ドラマ『課長バカ一代』は2020年1月12日(日)よりBS12 トゥエルビにて放送、1月4日(土)よりひかりTV・dtvチャンネルにて順次配信開始!
優秀なのか?それともバカなのか?「課長補佐代理心得」の役職を背負ったサラリーマン・八神和彦が、会社に嵐を巻き起こす!?
『魁!!クロマティ高校』などを手掛けた漫画家・野中英次が、1996年から漫画雑誌「ミスターマガジン」に向け執筆、人気を博した作品を原作に実写化した作品がドラマ『課長バカ一代』です。
「課長補佐代理心得」という肩書きを受けた家電メーカー「松芝電機」の社員・八神が、上司や部下たちとともにハチャメチャな会社生活を送る様子を描きます。
そして主人公の会社員・八神和彦役を演じたのが、歌舞伎俳優としてのみならず、ミュージカル・声優など幅広く活躍されている尾上松也さんです。
今回のインタビューを通して、松也さんには撮影現場の笑いあふれる雰囲気や自身の役柄の認識、“漫画原作”というジャンルへの向き合い方などを語っていただきました。
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ふざけてない、だから面白い
──今回のドラマ『課長バカ一代』で演じられた「サラリーマン」という役柄について、演じる上での難しさなどはありましたか?
尾上松也(以下、松也):そもそも以前出演させていただいた『さぼリーマン甘太朗』(2017)にしても、今回の『課長バカ一代』にしても、演じたのは普通のサラリーマンではなかったので(笑)。
もはや特殊過ぎて「こんなサラリーマン、いるわけないだろう!?」という感じですし、「通常のサラリーマンとはなにか?」なんてことも考えませんでした。「その役にどうなり切るか?」というのは、あくまで演じる人物やモノにもよると思いますし。
ただ演じていく中で、この八神という人物のなにが面白いかというと、彼本人の気持ちとしては決してふざけているわけではないところにあるんです。
彼は何もかもを真剣にやっているんです。つまり周りからはバカみたいに見えることでも、彼の中の正義、正当性があるからこそそれを堂々と貫いているんです。でもその行動があまりにもぶっ飛んでいるので、面白さにもつながっているわけです。
それは原作の漫画はもちろん、ドラマに関してもそうだと考えています。ですので、そんな感覚を自分の中では常に意識するようにしていました。
コメディーは大歓迎
──「コメディー」というジャンルについて、松也さんはどのような思いを抱かれているのでしょうか?
松也:大好きですね、演じること自体は難しいですが。一口に「コメディー」といっても様々な種類がありますが、特にこの作品は設定やセンスがぶっ飛んでいて、それに合わせて芝居もぶっ飛んだ感じに演じることも多く、自分の主戦場としている舞台の経験が活かせる場面もありました。
そういった点において、コメディーには俳優としての自分との間に共通点を感じることがあります。ですので、映像作品におけるお芝居の中では難しさを感じる一方でやりやすさも感じていますし、もしまたコメディー作品のオファーをいただけるのであれば、是非やらせていただきたいですね。
漫画の表現からドラマの表現へ
──原作である野中英次さんの漫画『課長バカ一代』自体にはどのような印象をもたれましたか?
松也:原作漫画はドラマと比較すると画がより一層静かで、八神や周りの人々も表情の変化は少ない。けれどもその内で展開され、テロップとして描かれていくモノローグの数々はあまりにもバカバカしくて、そのギャップに思わず萌えました(笑)。
ですが、そのギャップや面白さを映像で表現するとなると、テロップを多用することもできないですし、その上で人物全員の表情がほぼ変化しないとなるとドラマ作品としても成立できなくなる。そのため、ドラマ『課長バカ一代』ではより動きと表情をオーバー気味にし、ドラマ作品として成立させることを意識して演じました。
その一方で、原作のテイストとなる部分はできるだけ保ちたいと考えていました。その思いはやはり監督とチームの中で共通していましたし、現場での相談の中で「どこまでやったら面白いのか、『課長バカ一代』らしいのか」をみなで考えながら撮影を進めていきました。
──原作漫画は1996年~2000年に漫画雑誌にて連載された作品であるため、時代的に見ると現代のテイストとの相違点もあったと思われますが、演じていく中で作品の時代性は意識されましたか?
松也:八神を取り巻く社員たちは、わりと現在の設定に近い人間であると感じています。ですが八神に関しては、原作漫画における時代設定のままドラマでもその人物像を描かれていると自分は捉えています。
八神は風貌も含めて時代がストップしている。一人だけ時代に取り残されたまま行動し、生きているんです。ただ、そういった時代錯誤にもとれるまっすぐさが、逆にドラマならではの面白さにつながっているわけです。
「理解不能さ」と「おかしな方向」を楽しんでいく
──そんな主人公・八神和彦を演じるにあたって、どのような点に難しさを感じられましたか?
松也:彼はあらゆる場面において真顔で理解不能なことを言い出すので、「この場面や台詞はどういう感情で、どういう方向性の中で演じ進めたらいいんだ?」と、演じている役者や監督もわからない場面もありました(笑)。ですが、その“理解不能さ”と向き合いながらも描き続ける過程は面白くもあり、このドラマならではの芝居作りなのかなとも感じていました。
また、八神は基本的に人の話を聞いていないんです(笑)。ですので、だれかがなにかを言っている間に突然全然違う話をしたり、本来はネガティブになるところでポジティブになったりなど、そういった極端な気質があります。その気質も面白さへとつながるのですが、場合によってはドラマを観ている方が置いてけぼりされてしまう可能性もわけです。
そのため「そうならない“笑い”へと持っていくにはどうすればいいか?」という工夫を考え続けるのですが、それはキャスト・スタッフのみなで取り組むことに大変さ、かつ楽しさを感じられました。
──主人公・八神のそれに留まらず、ドラマ全体を通しての面白さや魅力はどのようなところにあるのでしょうか?
松也:主人公の八神が特筆してバカバカしいことをしがちなのですが、よくよくドラマを観ていくと、実は松芝電機全体がおかしな場所だと気づかれるはずです(笑)。
八神だけかと思いきや、会社全体、周りの社員たちがおかしなことを言っていることがままあるんです(笑)。そしてそんなときに限って、逆に八神だけがまともなことを言っていたりする。
いわば、物語における“おかしな方向”へと進んでしまうスイッチがあちこちに潜んでいるわけです。それが八神だけでなく、いろんな場面や人物をきっかけに入る。そこが本当に面白いところだと思っていますし、本作は“おかしな方向”へと進んでいきがちな人たちのオンパレードというわけです。
僕たちはその様を楽しんで作りました。撮影現場でも本当に笑いが絶えなかったですし、本作を観ていくとその空気感も伝わるはずなので、是非松芝電機の層の厚さを、楽しんでいただければと思います(笑)。
原作愛とどう向き合うか
──本作やお話の中でも出てきた『さぼリーマン甘太朗』など、漫画を原作とした映像作品での演技において特に意識されていることはありますか?
松也:以前の『さぼリーマン甘太郎』や舞台でもそうだったのですが、「ファンとして、どう演じてもらえたら自分は嬉しいのかな?」と考えることがあります。つまり、漫画など原作にあたる作品を鑑賞し、その際に自分自身で感じとった「好きなところ」や「印象」を大事にしたいと考えているんです。
無論、原作作品をご存知ではない方がドラマをご覧になる場合も十分にあるわけですが、“原作”というものが存在する以上、やはり「“別のメディア・形式を用いた作品”として描かれる中で、原作を愛する方々はどのような形で表現してほしいのか?」は大事なこととして心に留めておきたいんです。
──現在のいわゆる“原作モノ”作品では「いかに原作と“似ている”か?」といった部分に注目が集まりがちですが、そのことについて松也さんはどうお考えでしょうか?
松也:映像作品として表現するにあたって、「これは実写化しにくい」「原作通りそのままで描くのはもったいない」と変えざるを得ない描写は、どのような作品であっても少なからず存在します。
ですが、キャストやスタッフが“原作愛”と向き合った結果が作品のどこかで見出せたら、それは原作を愛する方々からすればと嬉しいことですし、喜んでいただけることだと思うんです。
ですので、必ずしも原作通りではないこと、原作をご存知の方もそうでない方も楽しんでいただけるものづくりを前提としつつも、原作を愛する方々に「これも面白いな」と思っていただけることをまずは意識し続けたいと考えています。
常に“俳優”であり続ける中で
──ドラマなど映像作品における俳優という仕事を、松也さんご自身の中ではどのように位置づけられているのでしょうか?
松也:他の俳優さんたちと大きくは変わらないと思っています。ですが僕の中で、今ここにある演技の経験や知識、技術などを培ってこられたのは歌舞伎であり、それがベースにあるということも変わらないです。
映像やミュージカルも、その中で展開される俳優と呼ばれる人々の「演技」という行為や仕組み自体は歌舞伎と何ら変わらないので、僕は同じ演劇の一つだと捉えています。表現方法はそれぞれ異なっているため、それはその都度変えなければいけないとは感じていますが、それでもあまり区分けをしている意識はありません。
──歌舞伎における俳優のあり方と、舞台や映像におけるそれに線引きのようなものはないと?
松也:そうですね。あえてあるとすればやはり表現方法で、その違いにはその都度作品の形式に応じて向き合いたいと感じています。ですが、役を演じる中で自身の気持ちを作っていく過程などをはじめ、やっていること自体は変わらないとも思っています。
たとえばテレビのバラエティー番組などは、いわゆる“素”に近い部分でなければいけない。ですがバラエティー番組も結局は視聴者の方に観ていただけるわけですので、その中で表現をし続けるという“アイデア合戦”ともいえる戦場が常に生まれます。
その“アイデア合戦”は演技における瞬発力にもつながっていて、僕らにとっても必要な要素だと思うんです。たとえば相手が自身の想定と異なる芝居をしてきても、それにアドリブという方法で反応しなくてはいけないという場面は多々あります。
ジャズのセッションに似た瞬発力の連続はバラエティー番組では常に起きていて、芝居も本来はそうしないといけないところがあります。ですのでそういった部分も含めて、すべての活動において「“違うこと”をしている」という意識は僕の中であまりないです。
その一方で、「僕のベースにはあくまで歌舞伎である」という意識をなくしてはいけないと思ってはいます。
インタビュー・写真/桂伸也
尾上松也(おのえまつや)のプロフィール
1985年生まれ、東京都出身。1990年に二代目尾上松也として初舞台を踏み、歌舞伎俳優として活躍する一方、2012年に公演がおこなわれた蜷川幸雄演出の騒音歌舞伎(ロックミュージカル)「ボクの四谷怪談」以降、ミュージカルなどでも並行して活動をおこなっています。
また現在はドラマ、映画、バラエティー番組など幅広いフィールドで活動をおこなっており、多くの注目を浴びています。
ドラマ『課長バカ一代』の作品情報
【放送・配信日時】
(BS12 トゥエルビ)2020年1月12日より、毎週日曜日放送
(ひかりTV・dtvチャンネル)2020年1月4日より、毎週土曜日配信、順次配信
【放送地域・配信サイト】
BS12 トゥエルビ、ひかりTV・dtvチャンネル
【原作】
野中英次『課長バカ一代』(講談社刊)
【監督】
守屋健太郎、村上大樹、近藤啓介
【キャスト】
尾上松也、木村了、永尾まりや、板橋駿谷、武野功雄、坂東彦三郎、市川左團次
【作品概要】
1996年から2000年にかけて漫画雑誌「ミスターマガジン」で連載された漫画家・野中英次の人気ギャグ漫画を実写化。
「課長補佐代理心得」に任命された老舗家電メーカー「松芝電機」の社員・八神和彦が、上司や部下たちとともに真面目に仕事をしたり、真面目に“仕事以外”のバカバカしいことをする様を描きます。
主人公・八神を演じたのは歌舞伎俳優として活躍する一方で、舞台、ドラマ、声優など様々な分野でも活動を展開し続ける尾上松也。
また同じく歌舞伎俳優の坂東彦三郎はもちろん、芸域の広さで知られる名優にして歌舞伎界を代表する重鎮の一人・市川左團次も出演しています。
ドラマ『課長バカ一代』のあらすじ
老舗家電メーカー・松芝電機の商品開発企画課係長、八神和彦。彼はある日、上司から呼び出しを受け、「課長」の昇進辞令を受けることに。喜びもつかの間、その肩書きは「課長補佐代理心得」という微妙なものでした。
微妙な肩書きに困惑しながらも仕事に励む八神。しかし人前では無理にクールな表情を見せながら、どこか抜けた性格が要注意とされていた彼は、さらにその本領(?)を発揮することになっていくのでした。果たして、八神にはこれからどんな試練が待ち受けているのでしょうか!?
ドラマ『課長バカ一代』は2020年1月12日(日)よりBS12 トゥエルビにて放送、1月4日(土)よりひかりTV・dtvチャンネルにて順次配信開始!