映画『アリータ:バトルエンジェル』2019年2月22日よりロードショー
日本の名作SFコミック『銃夢』を、『アバター』のジェームズ・キャメロンが完全映像化!
意外な驚きを与えてくれた本作、映画『アリータ:バトルエンジェル』には見どころがたくさん詰まっています。
2019年2月22日(金)より公開の映画『アリータ:バトルエンジェル』の、先行レビュー解説をお届けします!
CONTENTS
映画『アリータ:バトルエンジェル』の作品情報
【公開】
2019年(アメリカ映画)
【原題】
ALITA:Battle Angel
【監督】
ロバート・ロドリゲス
【脚本・製作】
ジェームズ・キャメロン
【キャスト】
ローサ・サラザール、クリストフ・ヴァルツ、ジェニファー・コネリー、マハーシャラ・アリ、キーアン・ジョンソン、ジャッキー・アール・ヘイリー
【作品概要】
木城ゆきとの近未来SFコミック『銃夢』を、『タイタニック』(1997)や『アバター』(2009)といったメガヒット作を放ってきたジェームズ・キャメロンが脚本・製作し映画化。
キャメロンが製作・脚本を担当し、監督を『フロム・ダスク・ティル・ドーン』(1996)や、『マチェーテ』(2010)のロバート・ロドリゲスが務めます。
主人公のサイボーグ少女アリータ役には、『ダイバージェントNEO』(2015)、『メイズ・ランナー2:砂漠の迷宮』(2015)の若手女優ローサ・サラザールが抜擢。
そのほか、『ジャンゴ 繋がれざる者』(2013)のクリストフ・ヴァルツ、『ビューティフル・マインド』(2001)のジェニファー・コネリー、『ムーンライト』(2017)のマハーシャラ・アリといったオスカー俳優が、脇を固めます。
映画『アリータ:バトルエンジェル』のあらすじ
300年ほど前に起こった大きな戦争により、世界が天と地の2つに分かれた未来。
空中に浮かぶユートピア都市〈ザレム〉には“支配する者”、一方の地上にある荒廃都市〈アイアンシティ〉には、“支配される者”が、それぞれ暮らしていました。
ある日、アイアンシティに暮らすサイバー医師のダイソン・イドは、クズ鉄の瓦礫の中から、300年前のサイボーグ少女の頭部を発見します。
イドは、彼女にアリータと名付け、新しい機械の身体を与えます。
再び動き出したアリータは、過去の記憶をすべて失っていましたが、イドや修理工の青年ヒューゴとの出会いで、次第に人間らしい感情が芽生えていきます。
その一方で、自分に類まれな戦闘能力が備わっていることにも気づくのでした。
その頃、アイアンシティでは若い女性が殺される事件が多発。
その事件をきっかけに、アリータは自身が生み出された経緯を知ることに。
やがてそれは、周囲を巻き込んだ新たな戦いへとつながっていくこととなります…。
原作となったコミック『銃夢』とは
木城ゆきと「銃夢」新装版が刊行開始、「銃夢火星戦記」6巻も同時発売https://t.co/p0icS4X3fp pic.twitter.com/eX58xoNzhi
— コミックナタリー (@comic_natalie) 2018年11月21日
本作『アリータ:バトルエンジェル』の原作は、1990年から1995年までビジネスジャンプ(現在は休刊)で連載されていた、木城ゆきとの『銃夢』です。
その斬新かつ創造的な世界観は、瞬く間に読者を魅了。
その中の一人が、『シェイプ・オブ・ウォーター』(2018)でアカデミー賞を獲得した、日本のマンガやアニメ好きで知られるギレルモ・デル・トロ監督でした。
25年前にデル・トロから『銃夢』を勧められたというジェームズ・キャメロンは、「先進的であり、美しくも恐ろしい驚異的な作品」と、すぐさま映画化権を取得。
1994年ごろから映画化のオファーを多数受けていたという原作者の木城は、当時「もしキャメロンが映画化したいと言ってきたらどうする?」と冗談交じりに編集者と言い合っていましたが、まさかそれが現実になるとは夢にも思っていなかったそう。
なお、木城は今回の映画版について、「マンガで表現できなかったことを高度に描き出している」と評し、加えて、「ありがとう!これが僕が30年前に観たかった映像だ!」と最大級の賛辞を寄せています。
可愛くて強い!アリータの魅力が全開!
『銃夢』の映画化が本格始動した際に発表された、大きく澄んだ目を持つアリータのビジュアルを見て、驚かれた人もいたと思います。
非人間のサイボーグとはいえ、「目が大きすぎて不気味すぎないか?」と感じた人が多かったのでは。
しかし、いざ映画を観ると、そうした不安は杞憂に終わると思います。
次第に人間らしさを身に付けて、喜怒哀楽を表情豊かに表していくアリータが、実に可愛らしく見えてきます。
食事をする仕草や、肌の質感や髪の毛のサラサラ具合など、どれを取ってもアリータが本当に存在するのではと錯覚してしまうほど、魅力的に描かれているのです。
キャメロン監督の『アバター』に登場するナヴィ族のネイティリも、やはり観続けていくに従い可愛く感じていったように、こうした人物表現力の素晴らしさは、『アバター』も含めて通算6度のアカデミー賞最優秀視覚効果賞に輝く、WETAデジタルならではと言えます。
また、パンツァークンスト〈機甲術〉と呼ばれる古武術を使うアリータの、華麗な身のこなしによるアクションも見どころの一つ。
特に、サーキット場でボールを奪い合う格闘球技「モーターボール」のシーンは、パフォーマンス・キャプチャーと呼ばれる最新技術を駆使した、ハイスパートなアクションに目を奪われることでしょう。
参考映像:『アリータ:バトルエンジェル』製作の舞台裏
インパクト絶大なビジュアルから目が離せない!
『アリータ:バトルエンジェル』の登場人物やあらすじ設定は、細かい部分で変更はあるものの、原作の『銃夢』を踏襲しています。
『銃夢』はその世界観もさることながら、強烈なビジュアルが話題となった作品。
監督のロバート・ロドリゲスは過去に、原作であるグラフィックノベルをそのまま映像化した『シン・シティ』(2005)を手がけて、高く評価されました。
今回ロドリゲスが監督に起用されたのも、原作の特長をそのままスクリーンにトレースできる手腕を買われたから…そう勘ぐってしまうぐらい、『アリータ:バトルエンジェル』では、ビジュアルのインパクトが際立っています。
『銃夢』を読んでいれば、「あの名場面を再現している」と喜ぶ方もいるでしょうし、まだ読んでいない方は、インパクトの強い映像群に驚かれるのではないでしょうか。
まとめ
ディストピア映画の新たな代表作
混沌とした未来世界を描いた、いわゆるディストピア作品は、過去にたくさん作られています。
代表的なところだと『ブレードランナー』(1982)や『未来世紀ブラジル』(1985)、マンガの『GANTZ』や『進撃の巨人』なども該当するでしょう。
それこそ、キャメロンの出世作『ターミネーター』(1985)も、ディストピア作品の一つと言えます。
『アリータ:バトルエンジェル』も、世界観自体は、一連のディストピア作品と変わり映えしないかもしれません。
しかし、原作『銃夢』が描かれたのは1990年ですが、テーマとしては少女アリータ(原作での名はガリィ)の成長・自立という、現代社会にも通じる普遍的要素があります。
何も知らない主人公アリータが、幾多の困難を経て、善悪とは何か、愛とは何かといった事を学んでいきます。
また、原作よりもイドとアリータの“親子愛”を強めているのは、脚本のキャメロン自身、執筆時に13歳の娘がいたことが大きく影響したからと語っています。
このあたり、ターミネーターとジョン・コナー少年との“疑似親子”関係を描いた、『ターミネーター2』(1991)を連想させるのが面白いところです。
映画『アリータ:バトルエンジェル』は、これまでのディストピア作品の特徴を内包しつつ、少女の成長物語でもあるという点においても見逃せない一本だと断言します!