映画『タミー・フェイの瞳』はディズニー+で2022年2月2日(水)から配信開始。
1970年代から80年代にかけてテレビ伝道師として一躍有名になった夫婦タミー・フェイとジム・ベイカーの波乱万丈な人生をタミーの視点から描いた作品。
妻のタミーをジェシカ・チャステイン、夫のジム役はアンドリュー・ガーフィールドが演じています。
監督は『ビック・シック ぼくたちの大いなる目覚め』(2017)のマイケル・ショウォルター。
キリストの教えを子どもから大人まで分かりやすく伝えたことで人気を博したもの、その後のスキャンダルなどで大バッシングを浴びることになった夫婦の実情とはどのようなものだったのでしょうか。
映画『タミー・フェイの瞳』の作品情報
【日本公開】
2022年(アメリカ映画)
【監督】
マイケル・ショウォルター
【キャスト】
ジェシカ・チャステイン、アンドリュー・ガーフィールド、チェリー・ジョーンズ、ヴィンセント・ドノフリオ、フレドリック・レーン、ルイス・キャンセルミ、サム・ジャガー、ガブリエル・オールズ、マーク・ウィストラッチ
【作品概要】
本作の監督は『ビック・シック ぼくたちの大いなる目覚め』(2017)のマイケル・ショウォルターです。
タミー役を演じたジェシカ・チャステインは、第79回ゴールデングローブ賞の主演女優賞(ドラマ部門)にノミネートされています。
過去には『ゼロ・ダーク・サーティ』(2012)でアカデミー賞主演女優賞にノミネート。『オデッセイ』(2015)や『モリーズ・ゲーム』(2017)、『X-MEN:ダークフェニックス』(2018)、『355』(2022)などに出演しています。
ジム役を演じたアンドリュー・ガーフィールドは、『ソーシャル・ネットワーク』(2010)でゴールデングローブ賞助演男優賞にノミネートされ、『アメイジングスパイダーマン』(2012、2014)で広く知られました。
また、最近では『tick, tick…BOOM! チック、チック…ブーン!』(2021)にてゴールデングローブ賞主演男優賞(コメディ・ミュージカル部門)を受賞しています。
映画『タミー・フェイの瞳』ネタバレあらすじ
1994年カリフォルニア州パームスプリングス。メイクを落とすよう説得されるものの従おうとしないタミー。(ジェシカ・チャステイン)
1952年ミネソタ州インターナショナル・フォールズ。少女のころのタミー。タミーは母の離婚前に生まれた前の夫の子どもなので、教会に来ることを止められていました。
1960年ミネソタ州 ノースセントラル聖書大学。タミーはジム・ベイカー(アンドリュー・ガーフィールド)と大学の講義で出会います。ジムの説教にタミーは感銘を受け、ふたりは意気投合します。
以前はラジオDJを目指していたジムでしたが、少年を車で轢いてしまい神の道に進んだのだと説明します。ふたりは人目をはばからず大学の芝で歌って踊りました。
タミーはジムとの結婚し、大学中退を決めました。春から巡回伝道師になると決意し、両親に認めてもらうために会いに行きます。両親は呆れながらもしぶしぶ認めました。
タミーとジムは車で各地を巡回し、子供向けに人形を使いながら説教を説くという独自のスタイルの伝道活動を行っていました。その人形劇は子どもにも大人にもウケて話題になります。
泊まっていたモーテルで偶然、タミーらの人形劇を気に入ったテレビ局の男性から声をかけられます。そのことをきっかけに2人のテレビ出演が決まりました。
ふたりの番組が始まってからほどなくして、タミーの妊娠がわかりジムは深夜番組「700クラブ」でMCとして活躍します。
1971年バージニア州パット・ロバートソン邸で開かれたパーティにやってきたタミーとジム。
パッドはジムの番組をやっている局のスター司会者です。彼から司会を引き継ぐから休むよう言われます。しかしジムのその番組は絶好調なので断りました。
ゴスペル番組司会者のジェリー・ファウウェル牧師が現れます。リベラル派やフェミニスト、同性愛者を排除したいファウウェル牧師の考えを聞いていたタミーは反論します。
聖書に同性愛を認めないと書かれていますが、同じ人間ではないか。と言いました。
帰宅後、権力者であるファウウェルに反論したことを責められるタミーでしたが、ファウウェルの手を借りずに局を立ち上げようとジムを焚きつけます。
1974年にPTLスタジオにて、ジム&ベイカーショーを始めます。番組の人気に火が付き、1975年には「クリスチャン版トゥナイト・ショー」と称され、無類のバラエティ番組となりました。
母子家庭への住居提供やアジアと南米への出資や献金を行い、タミーの発売した曲もヒットします。PTLは、全米4位の局にまでのぼりつめました。
1980年番組がうまくいき、豪邸を手に入れたタミーとジム。そこへ母親がやってきます。
そして、PTLの資金を建設計画に流用しているという新聞記事をタミーに知らせます。母はタミーに妄信的すぎると警告しました。
ジムは、マスコミ対応に追われて疲弊しきっていました。タミーとの関係にもヒビが入り始めます。
映画『タミー・フェイの瞳』の感想と評価
ジェシカ・チャステインが、1970年代から1980年代にかけてアメリカでテレビ伝道師として波乱万丈な人生を歩んだタミー・フェイを演じ、その夫のジム・ベイカーをアンドリュー・ガーフィールドが演じています。
キリストの教えを世に広め、人々を救いたい、愛を届けたいという思いのままにタミーは行動しました。しかし、夫のジムは献金によって大金を稼ぐことに次第に夢中になっていきます。
はじめは志を同じくしていた2人でしたが、ビジネスで成功したことによってすれ違いが生じてしまったのです。
宗教、そして人間ドラマ
本作は、事実に基づく映画として当時のマスコミが報じた内容なども盛り込まれています。
約24年間の出来事を、夫婦の出会いからビジネスの成功、そして転落までをテンポよくドラマティックに描いた作品だといえます。
しかし、本作を観るにあたってキリスト教信者ではない日本人にとっては、タミーとジムが起こしたムーブメントに感情移入しずらく、理解しがたい箇所がいくつかあったように感じました。
元々はキリスト教信者の子ども向けに作られた番組を大の大人が観て、出演者の説教に熱狂する、多くの人が献金を行う、そういった人々の心理を想像するのはとても難しいものです。
また、人生の局面で神に祈りを捧げ、神の声に従って行動しているタミーの描写に関しても、結局は自分自身に問いかけているのだとしか思えません。
タミーと同様に信心深いひとでなければ、少々白けてしまうシーンでしょう。
ですが、この映画が描いているのは私利私欲におぼれた結果、取り返しのつかない失敗をしてしまった者たちの転落していく姿です。
タミーとジムの中心にあったのが宗教だったというだけで、宗教観が異なる私たちからしても、それは身につまされる内容だといえます。
大衆の前で華やかな姿を見せていた人物が、裏でどのような苦悩を抱えていたのか、夫婦のすれ違いからその困難を乗り越えようとする姿までを、この映画は描ききっています。
誰が自分を救うのか
実話を元にした作品は、誰の視点で描かれているのかが重要になってきます。その映画のテーマは何なのか、何を伝えたい作品なのか、というのが変わってくるからです。
本作の場合は、タミーの視点で描かれます。
映画の前半ではタミーの少女時代が描かれ、母の離婚した夫の子であるタミーは、教会の出入りを禁止されていました。
そのことでタミーは自分の存在意義を疑うようになります。
大人になったタミーが舞台で歌う場面で、少女時代に見た十字架のショットが回想として入ります。
そのショットは、タミーが自分の存在意義について改めて考え、少女の頃に抱いた神への純粋な信仰心を改めて持ち続けようと決意したことを表しています。
このタミーの視点を通して、社会的成功を手に入れた人間の脆さや愚かさを描いた本作。
そこには同時に、転落した後に自身を救うのは本来あったはずの信念の強さというメッセージもあるのです。
まとめ
映画の人間ドラマに説得力を持たせたのは、タミーを演じたジェシカ・チャステインであることは間違いありません。
タミー本人の声やしゃべり方を相当研究したと思われる彼女の演技は素晴らしく、劇中では特殊メイクを施しているのため、「ジェシカ・チャステイン」と気付かない人がいてもおかしくありません。
また、劇中に出てくるタミーの歌唱シーンではジェシカ・チャステイン本人が歌っているというので驚きです。
彼女の演技にも注目して観てみてはいかかがでしょうか。