世界中で話題騒然!コメディ・ハイティーン・スラッシャー映画『ザ・スイッチ』。
映画『ザ・スイッチ』は、2020年11月にアメリカや欧州などで劇場公開され、アジアではいち早く韓国公開された作品。
しかも注目のコメディ・ハイティーン・スラッシャーであり、男女のボディスワップ映画です。
『ハロウィン』(2018)、『ゲット・アウト』(2017)など、低予算ホラー映画名門制作会社のブルームハウスプロダクションが制作しました。
演出を担当したのは、『ハッピー・デス・デイ』(2019)を通じて、グローバルな興行を記録し、ブルームハウスが生んだ怪物と呼ばれたクリストファー・B・ランドン監督です。
さらに主演には、サイコ殺人鬼ブッチャー役に、ハリウッド演技派俳優ヴィンス・ヴォーン、女子学生のミリー役に、ライジングスターのキャスリン・ニュートンが、それぞれのキャラクターに、完璧に溶け込んだ演技で、風変わりな楽しさと緊張感溢れる恐怖をお届けします。
映画『ザ・スイッチ』の作品情報
【公開】
2021年(アメリカ映画)
【原題】
Freaky
【監督】
クリストファー・B・ランドン
【キャスト】
ヴィンス・ヴォーン、キャスリン・ニュートン、ケイティ・フィナーラン、セレステ・オコナー、アラン・ラック、ミシャ・オシェロヴィッチ、ユリア・シェルトン
【作品概要】
この映画は、平凡以下、存在感ゼロの女子高生ミリーが、偶然中年のサイコパス連続殺人鬼と体が入れ替わってから、起こる予測不可ホラーテイニング・ムービーです。
存在感ゼロの高校生だったミリーが、サイコ殺人鬼の攻撃を受け、一夜にしてボディチェンジされるストーリーで、中年のサイコ殺人鬼の姿に変わったミリーが、自分の本当の正体を知らせる為に、孤軍奮闘する姿を描いています。
映画『ザ・スイッチ』のあらすじとネタバレ
11日水曜日夜。
10年前に米国の小都市ブリスフィールドを恐怖に追い込んだが、今は伝説とされる巨体連続殺人鬼”butcher”が再び現れ、殺人を犯します。
彼は、同じ家に押し入り、酒を飲んでいた男女高校生2組を残忍に殺害します。ブッチャーは、家を巡ります。侵入した家では、先程殺害した女子学生の父親であり、家主が収集した南米の短剣を発見します。
短剣はブッチャーに囁きます。自分は”ラ・ドラ”という短剣であり、「君は僕を所有する資格がある」と。誘惑に負けたブッチャーは、短剣を持って行きます。
12日木曜日。内向的な性格とダサいファッションセンスで、同級生達から無視される女子高生ミリ・ケスラーが、目を覚まします。
ミリーは、ゲイの男友達ジョシュと、黒人の女友達ナイラだけが友達です。彼女は、イケメン男子学生のブッカーに片思いしているけど、小心者で話し掛けられません。弱り目に祟り目の家庭も睦まじくありません。
父親が亡くなった後、母親や姉とも疎遠であり、警察のシャーリーン姉は、酒をよく飲む母親ポーラを叱って争います。また、ミリーは遠いボストンのある大学への進学を望んでいるが、母親は望んでいません。
一方で、ブリスフィールドの連続殺人鬼が再び現れたというニュースは、市中を恐怖に陥れました。
ミリーは夜遅くに、ブリスフィールド高校のチアリーディングの練習を終え、ジムで母親を1人待ちます。しかし、母親はお酒を飲んで眠り、ミリーは警官である姉のシャーリーンに、電話をします。
よりによって、電話の途中でバッテリーが切れて、携帯電話が切れます。また、よりによって、ブッチャーがミリーを発見し、襲撃をして来ます。ミリーは、必死で逃げるが、捕まってしまい、ブッチャーにラドラで肩を刺されます。
絶体絶命な状況の中、駆け付けてくれたシャーリーンは、ブッチャーに拳銃を撃ちます。ブッチャーは逃げ、ミリーは姉について、帰ります。九死に一生を得た彼女は大きな衝撃に包まれ、全てが夢のようだと感じられながら、眠りにつきます。
そして、13日の金曜日。ミリーは陰気で、奇妙な家のマットレスで立ち上がりました。一体何処か分からなく、呆気にとられるけど、鏡を見ると自分が、大男で険悪な男になっています。
しかも、顔は自分を、殺そうとした殺人鬼の顔になっていました。現実では、有り得ない事態に戸惑うが、自分と殺人鬼は、体が入れ替わったという事実を認めざるを得ません。
彼女は、友人の援助を求める為に、学校に行きます。ジョシュとナイラは、ブッチャーが自分達の前に現れると、逃げながらあれこれ投げては抵抗しますが、すぐに制圧されます。
ミリーは、2人を落ち着かせて、ブリスフィールド高校のチアリーディング・ダンスを踊って、自分がミリーであることを証明します。2人の友人は、ミリーを助けることにし、まず、ラ・ドラをインターネットで検索して情報を教えます。
ラ・ドラは、かつて南米で人身供養をする時に使った神秘的な短剣で、人を刺して午前0時を過ぎると、24時間刺された人と刺した人の体が入れ替わるそうです。
この一日で、もう一度1人刺して身を変えなければ、永遠に身が変わったままになります。もう時間が、あまり残っていません。
ミリーの家で起きたブッチャーも、自分が30センチも低くて、か弱い女性になったことに少なからず、驚きます。
しかし、すぐ平静を取り戻し、学校に行って、殺人をすると思うとうきうきします。ブッチャーは、赤い皮ジャケットを着て化粧をして登校します。
ジョシュとナイラを含む同級生は、ミリーに殺人鬼についてあれこれ質問し、特に普段、ミリーをいじめていた女子生徒ライラーに、うるさく振る舞います。
ブッチャーは、ライラーから殺すことにします。更衣室で、2人きりでミリーの姿をしたブッチャーが変な目で自分を見ると、ライラーは席を蹴って出て、シャワー室でシャワーを浴びる男を見つけますが、ブッチャーの姿をしたミリーでした。
その為、ライラーが逃げて、再びブッチャーと出くわしますが、ライラーを医療用急速冷却器に入って隠れるように言った後、凍らせて殺します。
ミリーと友人は、ブッチャーを捕まえる為に、学校を走り回っています。ブッチャーは、ミリーを見るや否や、殺人鬼が現れたと見せかけながら警察を呼び出し、3人は車を盗んで逃げます。
ブッチャーは余裕満々で技術・家庭授業を受けます。ベルナルディ先生は、いつものようにミリーを呼び出し、気に障るブッチャーは、先生が1人でいる時に襲います。
か弱い女の体なので、最初は制圧されましたが、ドライバーで首を突いて、戦況を逆転させ、彼を木工用グラインダーで押し、半分に切ってしまいます。
こんな酷い災難に見舞われましたが、ミリーに悪いことばかりではありません。ミリーを虐めていた男子生徒が、ミリーの図体を見るや否や、怖くなり、酷い場合は小便をしました。顔を隠す仮面を買いに入ったスーパーでは、スーパーの店員の母親と偶然、率直な話を交わします。
このようなことを経験しながら、押されていくつかのことを考えます。
<いつも無視される私にも、こんな強い力があったら良いな。お母さんもたくさんの思いがあったんだな>など。父親の死をもっと成熟して受け入れるようにもなりました。
ダサい服ばかり着ていたので気付かなかったが、ミリーが綺麗だということを知った男子生徒らは屠殺者に色目を使い、彼は男子生徒らを殺す為、パブへと連れて来ます。ミリーがちょっとおかしいと思ったブッカーも、付いて来ます。
ブッチャーはブッカーから殺そうとしますが、ミリーとジョシュ、ナイラに制止され、ジョシュの家に縛られる羽目になります。ブッカーは、何が起こったのか理解出来ず、以前に、誰かが自分の下駄箱に置いていったラブレターの内容をミリーが読むと、彼女の言葉を信じて一行に合流します。
映画『ザ・スイッチ』の感想と評価
ホラーテイニングムービーの一味違った面白さを提供してくれた『ハッピー・デス・デー』を演出したクリストファー・B・ランドン監督の新作としてやってきた映画『ザ・スイッチ』。
映画ファンの公募を通じて決まったタイトルである程、前作を楽しくご覧になった方々には、ある程度の満足感を示すのではないかと思います。
本作は、十分面白い要素を、幼稚でありながらホラー映画のクリシェを、ユニークに構成するやり方まで楽しむことが出来ます。
女子高生と連続殺人鬼が、体が変わる設定を演じた2人の俳優の入れ替わった演技が、かなり面白い構図で描かれていました。
肉体的に大きな差のある身体はもちろん、性格まで全く異なる2人の男女の姿が、入れ替わったことで予想されるコミカルな状況が、連続殺人鬼というキャラクターによって、その枠から脱して広がり、最大の面白さを与えてくれました。
個人的に、ブルームハウスの映画を高く評価します。興行の可否や成功とは関係なく、彼らの映画の大部分は、ハイコンセプト映画であったり、時宜にかなった変奏やリメイクなどの手続きを経て、全く新しい作品を作り上げるのが特徴になっています。
想像出来るありふれた身近なコンセプトを映画化したのも、やはり若い観客達にアピールしようという目的だったからでしょう。
そこに、この映画は堂々と、『13日の金曜日』(1980)に対するオマージュが溢れている為、古典ホラーに対するロマンのある観客まで、包摂しようという野心を表わしています。
やはり、序盤はまるで、『スクリーム』(1996)の二の舞を踏むかのように、ささやかなホラー映画のクリシェをそのまま持って来ます。
また、俳優の演技が期待以上に新鮮です。特に、キャスリン・ニュートンの殺人鬼がまたとない素晴らしい演技を見せてくれます。
そして、今回の映画の魅力の一つは、俳優ヴィンス・ヴォーンにもあります。巨体の成人男性が、10代の少女を演技するといった時、習慣的に見せるジェスチャーと表情は減らし、日常的な話し方に徹した跡がはっきりしています。
例えば、映画『ホット・チック』(2002)では、俳優ロブ・シュナイダーが、コメディの為に誇張されたジェスチャーを見せているのに対し、本作の俳優ヴィンス・ヴォーンは、話術で勝負に出ています。
特に、友達のナイラと話し合う場面で、2人のスピード感と拍子感は幻想のコンビを誇る程でした。
このように、斬新なコンセプトのホラーテイニングムービー『ザ・スイッチ』は、グローバルボックスオフィスを襲った『ハッピー・デス・デー』を通じ、ブルームハウスが生んだ怪物として、関心を集中させたクリストファー・B・ランドン監督とブルームハウスの再会で、注目を集めています。
まとめ
ホラー映画の様々な手慣れたクリシェが最初から登場し、予想の範囲を外せない部分もありますが、体は変わったのに肉体的な能力値が違う為、もみ合いをしたり殺人を犯す場面で、予想出来なかった状況が登場する点は、かなり興味深い設定に上手く溶け込ませました。
このような点と共に、ミリーの性格や存在感の面で弱いという設定が、体が入れ替わった後に起こる状況の変奏として、上手く活用されています。
コメディと恐怖の適切な組み合わせが、過度にならない殺戮の饗宴も表さず、維持させてくれたように感じます。
映画の中でよく使われる素材をどのように調理するかによって、面白い映画として十分作れる事を証明した作品です。
新鮮で驚くべき処置方法と、骨の髄までぴりぴりする展開、後半から唐突になった行動まで愉快などんでん返しがいっぱい。
誰もが、一度は生きながら思う”自分がもう少し強かったら……”。自分を苦労させてくれた誰かに復讐したい、刺激的で痛快に立ち向かいたい自分の人生、そんな本音に開ける斬新な復讐と因果応報の饗宴。この全てに、出会える映画とも言えるでしょう。