映画『愛がなんだ』は第31東京国際映画祭“コンペティション部門”に選出された、恋愛映画の概念をぶち破る意欲作です。
原作は直木賞作家、角田光代の傑作同名小説。監督は“正解のない恋の形”を模索し続けてきた恋愛映画の旗手、今泉力哉が務めます。
女性作家の視点を得て、今泉ワールドが深化!「片思い」を徹底的に考察する、可笑しく切ないラブストーリーです。
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映画『愛がなんだ』の作品情報
【公開】
2019年春(日本映画)
【原作】
角田光代『愛がなんだ』(角川文庫)
【監督】
今泉力哉
【キャスト】
岸井ゆきの、成田凌、深川麻衣、若葉竜也、片岡礼子、筒井真理子、江口のりこ
【作品概要】
直木賞作家・角田光代の同名恋愛小説を、『退屈な日々にさようならを』の今泉力哉監督が映画化。
出演は『おじいちゃん、死んじゃったって。』の岸井ゆきの、『ニワトリ★スター』の成田凌が共演します。
アラサー女性の一方通行恋愛ドラマが展開します。
映画『愛がなんだ』のあらすじ
28歳のOL山田テルコ(岸井ゆきの)。
マモル(成田凌)に一目ぼれした5カ月前から、テルコの生活はマモル中心となってしまいました。
仕事中、真夜中と、どんな状況でもマモルが最優先。仕事を失っても、友だちから忠告されてもお構いなし。
そんなテルコの熱い思いとは裏腹に、マモルはテルコにまったく恋愛感情がなく、単なる都合のいい女でしかありませんでした。
テルコがマモルの部屋に泊まったことをきっかけに、2人は急接近したかに思えましたが、テルコは頼まれてもいない家事やお世話に勤しみ、その結果、マモルからの連絡が突然途絶え…。
登場人物の呼吸が聞こえてくる原作
原作は直木賞の受賞経歴を持つ、日本を代表する女流作家・角田光代の同名小説『愛がなんだ』。
目を背けたくなるような感情や出来事をリアルに描き、そして引き込ませる名手です。
角田さんの書く小説は、登場人物が呼吸をしています。
原作『愛がなんだ』では、主人公テルコの一人称で進んで行くのですが、まるでテルコが目の前で話しているのではないかと思うほどに、彼女の心情が伝わってきます。
しかもこのテルコ、極端すぎ。
マモルに恋をした途端、マモル以外は“どうでもいい”ときっぱり切り捨ててしまうのです。
女友達との約束もドタキャン、社用電話には出ないのにマモルとは勤務時間中でも携帯で長電話、何日も同じ服を着てすっぴんで出社、デートの約束が入ると定時前だろうとトイレにこもって念入りにお化粧…。
こんな態度を取っていたのでは、テルコ自身が“どうでもいい”存在と思われてしまっても仕方ないですね。
原作ではテルコの一方的だった目線。映画ではどのように描かれているか興味が膨らむばかりです。
“自然さ”を大事にする今泉力哉監督
一風変わった恋愛映画と言えばこの人、今泉力哉。
今泉監督の作品は俳優同士のエチュード(台本なしであるテーマにそって行う即興劇)から作られることも多いそう。
これは俳優への信頼、そして作品世界への自信があってこそ出来る作り方です。
監督の作品は登場人物が実在しているのではないかという錯覚に陥るほど、俳優が今泉ワールドに自然に溶け込んでいるんです。
本作についても、今泉監督はこうコメントしています。
「テルコをはじめとした、〈誰かを思いきり好きな登場人物たち〉に嫉妬しながら、また、その好意が持つ温度に気をつけながら、この映画を作りました」
監督の作品世界への思い入れと距離の保ち方が窺えます。
色彩、鮮やかなカット、独特の間、そして今泉監督ならではの“毒”…。
映画『愛がなんだ』では、女流作家の力ある原作を新たな武器にした、今泉監督の更なる進化をお見逃しなく。
若手実力派女優・岸井ゆきのが一途すぎて
テレビ、映画、舞台と引っ張りだこな岸井ゆきの。
小柄で人懐っこい笑顔の彼女には、既視感を抱かせる“魔性”が潜んでいます。
あれ?この子見た事あるな。どこで会ったんだっけ?なんだか懐かしい。
彼女にはそう思わせる力があります。
ふと気が付くと隣にいて、優しく微笑んでいてくれる。そんな温かい気持ちにさせてくれるんです。
彼女の初主演映画『おじいちゃん、死んじゃったって。』(2017)をご覧いただくとその魅力の虜になるはず。
岸井が今回演じるのは、“自分の事を好きではない男に、ずっとはりついていたい女”。
そう聞くと、岸井のあの可愛らしい笑顔が、何だか怖く見えてきませんか。
恐ろしく一途な彼女の姿に、あなたは何を感じるでしょうか。
年上女性を手の平で転がす小悪魔⁈
モデルとして芸能界にデビューした成田凌。
元々俳優志望だったこともあり、近年俳優としても活躍の場を拡げています。
俳優だから当たり前、と思われるかもしれませんが、作品によって表情ががらっと変わる方です。
お恥ずかしながら、名刺管理SNSのCMとコーヒーのCM、姿もしゃべり方も全く違うので、同一人物とは気付きませんでした。
それだけ役に飛び込んでいける、天性の表現者なのでしょう。
すらりとした長身に、柴犬のような黒目がちな瞳。
こんな素敵な男性に熱っぽい声で「風邪ひいて寝てるんだ」なんて電話口で言われたら、テルコでなくても駆けつけてしまうに違いありません!
東京国際映画祭のコンペティション部門に選出された邦画代表作
第31回東京国際映画祭「コンペティション部門」は、2018年1月以降に完成した長編映画を対象に、世界109の国・地域、応募作品1829本の中から、厳正な審査を経て、国内外の16本の作品が選出されました。
選出作品は、東京国際映画祭の期間の2018年10月25日(木)〜11月3日(土・祝) のプログラム内で上映されます。
ちなみに16作品のうち日本映画は、阪本順治監督・稲垣吾郎主演『半世界』と、本作『愛がなんだ』の2作品のみ。
プログラミング・ディレクター矢田部吉彦は、選出理由についてこう語っています。
「『愛がなんだ』は、ロマンティック・コメディー群像劇でキャリアを築いてきた今泉力哉監督が角田光代の原作を映画化した。恋愛ゲームは基盤にあるが、好きな相手に対する想いが究極の形を取るに至り、『愛がなんだ』は並の恋愛映画の枠を超えてゆく。女性作家の視点を得て、今泉ワールドが深化した。コケティッシュな魅力が溢れる岸井ゆきの、ふてぶてしい説得力の成田凌の演技も特筆に値する。両作品ともに本年の日本映画を異なる形で代表する作品である」
矢田部ディレクターのコメントを読むと、益々公開が待ちきれなくなりますね。
東京国際映画祭レッドカーペットで激写!
10月25日に開幕した、第31回東京国際映画祭。
レッドカーペットイベントが、東京・六本木ヒルズアリーナにて開催されました。
激写した華やかな様子を写真でお届けします!
まとめ
恋に溺れる女性の心情を繊細に描いた素晴らしい原作。
原作のイメージ通りで更にその想像を膨らませてくれる実力派キャスト、そして巨匠への階段を着実に上っている今泉力哉監督。
「好き」という気持ちは溢れているのに、言葉にすることから逃げ続ける登場人物たち。
この出口がない迷路のような恋愛地獄は、“正解のない恋の形”を模索し続けてきた今泉力哉監督の、1つの答えなのでしょう。