ケヴィン・スペイシーは、『セブン』や『アメリカン・ビューティー』などで知られるアメリカ出身の俳優です。
ハリウッドのカメレオン俳優といってもいいくらい、犯人役に刑事役、どんな役も表情豊かに演じ、独特の存在感を見せつけるベテランの演技派俳優です。
ケヴィン・スペイシーは、1986年に『心みだれて』で映画デビューを果たします。1995年の『セブン』の演技で注目を浴びると、同年の『ユージュアル・サスペクツ』ではアカデミー助演男優賞をはじめとする数多くの映画賞を受賞。映画俳優としての地位を確固たるものとしました。
また1999年には『アメリカン・ビューティー』でアカデミー主演男優賞を受賞。2004年の『ビヨンド the シー 夢見るように歌えば』では、監督・製作・脚本・出演の4役を務め、劇中の楽曲は本人が実際に歌うなど、多彩な才能を見せました。
その他の出演作には、『スーパーマン リターンズ』、『ラスベガスをぶっつぶせ』、『モンスター上司』などがあります。
映画以外にも、ドラマ『ハウス・オブ・カード』の製作総指揮と主演を務めるなど、活躍を続けています。
今回は、様々な役を演じてきたケヴィン・スペイシーの出演映画からおすすめの5作品をピックアップしてお届けします!
CONTENTS
1.アメリカの中流家庭の崩壊をシニカルに描いた『アメリカン・ビューティー』(1999)
『アメリカン・ビューティー』の作品概要
1999年のアメリカ映画。監督は、『007スカイフォール』などのサム・メンデス。出演は、ケヴィン・スペイシー、アネット・ベニング、ソーラ・バーチ、ウェス・ベントリー、ミーナ・スヴァーリほか。
第72回アカデミー作品賞、監督賞、主演男優賞、脚本賞、撮影賞の5部門を獲得。
『アメリカン・ビューティー』のあらすじ
広告代理店に勤め、シカゴ郊外に住む42歳のレスター・バーナム(ケヴィン・スペイシー)。不動産業を営む妻のキャロライン(アネット・ベニング)は見栄っ張りで自分が成功することで頭がいっぱい。娘のジェーン(ゾーラ・バーチ)は典型的なティーンエイジャーで、父親のことを嫌っており、レスター自身も中年の危機を感じていました。
ある日、勤めていた広告代理店からリストラ宣告を受けてしまい、これを機に、一見幸せに思えた彼の日常の歯車が少しずつ狂い始めます。
『アメリカン・ビューティー』のおすすめポイント
あるサラリーマン家庭の崩壊を通して、現代アメリカの理想的家族の裏側に潜むそれぞれの孤独や不全感をシニカルに描き出したドラマ映画です。
この年のアカデミー賞作品賞を受賞し、ケヴィン・スペイシーも主演男優賞に輝いた名作です。
平凡な家庭の崩壊、ゲイ、女性の地位…といった様々なテーマが盛り込まれていて、アメリカの家庭に潜む問題が(日本人にはわからない部分まで)痛烈に描かれています。
ケヴィン・スペイシーが、弱さや優しさ、人間の汚い部分をうまく演じていて素晴らしいです。娘の友達を狙っている部分は、正直気持ち悪いくらいなのですが、最後の最後にふと父親の表情を見せるところが良い。いろいろな表情を使い分けるのがうまいですね。
人間はひとくくりにできない感情と性質をもっていて、いろんな側面があるというのを役者たちが皆うまく表現しています。
明るい話ではないけれど、とても惹きつけられる作品です。
2.一人の少年のアイデアが世界を変える?『ペイ・フォワード/可能の王国』(2001)
『ペイ・フォワード/可能の王国』の作品概要
2001年のアメリカ映画。監督は、ミミ・レダー。出演は、ケヴィン・スペイシー、ヘレン・ハント、ハーレイ・ジョエル・オスメント、ジム・カビーゼル、ショーン・パイフロムほか。
『ペイ・フォワード/可能の王国』のあらすじ
11歳の少年トレバー(ハーレイ・ジョエル・オスメント)は、社会科の授業中、担任のシモネット先生(ケヴィン・スペイシー)から「もし君たちが世界を変えたいと思ったら、何をする?」と問い掛けられます。
トレバーはあるアイデアを思いつきます。それは“ペイ・フォワード”といって、他人から受けた厚意をその人に返すのではなく、まわりにいる別の人へと贈っていく…という奇想天外なアイデアでした。
やがて、彼の考えたユニークなアイデアが広がり、心に傷を負った大人たちの心を癒していきます。
『ペイ・フォワード/可能の王国』のおすすめポイント
受けた好意を他人に贈る“ペイ・フォワード”という行動に焦点を当てた発想が面白い人間ドラマです。
ケヴィン・スペイシーと、『シックス・センス』でアカデミー賞にノミネートされたハーレイ・ジョエル・オスメント、『恋愛小説家』でアカデミー賞に輝いたヘレン・ハントとキャスト陣も豪華!
ケヴィン・スペイシーは顔にやけどの痕があり、恋愛に奥手な学校の先生を好演しています。
ラストの展開に賛否両論ありますが、“ペイ・フォワード”が単なる夢物語で終わるのではなく、挫折することもあるということを描いている点がこの映画をより良いものにしているのではないでしょうか。
この作品の原作者であるキャサリン・ライアン・ハイドは「治安の悪い町で車がエンストしてしまった際、車に近付いてくる男2人に恐怖心を抱いたが、その男は車を快く修理してくれた。そこから、この“善意を他人へ回す”という思考が誕生した」と語りました。
“思いやりの連鎖”が実現できれば良いなと思わずにはいられませんね。
3.サスペンスの傑作!緻密に計算された脚本で話題に『ユージュアル・サスペクツ』(1995)
『ユージュアル・サスペクツ』の作品概要
1995年のアメリカ映画。監督は、『X-MEN アポカリプス』などのブライアン・シンガー。出演は、スティーブン・ボールドウィン、ガブリエル・バーン、チャズ・パルミンテリ、ケビン・ポラック、ピート・ポスルスウェイト、ケヴィン・スペイシー、ベニチオ・デル・トロほか。
第68回アカデミー賞で脚本賞、助演男優賞(ケヴィン・スペイシー)受賞。
『ユージュアル・サスペクツ』のあらすじ
カリフォルニアで起きた船舶の炎上事故を調べていた捜査官クイヤン(チャズ・パルミンテリ)は尋問していたヴァーバル(ケヴィン・スペイシー)から奇妙な話を聞かされます。
それは6週間前。銃器強奪事件の容疑者として集められた5人が、釈放後、協力して宝石強奪を決行。ブツをさばくためにLAの故買屋と接触した5人は、そこで新たなヤマを依頼されますが、宝石と聞かされていた獲物は麻薬で、トラブルから相手を射殺してしまいます。
そして恐慌状態の彼らの前に、伝説のギャング“カイザー・ソゼ”の右腕と名乗る弁護士が現れたというのです。
『ユージュアル・サスペクツ』のおすすめポイント
アガサ・クリスティの「アクロイド殺し」を下敷きに、伝説のギャング“カイザー・ソゼ”とドラッグの行方の意外な結末を描いた、サスペンス映画の名作です。
どんでん返しが痛快な、今でも語り継がれている人気の作品ですね。
ケヴィン・スペイシーは、この作品でアカデミー助演男優賞を受賞しており、ヴァーバルという独特の雰囲気を持つ男を怪演しています。
巧妙な仕掛けが至る所に張り巡らされ、謎に包まれている“カイザー・ソゼ”の正体がラストに迫るにつれて明らかになっていく過程がなんとも面白いです。必ず2回見たくなるような傑作です。
4.猟奇殺人の首謀者を怪演!サイコサスペンスの傑作『セブン』(1995)
『セブン』の作品概要
1995年のアメリカ映画。デヴィッド・フィンチャー監督のデビュー作。出演は、ブラッド・ピット、モーガン・フリーマン、グウィネス・パルトローほか。
『セブン』のあらすじ
退職間近の刑事サマセット(モーガン・フリーマン)と新人刑事ミルズ(ブラッド・ピット)。2人の前に、キリスト教の教え“7つの大罪”になぞらえた驚愕の連続殺人事件が発生します。
胃袋が破裂するほど食物を詰め込まれた大食殺人、舌と右腕を切り取られ、衰弱していく様を撮った写真が残された怠惰殺人など…。
悪魔のような頭脳を持った犯人の用意した衝撃の結末とは…。
『セブン』のおすすめポイント
独特のビジュアルセンスとダークな物語が話題を呼んだ戦慄のサスペンス・スリラーの傑作です。
おそらくケヴィン・スペイシーの作品で最も有名な作品なのではないでしょうか。彼はジョン・ドゥという猟奇事件の首謀者を演じており、映画の中に登場するシーンは僅かなのですが、インパクトの強さは半端ありません。よくもあれほどの怪しい表情ができるなと感心してしまうほどです。
また刑事2人の掛け合いも良く、予想外のクライマックスは圧巻です。後味は悪いですが、サスペンス好きの人にはかなりおすすめの作品です。
5.正統派刑事映画の傑作!豪華キャストも見どころ『L.A.コンフィデンシャル』(1997)
『L.A.コンフィデンシャル』の作品概要
1997年のアメリカ映画。監督は、『イン・ハー・シューズ』などのカーティス・ハンソン。出演は、ケヴィン・スペイシー、ラッセル・クロウ、ガイ・ピアース、キム・ベイシンガー、ジェームズ・クロムウェルほか。
第70回アカデミー賞助演女優賞(キム・ベイシンガー)、脚色賞を受賞。
1990年に発刊されたジェイムズ・エルロイの小説「L.A.四部作」第3部が原作。
『L.A.コンフィデンシャル』のあらすじ
舞台は1950年代のロス。街のコーヒーショップで元刑事を含む6人の男女が惨殺される事件が発生します。
殺された刑事の相棒だった バド(ラッセル・クロウ)が捜査を開始。殺された女と一緒にいたブロンド美人リン(キム・ベイシンガー)に接近します。彼女はスターに似た女を集めた高級娼婦組織の一員でした。
同じ頃、その組織をベテラン刑事のジャック(ケビン・スペイシー)が追っていました。野心家の若手刑事エド(ガイ・ピアース)も事件を追い容疑者を射殺。事件は解決したかに見えましたが…。
『L.A.コンフィデンシャル』のおすすめポイント
3人の刑事が行政の暗部に迫る、50年代に流行したフィルム・ノワールを踏襲した刑事映画です。
その3人の主人公は、エリート主義のエド(ガイ・ピアース)、暴力的な正義感を持つバド(ラッセル・クロウ)、そして狡猾ながらも秀才なジャック(ケヴィン・スペイシー)。
とても豪華なキャストですね!3人の刑事のキャラクターが立っていて、その人間関係も面白いですし、皆たくましくカッコいい演技についつい引き込まれます。
ケヴィン・スペイシーはちょっとくせ者感がありながら知性を感じさせる演技がお見事。
物語は、登場人物が多くわかりにくい面もありますが、二転三転する展開で、最後まで飽きさせません。
謎解き以外にも、男の熱いドラマが盛り込まれていて、骨太な見ごたえたっぷりなサスペンスです。時を経ても色あせない名作だと思います。
まとめ
ケヴィン・スペイシーの出演映画からおすすめの5作品をピックアップしてお届けししました。
ご紹介した作品は、彼の演技のすばらしさに加え、作品自体もかなり面白いのでおすすめです!
どんな役柄を自然すぎる表情と演技でこなしてしまう演技力の高さは本当に流石ですね。
彼の場合、悪役や一癖あるイヤな感じの男の役がすごく似合うと思うのは私だけでしょうか。
俳優以外にも監督や製作でも活躍中のケヴィン・スペイシー。今後の作品にも期待したいですね!