1989年に公開されて以来、今も根強いファンが居るスティーヴン・キング原作の『ペットセメタリー』。
30年ぶりに再映画化された本作で、禁断の土地への案内人・ジャドを演じるのは名優ジョン・リスゴー。主人公ルイス・クリードに扮するのはジェイソン・クラークです。
都会から離れた小さな町に古くから伝わる動物墓地。その奥には、決して埋葬してはいけない超自然的な力が宿るもう一つの墓地がありました…。
映画『ペットセメタリー』の作品情報
【公開】
2019年4月5日(アメリカ映画)
日本公開未定
【原題】
Pet Sematary
【監督】
ケヴィン・コルシュ、デニス・ヴィトマイヤー
【キャスト】
ジェイソン・クラーク、ジョン・リスゴー、エイミー・サイメッツ、ジェテ・ローレンス、ヒューゴ・ラヴォイエ、ルーカス・ラヴォイエ
【作品概要】
監督を務めたのは、自他ともにホラーファンと認める『スターリー・アイズ』(日本未公開)のケヴィン・コルシュとデニス・ヴィトマイヤー。
原作に忠実で且つサプライズも取り入れ観客にリメイクを楽しんでもらいたいと話す通り、オリジナルを観た人が驚く仕掛けが用意されています。
映画『ペットセメタリー』のあらすじとネタバレ
See what critics are calling “one of the best Stephen King movies ever.” Pet Sematary is now playing in theatres. https://t.co/BKz8BdOiZI pic.twitter.com/P31hAb9ZeF
— Pet Sematary (@petsematarymov) 2019年4月7日
医師のルイスは、家族と過ごす時間を増やすため、妻のレイチェル、長女・エリー、長男・ゲイジ、そして猫のチャーチとボストンからメイン州の小さな町へ引っ越してきます。
長旅を終え、広大な庭と木々に囲まれた静かな土地に建つ新居に到着。そこへ家の前に面する道路をタンクローリーが突然通りすぎ、夫婦を驚かせます。
翌日、レイチェルとエリーは太鼓を叩く音に導かれ森へ足を踏み入れます。幼い子供達が動物のお面をかぶり、太鼓を叩きながら犬の死体を運んでいました。一度は家に戻りましたが、気になったエリーはもう一度森へ。
奥へ進むと「ペットセメタリー」の標識があり、墓地に辿り着きます。そこで隣人のジャドと出会ったエリーは、町が何世代にも渡り利用しているペットのお墓だと聞かされます。
ルイスの勤務中、急患が搬送されて来ます。車に撥ねられた青年・ヴィクターは顔の右半分が剥がれ、手当てをする前に死亡します。ルイスが血に染まった手袋を外していると処置室の蛍光灯が点滅。
ふとベッドへ視線を戻すと、ヴィクターが起き上がっていました。目を見開いたヴィクターは、「境界を越えてはならない」と警告。看護婦に声を掛けられ我に戻ったルイスの前には、ヴィクターが横たわっていました。
ルイスとレイチェルはジャドを夕食に招き一緒にテーブルを囲みます。ジャドの膝の上に喉を鳴らしたチャーチが飛び乗り、幼いゲイジがチャーチルは良い猫だとご機嫌の笑顔。
翌日、チャーチが撥ねられ息絶えた姿が道路で発見されます。ジャドがルイスに手を貸すと申し出、その晩チャーチをきちんと埋葬することになります。一方、チャーチをとても可愛がっていたエリーにどう話せばよいのかルイスとレイチェルは頭を悩ませます。
夜になり、ルイスとジャドはペットセメタリーへ。ルイスからエリーがチャーチをなによりも大切にしていたことを聞いたジャドは、自分に着いて来いと言い奥へ歩いて行きます。
折れて重なり合った木の山を登るジャドの後を追ったルイスの懐中電灯が木の幹に刻まれた二重丸の記号を照らし出します。更に沼地を抜けて急な階段を上がりきった所で、ジャドがチャーチを埋めるように言います。
映画『ペットセメタリー』の感想と評価
Get tickets to see #PetSematary in theaters now. pic.twitter.com/b0hCFnqk0R
— Pet Sematary (@petsematarymov) 2019年4月19日
大切な人を亡くした後の喪失感は、理性や常識では説明できない感情に飲みこまれるもので、失った娘に会いたいと望むルイスの気持ちは誰もが理解できます。
もし、愛する人を生き返らせ、もう一度抱きしめることが出来る方法を知っていたとしたら…。いったい何時まで実行せずに過ごせるでしょう。
『ペットセメタリー』の蘇る死者は、見た目は同じでも生前とは全く別の人格。生きる者のエゴで現生に引き戻しても、両者共に不幸だとスティーヴン・キングが戒めています。
参考映像:『ペットセメタリー』(1989)
1989年の『ペットセメタリー』と本作が大きく違う点は、事故で死亡するのが幼い長男ではなく長女のエリーという所だけではありません。
オリジナルでは、蘇ったゲイジは直ぐに凶行に走りますが、リメイク版では父のルイスが墓から泥だらけで帰った娘をお風呂に入れます。
ルイスが束の間の幸せを感じる場面を織り込んだことは、残された家族の心情を汲み取る演出であり、オリジナルより成熟した構成で制作されていると言えます。
また、エリーがジャドを殺害しに現れた際、無理矢理に戻されて苦しいと訴え、ジャドを殺害する動機がルイスに秘密の場所を教えたことだと明確にしています。
これは、今回の『ペットセメタリー』が単なるホラーに留まらず正面から死生観を捉えている特筆すべき点です。
ジャドを演じたジョン・リスゴーの演技は、本作でも光ります。他言できない秘密を抱える怪しさと少女・エリーを思う温かさを見事に混在させた表現力。
主人公・ルイスを演じた『ゼロ・ダーク・サーティ』のオーストラリア人俳優ジェイソン・クラークとは、撮影中サッカーの話題で盛り上がったとリスゴーは笑いながらインタビューで話しています。
まとめ
You've been warned. #PetSematary is now playing. pic.twitter.com/0KMAoXmTTs
— Pet Sematary (@petsematarymov) 2019年4月13日
自分が実際に主人公の立場に置かれたら、あなたはどうしますか?と問いかける『ペットセメタリー』。
心を分けた人との死別後に襲われる耐えられない悲しみが絶望に変わる時、一線を越えてしまう人間の弱さを突きつけるドラマ・ホラーとしてリメイクされ現代に帰ってきます。
本当に怖いのは、亡霊でも生き返った死者でも無く、モラルや良識を捨てる人間の心。
そこへ突き動かす喪失感の力をまざまざと見せる本作は、“死”を軽んじて描くことなく自然の摂理として受け入れる難しさを暗示する大人の映画です。