劇作家・演出家・小説家などマルチな活躍を見せながら、数々の作品発表を行い、芥川賞受賞作家でもある本谷有希子の恋愛小説を映画化。
映画『生きてるだけで、愛。』は、2018年秋より新宿ピカデリーほか全国ロードショー。
今回は関根光才が監督を務めた『生きてるだけで、愛。』のあらすじと見どころ、公開される劇場を紹介します。
CONTENTS
映画『生きてるだけで、愛。』の作品情報
【公開】
2018年秋(日本映画)
【原作】
本谷有希子『生きてるだけで、愛。』 (新潮文庫)
【監督】
関根光才
【キャスト】
趣里、菅田将暉、田中哲司、西田尚美、松重豊、石橋静河、織田梨沙、仲里依紗
【作品概要】
演出家・劇作家・小説家として数々の作品を生み出してきた芥川賞作家、本谷有希子の恋愛小説を映画化。
感情をうまくコントロールできない女性と、その周囲の人々の姿を通して、人間の生きづらさや面倒くささ、ずるさをあぶりだす。
ドラマ『ブラックペアン』で俄かに注目を集めている若手女優の趣里主演。日本アカデミー賞最優秀主演男優賞受賞の菅田将暉、仲里依紗などが脇を固めています。
映画『生きてるだけで、愛』の関根光才監督のプロフィール
関連映像:『RIGHT PLACE』(2005)
関根光才は1976年生まれ、東京出身の映像作家、映画監督。
上智大学文学部哲学科卒業した後、 映画、広告映像、ミュージックビデオ、インスタレーションアートなどをベースとした映像の演出を手がけています。
文化を横断するようなストーリーテリングやアートディレクション、また、革新的なテクノロジーが組み込まれた実験的な表現をメインにした演出を行っています。
2005年に短編映画『RIGHT PLACE』を初監督。その翌2006年、カンヌ国際広告祭のヤング・ディレクターズ・アワードにてグランプリを受賞し、同年、広告映像誌SHOTSの発表する新人監督ランキングにて世界1位を記録。
以降、様々な短編映画賞・クリエイティブアワードを多数受賞し、2014年には世界最大級の広告賞、カンヌライオンズで「Sound of Honda / Ayrton Senna 1984」で、日本のチームとしては史上初めてチタニウム部門グランプリを受賞しました。
このように国際的に高い評価を受けている一方で、AKBの「恋するフォーチュンクッキー」や、Mr.Childrenの「足音〜Be Strong」のミュージックビデオなどを手掛け、メジャーな商業シーンでも活躍するマルチなクリエイターです。
そして、2018年秋に満を持して、初となる長編劇場作品『生きてるだけで、愛。』で監督します。また、長編ドキュメンタリー映画「太陽の塔」の公開も同年秋に控えています。
現在は、東京をベースに新しい映像制作の形を提供するプロダクションユニット「NION(ナイオン)」を展開する一方で、国際的にはロンドン、LA、NY、ベルリン、パリ、上海などに拠点を置く「Stink」に所属しています。
また、2011年の福島原発事故以降に発足した、表現で社会や政治に向き合うアートプロジェクト「NOddIN(ノディン)」でもインディペンデントな創作活動を精力的に続けています。
映画『生きてるだけで、愛』の主なキャスト
趣里(寧子役)のプロフィール
暖かくなってきて、ホッと一息!撮影頑張ります💉✂︎! pic.twitter.com/6CDmrxGUuw
— 趣里 Shuri (@shuri_0921) 2018年5月4日
趣里(しゅり)は、1990年9月21日生まれ、東京都出身の女優。本名は水谷趣里でトップコート所属。
俳優の水谷豊と女優の伊藤蘭の一人娘として誕生。
4歳からクラシックバレエを習い始め、小学5年生の時に憧れの『くるみ割り人形』の主役クララを演じた頃から、本格的にバレリーナを目指すようになります。
しかし、イギリスでの留学時にアキレス腱断裂に足首の剥離骨折と怪我を重ねてしまい、リハビリをしながら練習に打ち込むものの思うように踊れず、バレリーナの夢を断念します。
夢破れ失意の中、それでも表現がしたいと彼女が見つけた場所、それが女優の道でした。
軽い気持ちで参加した塩屋俊主宰の演技学校「アクターズクリニック」のレッスンで演技の面白さに目覚めたのです。
もちろん、両親と同じ道に進むとあって、「二世」というプレッシャーも感じていましたが、「でもお前は大丈夫だから頑張れ。女優を続けていけ」という塩屋氏の強い後押しもあり、本格的に女優を目指すことにしました。
2011年、オーディションに合格しTBSのドラマ『3年B組金八先生ファイナル〜「最後の贈る言葉」4時間SP』で女優デビュー。
金八先生に恋する中学生の役を演じました。
当初は女優としての評価よりも、両親の名前が先に取り上げられることが多かったものの、「アクターズクリニック」やアメリカの演技学校の短期ワークショップにてレッスンを重ね、多くの舞台や映画、テレビドラマに積極的に出演して着実に経験を積んでいきました。
2014年に劇団オーストラ・マコンドーに加入。舞プロモーション、フリーを経て、2015年より、トップコートに所属しています。
2016年にはNHK連続テレビ小説『とと姉ちゃん』への出演で注目を集めます。
2017年のTBSドラマ『リバース』での狂気的な妻を演じ、その強烈な存在感で話題となりました。
同年11月には『過ちスクランブル』で連続ドラマに初主演、続く2018年4月期のTBSドラマ『ブラックペアン』では、クールな看護師「ねこちゃん」役でその実力をいかんなく発揮しました。
菅田将暉(津奈木役)のプロフィール
白身魚あ~んなうに使っていいよ。#菅田山田 pic.twitter.com/IhFv4rFR3H
— 菅田山田 (@sudayamada) 2018年4月26日
菅田将暉は、1993年2月21日生まれの大阪府箕面市出身の俳優。トップコート所属。
2008年に、第21回ジュノンスーパーボーイコンテストでファイナリストに選出されたのをきっかけに、本作に出演している趣里と同じ芸能事務所、トップコートに所属することになります。
翌2009年に、平成仮面ライダーシリーズ第11作『仮面ライダーW』にて、仮面ライダーシリーズ最年少でフィリップ/仮面ライダーW(声)役で連続テレビドラマ初出演して初主演を果たします。
関連映像:『共喰い』(2013)
当初はアイドル的な扱いが多かったものの、2013年に主演した青山真治監督の作品『共喰い』で、見せた鬼気迫る演技により、第37回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。
自身も役者人生のターニングポイントになったとインタビューなどで語っています。
その後、『そこのみにて光輝く』(2014)、『ディストラクション・ベイビーズ』(2016)『セトウツミ』(2016)『溺れるナイフ(2016)』など、立て続けに映画に出演し、オリコンによる調査で2016年度のブレイク俳優1位を獲得。
また、2017年3月にはシングル『見たこともない景色』でソロ歌手デビュー。
同年4月から『オールナイトニッポン』(ニッポン放送)でレギュラーパーソナリティを担当するなどマルチな活躍を見せ、俳優としては『あゝ、荒野』(2017/岸善幸監督)で、第41回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞、芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞しました。
この他にも、『キセキ -あの日のソビト-』(2017)『帝一の國』(2017)『火花』(2017)など主演作も多く、若手トップ俳優の名を不動のものにしています。
映画『生きてるだけで、愛』のあらすじ
過眠症で引きこもり気味な不安定女子、寧子は現在無職。編集者で恋人でもある津奈木の部屋で同棲生活を過ごします。
自分でうまく感情をコントロールできない自分に、嫌気がさしていた寧子は、どうすることもできずに津奈木に当たり散らしました。
津奈木も津奈木で、寧子への興味は失せてしまっている様子…。
ある日、そんな寧子の前に、突然、津奈木の元恋人の安堂が現れます。
津奈木とヨリを戻したい安堂は、寧子を自立させて津奈木の部屋から追い出すため、寧子に無理矢理カフェバーのアルバイトを決めますが…。
映画『生きてるだけで、愛』の感想と評価
本作品『生きてるだけで、愛』の見どころは、芥川賞作家である本谷有希子の描く、キャラクターとそれを演じる俳優の演技合戦です。
本谷作品には、心にいつも生きづらさやもどかしさを抱えている、“クセの強い女性”がよく登場します。
本谷有希子の描く特徴的な女性キャラクター
参考映像:『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』(2007)
本谷の原作を映画化した作品では、2007年に吉田大八監督作品の『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』も有名ですね。
こちらの主人公の澄伽も、自分が特別な人間だと信じて疑わない、なかなか面倒くさい女性です。
本谷の作品の女性は、一見すると「うわあ、絶対に友達になりたくない…。」と思ってしまうような人物なのですが、小説を読み進めるうちに彼女の抱える心の闇や苦しみに触れ、ぐいぐい物語に引き込まれていきます。
本谷自身、執筆中にはそのキャラクターに成り切って書いてしまうそうです。ゆえに、ストーリーだけでなく、登場人物がかなりの魅力と説得力の強度を持ちます。
本作の原作である小説『生きてるだけで、愛。』も、主人公の寧子をはじめ、手ごわそうな人物が登場します。
キャストの演技は大きな見どころ!
そんな強度をもつキャラクターを理解し、演じるのは至難の業。それに立ち向かうのが、本作に出演する若手実力派俳優たちです。
俳優の水谷豊と伊藤蘭の娘で、舞台などで着実に力を付けてきた今大注目の女優、趣里。
また、日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を獲得した菅田将暉。他にも毎日映画コンクールのスポニチグランプリ新人賞を受賞した仲里依紗や、毎日映画コンクールで助演男優賞を受賞した松重豊など、脇をかためる俳優も演技派ぞろいです。
そんな俳優たちの繊細で力強い演技により、映画の劇中でどのような「寧子」と「津奈木」、その周囲の人物像が生まれるのか⁈
それが、映画『生きてるだけで、愛。』の一番の見どころと言えるでしょう。
関根光才監督の演出にも要注目!
関根光才監督は、カンヌ国際広告祭のヤング・ディレクターズ・アワードでのグランプリ受賞などをはじめ数々の賞を受賞し、国際的に高い評価を受けています。
様々な文化をとりいれた実験的な表現を中心に活動を行っていることもあり、本作で原作をどのように表現していくのかは、まさに予測不能と言えるでしょう。
そんな一癖も二癖もある表現者たちが作り上げる『生きてるだけで、愛。』。
いったい、どんな強烈な作品になるのか…、この秋、必見です!
まとめ
芥川賞候補にもなった原作『生きてるだけで、愛。』を、国際的な映像クリエーターである関根光才監督がどのように表現するのか。
そして、この本谷ワールド特有の生きづらさや面倒臭ささを抱える人物たちを、若手俳優の趣里と菅田将暉が己の身体で、どのように魅せてくれるのか⁈
才能あふれる表現者たちの化学反応から生まれる恋愛ドラマ…、これはもう、見逃せませんね!
映画『生きてるだけで、愛。』は、2018年秋より新宿ピカデリーほか全国ロードショー。