本国アメリカでホラー映画歴代興行収入ナンバーワンを記録!
スティーヴン・キングの原作小説を映画化した話題作がいよいよ日本上陸。
ただのホラーにあらず! その溢れる80年代愛に驚くなかれ。
『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』をご紹介します。
以下、あらすじや結末が含まれる記事となりますので、まずは『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』の作品情報をどうぞ!
CONTENTS
1.映画『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』の作品情報
【公開】
2017年(アメリカ映画)
【原題】
It
【監督】
アンドレス・ムシェッティ
【キャスト】
ジェイデン・リーバーハー、ビル・スカルスガルド、フィン・ウォルフハード、ソフィア・リリス、ニコラス・ハミルトン
【作品概要】
スティーヴン・キングの小説を2部作で完全映像化。
第1部にあたる本作では、ペニーワイズと子どもたちの対決が1989年を舞台に描かれます。
映画ファンの心をくすぐる80年代テイストにも要注目!
ホラーとジュブナイルが融合した新たな名作が誕生しました。
2.映画『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』のあらすじとネタバレ
1988年10月、アメリカの田舎町デリー。
土砂降りの雨の日、ジョージーは兄のビルに紙でできた船を作ってもらいました。
ビルは外に出て一人で遊ぶ幼い弟の姿を2階の窓から見送ります。
ジョージー号と名付けられたその船は手を離した瞬間、流れに沿ってどんどんと進んでいき、ジョージーはそれを必死で追いかけます。
船は側溝の中に流されてしまい、兄に怒られることを恐れたジョージーはなんとか船を取り出そうと側溝の中を覗き込みました。
すると、そこにはピエロの姿をした不気味な人物がいて、ジョージーの船を手に持っています。
そのピエロは自らを踊る道化師、ペニー・ワイズと名乗りました。
ジョージーは、兄のビルに怒られるから返して欲しいと頼みます。
するとペニー・ワイズは船を渡してあげるから手を伸ばしてごらんと囁きます。
ジョージーが恐る恐る側溝の中に手を伸ばすと、そのピエロは口を開け牙をむき出しにし、ジョージーの右腕を噛みちぎりました。
そして、そのままジョージーは身体ごと側溝の中に引きずり込まれてしまいました。
雨が降りしきる道路には赤い血の色の広がりだけが残されています。
3.映画『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』の感想と評価
原作であるスティーヴン・キングの大ベストセラー小説「It」の映像化は1990年のTV版に続いて二度目です。
原作小説自体は大人になった現在(1985年)と子ども時代(1958年)を交互に語るお話ですが、本作は2部構成で完全に話を分けて製作。
さらに、時代設定も製作陣が実際に子どもとして体験していた1989年に変更されています。つまり本作の27年後にあたる続編は2016年、ほとんど現代です。
この80年代への変更は今の80,sブームの影響もあってか、本国アメリカにおける大成功の要因の一つに考えられています。
本作でリッチーを演じたフィン・ウォルフハードは80,sブームの火付け役ともいえるドラマ『ストレンジャー・シングス 未知の世界』にも出演。
外見はいわゆるジャンル映画と呼ばれるホラーでありながら、中身はなかなか良くできたジュブナイルもの。
あぁ、これはみんな大好きなやつだと、ヒットするのも大納得でした。
観た方の誰もが想起するであろう名作『スタンド・バイ・ミー』(1986年、日本は1987年公開)。
ビル役のジェイデン・リーバーハーの繊細な美少年ぶりがリヴァー・フェニックスを彷彿とさせますし、全員の顔つきがなんとも80年代的でした。
そのほかにも『E.T.』(1982年)であったり『グーニーズ』(1985年)であったり。
さらには70年代ではありますが同じくスティーヴン・キング原作の『キャリー』(1976年、日本公開は1977年)。
血の吹き出しは初潮の比喩ですが、あの全身血だらけは間違いなく『キャリー』へのオマージュでしょう。
そして、予告から期待されたホラー演出も近年ハリウッドで流行ったJホラー的な見せ方であったり、あるいは単純なビックリ箱的であったりとバリエーションを多く見せることで飽きさせない工夫が凝らされていました。
特にジョージーが連れ去られてしまう冒頭の一連のシーンは秀逸で、予告が物凄い再生回数を叩き出したのも大きく頷けます。
それでも登場人物が多いのでどうしても単調になりがちなところを、所々にほのぼのとした可愛らしいやり取り(ブリーフ姿最高でした!)を挟み込むことでうまく緩和。
非常に丁寧に作られた良作ではありますが、少し気になる箇所もありました。
これってよくよく考えたらものすごく凄惨で辛い話なんですよね。
特に、両親を亡くしているマイク、父親から肉体的にも精神的にも支配されているべバリー、そして同じく父親から抑圧的に支配されているいじめっ子のヘンリー。
正直この3人の問題は根本的に解決していません。
自業自得とはいえ同情したくなるヘンリーには救いがないし、マイクとべバリーは一生傷を抱え込むことになるでしょう。
この辺りの落とし前は第2部でうまくつけられるのでしょうか。
ただそれ以上に、今回のメインであるビルと弟のジョージーを巡る話の解決には感動せずにはいられませんでした。
罪の意識を背負い、家に帰る度に自分を責め続けたビルの告白。
実際に歳の離れた弟がいる方は本当に感情移入しすぎて辛いので、心して臨まれた方がいいと思います。
まとめ
ペニー・ワイズとは一体何なのか?
モデルとなった実在の殺人鬼、ジョン・ウェイン・ゲイシーがピエロの格好をしていたことから不気味なピエロ姿ではあるのですが。
これは個人的には、子どもの時に持っていた想像力と純粋さそのものだと捉えています。
大人には見えないということは、それは大人になったらなくしてしまうものです。
それを、相手の恐怖の対象へと様変わりし、その恐怖を食べて生きる異形の化け物、ペニー・ワイズというキャラクターに具現化。
本作がもう一段階面白いのは、その具現化させたペニー・ワイズは自らが作り上げた幻に過ぎず、きちんと現実と向き合い受け入れることでその恐怖はなくなるんだよと、また抽象的な存在に戻しているところです。
それによりただの悪者退治の話ではなく、子どもたちが自分の心と向き合う成長譚へと昇華させています。
この一度具現化させることこそが物語ることの本質だなと、改めて考えさせられました。
27年後、大人になったルーザーズ・クラブは果たしてどんな姿になっているのでしょうか。
2019年公開予定の次回作が早くも楽しみです!