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Entry 2019/09/20
Update

映画『アドアストラ』あらすじネタバレと感想。ラストでブラピ演じる宇宙飛行士は父親を救えるのか!?

  • Writer :
  • もりのちこ

人類が宇宙に旅立つ時代。
進化する時代の中で変わらないものとは。

ブラッド・ピット率いる製作会社PLAN Bが手掛けた映画『アド・アストラ』。宇宙を舞台に衝撃の救出ミッションを描く、壮大なスペース・アクション映画です。

ブラッド・ピット自ら、初の宇宙飛行士役に挑み、父親との確執を乗り越え、危険な救出作戦に向かう主人公ロイを演じます。

100年後の地球。人類は、月へ旅行し、火星での暮らしも始まっています。遠い未来のようでいて、もうすぐそこまで来ている宇宙への旅。

テクノロジーの進化で未来は大きく変われど、変わらないものもある。2019年9月20日公開の映画『アド・アストラ』を紹介します。

映画『アド・アストラ』の作品情報


(C)2019 Twentieth Century Fox Film Corporation
【日本公開】
2019年(アメリカ映画)

【監督】
ジェームズ・グレイ

【製作】
PLAN B

【キャスト】
ブラッド・ピット、トミー・リー・ジョーンズ、ルース・ネッガ、リブ・タイラー、ドナルド・サザーランド

【作品概要】
壮大なスペース・アクション映画『アド・アストラ』のプロデュース担当は、一流のクオリティを誇る作品を世に出してきた、ブラッド・ピット率いる製作会社PLAN B。

そのブラッド・ピットが、自ら初の宇宙飛行士役に挑みます。宇宙で消息を絶った父親役に、日本のCMでもお馴染みトミー・リー・ジョーンズ。さらに『アルマゲドン』のリヴ・タイラーが妻役で登場。

監督は『リトル・オデッサ』でベネチア国際映画祭銀獅子賞を受賞し、カンヌ国際映画祭の常連、ジェームス・グレイ監督。

映画『アド・アストラ』のあらすじとネタバレ


(C)2019 Twentieth Century Fox Film Corporation

近い未来。人類は地球と月と火星を行き来し、さらなる宇宙の開拓を進めていました。

宇宙飛行士のロイ・マクブライドは、地球外生命体の探究に人生を捧げた宇宙科学者の父クリフォードの後を追うように自らも宇宙飛行士の道を選びました。

宇宙飛行士たるもの何事にも動じないメンタルの強さが求められます。常に行う心理検査では一度も心拍数が乱れたことはありません。

それは、仕事の事故でかなりの高度から投げ飛ばされた時も、妻が出て行った時も、ロイの心は乱れることはありませんでした。

しかしロイの本当の心はいつも悲しみに泣いているようでした。

ある日、ロイは宇宙軍の上司に呼び出され、最高機密を命じられます。その任務とは、生前父親が取り組んでいた「リマ計画」に関わるものでした。

地球外生命体の探索に火星から海王星を目指した父クリフォード。その途中で消息を絶っていた父が生きているというのです。

しかも、父が乗っていた宇宙船が原因で人類を滅ぼすほどの大規模なサージが起こっているとのこと。宇宙軍は、ロイに火星のハブから父親へのコンタクトを試みることを命じます。

ロイの監視役として付き添うのは、父クリフォードと親交があったトム・プルーイット大佐です。大佐はマクブライド親子を心配していました。

火星までの道のりは、地球から月を経由して向かいます。月への飛行は、簡単なものでした。月のステーションには多くの観光客が訪れにぎわっています。

月から火星へのロケット打上台までは、外の治安が乱れているため軍の援軍が付きます。月の表面を車で走る一行。真っ黒な空に、青い地球が浮かんでいます。

突然、謎の車が数台、姿を現し追いかけてきます。略奪目的の盗賊です。銃で撃たれ命からがら逃げ切るも、トム大佐の不整脈が止まらなくなってしまいます。

ここからは進めないと判断したトムは、ロイに父の生存の証拠を渡し「宇宙軍はお前を良く思っていない」。と忠告します。

月を経ち、火星に向かう途中。クルーの皆は任務を知らずお気楽な様子です。そこに他の船からの救難信号が届きます。

ロイの静止を押し切り、船長は船の救出に向かいます。船内に侵入するロイと船長。生物医学の研究で動物実験をしていたであろう船内は、何者かに切り裂かれたような跡が残っていました。

二手に分かれたはずの船長が浮いて震えています。近づくロイに、その背後から飛び出してきたのは、凶暴化したサルでした。サルは船長を食いちぎり、ロイに襲い掛かります。

扉を封鎖し、サルを撃退したロイでしたが、船長の命は助けられませんでした。死体は宇宙の闇へと放たれます。

心理検査では、抱えきた父への怒り、心を開き人を思いやることが出来ない自分への苛立ち、ロイの不安な気持ちが初めて語られます。

火星に到着したロイを迎えたのは、火星生まれの所長ヘレン・ラントスでした。しかし、彼女も知らされていない宇宙軍極秘の任務がすでに遂行されていたのです。

以下、『アド・アストラ』ネタバレ・結末の記載がございます。『アド・アストラ』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)2019 Twentieth Century Fox Film Corporation

火星のハブでロイは、宇宙軍の支持で父親に向けメッセージを送り続けます。父は何を見つけたのか?精神を病んでしまったのだろうか。

ロイは決まった原稿を読み上げるのにうんざりしていました。自らの言葉で父に語りかけるロイ。「もう一度会いたい」。

ガラスの向こうの通信室に何やら動きがありました。父からの反応が返ってきたのかもしれない。問いただすロイに宇宙軍は、任務は終了し地球に帰る時だと告げます。

納得のいかないロイの元に、ヘレンがやってきます。彼女の父もまた、ロイの父親と共に「リマ計画」に参加していました。

ヘレンは、リマ計画の結末を明かします。そこには父クリフォードからの最後の通信が写っていました。

父が乗った船のクルー達は、地球との距離と無重力の生活に限界が来ていました。心理的なストレスは反乱を起こします。

先に進み地球外生物の探索を進めたい父と、地球に帰りたいクルー。父は船を乗っ取られそうになり、やむを得ない選択にでました。乱闘で皆を殺してしまった父。

宇宙軍の作戦は、父との連絡を取ることではなかったのです。場所を突き止め、リマ計画の船ごと爆発させ、サージを止めることでした。

「あなたも責任を取る必要がある」。ヘレンは、ロイをこっそり海王星行きの船に潜り込ませます。

見つかったロイはクルーを説得するも、軍の命令で始末されそうになります。乱闘になり、穴が開いた船内でヘルメットをかぶっていなかったクルー全員が死んでしまいます。

結果、父と同じことをしてしまったロイ。父との再会と任務を果たすため、ロイは海王星を目指します。

地球から43憶キロ。無重力が体力的にも精神的にもこたえます。襲い来る孤独感。出口のない暗闇の中をさまよい続けます。

目の前に、何層かの環をまとい青白く浮かぶ星、海王星が現れます。その側には、リマ計画の船が、サージを生み出しているようです。

移動の小型船で近づき、船内に侵入するロイ。船内には遺体が浮かんでいます。船に爆弾を設置しようとしたその時。「ロイ?」。自分を呼ぶ声。父・クリフォードでした。

「父さん一人かい?」。「あぁ、ずっと一人だ」。父は死なせてしまったクルー達のことを嘆きます。

「一緒に帰ろう」と手を差し伸べるロイに、父は「ここが家だ」。と動こうとしません。「地球には何もない。ここに私は運命を見つけたのだ。だから、妻も息子も捨てた」。科学者としての執念がここまで彼を生かしていたのです。

「それでも、愛してる」。ロイは怯える父を優しく導きます。船内に時限爆弾を設置し、帰りの船に戻る親子。

しかし、途中で父は自ら手を放し宇宙へ残ることを選択します。諦めず放そうとしないロイに、父は懇願するかのように「放せ」。と言います。

宇宙服越しに見つめ合うロイとクリフォードの距離が離れて行きます。無重力のなか回る体をそのままにロイは叫びます。その叫びも宇宙に飲み込まれていきます。

地球に戻ったロイは、宇宙飛行士を続けています。心理検査では、いつもの正常値が出ています。しかしロイは今までには感じられなかった心情を語ります。

「先の事はわからない。でも心配はしない。身近な人に心を委ね、苦労を分かち合う。そして、いたわり合う。私は生き、愛する」。

そこには、扉を開け歩み寄ってくる、妻イヴの姿がありました。

映画『アド・アストラ』の感想と評価


(C)2019 Twentieth Century Fox Film Corporation

壮大すぎるスペース・アクションに驚きが止まりません。宇宙を夢見ていた時代は終わり、宇宙に行くことが可能な現代だからこそ感じるリアリティ。

人類はまさに、サイエンス・フィクションからサイエンス・ファクトを体験する時代になりました。

かなりの高度からの落下、月面でのカーチェイスに、宇宙船での乱闘など、今まで見たこともない映像に緊張が走ります。気付くと足を踏ん張っている状態です。映像は無重力の映像なので可笑しな気分です。

まだ宇宙空間を体験したことがないにも関わらず、ヘルメット越しに聞こえる息遣いや、ノイズの混じった通信音、宇宙での爆発音が、自分が体験しているかのような臨場感を与えてくれます。

また、意外にも宇宙飛行士役は初となるブラッド・ピットの演技に惹き込まれます。

どんなトラブルにも慌てない平常心と、不屈の精神力を併せ持った宇宙飛行士ロイ。その反面、人に心を開けず孤独を抱えています。

ブラッド・ピットの笑顔を封印し、憂いを帯びた悲し気な演技に孤独感を一層感じます。

感情を押し殺し気丈に振る舞う演技も、父との対面を前に気持ちが揺れる様も見事に表現しています。

また、ロイの父親・クリフォード役のトミー・リー・ジョーンズにも注目です。自分の探究のためなら家族も捨て、仲間も顧みない宇宙科学者が、長い孤独の末に息子に見せた姿が切なく、印象に残ります。

そしてさらに注目なのが、主人公ロイの妻・イヴ役のリヴ・タイラーの美しさ。ロイが宇宙で孤独に押しつぶされそうな時、イヴと過ごした日々が思い出されます。彼女との幸せな日常が、宇宙の暗闇の中、とても輝いて見えます。

日本では宇宙人としてCMで活躍するトミー・リー・ジョーンズ。『アルマゲドン』での役と重なるリヴ・タイラー。偶然なのか必然なのか?宇宙に縁のあるキャストが揃いました。

映画『アド・アストラ』は、第76回ベネチア国際映画祭に正式出品が決定しています。また、アカデミー賞最有力の呼び声も高く期待される作品です。

まとめ


(C)2019 Twentieth Century Fox Film Corporation

ブラッド・ピット主演の壮大なスペース・アクション大作『アド・アストラ』を紹介しました。

100年後の未来を描いた『アド・アストラ』ですが、人類の宇宙への未来はそう遠くないかもしれません。

テクノロジーが進化し人類が宇宙に旅立つ時代となっても、人類は人を愛する心を失ってはいけない。人は孤独では生きていけないのです。

「未だかつて誰も観たことのない作品を創る」と、ジェームズ・グレイ監督が覚悟を持って作り上げた映画『アド・アストラ』。ぜひ、大画面で、体験したことのない宇宙の旅を体験してください。

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