小説『ボクたちはみんな大人になれなかった』がNETFLIX配信と劇場公開へ!
作家・燃え殻によるデビュー作の同名小説『ボクたちはみんな大人になれなかった』。
2016年に初版発行されて以来、幅広い世代から多くの共感の声が寄せられているこの小説が、森山未來主演で映画化されます。
初恋で別れた彼女にFacebookの友達リクエストを送ったことで、ボクの過ぎ去った若かりし頃の1990年代の思い出が蘇り……。
当時の都会の街、流行した音楽や映画のタイトル、人々の様子などもたっぷり描かれ、1990年代へのタイムスリップを楽しめます。
映画『ボクたちはみんな大人になれなかった』は、2021年11月5日(金)より、シネマート新宿、池袋シネマ・ロサ、アップリンク吉祥寺ほか、ロードショー&NETFLIX全世界配信開始!
『ボクたちはみんな大人になれなかった』の映画化決定に伴い、原作小説のネタバレあらすじをご紹介いたします。
CONTENTS
小説『ボクたちはみんな大人になれなかった』の主な登場人物
【ボク】
テレビ美術制作会社の社員。
【小沢(加藤)かおり】
雑誌の文通覧で知り合った、ボクの初恋の人。
【関口】
テレビ美術製作会社の社員で、ボクの同僚。
【七瀬】
ボクの最初の勤め先の友人。
小説『ボクたちはみんな大人になれなかった』のあらすじとネタバレ
ボクは43歳。独身で、テレビ美術制作会社に勤めています。
ある日、地下鉄日比谷線に乗り、神谷町に向かっている途中、Facebookを開きました。
知り合いかも?の文面と共に目に飛び込んできたのは、「小沢(加藤)かおり」という名前。
それは、かつて自分よりも好きになってしまった人でした。
思わず、かおりのFacebookのページをスクロールし、彼女の日常に目をやります。
電車を降り、人混みの中で握りしめたスマホの中の彼女のページに目をやったとき、不意に友達リクエストを送ってしまいました。
ボクは唖然として、画面を眺めました。
かおりは、自分よりも好きになった初恋の人。あっという間にボクの前に現れ、何の前触れもなく別れてしまった彼女は、今は結婚して名字も変わっているようです。
ボクは彼女と出会う前の経緯を回想します。
1995年、夏。
20代前半のボクはエクレア工場に務めていました。従業員はブラジル人ばかりという中で、唯一の話し相手は、ひと回りも歳の離れた、劇団員の七瀬でした。
アルバイト雑誌デイリーanの文通コーナーから、とても面白い文言をはく都内在住の20歳の女性に興味を持つようになり、文通が始まります。
初めて会うことになった彼女こそが、加藤かおり(自分よりも好きになった人)だったのです。
彼女とはとても気が合い、ボクはかおりと付き合うことになりました。
彼女から何らかの影響を受けたせいか、ボクはエクレア工場のアルバイトを退職し、六本木のテレビ美術制作会社で働くことにします。
エクレア工場の退職日、ボクは彼女と初めて渋谷区円山町のラブホテルに行き、結ばれました。
ボクの再就職した会社は起業したばかりで、当初は社長をはじめ、同期になる関口という社員とボクの3人だけでした。
朝9時から夜12時までの勤務で、週1日の休日。ブラック起業顔負けの仕事をこなす毎日が始まります。
かおりは妹と同居し、ボクは関口とルームシェアをしていましたので、ボクたちは週末にホテルでしか会えません。
でも彼女のおかげで何とか息抜きのできる毎日を送ることが出来ていました。
20年以上も前の毎日が楽しかった日々が、43歳の現代を生きるボクの頭の中を、走馬灯のように駈け廻ります。
彼女はボクにとって、唯一人代わりがきかなかった人だなあと感慨深く思い出していた時、先日ホテルでひとときを過ごしたコンパニオンの女性からLINEが届きました。
女優になりたいといった彼女は、LINEで「努力すれば夢は叶うのかな?」と聞きます。「その質問は、ナポリタンは作れるか? と一緒だと思う」。ボクはすぐに返信を打ちました。
ボクの回想は、エクレア工場に勤める以前にとび、そして、1999年のノストラダムスの予言の地球最後の日へと向かいます。
滅亡しなかった地球のどん底でボクは彼女とベッドを共にし、しぶとく生きていました。ですが、それがかおりと過ごした最後の日となったのです。
小説『ボクたちはみんな大人になれなかった』の感想と評価
WEBで配信された‟燃え殻”のデビュー作『ボクたちはみんな大人になれなかった』(2017年刊行)。
43歳の主人公・ボクが、初恋の彼女のFacebookを見つけ、友達リクエストを送信してしまいます。
そこから思い出す、20年以上も前の甘酸っぱい初恋。90年代後半の世相も映し出して、ほろ苦い想いが滔々と述べられています。
ボクとかおりは、何気ない会話にも共通の想いを感じ、些細なことにも同じように反応して、笑いあえる恋人同士でした。
そんなホットな関係から突然の別れによる喪失感や心の傷みが、細やかに描かれた情景から切実に伝わってきます。
人は別れを繰り返して大人になっていくのでしょうか。
ボクは肉親や友人といくつもの別れを経験しますが、なかでも一番心に残っているのが、かけがえのない人であった彼女との別れでした。
あの頃の年齢の倍以上になったとき、懐かしい青春の1ページとして思い出されるのか、それとも人生の岐路として後悔の気持ちが先立つのか。
どのように思うのかは、大人になった時の自分の器量にもよるのでしょう。
全てを笑ってすませられない、大人になりきれない自分がいることに気がつくボクですが、それは誰にでもいえることではないでしょうか。
ボクの複雑な気持ちはストレートに言葉で書かれていないのに、あるいは自分の初恋の体験とも似ていないのに、なぜだかボクの過ぎ去った切ない初恋の思い出に共感できます。
この小説を読んで「大人泣きする」人が続出という話がありますが、その理由はここにあると言えます。
映画『ボクたちはみんな大人になれなかった』の見どころ
燃え殻原作の『ボクたちはみんな大人になれなかった』。
ある朝の満員電車の中で、昔の恋人に間違えてフェイスブックの友達リクエストを送ってしまった主人公・ボク。
本作で描かれるのは、通勤電車にゆられ、都会の喧噪の中でボクの脳裏に浮かぶ、20年以上も前の少しブスな彼女・かおりとの出会いから別れまでの日々です。
やるせない思いを抱えて都会の雑踏を生き抜くボクの過去と現在をSNSが繋ぐラブストーリーを、初監督となる森義仁が映像化しました。
主役のボクを演じるのは、森山未來です。将来に輝く夢をみていた20代から、そろそろ人生に疲れがみえる43歳までのボクを、どのように演じ分けるのかが注目ポイント。
そして、映画独自のオリジナルキャストである現在のボクの恋人・恵を、大島優子が演じます。
過去の初恋の想いに浸るボクにとって恵はどんな存在になるのか。原作にはないだけに、気になるところです。
また、CDウォークマンやMDプレーヤー、ジョン・レノンの『スタンド・バイ・ミー』が街に流れたりと、ある一定の年代には懐かしいカルチャーも登場。
現在と過去の街や社会の移り変わりの様子も必見です。
1990年代当時、社会を一世風靡した文化や娯楽が再び見られるのは楽しいことに違いありません。
映画『ボクたちはみんな大人になれなかった』の作品情報
【公開】
2021年(日本映画)
【原作】
燃え殻:『ボクたちはみんな大人になれなかった』(新潮文庫刊)
【脚本】
高田亮
【監督】
森義仁
【キャスト】
森山未來、伊藤沙莉、東出昌大、SUMIRE、篠原篤、平岳大、片山萌美、高嶋政伸、ラサール石井、大島優子、萩原聖人
まとめ
ノストラダムスの大予言が健在で、何かが始まりそうで、終わりそうだった1990年代。それは、まだスマホが普及していない頃のこと。
本作の主人公・ボクは、まさにそんな時代の青春を謳歌しました。
出会い系サイトもなく、雑誌の文通相手募集コーナーから見つけた文通相手のかおりに、手紙にどんな言葉を書こうかと思いふけるボク。
その姿に自分の初々しい青春時代を重ねる人も多いのではないでしょうか。
一方、この物語の根底にある生きていく上での切なさや過去への思慕は、世代を超えた反響を呼びました。その大きな理由は、SNSの詩人ともいうべき原作者‟燃え殻”の「エモさ」にあると言えます。
原作でたっぷりと「エモさ」を感じたなら、映画化された作品からは「エモい」情緒あふれるリアルな映像を楽しめることでしょう。
映画『ボクたちはみんな大人になれなかった』は、2021年11月5日(金)より、シネマート新宿、池袋シネマ・ロサ、アップリンク吉祥寺ほか、ロードショー&NETFLIX全世界配信開始!。