バイクに情熱を捧げた男たちの栄枯盛衰……
アメリカに実在したモーターサイクルクラブを描く映画『ザ・バイクライダーズ』が、2024年11月29日(金)よりTOHOシネマズ シャンテ、ホワイト シネクイントほかで全国順次ロードショーされます。
アメリカの写真家ダニー・ライアンが1965~73年にかけて、中西部のアウトロー・バイク集団の日常をとらえた写真集「The Bikeriders」にインスパイアされた本作。
オースティン・バトラー、ジョディ・カマー、トム・ハーディら旬のスターが共演の、ビターなヒューマンドラマの見どころをご紹介します。
映画『ザ・バイクライダーズ』の作品情報
【日本公開】
2024年(アメリカ映画)
【原題】
The Bikeriders
【監督・脚本】
ジェフ・ニコルズ
【撮影】
アダム・ストーン
【美術】
チャド・キース
【編集】
ジュリー・モンロー
【音楽】
デビッド・ウィンゴ
【キャスト】
オースティン・バトラー、トム・ハーディ、ジョディ・カマー、マイケル・シャノン、マイク・ファイスト、ノーマン・リーダス
【作品概要】
アメリカの写真家ダニー・ライアンが1965~73年にかけてのシカゴのバイクライダーの日常をとらえた写真集「The Bikeriders」にインスパイアされて製作したヒューマンドラマ。監督・脚本は『ラビング 愛という名前のふたり』(2016)のジェフ・ニコルズ。
伝説的モーターサイクルクラブの栄枯盛衰を、『エルヴィス』(2022)のオースティン・バトラーと「ヴェノム」シリーズ(2018~24)のトム・ハーディの共演で描きます。
その他のキャストは、『イングランド・イズ・マイン モリッシー、はじまりの物語』(2017)のジョディ・カマー、『ノクターナル・アニマルズ』(2016)のマイケル・シャノン、テレビドラマシリーズ「ウォーキング・デッド」(2010~22)のノーマン・リーダスなど。
映画『ザ・バイクライダーズ』のあらすじ
1965年、シカゴ。不良とは無縁の日々を送っていたキャシーは、無口なバイク乗りのベニーと出会い、わずか5週間で結婚を決めます。
ベニーは、地元の荒くれ者たちで構成されるモーターサイクルクラブ「ヴァンダルズ」を束ねるジョニーの側近でありながら、群れることを嫌い、狂気的な一面を持っていました。
やがてヴァンダルズは全米各地に支部ができるほど急速に拡大するも、クラブ内の治安は悪化し、敵対クラブとの抗争も勃発するように。
ベニーの危うさにキャシーが不安を覚え、ベニーもそんなキャシーとの将来に葛藤を抱えるなか、ヴァンダルズで最悪の事態が……。
映画『ザ・バイクライダーズ』の感想と評価
本作『ザ・バイクライダーズ』は、アメリカの写真家ダニー・ライアンが1965~73年にかけて、中西部のアウトロー・バイク集団の日常をとらえた写真集「The Bikeriders」にインスパイアを受けています。
60年代に実在したバイク集団「シカゴ・アウトローズ・モーターサイクル・クラブ」のメンバーにライアンが取材・撮影したこの本を、実兄でオルタナロックバンド「ルセーロ」のヴォーカルであるベンに薦められて目を通したマイク・ニコルズ監督は、すぐさま映画化を決意。
劇中ではシカゴ・アウトローズ・モーターサイクル・クラブを架空のクラブ名「ヴァンダルズ」に変更。ヴァンダルズのメンバーながら、ひときわ異彩を放つ存在のベニーと、出会ってわずか5週間後に彼と結婚した妻キャシーをストーリーテラーに、創立から数年間の軌跡を事実を基に描いていきます。
マーロン・ブランド主演の『乱暴者(あばれもの)』(1953)、アメリカン・ニューシネマの代表作『イージー・ライダー』(1969)、ミッキー・ロークとドン・ジョンソンがダブル主演した『ハーレーダビッドソン&マルボロマン』(1992)などなど、バイカーを主人公とした作品には社会への反発心を持ったアウトサイダーの暴走が目立ちます。
しかしながら、本作でのヴァンダルズのメンバーは、荒々しい面を持ちつつ、“ファミリー”としての側面に触れているのがポイント。
バイクとビールとケンカに明け暮れる一方で、メンバー各々が家族を持ち、時にはその妻子を含めてピクニックに興じる彼らの姿は、さしずめ常に好きなものに囲まれていたいという、少年の心を持った大人の様相を呈しています。
とりわけリーダーのジョニーは、『乱暴者(あばれもの)』を観てヴァンダルズを創設し、メンバー内で生じたいざこざを収める手段に殴り合いかナイフを選ばせるのも『明日に向って撃て!』(1969)からの影響という映画マニア。
ニコルズ監督は本作について、「私たちのアイデンティティの探求を描いている」として、「私たちは皆、自分自身のアイデンティティを見つけ、築こうと必死になっている。これは今、私たちの社会に働いている最も大きな原動力のひとつだと思う」と、60年代を謳歌したバイクライダーズと、現代を生きる我々を紐づけます。
バイクに乗ることにアイデンティティを見出す男たちは勢力を拡大し、メンバーを増やしていくも、徐々に彼らの手に負えない存在になっていくバイクライダーズ。リーダーとしての統率力を失っていくジョニーは、最も信頼するベニーを後継者にしようと考える一方で、キャシーはベニーとの安定した結婚生活を望みます。
ベニーをめぐってジョニーと対立するキャシー。感情のぶつかり合いの果てに、ベニーが取る決断とは……。
まとめ
ニコルズ監督に本作製作のきっかけを与えた兄ベンは、弟がこれまで制作した作品に楽曲を提供しており、もちろん本作にも数曲を作詞。なかでもエンドクレジットで流れる「バイクライダーズ」では、ベニーとキャシーの関係をストレートに綴っています。
ほかにも、クリームの「アイ・フィール・フリー」や、ボブ・ディランの「マスターズ・オブ・ウォー」といった60~70年代のヒット曲を劇伴として使用しているのも聞きのがせません。
栄華を極めたことで、破滅の道を歩んでいくバイクライダーズ。しかし、彼らがバイクに注いだ情熱に偽りはなかった。
バイクムービーの新たな佳作に、ご期待ください。
映画『ザ・バイクライダーズ』は2024年11月29日(金)よりTOHOシネマズ シャンテ、ホワイト シネクイントほか全国順次ロードショー。
松平光冬プロフィール
テレビ番組の放送作家・企画リサーチャーとしてドキュメンタリー番組やバラエティを中心に担当。主に『ガイアの夜明け』『ルビコンの決断』『クイズ雑学王』などに携わる。
ウェブニュースのライターとしても活動し、『fumufumu news(フムニュー)』等で執筆。Cinemarcheでは新作レビューの他、連載コラム『だからドキュメンタリー映画は面白い』『すべてはアクションから始まる』を担当。(@PUJ920219)