映画『お嬢ちゃん』は新宿K’s cinemaにて2019年9月28日(土)より全国順次公開!
むき出しな気持ちを心に秘めて生きる、あるひとりの女性の生きざまを描いた映画『お嬢ちゃん』。
本作の主演を務めたのは女優・萩原みのり。骨太な作風で知られる新鋭・二ノ宮隆太郎監督が熱望してキャスティングした注目の女優です。
(C)Cinemarche
映画『お嬢ちゃん』のなかで、常に苛立ちを隠せず、しかし心の奥底に優しさを秘めた類まれな役を凛として演じ切った彼女。
このたび、本作の劇場公開を記念し、萩原みのりさんにインタビューをおこないました。
二ノ宮隆太郎監督に熱望まれてキャスティングされた裏話から、脚本に登場する自身と同じ名前の主人公「みのり」への思い、そして、二ノ宮監督と女優としてタッグを組んだことで見えてきた映画つくりの楽しさなど、お聞きしました。
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『お嬢さん』への出演までの経緯
(C)ENBUゼミナール
──映画を拝見して、重心がしっかりした面構えの良い女優さんだなと思いましたし、その演技も素晴らしかったです。まず最初に、本作『お嬢さん』に出演することになった経緯についてお聞かせください。
萩原みのり(以下、萩原):ニノ宮隆太郎監督とは以前、ドラマ『I”s』(2018)の打ち上げの席でお会いしたのが初めてです。
豊島圭介監督に「萩原は二ノ宮隆太郎という映画監督を知っておいた方がいい」と紹介されましたが、その時に『枝葉のこと』の試写状をいただいて、作品を観に行ったんです。そして試写会終了直後、「次の作品で主演をやってほしいんです」と声をかけていただきました。
嬉しいよりもびっくりよりも、お返事するよりも、あまりにも突然すぎたせいで思わず爆笑してしまいました。
──萩原さんに試写状を渡された時に、二ノ宮監督は何か仰っていましたか?
萩原:ただ一言、「俺の映画を見ろ!(笑)」とだけ。監督自身も言っているように、まあ酒癖が悪くて、正直第一印象は全然よくありませんでした(笑)。
だから、映画を見たときは、衝撃を受けました。スクリーンに映った時の説得力。こんなにもスクリーンで映える人がいる。ずっと見ていられるんです。同じ役者として嫉妬しました。
試写会鑑賞後、すぐに言葉が出ませんでした。今のが映画だったのかすらもわからないほどでした。
だから監督と直接話したくなかったし、感想を言える気もしなかったので、「あ、ありがとうございました。また今度…」とそのままそそくさと帰ろうとしたら、二ノ宮監督が追いかけてきてくださって。「まだ映画の感想を消化しきれてないのに」って思っていたところに、「いや、次の映画の主演を…」と。
「主演?」「正直、二ノ宮監督の作品に私が出れるんだろうか」と戸惑いました。
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──前作をご覧になったファンの皆さんは、萩原さんに対して「監督が主演しなくても、同じようなインパクトを与えられるんだ」と思われるのではないかと。たじろがない姿勢。「萩原みのり」が持っているインパクトの強さは圧倒的でした。
萩原:作品を撮るにあたって、監督と役者との間に認識の誤差が生まれるというか、どうしても細部まで伝わない部分があると思うのですが、『枝葉のこと』のように監督が主役を演じる場合、その間にあるものが限りなくゼロになります。ですから、二ノ宮監督が作品にしたいことは、絶対に本人がやった方が早いとも感じているんです。
だからこそ、あえて私が演じることの責任がありました。二ノ宮監督の作品のファンの方たちに「監督が主演やったほうがいい」と言われないためにも、自分は何ができるんだろうということはものすごく考えました。
主演女優・萩原みのり
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──そのような監督が主演じゃないことへのプレッシャーを、どのようにして乗り越えていったのでしょうか?
萩原:まず、「監督と役者との距離感をゼロにしたい」という監督の意向に助けられました。現場にいるときは敬語禁止で、言いたいことを全部言い合える環境を作ってくれました。
特に本作を撮り始めた当初は2人でお茶を飲みに行って、「今どう考えてる?」とか、私の気持ちについて全部聞いてくれました。そのおかげで、本来監督と役者との間にある差は埋めていくことができたように思います。
私も監督も、大勢の前だと萎縮して自分の意見をうまく伝えられないところがあるのですが、何か意見交換が必要なときは、一度2人で廊下に出て「今のシーンなんだけど…」と監督が直接話をしたり、聞いてくれたりしたことが大きかったと思います。
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──二ノ宮監督の芝居への演出面について、他に印象に残っているエピソードなどはありますか?
萩原:私が演技の中で違和感を感じた部分を、監督は私に対する演出によって変えるのではなく、相手役から変えていくようにされていました。
監督からもっとこうしてほしいと要求されることはなくて、逆にその相手役の演技と向き合い、自然に受け止めて引き出していくことに意識を向けていました。
ここまで監督から言われなかったのは初めてで、大丈夫なのかなと不安もあったのですが、撮影の途中から監督は相手の動きを変えていることに気づけました。「確かにこう来られたら、自分の動きもこう変えるしかない」といった具合にです。
1度は辞めようと思った俳優の仕事
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──今回の作品によって「俳優としての活動を継続させていこう」という意志が芽生えたそうですが、その要因はなんだったのでしょうか?
萩原:本作で演じた彼女は私ではないんですが、やっぱり彼女から出てきた言葉で、自分自身に刺さる言葉もいっぱいあって、その体験が大きかったです。
監督は今までの私の取材記事を読まれた上で脚本を作っていたので、全てが創作ではなく、私自身の現実のことも混ざっているわけです。
新体操をやっていたことや、「みのり」という名前の由来、背中の病気のこと。そういった本当の部分も入っていて、「みのり役」の芝居をしているんですけれど、私自身が役と戦っているところもありました。
最初に「みのり」役を演じてほしいと言われた時は、どうやって芝居をしたらいいのかもわかりませんでした。今までと全く違う形で芝居と向き合うことになりました。
萩原みのりから観客へのメッセージ
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──これからこの作品をご覧になる方には、どの部分に注目して観てもらいたいですか?
萩原:この質問は必ずといっていいほど聞かれるので考えていたのですが、どの部分をということではなく、130分の全てを、観客の皆さんにスクリーンで観てもらえれば伝わるものがあると思います。
逆にいうと、この作品はその130分全部を観てもらわないと伝わらない。「みのり」が最後に感情を吐露するシーンも、最初から積み重ねてきた全てのシーンがあってこそ成立しているので、130分の全てが大切ですし、観ていただけたらと思います。
二ノ宮監督の作品は、映画が好きな人にこそ届いてほしいです。私が前作の『枝葉のこと』を観た時に感じたように、劇場で観てこそ味わうことのできる特別な作品だと思います。ぜひ130分の全てをスクリーンで楽しんでいただけたらと思います。
萩原みのりのプロフィール
みのり役を演じた萩原みのり(はぎわらみのり)は1997年3月6日生まれ、愛知県出身。
2013年に『放課後グルーヴ』にて女優・ドラマデビューしたのち、同じ年に公開された『ルームメイト』にて映画デビューを果たします。
その後はドラマ『表参道高校合唱部!』『虫籠の錠前』『I”s(アイズ)』、映画『64-ロクヨン- 前編・後編』『何者』『昼顔』『ハローグッバイ』『ゆらり』『僕の好きな女の子』など多数の作品に出演し活躍。
待機作には映画『街の上で』『転がるビー玉』『サーティセブンセカンズ』などがあります。
映画『お嬢ちゃん』の作品情報
【日本公開】
2019年(日本映画)
【脚本・監督】
二ノ宮隆太郎
【キャスト】
萩原みのり、土手理恵子、岬ミレホ、結城さなえ、廣瀬祐樹、伊藤慶徳、寺林弘達、桜まゆみ、植田萌、柴山美保、高岡晃太郎、遠藤隆太、大津尋葵、はぎの一、三好悠生、大石将弘、小竹原晋、鶴田翔、永井ちひろ、高石舞、島津志織、秋田ようこ、中澤梓佐、カナメ、佐藤一輝、中山求一郎、松木大輔、水沢有礼、髙橋雄祐、大河内健太郎
【作品概要】
大ヒット作『カメラを止めるな!』(2017)を生み出した映画専門学校ENBUゼミナールのワークショップ「シネマプロジェクト」の第8弾で製作された2作品のうちの1作。
俳優として活動するかたわら映画監督として作品を手がけ、劇場デビュー作『枝葉のこと』(2017)が第70回ロカルノ国際映画祭のコンペティション部門に出品されるなど、国内外で注目される新鋭・二ノ宮隆太郎が、夏の鎌倉を舞台に、ひとりの若い女性の生き方を描きました。
映画『お嬢ちゃん』のあらすじ
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みのり、21歳。海辺の町、鎌倉でお婆ちゃんと二人で暮らしている。
観光客が立ち寄る小さな甘味処でアルバイトをしている彼女は、日々の生活の中で出会う男たちに絶対に屈しない。
大男にも平気で喧嘩を売り、持論を投げつける。誰にも媚びない、甘えない、みのり。
そんな彼女だが、ある日親友の理恵子と未来を想像した時、現実と向き合っていなかった自分に気付いてしまう。
映画『お嬢ちゃん』は新宿K’s cinemaにて2019年9月28日(土)より全国順次公開!