劇場版『奥様は、取り扱い注意』は2021年3月19日(金)より全国東宝系にてロードショー公開!
綾瀬はるかが「元特殊工作員」という秘密を持った新米主婦を演じ、悪者を次々倒す迫力のアクションをスタントなしで熱演したことでも話題となった大ヒットドラマ『奥様は、取り扱い注意』が満を持して映画化。
それがストーリーもアクションも大幅にスケールアップし、極上のエンターテインメントとして仕上げられた劇場版『奥様は、取り扱い注意』です。
本作を手掛けたのは、「カイジ」シリーズや『ST 赤と白の捜査ファイル』『ごくせん THE MOVIE』など数々の大ヒット作を手掛けてきた佐藤東弥。
ドラマ放映時は「一人の視聴者」として観ていたと語る佐藤東弥監督。どのような構想と演出で人気ドラマの劇場版に挑んだのか。また評判の高い綾瀬はるかのアクションを実際に見て、何を感じ取ったのか。劇場公開を前にお話をうかがいました。
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ドラマ版では描き切れなかったものを
──『奥様は、取り扱い注意』は新米主婦がご近所の主婦友だちのトラブルを特殊工作員時代の能力で解決するという設定で、常に観る者をワクワクさせてくれるドラマでした。その映画化オファーを受けられた際のお気持ちを改めてお聞かせください。
佐藤東弥監督(以下、佐藤):連続ドラマの『奥様は、取り扱い注意」は放送時に視聴者の一人として観ていました。日常の話をしているのに、すごくレベルの高いアクションも描かれる。その意外性が面白く、毎回楽しみに観ていたので、監督のオファーが来たときはうれしかったですね。
真っ暗になって銃声が響いたドラマのラストシーン。あの後、物語や菜美たちはどうなったのか。視聴者は気になったはずです。
また、菜美と勇輝の二人はお互いに相手のことをどう思っているのか。その点がドラマでは描き切れていないと感じていたので、この2点は必ず映画に盛り込もうと考えました。
柔軟でスピードもある綾瀬はるかのアクション
──ドラマは作家の金城一紀さんが綾瀬はるかさんの高い身体能力を知って企画されたそうですが、本作の撮影にあたって、実際に綾瀬さんのアクションをご覧になっていかがでしたか。
佐藤:いや、すごかったですね。柔軟性があるしスピードもある。動きは正確ですし覚えるのも早い。こんなに動ける方なんだと驚きました。
そして、少し独特なアクションのセンスを持っているとも思えました。彼女のアクションは、柔軟性と女性的なものを感じさせる一方で、実際には当てていないはずなのに「痛てぇ!」って声が出てしまいそうなくらい痛く見えるんです。リアルな格闘技の勘どころを分かっていらっしゃるのでしょうね。
映画化する以上はテレビ版より質的にも量的にも見応えのあるアクションにしたい。綾瀬さんのアクションの実力と魅力を再認識したからこそ、映画というスケールでのアクションを何としても成功させなくてはいけないと思いました。
──確かに綾瀬さんのアクションは、ドラマ版よりもぐっとスケールアップしているのを感じました。特にクライマックスでの一騎打ちはハラハラするほどの緊張感がありますね。
佐藤:ドラグノフとの対決はこの映画の肝だったので、綾瀬さんも非常に気合が入っていました。相手の方は身体が大きく、格闘技をやっていらした方なので大変だったと思います。クライマックスを含めて、どの場面でのアクションもレベルが高く、決して1テイクで撮り切れるようなものではありませんでした。
アクションの殺陣は3ヶ月程前に組んで身体に入れていくのですが、1日に練習できる時間はクールダウンも含めて2~3時間が限界です。本番上でいうと1~2分の動きしかできません。そのため映画で演じるアクションをすべて覚え、自分のものにするのには数ヶ月かかります。綾瀬さんも身体を作り直すところから始めて、時間を掛けてトレーニングをされていました。
しかもアクションは終わりがありません。いくらでも完成度を高められる。こちらは満足していても、綾瀬さんは「もう一回やらせてください」と挑戦し続ける。そうした彼女の思いを、撮影所やスタッフの都合で邪魔したくない。「そういう風にアクションをしたいのなら、こういう風に撮るよ」など、スタッフ陣も綾瀬さんのアクションをよりよく撮れるよう、臨機応変に動いてくれました。
「菜美であり久実である女性」を衣装で表現
──映画ではアクションだけでなく、夫婦の愛情の形についても描かれていました。また本作では「菜美」と「久実」の二人を演じることになった綾瀬さんとは、その役についてどのような相談をされたのでしょうか。
佐藤:映画では菜美は記憶を失ってしまい、「久実」として穏やかな生活をしています。菜美としての記憶が戻るのか。そこが映画的に面白いところだと思います。
記憶が戻ると得られるものがあるが、失うものもある。失うことの切なさ、残酷さは丁寧に描きたい。今は「菜美」なのか「久実」なのかといった場面ごとの状況を綾瀬さんに伝えました。その上で、「菜美であり久実である女性」を一人の人物として無理なく作り上げるため、綾瀬さんとは何度も役について話し合いました。
特に衣装合わせには多くの時間をかけています。映画作中での菜美の衣装に注目すると、彼女がいつ記憶が戻るのか、どう考え方が変わったのかが分かるはずです。特にラストの衣装は、衣装の「色」で菜美の決意を表現しています。
新たな秘密と葛藤を抱えた夫婦
──映画では勇輝の出番がより増えたように見えました。映画では新たな「妻への秘密」を抱えることになった勇輝ですが、西島秀俊さんには彼をどう演じてほしいと伝えられましたか。
佐藤:この物語は勇輝だけが知っていることもありますが、それを全部セリフで説明しているわけではありません。「勇輝は今、ここまで知っている」とか「こういう風に思っている」といったことを表現する、とてもデリケートなお芝居を西島さんにしていただきました。
映画には二人のラブシーンもあるのですが、そこは三人でかなり話し合いました。勇輝は菜美を愛している。しかしその場面にいるのは菜美ではなく、あくまでも久実です。また久実も、夫だと言われた男性をどう思っているのか。二人の気持ちをキャラクターに矛盾がない形で表現しました。
映画では檀れいさんと鈴木浩介さんが演じる元夫婦も登場します。彼らの間に愛はあるけれど、アイデンティティでは一致できない。そうした二人の姿は、菜美と勇輝に重なるはずです。元夫婦の二人は最終的にどうなるのか。それを菜美と勇輝に置き換えると、どういう意味が表れてくるのか。そういう意味では非常に重要な登場人物たちです。
隠された伏線やその答えを見つけて楽しんでほしい
──この作品を通じて監督が感じられた、綾瀬はるかさん、西島秀俊さんの俳優としての魅力をお聞かせください。
佐藤:綾瀬さんは妥協されない方ですね。より良くしたいとがんばる綾瀬さんを見て、「綾瀬さんのためにもっといいカットを撮ろう」とスタッフもがんばりました。綾瀬さんはそれを意識してやっているわけではなく、周りがいつの間にかそういう気持ちになってしまう。プロの俳優としての魅力のある、素晴らしい方だと思います。
西島さんはとにかく頼りになる方でした。微妙で難しい場面も、こちらの意図をしっかり理解してちゃんと演じてくださる。また綾瀬さんが不安なときや疲れているときは西島さんがフォローしてくれたので、随分助けられた気がします。大河ドラマでも共演されていたので、綾瀬さん自身が西島さんを深く信頼していて、お二人は仕事上のとてもいいパートナーであるといえます。
綾瀬さんの華麗なアクションを楽しんでいただくのもいいですし、アクションが苦手な方でも楽しめるように、あちこちに伏線やその答えを隠しておきました。2回・3回とご覧いただいて、細かいところまで観て楽しんでいただけるといいなと思います。
インタビュー/ほりきみき
佐藤東弥監督プロフィール
1959年4月11日生まれ。東京都出身。
1983年、日本テレビに入社。以来、数々のTVドラマの演出を担当。手掛けた主なTVドラマ作品は、「ごくせん」シリーズ(02・05・08)、『すいか』(03)『anegoアネゴ』(05)、『14才の母』(06)、「ハケンの品格」シリーズ(07・20)、『家政婦のミタ』(11)、「ST」シリーズ(13・14)、『掟上今日子の備忘録』(15)、『地味にスゴイ! 校閲ガール・河野悦子』(16)、『ウチの夫は仕事ができない』(17)、『サバイバル・ウェディング』(18)など多数。
劇場版『奥様は、取り扱い注意』の作品情報
【公開】
2021年(日本映画)
【原案】
金城一紀
【監督】
佐藤東弥
【脚本】
まなべゆきこ
【キャスト】
綾瀬はるか、西島秀俊、鈴木浩介、岡田健史、前田敦子、鶴見辰吾、六平直政、佐野史郎、檀れい、 小日向文世
【作品概要】
2017年に放送され、綾瀬はるか本人による並外れたアクションも大きな話題を集め、最高視聴率14.5%、最高総合視聴率25.6%を記録した大ヒットドラマを映画化。原案は「SP」シリーズや『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』の金城一紀。
劇場版作品となる本作の監督を務めるのは、「カイジ」シリーズや『ST 赤と白の捜査ファイル』『ごくせん THE MOVIE』など数々の大ヒット作を手掛けてきた佐藤東弥。
キャストには主人公・菜美役を務めた綾瀬はるかをはじめ、西島秀俊、鈴木浩介、岡田健史、前田敦子、鶴見辰吾、六平直政、佐野史郎、檀れい、小日向文世など実力派俳優陣が名前を連ねている。
劇場版『奥様は、取り扱い注意』のあらすじ
元特殊工作員だった過去を持つ専業主婦・伊佐山菜美(綾瀬はるか)と、実は現役の公安警察であり菜美を監視する優しい夫・伊佐山勇輝(西島秀俊)の二人は「桜井久実」「桜井裕司」に名前を変えて、小さな地方都市・珠海市で新しい生活を始めていた。実は半年前、ある出来事がきっかけで菜美は記憶喪失になっていたのだった。
二人が新生活を送る珠海市は、新エネルギー源「メタンハイドレード」の発掘に活気づいていたが、美しい海を守ろうとする開発反対派と、市長をはじめとする推進派の争いが日に日に激化。
公安は新エネルギー源開発の裏で、ロシアと結託した国家レベルの陰謀が潜んでいることを突き止め、勇輝は上司から「公安の協力者にならなければあの女を殺せ」と厳命されていた。
菜美の記憶の回復は、愛し合う二人の別れ(死)を意味する。信じるか、疑うか。逃がすか、拘束するか。勇輝は葛藤していた。
そんな中、過去の因縁と国家に追われ、菜美は大きな事件へと巻き込まれてゆく。