映画『ゆれる人魚』は2月10日(土)より新宿シネカリテほか全国順次公開!
2016年にサンダンス映画祭「ワールドシネマコンペティションドラマ部門」の審査員特別賞をはじめ、海外の映画祭で多くの映画賞の獲得を果たし、オリジナリティ溢れる世界観を映像美として表現して見せたポーランド映画『ゆれる人魚』。
今、世界から注目を集めるする新鋭女性監督アグニェシュカ・スモチンスカ監督の長編デビュー作は、アンデルセン童話『人魚姫』を肉食人魚姉妹が少女から大人へと成長する物語に読み替えたホラー・ファンタジー・ミュージカルです。
CONTENTS
1.映画『ゆれる人魚』の作品情報
【公開】
2018年(ポーランド映画)
【原題】
The Lure
【監督】
アグニェシュカ・スモチンスカ
【キャスト】
キンガ・プレイス、ミハリーナ・オルシャンスカ、マルタ・マズレク、ヤーコブ・ジェルシャル、アンジェイ・コノプカ
【作品概要】
1980年代の共産主義下のポーランドで、肉食人魚の姉妹が少女から大人に成長する姿を描いたホラー・ファンタジー映画。
演出は初長編映画のデビューとなるポーランドのアグニェシュカ・スモチンスカ監督。2017年9月に開催された、第10回したまちコメディ映画祭in台東」の招待作品です。
2.映画『ゆれる人魚』のあらすじ
1980年代のポーランドのワルシャワ。
浜辺でギターを弾きながら、歌い遊ぶ若い男性たちの音楽の調べにのせられ、海の波間から顔を見せたのは美しい人魚姉妹。
調べにつられたのか、彼女たちも美しい歌声で男たちを惹きつけて魅了するやいな、すぐに人間を捕食します。
やがて、美しい人魚の姉妹は海から陸上へとあがると、魅惑的なナイトクラブに辿り着きます。
ストリップやライブ演奏を見世物として披露する大人の社交場には、鼻の効くナイトクラブのボスに姉妹は直ぐさま人魚の歌い手としてスカウトされます。
野性的な魅力を放つ2人は、得意な魅惑的な歌とダンスを披露すると、一夜にしてすぐにナイトクラブのスターになります。
その後、人魚である妹シルバーは、バンド仲間のベーシストの青年ミーテクの優しさから恋に落ちます。
初めての恋に浮かれてしまうシルバーですが、姉ゴールデンは人間に好意を寄せる妹を複雑な眼差しで見つめていました。
なぜなら彼女たち人魚にとっては、人間の男性は単なる“餌”でしかないからです。
やがて、姉ゴールドは夜の町に出ていくと男性をナンパして車中で捕食。そんな姉ゴールドの行動に気が付きはじめた妹シルバーの間に生じた緊張感は限界にまで達すると、人魚である妹シルバーはある決断をします。
それは悲しいまでに残虐な彼女たち運命に拍車をかけていくことに…。
3.映画『ゆれる人魚』の感想と評価
世界各国の映画祭が賞賛した新感覚のマーメイド映画
2016年サンダンス映画祭の「ワールドシネマコンペティションドラマ部門」にて、審査員特別賞受賞したほか、世界各国の映画祭で次々に多くの映画賞を受賞を果たした本作『ゆれる人魚』。
ポーランド発のオリジナリティ溢れた世界観と持ち味のアート感覚は、革新的なファンタスティック映画として各国の映画ファンを魅了しています。
今、もっともオシャレな感覚で少女の成長する姿を描いた映画として話題となっています。
もちろん本作は、1836年に発表されたデンマークのハンス・クリスチャン・アンデルセンの童話『人魚姫』のストーリーにリスペクトした、情熱的な引用が見られる作品です。
アンデルセン童話『人魚姫』は悲劇なのか⁈
V・ペーダセン 挿絵「人魚姫」
『人魚姫』の物語は、アンデルセンの作品のなかでも不朽の名作のひとつ。あなたも有名なお話としてタイトルくらいはご存知なことだと思います。
また、あなたが女性だとしたら1度くらいは本読んだり、どこかでお話を聞いたりしたことがあるかもしれませんね。
そこでストーリーのラスト結末は、おおよそ察しが付くかもしれません。
童話『人魚姫』は叶わぬ恋の悲劇や悲恋の物語として、広く世間に知られています。
しかし、実際のアンデルセン原作では意外にも、人魚姫は、王子と花嫁に祝福して新しい人生を歩み出す前向きな結末を見せています。
さて、本作『ゆれる人魚』では、そこがどう描かれるのかに注目してくださいね。
女性としてアグニェシュカ・スモチンスカ監督は、この作品で一貫して描いているのは「少女の成長」です。
それを「成長する」「大人になる」と言葉にすれば、少し安っぽくなりますが、小悪魔的な少女が、彼女らしく生きた時に“失うものや得るもの”は、まさに少女特有の通過儀礼(思春期)にほかならないのではないでしょうか。
容姿ではなく人間になることを選んだシルバーは幸せな世界を生きたはずです。
そのことは、1978年にポーランド生まれのアグニェシュカ・スモチンスカ監督のメッセージからも読み取ることができます。
アグニェシュカ監督は、人魚のことを初めて知ったきっかけを、子どもの時に母親から聞かせてもらった神話にあるといいます。
なかでもオルペウスとの戦いに敗れた人魚(セイレーン)の話を覚えているようで、そのことをこのように述べています。
「人魚は魂を導く者だという神話も覚えています。人が最後を迎える瞬間に付き添うのです。人魚の神話をより深く見てみると、しばしば邪悪で、粗野、肉食として描かれていることに気付きます。私の神話において、人魚は人間世界の原則に従おうとし、自分たちのアイデンティティを失ってしまう、貪欲だが、繊細な存在です」
この““自分たちのアイデンティティを失い、貪欲で繊細な存在”が少女からの成長に大きな意味を持っています。
それを妹シルバーの数々の態度に強く感じますし、また姉ゴールドの示した行動にも感じます。
人間に憧れた人魚である少女に注目してください。
また、アンデルセン童話『人魚姫』をリスペクトしたテーマの共通性については、人魚の人間への恋が不可能であることを描いたことは、アンデルセンと同様としながらも、次のように語っています。
「私にとって人魚はまだ大人の女性ではない少女のメタファーでもあります。この映画の目的は、思春期と結びついた感情や経験を思い起こさせることでした。初めての月経、初めてのタバコ、お酒、性的経験、恋愛の妄想……それらは人生のすべてであり、私たちのアイデンティティを形成した大切なものたちです。それらを失えば、自分も一緒にいなくなってしまうように思えるものたちです」
アグニェシュカ監督は少女の成長のアイテムのメタファーについて、初めてのモノを月経、タバコ、お酒、性的経験、恋愛の妄想。
これらのことも鑑賞のポイントに要チェックです。少女の思春期の美しさに注目しましょう。
5.『ゆれる人魚』の公開される劇場は
北海道地区
札幌市 シアターキノ(2月17日〜)
函館市 シネマアイリス(近日)
東北地区
仙台市 チネ・ラヴィータ(3月24日〜)
山形市 フォーラム山形(近日)
関東地区
新宿区 シネマカリテ(2月10日〜)
横浜市 シネマ・ジャック&ベティ(近日)
川崎市 川崎市アートセンター(近日)
高崎市 シネマテークたかさき(近日)
中部・東海地区
長野市 シネマポイント(近日)
松本市 松本CINEMAセレクト(3月2日〜)
静岡市 静岡シネギャラリー(3月31日〜)
浜松市 シネマe_ra(3月10日〜)
名古屋市 センチュリーシネマ(2月17日〜)
北陸地区
新潟市 シネ・ウインド(近日)
金沢市 シネモンド(近日)
関西・近畿地域
大阪市 シネ・リーブル梅田(3月17日〜)
京都市 京都シネマ(近日)
神戸市 神戸アートビレッジセンター(近日)
山陰・四国地区
岡山市 シネマ・クレール丸の内(3月17日〜)
広島市 横川シネマ(近日)
松山市 シネマ・ルナティック(近日)
九州・沖縄地区
福岡市 KBCシネマ(3月10日〜)
熊本市 Denkikan(近日)
大分市 シネマ5(近日)
那覇市 桜坂劇場(近日)
*記載された情報は2月20日現在の情報です。公開される劇場は今後も全国順次拡大されることが予想されます。お出かけの際は公式サイトを閲覧の上お出かけください。
まとめ
アンデルセン童話の『人魚姫』を新たな解釈で描いたポーランド生まれの新鋭アグニェシュカ・スモチンスカ監督。
肉食の人魚姉妹が少女から大人へと成長するストーリーを可愛く、時にワイルドな描写で、少女の通過儀礼という“ゆれる思春期”を見せてくれます。
また、もっと深掘りすれば、80年代の社会主義から脱却したポーランドという国家すら、少女の思春期をメタファーを描いて見せた新たな解釈の『人魚姫』であり、“キモカワイイ”ファンタジー・ミュージカル『ゆれる人魚』。
映画『ゆれる人魚』は、2月10日(土)より新宿シネマカリテほか全国順次公開です。
ぜひ、新たな才能が詰まった作品をお見逃しなく!