人の運命は最初から決まっているのでしょうか?
ローマ神話に伝わる運命の女神「フォルトゥナ」その瞳を持ってしまった者には、死を目前にした人間が透けて見えるという。
あなたは、目の前の人が死ぬ運命にあることを知ったら、その人を助けますか?それが、自分の命を削ることになったとしても。
フォルトゥナの瞳の力は、人の運命を変え、大切な人を救うことができる力なのでしょうか?それとも、人はやはり運命に逆らうことは出来ないのでしょうか?
『永遠の0』『海賊とよばれた男』のベストセラー作家百田尚樹の同名小説を、『僕らがいた』『坂道のアポロン』など青春映画の名匠三木孝浩監督が映画化。
映画『フォルトゥナの瞳』のあらすじと感想、原作との違いも紹介します。
CONTENTS
映画『フォルトゥナの瞳』の作品情報
【公開】
2019年(日本映画)
【原作】
百田尚樹「フォルトゥナの瞳」
【監督】
三木孝浩
【キャスト】
神木隆之介、有村架純、志尊淳、DAIGO、松井愛莉、北村有起哉、斉藤由貴、時任三郎
【作品概要】
映画『フォルトゥナの瞳』の原作著者は、人気テレビ番組「探偵!ナイトスクープ」などで放送作家としての経歴を持つ小説家・百田尚樹。
百田尚樹の小説は、「ボックス」「モンスター」「永遠の0」「海賊とよばれた男」と、映画化された作品も多く、常に注目を集めています。
監督は『ソラニン』『僕等がいた』『アオハライド』『ホットロード』など、青春恋愛コミックの映画化の名匠・三木孝浩監督。
主人公の木山慎一郎役には、幅広い演技力を持つ実力派俳優、神木隆之介。相手役の桐生葵役は、人気絶頂中の癒し系女優、有村架純が演じます。
映画『フォルトゥナの瞳』のあらすじとネタバレ
目の前に広がるのは飛行機墜落事故の悲惨な現場でした。焼け焦げた機体、血だらけの人、泣き叫び助けを呼ぶ声が聞こえます。
6歳の慎一郎は、「助けて」と手を伸ばす少女を前に、立ちすくんでいました。
自分だけ生き残ってしまった。木山慎一郎(神木隆之介)は、大人になってもどこか後ろめたさを感じたまま、日々をただ消化するように生きていました。
飛行機墜落事故で家族を亡くし孤独だった慎一郎を雇ってくれたのは、自動車塗装会社「GARAGE ENDO」の社長、遠藤哲也(時任三郎)でした。
仕事に没頭し、腕を磨いてきた慎一郎に、遠藤は自分の店の2号店を任せようとします。
自信が持てず戸惑う慎一郎に、遠藤の妻・美津子(斉藤由貴)も背中を押します。
それを面白く思わない男がいました。同僚の金田大輝(志尊淳)です。金田は慎一郎のことを突き飛ばし、携帯電話を破損させます。
修理のため携帯ショップを訪ねた慎一郎は、店員の桐生葵(有村架純)と知り合います。丁寧に対応してくれる葵に慎一郎は好感を抱きます。
その頃、慎一郎は不思議な体験をしていました。電車で隣に立った男の手が透けて見えたのです。
葵を一目見ようとショップに立ち寄った慎一郎は、そこで手どころか腕、顔の一部まで透けて見える男とぶつかります。
気になり後をつける慎一郎。その男は、慎一郎の前で突然交通事故に合い死んでしまいます。
自分は何かとてつもない力を身につけてしまったのか。透けて見える人は死が迫っているということ。得体の知れない恐怖が慎一郎を襲います。
いよいよ壊れた携帯電話を買おうと再び葵の携帯ショップを訪れた慎一郎は、葵の手が透けいるのを発見します。
一度は逃げ出す慎一郎でしたが、勇気を出して葵を誘い出します。
仕事終わりに待ち合わせのカフェにやってきた葵は、どこも透けていませんでした。
「なぜ、私を誘ったんですか」と聞く葵に、何気なく「俺、人の運命が見えるんです。良かった救えた」と答える慎一郎。
変なことを言ってしまったと慌てて帰る慎一郎に、突然胸に激しい痛みが走ります。
慎一郎は葵の命を救ったことで、人生に対して少し前向きになっていました。遠藤の店の2号店を引き受ける決意をします。
仕事も順調なころ、葵が慎一郎の工場を訪ねてきます。「私の命のお礼に来ました」
慎一郎が葵を誘ったあの日、葵がいつも帰宅する道で工場の爆発事故が起こっていました。誘いに乗らず帰宅していれば丁度その時間、葵は事故に巻き込まれて死んでいました。
「ただの偶然です」と返す慎一郎。それでも葵は丁寧にお礼を伝えます。
ある日、遠藤の工場を訪ねた慎一郎は、遠藤と金田の言い争う現場に遭遇します。金田は客の車を無断で遊びに使用していました。
遠藤に「首だ。出ていけ」と言われた金田は、見ていた慎一郎に向かって用具を投げつけます。怒った遠藤は、金田を殴ります。
その瞬間、慎一郎には遠藤の手が透けて見えました。
親代わりの遠藤を絶対助けたい。慎一郎はその夜、遠藤を食事に誘います。遠藤の体は、すでに顔まで消えかけていました。
突然、金田が2人の前に現れバットを振り落とします。慎一郎は遠藤をかばい自ら受けます。とたんに襲う心臓の痛み。遠藤の姿はもう透けていませんでした。
慎一郎は病院へと運ばれます。病院では、幼い少女の体が透けて見えました。居てもたってもいられない慎一郎に、「止めておけ。かかわるな」と話しかける医者がいました。
医者の黒川武雄(北村有起哉)は、慎一郎と同じフォルトゥナの瞳の持ち主でした。
黒川は慎一郎に「人の運命を変えると、その代償を支払うことになる」と忠告します。
フォルトゥナの瞳で人の命を助ける行為は、自分の命を削ることに繋がっていました。
慎一郎と葵は、不器用ながらも愛を育んでいきます。季節はめぐっても2人の愛はさらに深くなるばかりです。
仕事でも変化がありました。慎一郎は遠藤に頼み込み、金田を仕事に戻します。反省した金田は、慎一郎の頼もしい同僚になりました。
今の幸せを大事にしたい。もう人の運命には関わらないと決めた慎一郎。
しかし運命の日は近づいていました。手が透けて見える人が大量に発生したのです。電車の中の人々、幼稚園の園児たち、そしてとうとう葵の手も透けてしまいます。
『フォルトゥナの瞳』映画と原作の違い
まず、映画『フォルトゥナの瞳』を見て、原作との違いに愕然としました。これは、フォルトゥナの瞳を持った男のもうひとつの物語です。
原作、映画、ともに大事なキーワードとして「人は朝起きてから夜寝るまで9000回何かを選択している」というセリフが登場します。
まさにこの言葉の通り、映画の中では出演者の選択が原作とは異なり、結末までも変わっています。
原作はファンタジーの中にミステリー要素も含まれている印象でしたが、映画はラブストーリー色が強いものとなっています。
青春恋愛コミックの映画化が得意な三木孝浩監督の手腕によるものだと感じます。
ちなみに映画の中で、葵の働く携帯ショップは「au」でした。かぐや姫(有村架純)と高杉くん(神木隆之介)ですから。
それでは原作と映画の違いをいくつかに絞り見ていきましょう。
もうひとつの結末
映画の結末では、葵も慎一郎を助けようと行動にでますが、原作では、葵はそもそも電車に乗る設定はありません。葵は慎一郎に一度助けられてから最後まで透けることはありません。
原作での葵は、彼の死を新聞で知ります。多くの人を見殺しにしてでも自分と生きる道を選択して欲しかった。葵は、慎一郎の決意を知りながら、自らは生きることを選んだのです。
また原作では、電車事故の起こる原因に金田が絡んでいます。遠藤の工場を首になった金田は運送会社で働くのですが、その金田が運転するトラックが踏切で電車にぶつかる設定です。
遠藤と金田が喧嘩になったとき、遠藤はまだ透けていませんでした。その場に慎一郎がいたことで、金田はさらに逆上し、遠藤に殴られます。殴られたことで、金田は遠藤に殺意を抱いたのです。殴られた後、遠藤の手が透けて見えました。
遠藤の命を危険にしたのは、自分の存在に原因があったと気付いた慎一郎は、遠藤を助けますが、結局はさらに大きな事件を引き起こすことになります。
運命には逆らえない。人が人の運命を変えることはタブーである。フォルトゥナの瞳の力の悲しさが伝わってきます。
映画では、愛する人を守るためにフォルトゥナの瞳の力が宿ったというロマンティックな一面が強く感じられました。
慎一郎と葵の関係
映画では、付き合いも長くとても深く愛し合う2人に描かれていますが、原作では慎一郎と葵は何度か会う程度で、付き合い始めたばかりでした。
また映画では、慎一郎と葵は幼少期に体験した同じ飛行機墜落事故の生き残りという設定でしたが、原作ではその設定はありません。
原作では、慎一郎の家族は火事で亡くなっています。火事の起こる日に妹の姿が透けていたかもしれないのに、助けられなかった自分を慎一郎は責めて生きてきました。
映画の慎一郎と葵は、幼少期の同じ体験から、互いにフォルトゥナの瞳を持ったという背景が付け足されたことで、2人の出会いがより運命的に描かれています。
フォルトゥナの瞳を持つ苦しみ
原作では映画より、フォルトゥナの瞳の力によるエピソードが多く盛り込まれています。自分の持つ力に苦しみ悩む慎一郎の姿が痛いほど描かれています。
自分の力を信じられない慎一郎は、病院に行き多くの透ける人間を見ます。見えるだけで何もできない自分の無力さに落ち込みます。
また、遠藤の妻、美津子と行ったビアガーデンで、透けて見えた女性が目の前で飛び降り自殺を図ります。気付くのが一歩遅れたため死なせてしまったと自分を責める慎一郎。
その他にも、慎一郎はフォルトゥナの瞳の力で、タクシーの運転手の運命を変えたり、公園で見かけた子どもを助け命を削ったり、有名パティシエの死を見て見ぬふりをし苦しみます。
なぜ自分は生き残りフォルトゥナの瞳を持ったのか。原作の慎一郎は常に悩んでいて、どこまでも孤独で不器用な人間です。
映画でも慎一郎はフォルトゥナの瞳の力に悩みますが、身近な人物のエピソードだけに絞られています。
バタフライ効果
原作では、フォルトゥナの瞳を使い人の運命を変えると歪みが生まれ、起こるはずのなかった事件が起き、結局は不幸を呼ぶというサイクルが存在しました。
物語には3人のフォルトゥナの瞳所有者が登場します。慎一郎、葵、そして医者の黒川です。
映画では、黒川のエピソードは登場しませんが、原作では黒川が人の運命にかかわらなくなった出来事が紹介されています。
黒川が透明な男とすれ違った時、咄嗟に落ちていた空き缶を蹴飛ばしたことで、男の命が助かります。
しかし半年後、その黒川が助けた男は、女性を犯し殺害した犯人として逮捕されました。
自分が助けなければ、女性は死なずに済んだ。しかもその男のために自分の命が削られた。
黒川は慎一郎にバタフライ効果を例えに、人の運命を変えることは神への冒涜だと教えます。
「北京で一匹の蝶が羽ばたくと、ニューヨークで嵐が起こる」バタフライ効果のように、起こした行動は弱くても、伝わる副作用は取り返しのつかない規模になる場合もあります。
そんな黒川ですが、原作では家族を守り最後は命を落としています。
まとめ
ベストセラー作家百田尚樹の同名小説を、三木孝浩監督が映画化した『フォルトゥナの瞳』を、原作の違いも含め紹介しました。
死を目前にした人間が透けて見える力、フォルトゥナの瞳。自分の愛する人の死の運命が見えた時、あなたは何を選択しますか?
人は一日に9000回選択して生きていると言います。自分で選択したと思っている出来事も、実は運命に導かれているのかもしれません。
神木隆之介と有村架純の運命の共演で、心震えるラブストーリーが誕生しました。
映画『フォルトゥナの瞳』は、原作よりさらにロマンティックな展開が待っています。
そして、映画とは異なるもうひとつの結末を、ぜひ原作でもお楽しみください。