“私に思い出などいらないのです…。みなさんの中に、私の思い出さえあれば…”
仲代達矢さんの集大成ともいえる作品『海辺のリア』をご紹介します。
CONTENTS
映画『海辺のリア』の作品情報
【公開】
2017年(日本)
【監督】
小林政広
【キャスト】
仲代達矢、黒木華、原田美枝子、小林薫、阿部寛
【作品概要】
『春との旅』、『日本の悲劇』に続いて小林政広監督が、仲代達矢さんと三度タッグを組んだ人間ドラマ作品。
共演に黒木華さん、原田美枝子さん、小林薫さん、阿部寛さんら豪華キャストが集結している。
映画『海辺のリア』のキャスト一覧
桑畑 兆吉 / 仲代達矢
無名塾主宰で日本を代表する名優・仲代達矢さん。1932年12月13日生まれ、現在84歳の今も常に第一線で輝きを放ち続けています。
黒澤明監督の『七人の侍』がスクリーンデビュー(セリフなし)だった仲代さんは、その後『用心棒』や『椿三十郎』、『天国と地獄』など、黒沢作品には欠かせない存在になっていきました。
2000年以降も今回もタッグを組む小林政広監督の『春との旅』や『日本の悲劇』で最高の演技を披露したり、最近でも八千草薫さんと共演した『ゆずり葉の頃』が印象的でしたね
そんな仲代達矢さんが今回演じているのは、かつて映画スターだった男・桑畑兆吉。
どうやら認知症の疑いがあるようで、家族に裏切られた末に老人ホームへ入れられてしまうのだとか。しかし、その施設を脱走してしまい、かつて演じた「リア王」の狂気が目覚め始め…。
これまで2度タッグを組んできた小林監督は、常に高齢者が抱える問題と真正面から向き合っており、3度目の今回は認知症というテーマでまさに仲代達矢さんのためにあるような役柄を用意しており、どう演じて見せてくれるのか…非常に楽しみですね!
伸子 / 黒木華
黒木 華(くろき はる)さんは大学在学中に野田秀樹さんのワークショップに参加したことをきっかけに舞台に立つようになったのだそう。
2011年には映画『東京オアシス』で主要キャストに抜擢されスクリーンデビュー。翌2012年にはアニメーション映画『おおかみこどもの雨と雪』で声優に挑戦し、注目を集めました。
2013年が黒木華さんの最も大きな転機となり、NHK連続テレビ小説『純と愛』やフジテレビドラマ『リーガルハイ』の他にも、石井裕也監督の『舟を編む』、石井岳龍監督の『シャニダールの花』(綾野剛さんとW主演)など、次々と話題作に出演し、その全てで演技力が高く評価されたのです。
それを如実に表す結果として、2013年には第37回日本アカデミー賞新人俳優賞を含む8つの賞を受賞するなど、若手実力派女優としてその名を轟かせました。
最近でも『ソロモンの偽証』(2015)、『リップヴァンウィンクルの花嫁』(2016)、『永い言い訳』(2016)、『海賊と呼ばれた男』(2016)の他、TBSドラマ『天皇の料理番』(2015)や『重版出来』(2016)など、今や映画・ドラマで欠かせない存在になっていますね。
そんな黒木華さんが本作で演じているのは、兆吉の愛人の娘である伸子。かつて私生児を産んだことで兆吉に家を追い出されて以来会っていなかったが、施設を脱走した後に偶然再会。
兆吉が「リア王」に目覚めるきっかけを作るのが伸子のようなので、黒木華さんの演技に注目して見ていきたいと思います。
由紀子 / 原田美枝子
1974年の映画『恋は緑の風の中』でスクリーンデビューを果たした原田美枝子さん。最近では娘の石橋静河さんも女優として目覚ましい活躍を見せているのが印象的ですね。
原田さんはその後、長谷川和彦監督の伝説的作品『青春の殺人者』(1976)に出演し、キネマ旬報主演女優賞を獲得。女優としての評価を一気に高めることになりました。
それ以降も常に話題の作品に出演し続け、『乱』(1985)、『火宅の人』(1986)、『愛を乞う人』(1998)、『雨あがる』(2001)など、各年代で常に最高の評価を獲得し続けており、日本映画・ドラマ界屈指の名女優としてその名を轟かせていますね。
そんな原田美枝子さんが『海辺のリア』で演じることになるのは、兆吉の娘(長女)由紀子。
なんでも愛人がいるようで、彼らの企みで兆吉が老人ホームに入ることになったのだそうで、優しい母から悪女まで何でもこなせる原田さんならではの演技に注目しましょう!
謎の運転手 / 小林薫
唐十郎さんが主宰する状況劇場に在籍し、舞台役者として活躍していた小林薫さんは、1977年に篠田正浩監督の『はなれ瞽女おりん』でスクリーンデビュー。
その後、NHK大河ドラマ『峠の群像』(1982)、映画『恋文』(1985)などに出演し存在感を発揮しました。
1996年からはフジテレビドラマ『ナニワ金融道』シリーズに出演し始め、この時演じた桑田役は強烈なインパクトを残し、いまだにこのイメージを強く持っている方も多いのではないでしょうか。
その他にもフジテレビドラマ『Dr.コトー診療所』(2003)、『東京タワー 〜オカンとボクと、時々、オトン〜』(2007)、『舟を編む』(2013)、TBSドラマ『天皇の料理番』(2016)など、どんな作品でも小林薫さんの存在感が際立っていますね。
今回小林薫さんが演じているのは、由紀子の愛人の謎の運転手だそうで、彼女と結託して兆吉を老人ホームへと送り込むことになるようですが、果たしてどういったキャラクターとして登場するのか…非常に楽しみです!
行男 / 阿部寛
元々はモデルとして活躍していた阿部寛さんが俳優としてデビューしたのは、1987年の映画『はいからさんが通る』。
しかし、そこからはいかにもな二枚目役を演じることしかなくなってしまい、しばらくは不遇の時を過ごすことに。
90年代に入ると状況が好転し、1994年の映画『しのいだれ』と『凶銃ルガーP08』での演技が評価され、日本映画プロフェッショナル大賞・特別賞を受賞。
翌年にはNHK大河ドラマ『八代将軍吉宗』に出演し、それ以降大河を含めた時代劇への出演も増えていきました。
阿部寛さんがさらにブレイクすることになったきっかけは、やはりテレビ朝日ドラマ『TRICK』(2000)でしょう。
その後も『結婚できない男』や映画『テルマエ・ロマエ』など、話題の作品に出演し続け、その存在感を見せつけていますね。
本作『海辺のリア』で阿部さんが演じるのは、かつての兆吉の弟子で由紀子の夫である行男。
妻には浮気をされているというこのキャラクターを阿部さんがどう演じているのか…要注目です!
映画『海辺のリア』のあらすじ
舞台や映画で半世紀以上も活躍し続け、俳優養成所も主宰するかつての大スター・桑畑兆吉。
しかし、そんな兆吉も現在では認知症の疑いがり、家族もその扱いに困り果てていました。
そんな状況を見兼ねた長女の由紀子と兆吉の弟子だった夫・行男、さらには由紀子と愛人関係にある謎の運転手らは、兆吉を騙して高級老人ホームに入所させてしまいます。
しかも、遺書まで書かせた上で。
ある日、施設を脱走した兆吉があてもなく歩いていると、ある海辺に辿り着きました。
シルクのパジャマにコートを羽織っただけの格好でスーツケースを引きずってただひたすら歩く兆吉。
すると偶然、ある女性と再会を果たします。
それは、兆吉の愛人の娘・伸子でした。
伸子は過去に私生児を産んだ過去があり、そのことに怒った兆吉は彼女を家から追い出したという経緯があった関係。
そんな彼女の姿を目にした長吉の頭の中に、かつて彼が演じた「リア王」の娘・コーディーリアの面影が浮かんできました。
そして兆吉にも「リア王」の狂気が乗り移り…。
彼が最後に演じる『海辺のリア』が始まりを告げるのでした。
映画『海辺のリア』公開はいつから?
映画『海辺のリア』は、2017年6月3日(土)より劇場公開が開始されることがすでに決定しています。
もちろん全国的な劇場公開ではありますが、大規模なものではなく、例えば関東地区で現時点公開が決定しているのは…
イオンシネマ大宮
こうのすシネマ
TOHOシネマズららぽーと船橋
TOHOシネマズ柏
有楽町スバル座
テアトル新宿
楽天地シネマズ錦糸町
立川 シネマシティ/CINEMA TWO
TOHOシネマズららぽーと横浜
…以上の9館しかありません。(※上映劇場が変更となる場合がありますので、鑑賞の前に必ず劇場にご確認ください。)
本作と似た雰囲気を持つ小林監督、仲代達矢さん主演の『春との旅』も当初59スクリーンでの公開から徐々に拡大していったので、本作も同様のケースになりそうですね。
ただし、『春との旅』の時もそうでしたが、支持層はどうしても40代以上になってしまうのは致し方ないので、昨今の若者映画が多い状況の中、どこまで拡大が目指せるかがカギとなってくるでしょう。
映画『海辺のリア』試写会はある?
※映画『海辺のリア』の試写会は現在の所予定されておりません。発表があり次第、更新してまいります。
まとめ
80代にしてなお現役で主演をはりつづける仲代達矢さん。本作『海辺のリア』の主人公・兆吉のキャラクター設定は仲代さん自身と被る所も多く、「仲代達矢のドキュメンタリー」的作品という見方も出来るかもしれません。
本作には仲代さんの他にも成長著しい黒木華さんや原田美枝子さん、さらには小林薫さんに阿部寛さんと錚々たる面々が名を連ねており、彼らが共演することが本当に待ち遠しいですね!
注目の劇場公開は2017年6月3日(土)より始まります!ぜひ劇場で名優・仲代達矢さんの生き様をご覧ください!