公開されるや否や、アメリカ国内では「ホラーの常識を覆した」「現代ホラーの頂点」「骨の髄まで凍り付き息もできない」などと、絶賛の嵐を巻き起こした“完璧な悪夢”が日本上陸。
制作は設立わずか5年で『ルーム』や『ムーンライト』を生み出した、今ハリウッドで注目されているA24。本作はA24史上最大のヒット作となりました。
主演はトニ・コレット。共演にガブリエル・バーン。監督・脚本のアリ・アスターはこれが初長編映画となります。
CONTENTS
映画『へレディタリー 継承』の作品上情報
【公開】
2018年 (アメリカ映画)
【原題】
Hereditary
【脚本・監督】
アリ・アスター
【キャスト】
トニ・コレット、アレックス・ウルフ、ミリー・シャピロ、アン・ダウド、ガブリエル・バーン
【作品概要】
家長である祖母の死をきっかけに、さまざまな恐怖に見舞われる一家を描いたホラー。
『シックス・センス』『リトル・ミス・サンシャイン』のトニ・コレットがアニー役を務め、夫役をガブリエル・バーン、息子役をアレックス・ウルフ、娘役をミリー・シャピロが演じます。
監督・脚本は長編監督デビューを果たしたアリ・アスター。
映画『へレディタリー 継承』のキャラクターとキャスト
アニー(トニ・コレット)
ミニチュアジオラマ制作作家。情緒不安定な部分がある
スティーブン(ガブリエル・バーン)
アニーの夫
ピーター(アレックス・ウォルフ)
一家の長男
チャーリー(ミリー・シャピロ)
一家の長女、支援学級で学んでいる
ジョーン(アン・ダウド)
大事な家族を失ったもの同士の集まりでアニーと知り合う女性
映画『へレディタリー 継承』のあらすじとネタバレ
ミニチュアジオラマ作家のアニー・ラハムは母エレンが亡くなったばかり。母親との微妙な関係にあったアニーは、母の死にも微妙な気持ちのままです。
葬儀の直後から家族の周りでは異様な出来事が起き始めます。
特に末娘のチャーリーは、何かに動かされるように奇妙な行動をとり始めます。
さらにエレンの墓が何者かに荒らされたという連絡がスティーブンのもとに入ります。
チャーリーの行動に心を乱されたアニーは、無理やり長男のピーターに妹を押し付けます。
ピーターは学校の仲間たちと悪ふざけのパーティーに行くので、正直妹の存在はお荷物でした。
そして目を離した瞬間、ナッツアレルギーのチャーリーが発作を起こしてしまいます。
慌てて車を走らせるピーター。チャーリーが窓から顔を出した瞬間路上の電柱に激突、チャーリーは命を落とします。
チャーリーの悲劇にアニーの精神状態は悪化していきます。
一方でピーターもまた罪の意識から混乱するようになってきます。
家長のスティーブンは何とか家に安定を持たせようとしますが、うまくいきません。
家族には映画に行くといって大事な人物を亡くした孤独を抱える人々の集まりに出ていた、アニーはそこで息子と孫を失ったジョーンという女性と知り合います。
家の中で不思議なことが起き始め、動揺が広がります。
映画『へレディタリー 継承』の感想と評価
欧米のサタニズム
新・旧約聖書(ユダヤ教では新約聖書を認めてないので“旧”とは言わない)圏での悪魔の存在の大きさは、日本人の我々には伝わりにくい部分がありますが、中には圧倒的な恐怖の対象と考える人々が多くいます。
新約聖書やコーラン、仏教では救世主としての存在が出てくこともあって、常に一段下がった存在になっていますが、旧約聖書の段階では神と五分に渡り合う存在でもあります。
いろいろな神・善に対抗する存在が合流離散した中で現在の思想上サタンが確立されいます。
このサタンを信仰する悪魔協会という宗教団体は、欧米に支部を持つれっきとした団体で、少なくとも法令上は犯罪集団のような扱いを受けてはいません。
「死霊館」シリーズなどにも登場していますね。
伏線の嵐
127分の映画の中でこれはどこに向かう映画なのか、とにかく分からなくなります。
それこそまさに夢の出来事のように、物語のテンションの上下・強弱に翻弄されていきます。
その中で、これが本筋なのか?と思われるものがいくつも出てきますが、それを見事に裏切ってくれます。
ホラー映画として怖さ以上に、ストーリテリングの複雑さに感心してしまう。そんな映画です。
まとめ
2018年のサンダンス映画祭に出品した際に、批評家たちから、「ホラーの常識を覆した最高傑作」「現代ホラーの頂点」と高い評価を受け全米を震撼させたホラー映画『ヘレディタリー 継承』。
亡くなった祖母のエレンから忌まわしいものを受け継いだ家族を、残酷な運命と死よりも恐ろしい出来事が襲ってきます。
彼女たちが祖母から受け継いだものに注目です。
脚本を書き自ら演出を務めたのは、本作が長編映画監督デビュー作となるアリ・アスター。
彼が描いたスクリーンをよぎる光、真夜中に見る夢、屋敷の壁に描かれた文字など、新たな発想と演出を見せながら、すべてのシークエンスがラスト結末への恐怖につながる巧みな脚本の完成度は、お見事の一言です。
ホラー映画の新たな到達点に注目です。