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Entry 2021/08/06
Update

映画『そしてキアロスタミはつづく デジタル・リマスター版特集上映』公開日/開催劇場情報/作品内容紹介!

  • Writer :
  • 石井夏子

キアロスタミ監督の傑作7作品がデジタル・リマスター版で蘇る。

イラン映画の巨匠アッバス・キアロスタミ監督。


キアロスタミ監督の初期7作品を、デジタル・リマスター版特集上映『そしてキアロスタミはつづく デジタル・リマスター版特集上映』として、2021年10月16日(土)よりユーロスペースほか全国順次開催することが明かされました。

イラン映画の巨匠アッバス・キアロスタミ監督生誕81年、没後5年を記念して、世界中で愛されるジグザグ道三部作を中心に、初期の珠玉の名作がスクリーンによみがえります。

『そしてキアロスタミはつづく デジタル・リマスター版特集上映』について

『友だちのうちはどこ?』にはじまるジグザグ道三部作や、カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した『桜桃の味』などで知られるイランを代表する巨匠アッバス・キアロスタミ監督(AbbasKiarostami、1940年6月22日-2016年7月4日)。

詩や写真でも才能を発揮していた彼の映画は人生の真実にあふれ、観た者の心に忘れえぬ記憶として今なお残りつづけています。

そのキアロスタミ監督の珠玉の傑作7作品が、生誕81年を記念してデジタル・リマスター版でスクリーンに甦ります。

本来は生誕80年である2020年に、フランス・パリのポンピドゥーセンターでの回顧展「Abbas Kiarostami Ou est l’ami Kiarostami?」に合わせて日本でも劇場公開を企画していましたが、コロナによって回顧展が延期。

その後、没後5周年となる2021年5月に同展が開催されたのを受け、世界的にキアロスタミ監督の再評価が高まるなか、日本でも満を持してデジタル・リマスター版が劇場初公開されます。

今回の7作品はパリのmk2、ニューヨークのクライテリオンコレクション、ボローニャのラボ、リマジネ・リトロヴァータが2年をかけて修復した4Kまたは2Kリマスター版です。上映は全作品2Kで行われます。

『そしてキアロスタミはつづく デジタル・リマスター版特集上映』開催概要

【開催日】
2021年10月16日(土)より

【開催場所】
ユーロスペースほか全国順次開催

【上映作品】
『トラベラー』(1974)、『友だちのうちはどこ?』(1987) 、『ホームワーク』(1989)、『そして人生はつづく』(1992) 、『オリーブの林をぬけて』(1994) 、『桜桃の味』(1997) 、『風が吹くまま』(1999)

上映作品情報

『トラベラー』

(C)1974 KANOON

【製作】
1974年(イラン映画)

【監督・脚本】
アッバス・キアロスタミ

【本編尺】
72分

【キャスト】
ハッサン・ダラビ、マスウード・ザンドベグレー

【作品概要とあらすじ】
(C)1974 KANOON

サッカーに夢中な少年の、可笑しくもせつない冒険譚。キアロスタミ監督の瑞々しい長編デビュー作。

小学校に通う10歳のガッセムは、サッカーに夢中なあまり宿題も授業もさぼりがちで、いつも先生や母親に叱られてばかりいます。そんな彼の夢は、テヘランで開催されるサッカーの試合を見に行くこと。

そのためには、テヘランまでのバス代とチケット代が必要です。サッカーのためなら嘘も盗みも厭わないガッセムは、友達のアクバルを道連れに、あの手この手でお金を稼ごうとします。

果たして彼は無事サッカーの試合を見ることができるのか…?

チケットを求めて走り回るガッセム少年の姿を瑞々しく描き出した、キアロスタミ監督の記念すべき長編デビュー作。

少年の大胆不敵さに笑いながらも、彼の一途な思いにどこか哀切を感じずにいられない、可笑しくもせつない冒険譚。

『友だちのうちはどこ?』

(C)1987 KANOON

【製作】
1987年(イラン映画)

【監督・脚本・編集】
アッバス・キアロスタミ

【本編尺】
83分

【キャスト】
ババク・アハマッドプール、アハマッド・アハマッドプール、ホダバフシュ・デファイ、イラン・オタリ

【作品概要とあらすじ】
(C)1987 KANOON

友だちの家を探して、少年は必死で駆けていく。子どもの純朴さと不安をリアルに映し出した至福の傑作。

イラン北部の小さな村。同級生モハマッド=レザのノートを間違えて持ち帰ってしまったアハマッド少年。「ノートを忘れたら退学だ」という先生の言葉を思い出したアハマッドは、ノートを届けに、遠く離れた友だちの家へと走り出します。

何度も道に迷い、大人たちに翻弄されるアハマッド少年の不安げな表情が、のどかな風景のなか実にスリリングに映し出されます。

職業俳優を使わず、村の住人や子どもたち、実際の家や学校を用いて撮影するキアロスタミの撮影スタイルを象徴する作品であり、キアロスタミの名を世界各国に知らしめた、映画史上に輝く傑作。

アハマッドが何度も走り抜ける「ジグザグ道」の風景は、その後の作品にも受け継がれていきます。

『ホームワーク』

(C)1989 KANOON

【製作】
1989年(イラン映画)

【監督・編集】
アッバス・キアロスタミ

【本編尺】
77分

【キャスト】
シャビッド・マスミ小学校の生徒と親たち、アッバス・キアロスタミ(インタビュアー、ナレーション)

【作品概要とあらすじ】
(C)1989 KANOON

インタビューを通して見えてくる子どもたちの多彩な顔と言葉。宿題をテーマにした傑作ドキュメンタリー。

『友だちのうちはどこ?』で高い評価を得たキアロスタミが次に手がけたのは、宿題と学校教育をめぐるドキュメンタリー。

イランの子どもたちはいつもたくさんの宿題に追われていると感じたキアロスタミは、自らインタビュアーとなり、小学校の生徒たちや親たちへ、「宿題」をめぐって次々に質問をします。

「なぜ宿題をしてこなかったの?」「誰が宿題を見てくれるの?」その答えから見えてくるのは、それぞれの複雑な家庭事情。家の手伝いに追われて宿題ができない子。宿題を見てあげようにも読み書きのできない親。

そうして徐々にイランの教育制度の持つ問題点が浮き彫りになります。社会への警鐘を鳴らしながら、子どもたちの多彩な顔や言葉を見事に記録した傑作。

『そして人生はつづく』

(C)1991 KANOON

【製作】
1992年(イラン映画)

【監督・脚本・編集】
アッバス・キアロスタミ

【本編尺】
95分

【キャスト】
ファルハッド・ケラドマンド、プーヤ・パイヴァール、ハドーバル及びロフタマバードの住民

【作品概要とあらすじ】
(C)1991 KANOON

『友だちのうちはどこ?』の少年たちを探す監督親子の旅。大地震の起きたイランで見つけたのは、生きることへの希望でした。

1990年、イラン北部で起きた大地震は、『友だちのうちはどこ?』を撮影した村にも容赦なく襲いかかりました。地震後、キアロスタミは映画に出演した兄弟の安否を確認しに、息子を連れて被災地へ向かいます。

本作は、その時の経験をそのままに再現。撮影は地震から半年後に実際の被災地で行われ、監督役には当時イランの経済庁で働いていた男性が抜擢されました。

「私の映画に出ていた子たちを知ってる?」。車に乗り、少年たちを探しまわる監督親子の奇妙なロードムービー。

そこには、地震で崩壊した村の悲惨な現状がまざまざと映し出される一方で、人間のたくましさと生きることへの希望が刻まれています。

『友だちのうちはどこ?』と『オリーブの林をぬけて』をつなぐ重要作。

『オリーブの林をぬけて』

(C)1994 Ciby 2000 – Abbas Kiarostami

【製作】
1994年(イラン映画)

【製作・監督・脚本・編集】
アッバス・キアロスタミ

【本編尺】
103分

【キャスト】
ホセイン・レザイ、タヘレ・ラダニアン、モハマッド=アリ・ケシャヴァーズ、ザリヘ・シヴァ、ファルハッド・ケラドマンド
【作品概要とあらすじ】
(C)1994 Ciby 2000 – Abbas Kiarostami

映画づくりの裏にはいつもドラマが隠されている。『友だちのうちはどこ?』『そして人生はつづく』に続く「ジグザグ道三部作」完結編です。

『そして人生はつづく』の1シーンで、地震の数日後に結婚したという若夫婦。ですが実際に夫役を演じた青年ホセインは、以前、妻役のタヘレにプロポーズし断られていました。

ふたりの過去を知ったキアロスタミは、このエピソードをもとに映画をつくることを決意。前二作に登場した村、そしてジグザグ道を舞台に、再び至福の映画が誕生します。

結婚を諦めきれないホセインと決して彼の言葉に応えようとしないタヘレ。果たして彼女の気持ちはどこにあるのか…?

映画内映画という入れ子細工のような構成のなかで、虚構と現実の境界線はどこまでも曖昧になっていきます。

映画製作の裏側で巻き起こるドラマをユーモアたっぷりに描き出す、キアロスタミ流ラヴストーリー。

『桜桃の味』

(C)1997 Abbas Kiarostami
【製作】
1997年(イラン・フランス合作映画)

【監督・脚本・製作・編集】
アッバス・キアロスタミ

【本編尺】
99分

【キャスト】
ホマユン・エルシャディ、アブドルホセイン・バゲリ、アフシン・バクタリ、アリ・モラディ、ホセイン・ヌーリ

【作品概要とあらすじ】

(C)1997 Abbas Kiarostami

巨匠アッバス・キアロスタミの名前を不動のものにした不朽の名作。

土埃が舞う道中、一台の車を運転する中年男バディ。彼は、街ゆく人々に声をかけ、車のなかに誘い入れてはある奇妙な仕事を持ちかけます。

「明日の朝、穴の中に横たわった自分に声をかけ、返事があれば助けおこし、返事がなければ土をかけてほしい。そうすれば大金を君に渡そう」。

人生に絶望したバディの自殺幇助の頼みを、車内に招かれた、クルド人兵士、アフガン人の神学生らはみな拒絶。ですが最後に乗せたひとりの老人は、生きることの喜びをバディに語って聞かせるのでしたーー。

一台の車のなかで展開される生と死をめぐる果てない会話。自死という深遠なテーマを扱った物語は、やがて思いもかけぬラストと共に、見る者に生の喜びと人生の美しさを教えてくれます。

『風が吹くまま』

【製作】
1999年(イラン・フランス合作映画)

【監督・脚本・製作・編集】
アッバス・キアロスタミ

【本編尺】
118分

【キャスト】
ベーザード・ドーラニー、ファザード・ソラビ

【作品概要とあらすじ】

(C)1999 MK2 PRODUCTIONS-ABBAS KIAROSTAMI

テヘランから、クルド系の小さな村を訪れたテレビ・クルーたち。彼らは独自の風習で行う村の葬儀の様子を取材しに来たのですが、村を案内する少年ファザードには自分たちの目的を秘密にするよう伝えます。

男たちは、危篤状態のファザードの祖母の様子をうかがいながら、数日間の予定で村に滞在。しかし数週間経っても老婆の死は訪れず、ディレクターのベーザードは、予定外の事態に苛立ちを募らせます。

麦畑に囲まれた美しい風景のなかで繰り広げられる、主人公と個性豊かな村人たちとのユーモア溢れるやりとり。死を待つ時間という特異な瞬間を写し、キアロスタミの人生哲学をたっぷりと堪能できる一作。

引き延ばされた死の瞬間は、人生の妙味と喜びを与えてくれます。

1999年ヴェネチア国際映画祭審査員グランプリ受賞作。

キアロスタミ監督のプロフィール

アッバス・キアロスタミ(Abbas KIAROSTAMI)は、1940年6月22日、イランのテヘランで生まれる。幼い頃から絵を描くことに強い興味を示していた。

テヘランで美術学校に学びながら、グラフィック・デザインやCF監督といった仕事で生計を立てていたが、1969年、児童青少年知育協会の映画部門を創設。

そこで最初の短篇映画『パンと裏通り』(19770)を監督する。その後、“幼少期の世界”というテーマで一連の短篇・中篇を制作し、その過程で、物語映画とドキュメンタリーの間の微妙なバランスを保つ自分のスタイルを確立するようになる。

1990年、ある実際のニュースを元にした『クローズ・アップ』(1990)で、主だった登場人物を本人に演じさせ、現実をフィクションの領域に導入した作品を仕上げたことでキアロスタミは新たなページを開く。

それに先立つ『友だちのうちはどこ?』(1987)は、『そして人生はつづく』(1992)、『オリーブの林をぬけて』(1994)へと続く“ジグザグ道三部作”に発展した。

『桜桃の味』(1997)は、キアロスタミが自分自身へと目を向けた作品であり、カンヌ国際映画祭パルムドールを受賞。だが映画は批評家からは高く評価されたものの、イラン国内の宗教的権威からは非難を浴びた。

次作『風が吹くまま』(1999)は、ベネチア国際映画祭審査員特別グランプリを受賞。思索的でゆっくりとしたテンポ、複雑さを排した筋立て、ペルシャの詩と西洋の哲学への目配せといった、監督のトレードマークが並ぶこの2作で世界的な評価が確立された。

2001年以降、キアロスタミは小型のカメラを好むようになり、その結果、デジタル作品のみを手掛けるようになる。これにより大きな自由を得た彼は、『ABCアフリカ』(2001)、『10話』(2002)、『シーリーン』(2008)など様々な長さの自然主義的作品を監督する。

2009年、再びフィクションへと戻ったキアロスタミは、初めて母国イランを離れイタリアで『トスカーナの贋作』を制作する。主演にジュリエット・ビノシュを起用した本作はカンヌ国際映画祭主演女優賞を受賞した。

つづく2012年には日本を舞台にした『ライク・サムワン・イン・ラブ』を発表。

2016年には今度は中国での撮影を予定していたが、同年7月4日、入院先のパリの病院で急逝。76歳だった。

2017年、映画と写真の統合を試みた実験的な作品『24フレーム』が彼の死後に完成、公開された。

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