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Entry 2024/02/16
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【上西雄大監督インタビュー:前編】『宮古島物語ふたたヴィラ 再会ぬ海』人を“出会わせる力”を持つ島の物語で名優陣が魅せた“見えない力”を伝える力

  • Writer :
  • 河合のび

映画『宮古島物語ふたたヴィラ 再会ぬ海』は2024年2月16日(金)なんばパークスシネマにて大阪先行公開、3月1日(金)シネ・リーブル池袋ほかで全国順次公開!

沖縄県・宮古島の小さなヴィラを舞台に、人々の絆と再生を描いた人間ドラマ『宮古島物語ふたたヴィラ』の続編となるシリーズ第2作『宮古島物語ふたたヴィラ 再会ぬ海』。

俳優であり実業家の柴山勝也と、シリーズ前作を手がけた上西雄大監督が主演を務め、古川藍、徳竹未夏、ルビー・モレノ、松原智恵子が前作から続投。さらに賀集利樹、奈美悦子、村田雄浩、笹野高史らが新たに顔を揃えました。


(C)藤咲千明/Cinemarche

今回の劇場公開を記念し、映画『宮古島物語ふたたヴィラ 再会ぬ海』を手がけた上西雄大監督へのインタビューを、前後編にわたって掲載

前編ではシリーズの「大切な人との再会が叶う不思議なヴィラ」という物語の着想の経緯、続編となる『再会ぬ海』で描きたかったもの、映画に出演した名優陣が持つ「見えない力を伝える力」などを語ってくださいました。

の撮影現場で得られた過去と今の出会いなどを語ってくださいました。

【上西雄大監督インタビュー記事《後編》はコチラ→】

宮古島で体験した「人を引き合わせる力」


(C)Yudai Uenishi

──心から願うことで、大切な者と再会できる不思議なヴィラをめぐる「宮古島物語ふたたヴィラ」シリーズの物語は、どのような経緯で形作られたのでしょうか。

上西雄大監督(以下、上西):そもそも第1作の『宮古島物語ふたたヴィラ』の企画は、続編でもかんかかりゃ(神様)の貴吉を演じてくださった柴山勝也さんがきっかけなんですが、柴山さんは宮古島でリゾートヴィラを経営されているんです。

柴山さんは海が綺麗で、空が青くて、島全体に人を包み込む何かがある宮古島を愛されていて、そんな宮古島をより皆に知ってもらいたい、そのために映画を作ってほしいというお話を柴山さんからいただいたことから、実際に島へ訪ねることにしました。

宮古島は、本当にどこまでも空が広がっていました。そして僕自身も島の不思議な力を体験したといいますか、普段は同じ大阪に住んでいるけれど、中々会えずにいた人たちと宮古島で会うことができたんです。

人と人を引き合わせてくれる、再会させてくれるような力が、この島にはあるのかもしれない。そうしたイメージが湧きまして、その晩宮古島に泊まりながらプロットを作ったのが『宮古島物語ふたたヴィラ』の物語なんです。

第1作が宮古島チャリティー国際映画祭で上映された際は本当に大好評で、上映後の拍手の中で柴山さんが「続編を作ろう」という提案に、僕も感極まって賛成したのが今回の第2作につながったんです。

第1作という物語の土壌がある中で


(C)Yudai Uenishi

──シリーズ第2作となる『宮古島物語ふたたヴィラ 再会ぬ海』では、続編としてどのように物語を発展していきたいと考えられたのでしょうか。

上西:第1作では「ふたたヴィラ」という不思議なヴィラが生まれた経緯と、そのヴィラが生み出した多くの再会により人が救われるという設定を紹介し切るまでにとどまりました。

ただ第1作の時点で「ふたたヴィラにはどんな人たちがいて、どういう風にヴィラへ訪れた人々を出迎えてくれるのか」という物語の土壌を成り立たせることができたので、その上でどんな出会いと救いを新たに描くのかというシリーズの広がりを作れたのは大きかったですね。

ふたたヴィラには出会いを迎え入れてくれる、見守ってくれる人がいる。この世界には様々な無数の出会いが存在する中で、ふたたヴィラにどんな人が訪れたら、どんなドラマが生まれるのか。そうした脚本を書き進めていく上での楽しみもできるのは、やっぱり続編ならではの魅力かなと感じています。

現実の世界ではいろんな傷を負い、いろんな苦しみを抱えながら生きている人がいます。そうした人が苦しみから救われる瞬間、救いを見つけることのできた瞬間ほど、幸せなことはないはずです。

そして幸せを手にできた人を見たら、他者も幸せな気持ちになれます。「宮古島物語ふたたヴィラ」というシリーズも、そういう映画で在り続けたいと感じています。

見えない力を伝えてくれる名優たち


(C)Yudai Uenishi

──第2作は前作からのキャストはもちろん、「名優」と呼ばれる優れた俳優陣も新たに出演を果たしています。

上西:僕が観続けてきた昔ながらの映画は、役者の力がその作品に直結しています。だからこそ僕は、役者の演技の力がどれほど作品を作る力になるかを強く確信しています。

前作から続けて出演してくださったルビー・モレノさんや松原智恵子さん、新たに出演してくださった笹野高史さんや奈美悦子さんなど、かつて僕が映画館で観た本当に素晴らしい役者の方々が『再会ぬ海』でその演技の力を注いでくださっています。僕はそれを作品として残していくことを心がければ、とても力を持った映画にできると考えました。

また僕も一役者として、演技の力がとても高い方々とお芝居を共にさせていただく中で本当に勉強させてもらえました。

撮影した映像の中の自分の表情を見ても「僕にこんな表情ができたんだな」と思いがけず気づかされる瞬間がありました。それはお芝居をご一緒している役者の皆さんから向けられた演技や感情に、自分が自然とリアクションできたから成り立っていたといいますか、受け取るだけで自分の力以上のものが現場で溢れてきたんです。

その力を受け取らせてくれること自体が、役者としての技量なんだと痛感しました。表面上の声や表情だけでなく、見えない力が伝わってくる。『再会ぬ海』はそんな昔ながらの映画で鍛えられ続け、今の映画にも不可欠な役者の皆さんの素敵さを再認識できた作品だと感じています。

松原智恵子と佐々木勝彦が「息子」にしてくれた


(C)Yudai Uenishi

──上西監督は前作から引き続き津吉を演じられていますが、その母・寿子役を松原智恵子さん、父・眞吉役を佐々木勝彦さんが務めていますね。

上西:松原智恵子さんも、息子役の僕へ本当に「息子」に対する想いを向けてくれて、そのおかげで芝居の中の僕も自然と「息子」の表情をしていました。それは監督として映像を観直しても、思わず胸に来るほどでした。

実は僕、昔から自分の顔が苦手だったんです。けれど今回の『再会ぬ海』で佐々木さんと父と子の芝居を続けるうちに、何となく佐々木さんと僕の顔が本当に父子らしく見えてきたんです。

完成した映画を観ても、確かに津吉と眞吉は表情からも「父子なんだなあ」と感じられる瞬間があって、堪らない気持ちになりました。撮影当時も佐々木さんが演じる眞吉の声が、津吉を演じる僕の中で無二のものに感じられて、聞いているだけで泣けてきました。父と子の場面も、佐々木さんの役者としての力に作っていただいたものだと思います。

松原さんが母親の寿子を、佐々木さんが父親の眞吉を演じてくださったおかげで、僕は二人の間の息子である津吉を演じ切れました。作品を通じて名優の方々と同じ時間を共にできたことは、役者として本当に幸せな時間でした。

【インタビュー《後編》に続く】

インタビュー/河合のび
撮影/藤咲千明

上西雄大監督プロフィール


(C)藤咲千明/Cinemarche

1964年生まれ、大阪府出身。俳優・脚本家・映画監督・劇団「10ANTS」代表。2012年に10ANTSを旗揚げ後、関西の舞台を中心に活動を開始。

他劇団への脚本依頼を受けたのを機に、現在では劇映画・Vシネマ「コンフリクト」「日本極道戦争」シリーズの脚本なども手がける。そして2012年、短編オムニバス映画『10匹の蟻』より映画製作を始めた。

自身が主演も務めた監督・脚本作『ひとくず』(2020)はミラノ国際映画祭での最優秀作品賞・最優秀男優賞など多数の海外映画祭で受賞。その後も『ねばぎば 新世界』(2021)『西成ゴローの四億円』(2022)『宮古島物語ふたたヴィラ』(2023)『ヌーのコインロッカーは使用禁止』(2023)など多くの映画を監督する。

2024年2月・3月からは『宮古島物語ふたたヴィラ』の続編となる『宮古島物語ふたたヴィラ 再会ぬ海』が公開されるほか、『うさぎのおやこ』が同年春に公開を予定している。

映画『宮古島物語ふたたヴィラ 再会ぬ海』の作品情報

【公開】
2024年(日本映画)

【監督・脚本・プロデューサー】
上西雄大

【エグゼクティブプロデューサー】
柴山勝也

【キャスト】
柴山勝也、上西雄大、古川藍、徳竹未夏、賀集利樹、筒井巧、優木千央、ルビー・モレノ、春田純一、佐々木勝彦、奈美悦子、村田雄浩、笹野高史、松原智恵子

【作品概要】
沖縄県・宮古島の小さなヴィラを舞台に、人々の絆と再生を描いた人間ドラマ『宮古島物語ふたたヴィラ』の続編となる第2作。2023年のマドリード国際映画祭では、最優秀作品賞・最優秀主演男優賞(上西雄大)のW受賞を果たした。

主演は柴山勝也と、本作の監督・脚本を務めた上西雄大。前作から古川藍、徳竹未夏、ルビー・モレノ、松原智恵子が続投で出演する他、新たなキャストとして賀集利樹、奈美悦子、村田雄浩、笹野高史ら豪華俳優陣が顔を揃えた。

映画『宮古島物語ふたたヴィラ 再会ぬ海』のあらすじ


(C)Yudai Uenishi

大阪から宮古島にやって来た不動産業の碧海貴吉が建設した小さなヴィラ、ふたたヴィラ。そこは泊まれば心から願う再会をかなえてくれると言われ、様々な人が訪れるようになる。

その後、島ではかんかかりゃ(神様)と呼ばれるようになった貴吉の死により、ふたたヴィラを継承した娘・陽葵は父の意思を引き継ぎ、人々に再会と救いをもたらすために宮古島に身を置くことに。

再会をもたらすふたたヴィラによって様々な家族の絡み合った糸がほどかれ、再び愛情を取り戻していく……。

【上西雄大監督インタビュー記事《後編》はコチラ→】

編集長:河合のびプロフィール

1995年生まれ、静岡県出身の詩人。

2019年に日本映画大学・理論コースを卒業後、映画情報サイト「Cinemarche」編集部へ加入。主にレビュー記事を執筆する一方で、草彅剛など多数の映画人へのインタビューも手がける(@youzo_kawai)。


(C)田中舘裕介/Cinemarche




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