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Entry 2021/01/14
Update

映画『ベイビーティース』感想解説と考察。ラストまでエリザ・スカンレンの演技力と家族愛に泣ける感動作!

  • Writer :
  • 石井夏子

映画『ベイビーティース』は、2021年2月19日(金)よりロードショー。

前衛的な世界観で少女の最初で最後の恋をヴィヴィッドに描き出した、シャノン・マーフィ監督長編デビュー作『ベイビーティース』。

『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』(2019)のエリザ・スカンレンが、恋をすることで限りある命を謳歌し始めるミラ役を好演。

オーストラリアを代表する俳優エシー・デイヴィス、ベン・メンデルソーンも、彼女を見守る両親役でストーリーに厚みを持たせました。

2021年2月19日(金)よりロードショーされる映画『ベイビーティース』についてご紹介します。

映画『ベイビーティース』の作品情報

(C) 2019 Whitefalk Films Pty Ltd, Spectrum Films, Create NSW and Screen Australia

【日本公開】
2021年(オーストラリア映画)

【原題】
BABYTEETH

【監督】
シャノン・マーフィー

【キャスト】
エリザ・スカンレン、トビー・ウォレス、エシ―・デイヴィス、ベン・メンデルソーン

【作品概要】
監督は、本作が⻑編デビューとなるシャノン・マーフィー。世界各国の映画祭を席巻、「注目すべき10人の監督」(Variety誌)にも選出されています。

ミラ役は『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』(2019)で注目を集め「次世代スター10人」(Hollywood Reporter誌)にも選ばれたエリザ・スカンレン。

モーゼス役には、本作でヴェネチア国際映画祭にて最優秀新人賞を受賞したブレイク必至のトビー・ウォレスが務めました。

映画『ベイビーティース』のあらすじ

(C) 2019 Whitefalk Films Pty Ltd, Spectrum Films, Create NSW and Screen Australia

16歳の高校生、ミラは、病に体を蝕まれ、思うように過ごせないもどかしさを感じていました。

カウンセラーの父ヘンリーと、元ピアニストの母アナは、ミラをとても愛していて、それゆえ過保護気味。

ある朝、ミラは、モーゼスという青年と出会います。彼に興味を持ったミラは、なりゆきで、彼にお金を渡すかわりに、自分の髪の毛のカットを頼みます。

モーゼスは23歳で無職。全身タトゥーだらけで、ドラッグ漬け。実家から勘当されている彼には、帰る場所がありません。

ミラの両親は、モーゼスと付き合うことを反対しますが、ミラは分け隔てなく接してくれるモーゼスに恋をしました。

ミラの世界は、モーゼスと関わることで、刺激に満ちたものとなっていき…。

映画『ベイビーティース』の感想と評価

(C) 2019 Whitefalk Films Pty Ltd, Spectrum Films, Create NSW and Screen Australia

舞台を映像作品として昇華

本作『ベイビーティース』は、脚本を担当したリタ・カルネハイスによる同名舞台『BABYTEETH』を原作としています。

少ない登場人物、その中での濃密な関係性、時空の飛躍など、その名残を感じさせます。

そしてそこに、映像だからこそできるカメラワークを駆使。ミラ視点での場面では、吐息を感じられるほどのクローズアップで彼女の感情の変化を捉え、両親視点での場面は、広角レンズを使用した長回しで、彼らの空虚な関係性を捉えることに成功しています。

また、色も効果的に使い、ミラの心情を表現。ミラが被るウィッグの色であり、作中に何度か登場するターコイズブルー(青緑色)は、明るい空や南国の海のような、開放的なイメージの色です。

ブルーには「内向的」「コミュニケーション」という意味が、グリーンには「調和」「バランス」という意味があります。

そのふたつが合わさったターコイズブルーには、「周囲と調和してバランスを図りながらコミュニケーションを取る」という意味が生まれ、まさにバラバラになりそうな家族や、孤独な人々を繋いでいくミラにぴったりはまります。

ミラの輝きと両親の葛藤の対比

(C) 2019 Whitefalk Films Pty Ltd, Spectrum Films, Create NSW and Screen Australia

ミラは16歳ですが、まだ生え変わらない乳歯があります。それは大人から守られてきたミラ自身。

両親は心配と愛情から、ミラを無理に押し込めてきました。ミラがいたからこそ繋がっていられたヘンリーとアナにとって、ミラを失うかもしれないという恐怖は耐え難いもの。

そこへ、ヘンリーたちが深く関わりたくないタイプの人間・モーゼスが入り込むことで、本作はスリリングに展開していきます。

モーゼスと出会うことで、ミラは揺れ、大人への階段を駆け足で上ります。今までできなかったこと、禁止されていたことを、モーゼスと経験していくミラは、危うい美しさをまとい始めます。

命の炎を燃やして輝くミラと反対に、崩れ落ちそうになりながらも必死で家族であろうとするヘンリーとアナの葛藤に胸が締め付けられました。

ミラ役のエリザ・スカンレンは、『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』(2019)にて三女のベス役で注目を集めた若手実力派

本作では、死んだように生きていた冒頭から、命ある限り精一杯に生きようと変化していくミラをキュートに演じています。少女らしさの中にふと現れる色気にもドキッとさせられました。

相手役のモーゼスを演じるのは、13歳で出演した映画デビュー作『Lucky Country』(2009)で、オーストラリア映画協会賞最優秀若手俳優賞にノミネートされたトビー・ウォレス

本作では、どうしようもないダメ男・モーゼスをリアリティたっぷりに体現し、ヴェネチア国際映画祭にて最優秀新人賞を受賞。やり場のない孤独を抱えたモーゼスが、ミラと関わることで平穏を取り戻していくさまにも注目です。

そして、両親役のエシー・デイヴィスとベン・メンデルソーンの演技力にも魅了されます。アーティスト気質で、繊細な母親アナと、包容力があるようで、実は迷ってばかりの父親・ヘンリーの姿に、激しく心を揺さぶられました。

まとめ

(C) 2019 Whitefalk Films Pty Ltd, Spectrum Films, Create NSW and Screen Australia

本作は、お涙頂戴の難病もの映画とは一線を画しています。無鉄砲なミラの言動は、生きていることへの喜びに満ちており、不思議な愛おしさで包み込んでくれます。

ただただ一所懸命に目の前にいつ人物にぶつかっていくミラの姿は、観客の心をつかんで離さないことでしょう。

派手さはありませんが、鑑賞後、時間が経つにつれ、じんわりと心にしみ入ってくる、温かいラブストーリーです。
 
映画『ベイビーティース』は、2021年2月19日(金)より新宿武蔵野館、渋谷ホワイトシネクイントほか全国で公開




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