風に乗って彼女はやってきます。
からっぽのバッグに大きな魔法を詰め込んで。
いまなお根強いファンのいる、1964年製作の名作ミュージカル映画『メリー・ポピンズ』。
当時のアカデミー賞を総なめにした、心躍る音楽と柔らかな映像美。
2019年2月に公開される続編『メリー・ポピンズ リターンズ』の予習もかねて、『メリー・ポピンズ』をおさらいしましょう!
CONTENTS
映画『メリー・ポピンズ』の作品情報
【原題】
Mary Poppins
【製作】
1965年(アメリカ映画)
【監督】
ロバート・スティーブンソン
【キャスト】
ジュリー・アンドリュース、ディック・ヴァン・ダイク、デビッド・トムリンソン、グリニス・ジョンズ、ハーマイアニ・バドリー、カレン・ドートリス、マシュー・ガーバー、エルザ・ランチェスター、アーサー・トリーチャー、レジナルド・オーウェン、エド・ウィン、ジェーン・ダーウェル、アーサー・マレット
【作品概要】
オーストラリア出身のイギリスの作家パメラ・L・トラヴァースによる、児童文学シリーズ「メアリー・ポピンズ」を原作とした、ウォルト・ディズニー製作による傑作ミュージカル。
実写とアニメーションの合成という手法が取られ、第37回アカデミー賞では最多13部門にノミネートされ5部門を受賞。
メリー・ポピンズを演じたジュリー・アンドリュースもアカデミー主演女優賞を受賞しました。
またアカデミー歌曲賞を受賞した『チム・チム・チェリー』をはじめ、物語を彩る数々の名曲とともに繰り広げられるミュージカルシーンは、時代が流れた今もなお色褪せることなく輝きを放ちます。
映画『メリー・ポピンズ』のあらすじとネタバレ
ロンドンに住む銀行勤めのバンクス氏は規律に厳しい男。
その妻バンクス夫人は優しいけれど、女性参政権運動に熱心で、子どもたちの事まで手が回らない様子です。
夫婦はやんちゃ盛りの娘・ジェーンと息子・マイケルのために教育係(原語ではnannyですが、ここでは教育係とします)を探していました。
バンクス氏の希望は厳しい教育係。
ですが子どもたちは『優しくてユーモアがあって魅力的な人』がいいと、バンクス氏に手紙を書いて渡します。
バンクス氏は彼らの手紙を暖炉の中へ破り捨てます。
翌日、パラソルをさして風に乗ってやってきたのは、メリー・ポピンズ。
彼女の手には、破り捨てられたはずの子どもたちの手紙が。
メリーの勢いに圧倒されたバンクス氏は、彼女を教育係として雇います。
優しくて美人でユーモア満点、おまけに魔法まで使えるメリーに、子供たちは大喜びです。
メリーの友人バートと共に、彼らはバートの描いた絵の世界の中に入り込んだり、笑いすぎて部屋の中を浮かんでいる叔父さんのもとを訪ねたりと、不思議で楽しい日々を過ごします。
しかめつらで言うことを聞かなかったジェーンとマイケルは、いつのまにか笑顔の可愛い素直な子どもになっていました。
映画『メリー・ポピンズ』の感想と評価
メリーとバートの関係
誰もが一度は疑問に思ったであろう、メリーとバートの関係。
バートはメリーに「出会ったときと同じで美しい」と愛を込めて伝えます。
と言うことは、2人は旧知の仲で、バートの知る限りメリーの容姿は変わっていないと考えられます。
そしてまた、いまや職業不定で芸達者、いつも笑顔で暮らしているバートですが、幼いころは気難しくて笑わない子供だったといいます。
映画冒頭でのジェーンとマイケルも、暗い眼差しをした扱いづらい子どもでした。
それがメリーとの出会いによって、つまらなかった日常が魔法に包まれていることを知り、輝いていきました。
このことから、バートもジェーンたちと同じく、子どものころにメリー・ポピンズと出会い、楽しい時間を過ごしたと推察できます。
物語の終盤でバートがバンクス氏に「子ども時代はあっという間に終わり、愛情を与えようと思った時にはもう手遅れ」と歌いながら諭すシーンがあります。
その時の彼の眼は、幼かったころの自分を振り返っているかの様です。
自分を孤独から救ってくれたメリーポピンズ。
バートにとってのメリーは、いつまでも変わらぬ憧れの女性なんです。
寂しさの根源
メリーは必要以上に子どもたちと仲良くはせず、距離を置いています。
彼女は、自身が愛情の代替品であると自覚しており、いつか自分を必要としなくなる事を知っています。
仕事人間な父と、女性参政権運動に必死な母。
構ってほしいのに気付いてくれず、寂しい思いを抱える姉弟。
姉弟はメリーが来る前、教育係たちをからかうことで寂しさを紛らわせていました。
大人よりも動物的な本能が強い子どもは、時に“ためし行動”に出ることがあります。
大人の愛情を確かめるために、相手を困らせる行動を取り、その反応を見るんです。
メリー以前の教育係たちはそれに耐えられずに、すぐに辞めてしまいました。
しかしメリーは、彼らの心の奥にある“寂しさ”を理解してます。
そしてその寂しさは、本当は構ってくれない両親に向けたものということも。
「完璧な人間は感情には溺れない」と自分に言い聞かせるように放ったメリー。
一番寂しいのは彼女自身なのかもしれません。
続編『メリー・ポピンズ リターンズ』にも登場するキャラクター
ついに2019年2月、メリーポピンズが帰ってきます。
キャストは一新されているものの、メインとなるキャラクターは変わらず、大人になったバンクス家の弟マイケルを主軸に話は進んでいきます。
『メリー・ポピンズ』から20年後の、大恐慌を迎え暗く厳しい時代のロンドンを舞台にした『メリー・ポピンズ リターンズ』。
メリー・ポピンズを演じるのは『クワイエット・プレイス』(2018)が記憶に新しいハリウッドきっての実力派女優、エミリー・ブラント。
20年前と変わらぬ美しさの彼女が、代変わりしたバンクス家に教育係として舞い降り、不思議な魔法で人々を幸せへと導きます。
大人になったマイケル・バンクスはイギリスを代表する中堅俳優、ベン・ウィショーが演じます。
マイケルはかつて父や祖父が働いていたフィデリティ銀行で臨時の仕事に就き、3人の子どもたちと共に、桜通り17番地に暮らしていますが、ロンドンは大暴落の只中で金銭的な余裕はなく、妻を亡くしたばかり。
メリーの魔法は彼を再び救う事が出来るんでしょうか。
マイケルの姉ジェーン・バンクスに扮するのは、イサム・ノグチの母親を描いた日本映画『レオニー』(2010)に主演したエミリー・モーティマー。
姉らしく、弟マイケルと彼の子どもたちを気にかけています。
バートは残念ながら登場しませんが、バートを演じていたディック・ヴァン・ダイクは、カメオ出演します。
まとめ
人生に息苦しさを感じるとき、風に乗ってメリー・ポピンズが現れて欲しいと願ってしまいます。
それが叶わないなら「スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス」と口ずさむだけで、人生は少しだけ明るくなるかもしれません。
実はバート役のディック・ヴァン・ダイクは『メリー・ポピンズ』でバートの他に、悪役である銀行の頭取ミスター・ドース・シニアも演じていました。
御年93歳のディック・ヴァン・ダイクですが、『メリー・ポピンズ リターンズ』ではドース・シニアの息子ドース・ジュニアとしてカメオ出演するとのことで、一層楽しみが増しますね。
続編『メリー・ポピンズ リターンズ』公開をきっかけに、名作映画『メリー・ポピンズ』の魔法の世界に飛び込んでみてはいかがでしょうか。