突如現れた彗星による地球最後の48時間を描くディザスタームービー
映画『グリーンランド-地球最後の2日間-』は、別の太陽系からやってきた彗星が隕石となって地球に降り注ぐという、いわゆるパニック作品。大惨事など突然の異常事態に立ち向かう人々を描くジャンル映画です。
あと2日で地球が滅びるとしたらあなたはどうしますか?
この映画の主人公たちは一般的な家族。苦悩する大統領でも、世界的な科学者でも、屈強な軍人でもない市井の人々が、考える暇もなく命の危険にさらされたときどうするのか。人間の善と悪がからみ合う極限状態で奔走する主人公たちを描くディザスタームービーです。
映画『グリーンランド-地球最後の2日間-』の作品情報
【公開】
2020年(アメリカ映画)
【監督】
リック・ローマン・ウォー
【キャスト】
ジェラルド・バトラー、モリーナ・バッカリン、デビッド・デンマン、ホープ・デイビス、ロジャー・デイル・フロイド、アンドリュー・バチェラー、メリン・ダンジー、ホルト・マッキャラニー、スコット・グレンほか
【作品概要】
『300 〈スリーハンドレッド〉』やシークレット・サービスのマイク・バニングを演じた「エンド・オブ・ホワイトハウス」シリーズで知られるジェラルド・バトラー。
製作にも名を連ねる彼が、『エンド・オブ・ステイツ』でも一緒に仕事をしたリック・ローマン・ウォー監督と再びタッグを組んだのがこの作品。
『2012』『ヒューゴの不思議な発明』などで知られるPXOMONDOがVFXを手掛け、日常風景に突然訪れる大災害をリアルに表現しています。
映画『グリーンランド-地球最後の2日間-』のあらすじとネタバレ
建築技術者のジョン・ギャリティは、週末を別居中の妻子と過ごすため早退して自宅のある高級住宅街へと向かいます。
早く着きすぎたため妻アリはご機嫌ななめですが、帰宅した息子ネイサンは父の姿に大喜び。ふたりは接近中の彗星クラークの話で盛り上がります。両親の復縁を心から願っているネイサンは糖尿病を患っていました。
翌日、近所の友人たちを招いたパーティのためジョンはネイサンを連れて買物にでかけます。すると突然ジョンのスマホだけがけたたましい音をあげました。それは「大統領アラート」で避難を指示するものでした。
急いで帰宅すると家には友人たちがすでに到着しており、これから始まる隕石の“天体ショー”をテレビで見ようとしています。バミューダ海域を映したカメラには何の変化もありませんが、突然地鳴りのような音が響き渡ります。
外に出たジョンを衝撃波が襲い、テレビのニュースはフロリダの中心部タンパにスタジアム位の大きさの隕石が落ちたと伝えています。すると再びジョンのスマホと家のテレビがアラートを受信し、ギャリティ家の3人が最優先避難者に選ばれたと伝えます。
友人たちはあわてて自宅へと戻り、ジョンとアリは荷造りを始めます。ネイサンのインスリンを忘れないよう準備して車に乗り込むと、近所の住民たちは選ばれていないらしく外でただ空を見上げていました。
隣人のエドと一悶着あってから走り出そうとすると、ネイサンの一番の仲良しであるエリーの母デボラが立ちふさがります。「エリーだけでも連れて行って!」と懇願するデボラを必死で振り切りジョンは車を出すのでした。
アリは故郷の父に電話するもつながらず、ハイウェイは渋滞のためジョンは一般道をひた走ります。
目的の空軍基地近くに着いた3人が車を降りてゲートへ向かうとそこには多くの人が殺到しており、ようやく入れた3人はリストバンドをつけられ絶対になくさないよう忠告されます。
荷物は一家族1バッグと制限されているので整理しているとインスリンが入っていないことが判明。車内に落としてきたことがわかり、ジョンが離陸までの15~20分以内に取ってくると言って走り出します。
なかなか戻らない夫を心配しアリが兵士に事情を話すと、病人は搭乗できない規則だと別室へ連れて行かれてしまいます。
あわてたアリは食い下がりますが決定はくつがえりません。そうとは知らないジョンはアリたちが乗っていると思われる輸送機に乗り込みます。
病人は乗れないということを知ったジョンは閉まりかけた出入口を開けてもらい外に出ます。すると敷地外から大勢の人々が乱入し兵士と銃撃戦が勃発、漏れ出た燃料に引火し輸送機が爆発してしまいました。
そのころアリとネイサンは車に戻り、ジョンに「おじいちゃんの家で落ち合おう」とメモを残して歩き始めます。
ドラッグストアを見つけ中に入るとごく普通の人たちが商品を持ち去っています。アリがネイサンの数値をはかりインスリンを手に入れていると突然銃声が響きわたり、ストリートギャングたちが入ってきました。
躊躇なく他人を射殺し略奪をする男たち。アリたちはひとりの若者に見つかってしまいますが、彼はネイサンを見て逃してくれました。外に出ると、同じく中から出てきた女性の車に乗せてもらうことができました。
運転手は女性の夫でふたりは親切でしたが、夫の方は選ばれた避難者をよく思っていないようでした。
アリのメモを見たジョンもまた、義父の住むレキシントンに向かって歩き始めます。北へ向かうトラックに乗せてもらったジョンは、リストバンドに気づいた若い黒人男性に職業を聞かれます。彼は、医者など役に立つ職業の人が選抜されているのだと言います。
そのトラックはグリーンランドにあるシェルターに向かう飛行機が飛び立つカナダの空港に向かっているといい、一緒にと誘われますがジョンは家族をさがすからと断ります。
一方アリは、リストバンドを奪われ車から下ろされていました。ふたりを乗せてくれた夫婦はネイサンを連れ去り、家族と偽装して避難する魂胆です。ハイウェイ上で半狂乱になって叫ぶアリ。
ジョンも会話を聞いていた男たちに襲われます。リストバンドをよこせ、と小型ハンマーで脅してくる男に応戦し荷台は大乱闘に。トラックは大きく揺れ、荷台に乗っていた全員が車外に投げ出されてしまいます。
いち早くハンマーを手にとったジョンはふたりの男に狙われますが、振り回すうちにひとりを殺してしまいます。放心状態で歩くジョンの前に、助けに入ってくれたあの黒人男性の遺体がありました。ジョンはインスリンを拾ってその場を離れます。
通りがかりの車に拾われたアリはその先にある基地へと向かいます。ネイサンを誘拐した夫婦は基地のゲートでなんとか入れてもらおうと交渉しますが、ネイサンの「ぼくの親じゃない!」という告発によって捕らえられ、ネイサンは保護されます。
渋滞のため車を降りたアリは基地まで走り、必死に事情を説明して児童が保護されているテントへ探しに行くことが許可されます。いくつものテントを探しようやくアリはネイサンを見つけました。
手厚く処置されたネイサンは元気そうで、医師の計らいで一週間分のインスリンをもらいレキシントン方面へ向かう軍のバスに乗せてもらえることになりました。
映画『グリーンランド-地球最後の2日間-』の感想と評価
ディザスター映画はあまたありますが、これほど普通の人に特化した映画はなかったのではないでしょうか。
なんの予備知識も備えも覚悟もない多くの人々が、突然の災難にどう行動するのか。リアリティのある主人公を中心に、人間の善と悪をイヤというほど見せつけられるのです。
完全な善、完全は悪はほとんどなく、それぞれの人の中に両方が存在しています。
そして極限状態でそれは最善、最悪の形で発現します。いつも親切にしてくれる友だちからの非難、車イスの母を連れての略奪、心やさしいストリートギャング、人助けしたあとの誘拐……。
まるでジェットコースターのようにギャリティ一家には希望と絶望が訪れ、観る側は少しも休む間を与えられません。終始緊張しっぱなしです。
面白いのは、結果的に主人公が望むように事が運んだとしてもそれは必然ではなく偶然、いつ何時うまく行かない側になったとしてもおかしくないという教訓を含ませているところです。
なぜギャリティ一家が選ばれたのか本当のところはハッキリとせず、あっさりと病気を理由に反故にされてしまったり、車に乗せてもらえたのに襲われたり、家族のために人に迷惑をかけて乗り込んだ飛行機から乗れなかった人々を見ることになったり。観る側のメンタルが試されます。
まとめ
ジョンはかつて浮気をしてアリを悲しませました。アリの態度や義父の言葉からして復縁は無理かと思われましたが、元来真面目で責任感の強い彼は全力で家族を守ろうと奔走します。その結果、家族の絆はより強固なものとなりました。
大きな困難を前に希望を捨てず他者を尊重することはなかなかできることではありません。大きな災害時には略奪や対立などが起こるのも現実です。
きれいごとかもしれませんが、ジョンや軍人たちのように非常時でも尊厳を失わず他者を思いやれる人間でありたいと強く思わされた映画でした。