『ベテラン』のユ・アインと『アルハンブラ宮殿の思い出』のパク・シネが出演するゾンビスリラーNetflix映画『#生きている』。
なんとしても生き残らねば!正体不明の疫病にかかった人間がゾンビ化し無差別に人を襲い始めた。集合住宅の一室に取り残された主人公は果たして生き残ることが出来るのか⁈
韓国映画『#生きている』は、韓国では2020年6月に劇場公開され、日本ではNetflixで独占配信されています。
実力と人気を兼ね備えた俳優ユ・アインとパク・シネが共演したデジタル時代のゾンビパニック映画です。
映画『#生きている』の作品情報
【日本公開】
2020年9月08日より配信(韓国映画)
【原題】
#살아있다 (英題:#Alive)
【監督】
チョ・イルヒョン
【脚本】
マット・ネイラー
【キャスト】
ユ・アイン、パク・シネ、チョン・ベス、イ・ヒョヌク、オ・ヘウォン
【作品概要】
正体不明の疫病にかかった人間がゾンビ化し無差別に人を襲い始めた! 集合住宅の一室に取り残された青年を主人公にしたゾンビパニックアクション映画。
脚本はハリウッドの脚本家、マット・ネイラーが担当。監督は新鋭のチョ・イルヒョンが務めた。ユ・アインとパク・シネが主人公の2人を演じている。
1千坪の敷地に3ヶ月かけて映画の舞台となる集合団地のセットを作り撮影を行った。撮影、美術、特殊メイクなど、その分野の一流スタッフが集結し、オリジナリティのある世界を作り上げた。
映画『#生きている』あらすじとネタバレ
ソウル近郊の集合住宅で家族と共に暮らしているオ・ジュヌは、その朝も目覚まし時計に叩き起こされました。「母さん!」と母親を呼びましたが、母親は、テーブルの上に「なにか食べて」と食事代を置き、既に出かけていました。
起きて早々、ゲームを始めるジュヌでしたが、それも束の間、異変を感じたジュヌは、ベランダに出て外を見下ろします。
大勢の人が悲鳴を上げ逃げ惑っていました。テレビをつけると凶暴化した人々が人間を襲っているというニュースが耳に飛び込んできました。謎のウィルスに感染し凶暴化した人間は人を食べるということも報道されていました。
廊下で音がするので、そっとドアノブを回すといきなり男が部屋に入ってきました。「隣の者です」と男は名乗り、なにか憔悴仕切っている様子でした。トイレを借りたいというので貸しますが、男は出てきた途端、様子がおかしくなり急に襲いかかってきました。
なんとか外に追い出しますが、外には別の大男が居て、隣の男はその男の犠牲になっていました。
外に出ると襲われると判断したジュヌは、ドアを冷蔵庫でふさぎ、部屋にこもりました。母親とはなかなか連絡が取れず不安でしたが、ようやくメールが届きました。「帰宅中だが、帰れそうにない」という内容で「ジュヌ、生き残って」と書かれていました。
ジュヌはポストイットに「生き残らねば」と書き、家族写真の上にそれを貼り付けました。しかし、食品も水もわずかばかりしか残っていません。ネットもつながらず、ついに水道も止まってしまいました。
そんな中、やっと繋がったスマホの音声メッセージで母の声を聞き父と一緒にいるとわかって、ほっとしますが、それも束の間、そのあとゾンビたちに襲われたらしき家族の声が続き、ジュヌは愕然とします。
絶望から自分で命を絶とうとするジュヌ。ロープを首に巻き、椅子を蹴った瞬間、建物の向かいの棟から赤いシグナルが送られてきているのを知り、彼はあわてて、首からロープをはずし、床に落ちました。
シグナルは向かいの棟の真正面の部屋に住む生存者キム・ユビンが送ったものでした。自分以外にも生存者がいることを知ったジュヌは思わず彼女に手を振ります。
ジュヌはドローンを使って、ユビンとの部屋の間にロープをはり、バッグを行き来させて彼女から食事を分けてもらいました。
その夜、ジュヌは、耳元に懐中電灯をつけ、武器を持ちドアを開けました。音に気付いたゾンビからなんとか逃れて、別の部屋に侵入し、冷蔵庫から食料品を取り出し、リュックサックに詰め始めました。
ベッドには人の足が見えましたが、血管が浮かび上がり、動かない様子でした。この部屋の住人は登山が趣味だったようで、写真が飾られていました。ふと見ると、レシーバーがあり、それを手にした途端、別の部屋から飛び出してきたソンビが襲いかかってきました。
なんとか振り切り、命からがら自分の部屋に戻ったジュヌ。彼はレシーバーのひとつをロープを使ってユビンに送り、ようやく2人は会話を交わすことができるようになりました。
映画『#生きている』の感想と評価
本作は、アメリカのテレビドキュメンタリーシリーズ「Small Business Revolution」の演出を担当するなど幅広く活躍しているハリウッドのシナリオ作家マット・ネイラーが脚本を担当しています。
そのためか、ハリウッド制作のゾンビもののお約束が上手に使われていて、恐怖とサスペンスに満ちた物語が巧みに構成されています。
大勢の人々が逃げ惑う様子を俯瞰で捉えたショットや、ソンビが空間に姿を見せそこから人間に襲いかかるまでの一瞬の間などが、優れたカメラワークで描かれており、ゾンビの造形や動きなども迫力のあるものに仕上がっています。
絶体絶命の状況にありながら、どこかのほほんとした呑気なところがあるのも本場アメリカのゾンビ映画のセオリーを踏襲しているといえるでしょう。
ゾンビをシャットアウトするためには、どこかに籠るというのもゾンビ映画のセオリーの1つですが、ここでは集合住宅が舞台になっていて、ゾンビ版「団地映画」と言える味わいもあります。
ただし、細部の詰めに甘いところがあって、それが映画の緊張感を損ねているのが少々残念です。家にこもって、1ヶ月近くたって、食料も水もつきているはずなのに、あまりやつれていないでずっと小綺麗な姿のままなのはいかがなものでしょうか。
そうした細部にリアリティがあってこそ、ファンタジーが生きるのではないでしょうか?
少ない蓄えの中で、サバイバルしていく様にもっとアイデアを込められなかったのだろうかなど、ついついないものねだりをしてしまうのは、これまでの韓国産ゾンビ映画にあまりにもレベルの高い作品が揃っているからかもしれません。
ヨン・サンホ監督の『新感染 ファイナルエクスプレス』(2016)という大傑作ゾンビ映画は勿論のこと、同じくヨン・サンホ監督のアニメーション映画『ソウルステーションパンデミック』(2016)、時代劇ゾンビものの映画『王宮の夜鬼』(2018/キム・ソンフン)やNetflix連続ドラマ『キングダム』(2019~2020)、変化球ながら独特の世界がユニークな『感染家族』(2019/イ・ミンジェ)など、全てが高水準のものばかりです。
また、災害からの脱出劇となると『EXIT』(2019/イ・サングン)という優れた作品もありました。本作は上記のゾンビ映画よりもむしろ『EXIT』との比較で物足りなさを覚えます。
ただ、本作において、せっかくドローンがありながら、いまひとつ、それをうまく利用できずに終わることや、SNSなどのネット通信が肝心な時に機能しない点などは非常にリアルな問題として迫ってきます。
外部との連絡が途絶えてしまい、手段がない時に自分ならどうするだろう?と思わず問いかけてしまうことでしょう。
まとめ
『ベテラン』(2015/リュ・スンワン)では、これ以上ないほどの鬼畜青年を、『バーニング 劇場版』(2018/イ・チャンドン)では田舎の純朴な青年、『国家が破産する日』(2018/チェ・グクヒ)では、冷静沈着な投資家を演じるなど、様々な役柄を自在に演じてきたユ・アインが、主人公、ジュヌに扮しています。
また、映画『あの日、兄貴が灯した光』(2016/クォン・スギョン)や、ドラマ『相続者たち-王冠を被ろうとする者、その重さに耐えろ』(2013)、『アルハンブラ宮殿の思い出』(2018~2019)など、映画、ドラマで人気を博するパク・シネがもう一人の生存者ユビンを演じました。
明朗でのんびりしたごくごく普通の青年がサバイバルしていく様を表情豊かに演じたユ・アインと、冷静で思慮深い女性を知性的に演じたパク・シネの魅力が映画を支えています。
また、本作は、新型コロナ感染拡大前に制作されましたが、韓国での上映は2020年6月と、まさにコロナ禍での公開となりました。「疫病」から身を守るため、家にこもるというストーリーが現実の生活とシンクロし、主人公の男女がより身近に感じられます。