テレビドラマ化されたものの、コミックスとは裏腹に、人気が出ることはなく、多くのファンから望まれながらも、長らく映画化されることがありませんでした。
しかし、90年代からのVFXによる映像技術の進歩もあり。2002年に公開された本作はそれ以前のアメコミ実写化作品とは一線を画すものとなり、大ヒットを記録しました。
その恩恵を最も受けたていたのが、物語のエンディングでスパイダーマンがニューヨークの街を縦横無尽にスイングするシーンです。
スパイダーマンの象徴であるスイングを、迫力のある映像で実写化されており、ファンからはこのシーンだけでも価値があると言わしめるほどでした。
反面、バトルシーンはVFXの効果を存分に使いながらも、生身のスタントマンのアクションを基軸にしており、リアリティを追及し、作品の説得力を持たせています。
その最たるは、MJが暴漢たちに襲われる場面です。スパイダーマンが身軽に飛び交い格闘する様子は生身の人間相手だからこそのもので、VFXに頼らず、人間を超えた動きを追求しようとする製作陣の意気込みが感じらえる場面となっています。
ストーリーにおいても、平凡な高校生、ピーターが、突然、超人的な能力に目覚めたことによる愉悦から、叔父、ベンが命を失う間接的理由を作ってしまった罪悪感、自己嫌悪、そしてヒーローとしての使命に目覚めるも、一人の人間として日々心が揺れ動く様子が伺われます。
単純にヒーローが活躍する内容に終始せず、どんな能力を持っていても一人の人間であるということにスポットを当て、深い人間ドラマが描き出されています。
とりわけ、MJを巡るピーターと親友、ハリーの三角関係は見る人にそれぞれ内に秘めた感情が交錯し深い恋愛事情を描いており、それぞれの人間性を表現していました。
また、出演しているキャストたちも、それぞれ、高い演技力で各々のキャラクターを表現し作品に華を添えていました。
とくに、本作のヴィラン、グリーンゴブリンことノーマン・オズボーンを演じたウィレム・デフォーの演技は圧巻でした。
普段は優秀な実業家として、自信に満ちた様子を演じていましたが、ひとたびグリーンゴブリンが姿を現すと、残忍な笑みを浮かべる変幻自在ぶりを見せています。
中でも、何も知らないノーマンにグリーンゴブリンが語り掛け、鏡越しに会話する場面は怯えるノーマンと、方や怪しく唆すグリーンゴブリンの様子は、本当に同じ俳優が演じているのかと疑いたくなるほどで、全く違うキャラクターを演じ分けるウィレム・デフォーに圧倒されます。
それらさまざまな要素が混ざり合い、本作『スパイダーマン』は広く愛される作品となったのではないでしょうか。
まとめ
2022年現在、マーベルスタジオが製作し様々なヒーローが交錯し活躍する一大ブランド、マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)は発表される作品のことごとくが大ヒット、世界を席巻し続けています。
MCU以外にも、さまざまなスーパーヒーロー映画が世に放たれる昨今において、かつて、映画界で煙たがられていたことなど噓のようです。
そんな、現在に間違いなく多大な影響を与えているのが本作『スパイダーマン』なのではないでしょうか。
映像技術の発展や原作人気などの要因もありますが、本作はスーパーヒーロー作品=子供向けではなく、ヒーローであるが故の苦難と人間であることの苦悩、それらの狭間で揺れ動く特別な力を持ったどこにでもいる青年、ピーター・パーカーの“等身大のヒーロー像”が多くの人々に共感され、従来のスーパーヒーローのイメージを覆したことが本作の最大の功績なのかもしれません。