映画『461個のおべんとう』は2020年11月6日(金)より全国ロードショー公開!
2020年11月6日(金)に全国公開を迎える映画『461個のおべんとう』は、高校へ行く息子のためにお弁当作りを3年間、毎日欠かすことなく続けたシングルファザーの父親と息子の心温まる実話に基づく物語。
「TOKYO No.1 SOUL SET」の渡辺俊美による実話エッセイを原作に、『キセキ あの日のソビト』(2017)などで知られる兼重淳監督が映画化。井ノ原快彦と関西ジャニーズJr.によるユニット「なにわ男子」の道枝駿佑が親子を好演しました。
本作の劇場公開を記念し、日本のヒップホップ界を常に牽引する音楽アーティストであり、『461個のおべんとう』では主人公・一樹が所属するバンドのMC担当である古市栄太役を務めたKREVAさんにインタビュー。
バンドライブをはじめとする撮影でのエピソード、主演を務めた井ノ原快彦さんに感じた魅力、ご自身の音楽活動と「言葉」に対する思いなど、貴重なお話を伺いました。
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撮影そのものが「ライブ」だった
──今回の映画では主演の井ノ原快彦さん、ミュージシャンのやついいちろうさんの三人で人気バンド「Ten 4 The Suns」のメンバーを演じられたわけですが、ライブの場面をはじめ三人での撮影の様子はいかがでしたか?
KREVA:とにかく、イノッチ(井ノ原)とやっつん(やつい)の三人でずっと喋っていました。おかげで、役作りそのものは完璧にすることができました(笑)。ライブステージに立っている時もそうでない時も、とにかく三人で喋り続けて、そのままの雰囲気を撮影へとぶつけていく。その繰り返しだったと思います。実は最初に二人と一緒に撮影したのは、バンドのポスター用写真撮影だったんですが、その間もずっと喋って、何気ない言葉を交わし続けていました。
またライブシーンの撮影では、カットごとのセッティングをスタッフさんたちが進めている間にも、ライブに訪れたお客さん役のエキストラさんも交えて喋っていましたね。準備が整ったら、演奏と撮影を。それが終わったらまたみんなで喋って、次のカットの準備が整ったらまた演奏と撮影をして、エキストラのみなさんもちゃんと盛り上がってくれる。本当のライブのような状態でした。「俺たち、人気あるな」と三人でも話していました(笑)。
映画の作中ではバンドがメディアからのインタビューを受ける場面で、イノッチ演じる一樹がレコーティングの際に「ごめん、もうワンテイク収録させて」と言って僕とやっつんが「えー」とぼやく場面があるんですが、そういった場面でもとにかく自然にというか、アドリブ満載で楽しく撮り進めることができました。
責任を引き受けながらも「自然体」でいられる
──KREVAさんの眼から見て、「イノッチ」こと井ノ原さんはどのような方だと感じられましたか?
KREVA:イノッチは引き受けている「責任」の多さと大きさに関しては、日本の中でも有数の人だと思うんです。複数のCMにも出演しているし、番組の司会も務めている。その上でコンサートでは、数え切れないほど多くの人々を常に楽しませている。そうやって「多くの人々の面前に立つ」という責任を引き受けること自体にとても慣れているはずなのに、いつも「自然体」でいられるのがイノッチの凄いところだと思うんです。音楽に関しても無理にがっついてなくて、やはり「自然」に向き合えているんです。
またこれは兼重監督もおっしゃっていたことなんですが、イノッチ本人も実際に「手作りのお弁当」を作っていそうじゃないですか。もし「やってなさそうな方」が一樹役になって、さらにお弁当をかっこよく作っている姿を描いてしまったら「お弁当を“作ってあげています”」という風に見えてしまう。イノッチの場合は、お弁当を作っている姿が「自然」に見えるし、そういった雰囲気を醸し出せる本人の人柄はやはり真似できるものじゃないです。
学生時代の記憶
──KREVAさんご自身は、学生時代の「お弁当」にまつわるエピソードをお持ちでしょうか?
KREVA:母のお弁当で今でも思うのはやっぱり、「ご飯のすぐ隣に柑橘類や果物は入れないで」ですね。最近ではシリコン製のバランなどがありますけど、当時はペラペラのプラスチックのバランしかありませんでしたから、どうしても香りがご飯に染み込んじゃったんです。「オレンジ米」や「すだち米」はまだいけるんですが、さすがに「イチゴ米」はつらかった(笑)。
また僕自身が高校生だった頃、土曜日の学校のお昼はお弁当ではなく、お小遣いを受け取って「これでご飯を買ってね」という形でした。ただそのお小遣いはお昼ご飯ではなく、ほとんどレコード代に回していました(笑)。
──その当時から、音楽に全てを向けられていたのですね。
KREVA:実は当時のダンスブームを通じて最初はダンスに興味を持ったんですが、そこからその場の音楽を操る「DJ」という役割へと興味が移って、やがて自然な形でラップへと辿り着いたんです。活動については中二や中三の頃から具体的に考えていたんですが、一方で「本格的に始めるのは、高校受験に受かってからにしよう」とも決めていました。そうした約束もあったので、いわゆる「学業と音楽活動の両立」自体はできていたと感じてます。
当時の日本は「ヒップホップを聴いている」「曲を作っている」という人はほとんどいなくて、「ヒップホップを聴いている」というだけでお互いに仲良くなれるというような時代でした。自分は国際高校に通っていたんですが、帰国子女の同級生が海外で手に入れたカセットのアルバムを持ってきて聴かせてくれることもありました。ただ彼らにとっては「向こうで流行っている音楽の一つ」として聴いてはいるものの、「俺はヒップホップが好きなんだ」という人自体はやはりどうしても少なかったです。
多くの人々に届く言葉を紡ぐ「漁師」
──映画では「お弁当」という「言葉ではない言葉」を通じて父と子が自分たちの絆を再確認していく様子が描かれています。KREVAさんもこれまで「ラップ」という「言葉」を要とする音楽とともに活動を続けられてきましたが、KREVAさんにとって「ラップ」或いは「言葉」とは何なのでしょうか?
KREVA:これはあくまで例えなんですが、自分がもし網を投げて魚を捕らえる漁師だとして、「みんなに届け」と水面へ網を投げた際に、その網目の隙間から多くの魚たちが逃げてしまう感覚があるんです。ですから、たとえ網自体の大きさが小さくなったとしても、網目がとても細かい、捕らえたいものをしっかり捕らえられる網を投げられるような漁師でありたいと心がけています。
そのためにも、言葉の「核」となる部分に届くような表現をしたいと常に感じています。例えば「お茶を飲む」という言葉を「飲む」へと言い換えたら、対象が「お茶」だけだったはずの「飲む」という言葉は「コーヒー」など他の飲み物へも範囲が広がり、「飲む」という言葉に対する解釈の可能性、その言葉がみんなの元に届く可能性自体も広がっていきます。或いは「飲む」を「取り入れる」と言い換えたら、対象は「飲み物」や「水分」以外へも広がり、さらに可能性が広がっていきます。言葉を濾していく過程によって、ようやくみんなの元に届くような言葉を見つけ出せるんです。
またラップという音楽は、「誰がその歌詞や言葉を言っているのか」が重要だと思うんです。「すべての道はローマに通ず」など誰が言っても魅力的に感じられる言葉ではなく、この人が言う事に意味があるというような言葉こそが大事だと感じています。
──最後に、2020年現在のKREVAさんが取り組んでいきたいことをお聞かせいただけますか?
KREVA:もっと「健康」になりたいですね。心も体も両方とも。ケガなどで体が動かせなくなると気も落ち込んでしまうし、気が落ち込むと言葉にも影響が出てしまうんです。僕は音楽を決してロジカルに作っているタイプではなく、「生き様」と音楽が深くつながっているタイプなんです。だからこそ、自分自身をどう更新し続けられるかが大切だと感じています。
インタビュー/出町光識・河合のび
撮影/田中舘裕介
構成/河合のび
ヘアメイク/結城藍
スタイリスト/藤本大輔(tas)
KREVAプロフィール
1976年6月18日生まれ、東京都出身。2004年に「音色」でソロメジャーデビュー。アルバム「愛・自分博」はオリコンアルバム週間ランキング初登場1位を獲得。様々なアーティストへの楽曲提供やプロデュースも手がける。
さらに、2005年公開の『ローレライ』で映画初出演以降、『進撃の巨人』(2015)や『シン・ゴジラ』(2016)など俳優としても活躍。また『隠し砦の三悪人 THE LAST PRINCESS』(2008)では、演技に加えて主題歌でも参加。そして『ローグ・アサシン』(2007)の日本語主題歌も担当。
2020年には新曲「タンポポ feat. ZORN」が10月14日(水)に発売された他、同年12月23日(水)にはニューシングル「Fall in Love Again feat.三浦大知」がリリースされる予定。
映画『461個のおべんとう』の作品情報
【公開】
2020年(日本映画)
【原作】
渡辺俊美『461個の弁当は、親父と息子の男の約束。』
【監督】
兼重淳
【脚本】
清水匡、兼重淳
【キャスト】
井ノ原快彦、道枝駿佑(なにわ男子/関西ジャニーズJr.)、森七菜、若林時英、工藤遥、阿部純子、野間口徹、映美くらら、KREVA、やついいちろう、坂井真紀、倍賞千恵子
【作品概要】
「TOKYO No.1 SOUL SET」の渡辺俊美によるエッセイ『461個の弁当は、親父と息子の男の約束。』を、「V6」の井ノ原快彦、関西ジャニーズJr.によるユニット「なにわ男子」の道枝駿佑の共演で映画化。監督は『キセキ あの日のソビト』(2017)などで知られる兼重淳。
森七菜、若林時英、工藤遥、阿部純子、野間口徹、映美くらら、坂井真紀、倍賞千恵子など、若手からベテラン俳優までそろった共演陣が勢揃いしています。また音楽界からもKREVA、やついいちろうが参戦。ミュージシャンとして活動する父・一樹役の井ノ原で組むバンドのライブシーンにも注目です。
映画『461個のおべんとう』のあらすじ
長年連れ添っていた妻と別れることを決意した鈴本一樹(井ノ原快彦)。父を選んでくれた息子・虹輝(道枝駿佑)が15歳と多感な時期を迎えていた時期の離婚なだけに、一樹は虹輝に対して罪悪感を抱いていた。そんな時、重なるように虹輝の高校受験失敗という悪い知らせが届く。これまで自由に生きてきた一樹は、「学校だけがすべてではない。好きなように育ってくれたらそれでいい」と思っていた。しかし、虹輝の出した答えは「高校へ行きたい」だった。
翌年の春、見事合格した虹輝に、学校でのお昼ごはんをどうしたいか訊く一樹。「父さんのおべんとうがいい」という虹輝の言葉に、笑みがこぼれる。2人の間に「3年間、毎日おべんとうを作る!」「3年間、休まず学校へ行く」という“大切な約束”が生まれた瞬間だった。慌ただしい毎日の中、おべんとうを通して交錯する父と息子の想い。徹夜明けの朝も、ライブの翌日も、二日酔いの朝も…一樹の3年間にわたる怒涛のおべんとう作りが始まる!