青春の痛みを描くアイドル映画の金字塔
筒井康隆の名作SF小説を、『転校生』(1982)の大林宣彦監督が映画化した青春ファンタジー。
偶然時間を超える能力を持つようになった少女の、淡く切ない恋を描きます。
原田知世の映画初主演作品。尾美としのり、高柳良一が共演。
実験室に漂う白い煙、同じ時間に戻ってしまうタイムループ。ファンタジーの世界に少女の純愛が重なる、ノスタルジーたっぷりの名作ドラマです。
映画『時をかける少女』の作品情報

(C)KADOKAWA 1983
【公開】
1983年(日本映画)
【原作】
筒井康隆
【監督・編集】
大林宣彦
【脚本】
剣持亘、大林宣彦
【キャスト】
原田知世、高柳良一、尾美としのり、岸部一徳、根岸季衣、入江若葉、内藤誠、高林陽一、上原謙、入江たか子
【作品概要】
名匠・大林宣彦による青春ファンタジーの名作。
大林監督の出身地、広島県尾道市で撮影された『転校生』(1982)『さびしんぼう』(1985)とあわせ、“尾道三部作”と呼ばれます。
時間を超える能力を手にした少女の不思議な体験と、淡く悲しい恋を甘酸っぱく描きます。
主演は本作で映画初主演を果たした当時15歳の原田知世。原田が歌った主題歌と共に大ブレイクしました。
『転校生』(1982)でも大林監督とタッグを組んだ尾美としのり、高柳良一が同級生役を演じます。
根岸季衣、岸部一徳ら実力派が共演。
映画『時をかける少女』のあらすじとネタバレ

(C)KADOKAWA 1983
女子高生の和子は、理科の実験室にあった白い液体の匂いを嗅いだ途端、意識を失って倒れてしまいます。
それ以来、時間の感覚が狂ったように感じる体験をした彼女は、クラスメートの深町に相談しました。
しかし、緊張からくる一時的な超能力だとなだめられます。
映画『時をかける少女』の感想と評価

(C)KADOKAWA 1983
15歳の原田知世のきらめき
大林宣彦監督の故郷・尾道で撮られた、ノスタルジー漂う愛おしい青春映画です。自分の故郷ではないのに、なぜかたまらない郷愁を感じさせます。
それは、古きよき時代の日本そのものへの郷愁なのかもしれません。
角川映画オーディションで特別賞を取った原田知世がなかなか芽が出ず、記念に最後の一作をという意図で撮られたのが本作でした。中学卒業から高校入学までの28日間で強行撮影されたといいます。
結果的に映画は大ヒットし、原田知世は大スターとなりました。高校生になる直前の少女時代の一瞬のきらめき。それを見事に映像にとどめた奇跡的な一作です。
原田と、未来人の深町を演じる高柳のつたない演技が、尚郷愁を感じさせる効果を生み、たまらなく甘く切ない思いをかきたてます。
少年少女が駆ける尾道の古い町並みはただただ美しく、そのまま自然にファンタジーの世界につながっていきます。
同級生・深町君への淡い恋心。時が巻き戻る恐怖。襲ってくるかのような日本人形まで登場し、純愛、サスペンス、ホラーなど様々な要素が盛り込まれています。
純粋な表情の和子が小さな人形同士をキスさせたり、幼い頃の和子と深町が怪我した指先を互いになめたりと、官能も感じさせます。
恋を知らない和子は、「この気持ちは何なの?」と初めての感情にとまどいを覚えます。その姿が、まだ15歳の原田本人に重なって見えて、観る者の心をとらえて放さないのです。
再会するラストシーンの意味は

(C)KADOKAWA 1983
主人公の和子は、クラスに一人はいそうなまじめでしっかり者の礼儀正しい女の子です。そんな平凡な彼女は、偶然実験室でラベンダーの香りをかいだことから、時空を超える力を持つようになります。
それは、未来から来た少年・深町の力によるものでした。和子は深町にいつしか恋心を持ち始めます。
深町は長身で、謎めいた少年でした。幼なじみでありながら、どこか大人びた彼は確かに魅力的です。
クライマックスで、深町は自分が未来から来た人間で、戻ると自分も和子も記憶が消えると話します。
このクライマックスシーンが本当に素晴らしいのです。恋を自覚した和子は一気に大人になります。
彼についていくことは許されないと知った彼女は、せめて彼の記憶だけは残して欲しいと言って涙を流します。
彼へのこの気持ちは一体何なのか。これが愛というものなのかと、とまどう和子。
それでも、深町から、いつかまた会えてもまったく違う人間としてだから誰だかお互いにわからないと言われても、「わかるわ。私には。」とはっきり答えるのです。
彼をきっと愛し抜くという強い覚悟を感じさせます。
しかし、11年後に再会するラストシーンでは、二人は互いの存在に気づくことなく、それぞれ反対の方向へと歩いて行きます。
例外は認められないと深町が言ったように、思いがすべてを超える力を持つわけではないという厳しい現実が突きつけられる結末です。
もしかしたら、若者のほとんど突き当たる壁と同じかもしれません。最初はこの恋は絶対に終わらないと強く信じていたのに、そうではなかった・・・そんな悲しみを経験した方は多いことでしょう。
和子の場合、恋心が冷めた場合とは違いますが、「再び会えた時には絶対に私には深町君がわかる」という強い確信は、悲しいことに実現しませんでした。
しかし、だからといってアンハッピーエンドとも言い切れないのではないでしょうか。
深町との出会いによって、和子の内面は変化したはずです。記憶には何も残っていなくとも、薬学部を選んだことからも彼の影響を感じ取れます。
深町を愛した経験によって、和子は人として成熟を遂げたことでしょう。
和子と深町が過ごした時間は、決して消えてなくなったわけでも、最初からなかったわけでもありません。二人の時間は、15歳の原田知世の見せた煌めきにも似て、”一瞬”だからこそ”永遠”となったと思えてならないのです。
作中では悲しく切ない顔を多く見せてきた原田が、エンディングでは無邪気なかわいらしい笑顔でテーマソングを歌います。アイドル映画ならではの演出に驚かされますが、「あなた私の前から突然消えたりしないでね」という歌詞の切なさに、自然と涙がこみ上げてくるのです。
原田知世、そしてユーミンの作曲したテーマ曲「時をかける少女」が本物の宝石であることを改めて思い知らされます。
まとめ

(C)KADOKAWA 1983
15歳の原田知世と、尾道のノスタルジックな町並みが奇跡を起こした希有な一作『時をかける少女』。
高校時代の甘く切ない淡い恋心、タイムループへの憧れ、幻想的なラベンダーの香り。想像力をかき立てる大林ワールドにいつの間にか引き込まれます。
古いものだからこそ古びない、永遠を感じることでしょう。
本当なら本作で引退するはずだった原田知世は、本作をきっかけに快進撃を続け、息の長い女優となりました。その意味でも、かけがえのない一作となったといえます。







































