『ブエノスアイレス』『恋する惑星』など、映画史に燦然と輝く傑作を多数撮ってきた世界的撮影監督クリストファー・ドイル。
彼が監督を務めた映画『宵闇真珠』(よいやみしんじゅ)が12月15日(土)にシアター・イメージフォーラムほかで全国順次公開。
香港の片隅にある漁村を舞台に村を訪れた異邦人との出会いにより、世界を知る少女の物語を描いた映画『宵闇真珠』。
ジェニー・シュンとともに共同監督を務めた世界的撮影監督クリストファー・ドイルのインタビューと、彼について語るオダギリジョー、主演を務めた新人女優アンジェラ・ユンのコメントが解禁となりました。
CONTENTS
世界的撮影監督クリストファー・ドイル
1990年代に香港映画ブームを巻き起こしたウォン・カーウァイ監督の『欲望の翼』や『恋する惑星』。
それらの作品で、クリストファー・ドイルが行った手持ちのズームカメラでの撮影は一躍有名となりました。
映画の内容によって、スタイリッシュな画面構成や色彩構成を行うことで、常に時代の先を行く映像を届けてくれます。
幼少期には日本文学を多読するなど、日本にも造詣が深いクリストファー・ドイル。
そんな彼が今回共同監督として関わった『宵闇真珠』は、広東語、北京語、英語、日本語が飛び交う、国際色豊かな作品となっています。
クリストファー・ドイルの『宵闇真珠』に迫る
女優を美しく撮るという愛情表現は、セックスよりも素晴らしい!?
そんな彼独特の表現をした世界的巨匠クリストファー・ドイルに迫ります。
クリストファー・ドイル本人が語る
クリストファー・ドイルは、何年間も待って出会った逸材と評するアンジェラ・ユンについて、独自の理論を次のように語りました。
「ライトやカメラで女優を美しく撮る、そうすることで彼女達を祝福するのが私の仕事です。それは自分にとってひとつの愛情表現で、セックスよりも素晴らしいも素晴らしい(笑)。ほかの女優たちと同じようにアンジェラとの間には信頼関係があって、それは日常生活で得られるものとは全然違う関係でした。私が女優を愛することで、彼女の気持ちが私に伝わって、それを映像で表すことができるんです」
愛情表現は数々ありますが、“美しく撮り、祝福する”とは独特の表現方法ですね。
今回、共同監督としても参加したクリストファー・ドイルは演出について、オダギリジョーやアンジェラ・ユンに極力演技をしないように演出したと語り、2人について、このように評価しました。
「特別なエネルギーを持っていて、歌舞伎役者のような大きい演技はしなくても、ただそこにいるだけで映画になってしまう役者がいます。そういう役者と、良い空間、良いストーリーがあれば映画になる。」
“雰囲気だけで画になる”ということでしょうか。主演2人から醸し出される雰囲気が、うまく映像とマッチしたんでしょうね。
良い空間といえば、映画の舞台となった漁村(大澳)からはすごく刺激を受けたと語り、次のように続けました。
「自分にとって空間はとても重要です。私は映画の撮影技術をちゃんと勉強したことはありませんが、いろんな国を旅して、その土地や空間からエネルギーや物語を感じるという経験を積んできました。カメラの技術というよりは、その場所のエネルギー、“気”みたいなものを感じることがすごく大切なんです。映画というのはエネルギーをシェアするものであって、技術的なものではないと思います」
エネルギーをシェアすることで、映画の雰囲気や物語を感じる。土地や空間を感じる。
だからこれまでの映画でも、スタイリッシュな映像でその土地を間近に感じられる映画を撮り続け、今回の映画でも、舞台の漁村が間近に感じられるんですね!
さらに、これから映画を見る日本のファンに向けて、真剣な表情でこう語りました。
「誰もが〈本当の自分をわかってほしい〉という願いを持っています。すべての女性の心の中に、この物語の少女がいるんじゃないでしょうか。青年は少女のことを〈君は特別だ〉と言って去ってしまいますが、それは彼女がとり残されて一人になるということではなく、しっかり自分と向き合えるようになるということなのです。そして、それがすごく難しいことだということを、この映画を観て感じて欲しいですね」
心に残る映像美と、心に残るセリフ。
クリストファー・ドイル監督のエネルギーをぜひ劇場でシェアしてもらいたいです。
オダギリジョーが語る
「僕たちの世代からすると、ウォン・カーウァイとクリストファー・ドイルって避けては通れない存在なんですよね。1990年代の映画の象徴というか、彼等の映画から本当にたくさんの刺激や影響を受けました。クリス(クリストファー・ドイル)の現場は、即興的なものやハプニングも含めて何でも受け入れて楽しむような、とっても自由で創造性豊かな現場でした」
主演を務めたオダギリジョーは、中高生の多感な時期に一番刺激を受けたという香港映画。
欧米諸国の映画とは違い、懐かしさと刺激的な映像が、今見ても斬新に見えてきます。
そんな映画の撮影を行なってきたクリストファー・ドイルとの現場は、きっと刺激的だったんだと思います。
アンジェラ・ユンが語る
「私は台本に従って演技をするだけですが、クリストファー・ドイル監督はライティングについて試行錯誤を繰り返していました。例えば、どの紙が最も光を効果的に映し出し最高の結果を出すか、様々な紙にライトを当てて確かめるんです。私にとって、そんな現場は初めてでした」
出会うのを待ちわびていたと言わんばかりに、好評価するアンジェラ・ユンを、どのように撮れば美しく見せるか、世界的巨匠だからこそ1ミリの妥協も許さないことが、彼女のコメントからうかがえますね。
映画『宵闇真珠』作品情報
【公開】
2018年(香港・マレーシア・日本合作映画)
【原題】
白色女孩 The White Girl
【脚本・監督】
ジェニー・シュン、クリストファー・ドイル
【キャスト】
オダギリジョー、アンジェラ・ユン、マイケル・ニン、トニー・ウー、サム・リョン、ランヤ・リー
【作品概要】
『欲望の翼』や『恋する惑星』など、90年代にウォン・カーウァイ作品のカメラマンとしても知られるクリストファー・ドイルが、新鋭ジェニー・シュンとの共同監督を務めた映画。
日光を浴びるとやせ細って死んでしまうという少女と、どこからともなくやってきた異邦人の男との出会いから始まる物語です。
主人公の少女を演じるのは、香港出身のアンジェラ・ユン。シャネルやシュウ・ウエムラの広告塔やアンバサダーに起用され、香港では「文青女神(サブカルオシャレ好きにとっての女神の意味)」と呼ばれています。
異邦人の男役には、日本にとどまらず、ワールドワイドに活躍を続ける実力派俳優オダギリジョー。
映画『宵闇真珠』のあらすじ
香港最後の漁村、珠明(じゅめい)村に、一人の少女が住んでいました。
彼女は、幼少時から日光にあたるとやせ細って死んでしまう病気だと言い聞かせられていて、太陽から肌を隠して生活していました。
透き通るような白い肌のため、村人たちからは「幽霊」と呼ばれ、気味悪がられています。
彼女の孤独を癒す唯一の楽しみは、日没後、肌を露出し、お気に入りの音楽を気に入りの場所で楽しむことでした。
ある日、どこからともなくやってきた異邦の男と出会った少女は、今まで知ることのなかった自身のルーツに触れていくことになるのですが…。
まとめ
クリストファー・ドイルが出会いを待ちわびていたというアンジェラ・ユンの映り。
青春時代に刺激を受けた映画監督の現場で、再び刺激を受けたオダギリジョー。
1990年代に一世を風靡した香港映画の撮影監督が魅せる最新作『宵闇真珠』は、こだわりと刺激の詰まった、それでいてどこか懐かしい雰囲気を感じさせる映画です。
インタビューでクリストファー・ドイル監督が語ったように、撮影したその土地や空間のエネルギーを感じ、“シェア”してほしいと思います。
映画『宵闇真珠』は2018年12月15日シアター・イメージフォーラムほかで全国ロードショー!
ぜひお見逃しなく!