映画『ねばぎば 新世界』は2021年7月10日(土)より、新宿K’s cinemaほかにて全国順次公開予定。
『ねばぎば 新世界』は大阪・新世界を舞台に、村上勝太郎(通称:勝吉)と神木雄司(通称:コオロギ)が、悪徳宗教団体を倒す痛快アクション映画。
監督・脚本を『ひとくず』の上西雄大が手がけ、第8回ニース国際映画祭(フランス)では外国語部門最優秀作品賞(グランプリ)と最優秀脚本賞(上西雄大)を受賞しました。
このたびの劇場公開を記念し、勝吉役を務めた赤井英和さんにインタビュー。自身のふるさとでもある大阪・新世界が舞台の本作について、そして演じられた勝吉という役への想いを語ってくださいました。
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勝吉は自身の中にスッと馴染んでいった
──本作は、第8回ニース国際映画祭で外国語部門最優秀作品賞(グランプリ)と最優秀脚本賞(上西雄大)を受賞しました。受賞が決まった際のお気持ちとこの作品がなぜ海外で評価されたと思うか、それぞれお聞かせください。
赤井英和(以下、赤井):受賞の知らせを受けた時は、ものすごくうれしかったです。大阪・新世界の街並みや空気感が随所から感じられる作品となっているので、その雰囲気が海外の方に感じ取っていただけたことが何よりでした。
また、昔の大映映画『悪名』(1961/主演:勝新太郎、田宮二郎)にあったような、男二人が無茶を承知で大きな力に向かっていき、悪をこらしめるという物語が、海外でも非常に痛快だと思ってもらえたのではないかと思っています。それは万国共通なのかもしれませんね。
──赤井さんが演じられている勝吉は、とてもご自身に近いキャラクターのように感じられました。演じてみていかがでしたか?
赤井:おっしゃるとおり勝吉のキャラクターは、自分自身と重なる部分がたくさんありました。私は31年にわたって役者をさせていただき、いろいろな作品で主演を務めさせていただきましたが、勝吉という役はとても理解ができましたし、自分の中にスッと入ってきました。
──上西雄大さん演じるコオロギとの絆も本作の魅力です。上西さんは本作で脚本・演出を手がけていますが、実際に共演された中でどのような方だと感じとりましたか?
赤井:上西さんは監督としても素晴らしいし、役者としてもいろいろな面で助けていただきました。
作中では悪徳宗教団体の本部に殴り込みへ行く前、二人で焼肉を食べる場面があります。「命がないかもしれんぞ」というやりとりをする中、勝吉はコオロギに対して「お前のことを本当の弟やと思っとる」と口にします。私は本作の中でこの場面が特に好きで、二人の絆が感じられるなと思いました。そうした場面で描かれた「男と男の絆」というものを、海外の方も感じとってくださったのではと思います。
作中で武と父親が再会するシーンのロケ地は、赤井自身の実家
──大阪・新世界に住む人たちの温かさ、チームワークの良さが感じられる場面も随所にありました。
赤井:大阪の人たちの温かさ、人情が感じ取れるのもこの作品の魅力だと思っています。例えば勝吉が悪徳宗教団体から保護した少年・武を寝かせている場面が作中にありますが、実はあの家は私の実家なんですよ。あのあたりはもともと飛田遊郭だったんですが、そこを私の父が買い取り、何を思ったのか全て改築したんです。外観は飛田遊郭の雰囲気がそのまま残っているんですが、家の中は普通の住宅ですから、時々撮影に使ったりしています。
──赤井さんのご実家だったとは驚きです。それは赤井さんご自身が提案されたのですか?
赤井:そうです。「うちの実家はいかがですか?」と提案させていただいて、ロケハンをしてもらいました。ただ、あのあたりは撮影の許可がなかなか下りない場所だったので、ご近所のみなさんに「すんまへん」とお願いして……(笑)。お医者さん役の菅田俊さんがスクーターで登場する場面も、飛田遊郭の中を走ってきているという貴重な場面となっていますし、大阪・新世界のリアルな雰囲気が味わえるのではないかと思っています。
──物語の中では、さまざまな問題を抱えている人が登場しますが、そのたびに勝吉は「ねばぎばじゃ!」と言って励ましています。このセリフに込めた想いをお聞かせください。
赤井:勝吉には、「どんな時でも諦めたらいかん」「それで終わったらいかん」「もっともっと突き進まないかん」とみんなに教訓として伝えていきたいという想いがあります。上西監督ご自身も、そうした想いをメッセージとして観客のみなさんに伝えたかったのではと思っています。
“ふるさと”を映し出してくれたうれしい作品
──赤井さんにとって、大阪・新世界とはどんな場所ですか?
赤井:生まれ育った実家であり、子どもの頃は10円をにぎって「串カツ1本ちょうだい!」と食べたりしていた、私にとっては庭のような場所です。今は東京に住んで仕事をしていますが、新幹線で新大阪駅に着き、地下鉄・御堂筋線に乗り「動物園前」に着いて通天閣を下から見ると「おお!帰ってきたな」といつも感じますね。
「おっ!赤井帰ってきたか!」と全然知らんおっちゃんでも声をかけてくれる街なんです。「おおきに、おおきに。今日、今から時間ありますわ」と応えたりして……生まれも育ちも西成、くわえて私の父はずっと商売をしていたので、ご近所さんは古くから付き合いのある方たちばかりです。またボクシングをやっていた時も「赤井英和大阪後援会」を作ってくださり、たこ焼き屋の大将や魚屋のおっちゃんたちが集まって、いつも試合の応援に来てくださっていました。
西成・新世界界隈という場所は、私にとってふるさとであり、この映画はそのふるさとを全編を通して映し出してくれたうれしい作品なんです。
まだまだ続く気がする“おっさん2匹”の物語
──31年続けてこられた役者というお仕事を、赤井さんは今後どのように続けられたいとお考えなのでしょうか?
赤井:私は台本を書いたり、監督をしたりする立場ではなく撮っていただく側ですから、いただいた仕事は常に全力でやっていきたいです。また今回の作品は、私自身がしゃべっているようなセリフやなと思えるぐらいぴったりとハマった役でしたが、今後「これは赤井のイメージと違うやろ」と言われる作品があったら、むしろチャレンジしてみたいですね。どないなるか、私は分かりませんけれども……(笑)。
──最後に、改めて本作の見どころをお聞かせください。
赤井:この作品からは、大阪・西成、新世界の空気感を感じとっていただけると思います。今は新型コロナの問題があって難しいものの、コロナが収まった時には通天閣、新世界、西成といった街に来ていただき、その場所にある人情や浪花節的なものを感じていただくことで、よりこの作品の良さが分かってもらえるのではないかと思います。
そして私が個人的に思ったことなのですが、この映画の最後の場面で、勝吉とコオロギの物語はまだまだ続くような気がしたんです。今回は悪徳宗教団体を倒すという展開でしたが、世の中にはまだまだたくさんの悪があります。正義の味方として、そういう悪をやっつけてくれるのは、勝吉とコオロギしかいないのではないかと思います。昔の日本映画にはいろいろなシリーズものがありましたから、この作品も次があることを期待したいですね。
インタビュー・撮影/咲田真菜
赤井英和プロフィール
1959年生まれ、大阪府大阪市西成区出身。
プロボクサーとして「浪速のロッキー」の異名をとる活躍を見せた後、1988年に俳優へ転身。多数の映画・ドラマ作品に出演し、現在も大阪ではバラエティタレントとして、東京では俳優として活躍続けている。
映画『ねばぎば 新世界』の作品情報
【公開】
2021年(日本映画)
【英題】
OSAKA BROS
【監督・脚本・プロデューサー】
上西雄大
【キャスト】
赤井英和、上西雄大、田中要次、菅田俊、有森也実、小沢仁志、西岡德馬
坂田聡 、徳竹未夏、古川藍、金子昇、神戸浩、長原成樹、リー村山、 堀田眞三、伴大介 谷しげる、剣持直明
國本鍾建、上山勝也、柴山勝也、草刈健太郎
【作品概要】
大阪・新世界を舞台に繰り広げ痛快アクション映画『ねばぎば 新世界』。赤井英和と上西雄大がW主演を務め、悪徳宗教団体を倒すべく闘いを繰り広げます。
本作では上西が監督・脚本も務め、2020年6月22日からオンライン開催された第8回ニース国際映画祭(フランス)にて外国語部門最優秀作品賞(グランプリ)と最優秀脚本賞(上西雄大)を受賞。
映画『ねばぎば 新世界』のあらすじ
大阪・新世界。かつてヤクザの組を潰して回っていた「勝吉」こと村上勝太郎(赤井英和)は、自身のボクシングジムを営んでいましたが、練習生がジムで覚醒剤取引により逮捕されたことでジムを畳みました。
その後、幼馴染みの経営する串カツ店で働き出す勝吉。ある日、勝吉が串カツ屋で働く折、新世界を逃げる少年・徳永武に出会い、声を掛けるが逃げられてしまいます。
またある日、勝吉は刑務所の慰問に誘われて訪れた刑務所で、かつて共にヤクザを潰して回った弟分である「コオロギ」こと神木雄司(上西雄大)と再会。コオロギは釈放され、勝吉と共に串カツ店で働き出します。
ところが慰問から戻ると、武が悪徳宗教団体に捕まっていました。勝吉とコオロギは再びコンビを組んで、悪徳宗教団体へ乗り込みます。しかしそこには、かつて勝吉をボクシングへ導いた元チャンプの娘の琴音(有森也実)が「女幹部チャマリ」として立ちはだかるのでした。