リリー・ジェームズとジェイ・コートニーが共演の映画『偽りの忠誠 ナチスが愛した女』
第二次世界大戦下のオランダ、ドイツ最後の皇帝ヴィルヘルム2世が亡命している公邸に、ナチス政権から派遣された一人のドイツ人将校がやってきます。
帝政復古への野望やその動向監視といった使命を背景に、善悪を超えた「信念」が交差するとき明日への希望が生まれる戦争ヒューマン映画『偽りの忠誠 ナチスが愛した女』。
『シンデレラ』のリリー・ジェームスが本作では色香ある大人の女性で公邸に務めるメイドを演じ、『スーサイド・スクワット』のジェイ・コートニーと共演。
そしてヴィルヘルム2世を、『ゲティ家の身代金』『ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密』などの名優クリストファー・プラマーが重厚感を見せて演じています。
映画『偽りの忠誠 ナチスが愛した女』の作品情報
【公開】
2017年(アメリカ・イギリス合作映画)
【原作】
The Exception
【監督】
デイビッド・ルヴォー
【キャスト】
リリー・ジェームス、ジェイ・コートニー、ジャネット・マクティア、クリストファー・プラマー、ベン・ダニエルズ、エディ・マーサン、アントン・レッサー、マーク・デクスター、マーティン・サベッジ
【作品概要】
『シンデレラ』のリリー・ジェームス、『スーサイド・スクワッド』のジェイ・コートニーが演じる女性スパイとドイツ人将校との許されざる恋愛を軸に描かれる戦争ヒューマンドラマ。
第二次世界大戦中、オランダに亡命したドイツ最後の皇帝ヴィルヘルム2世の帝政復古への動きを監視する為、皇帝護衛隊の隊長として赴任したナチスドイツの将校ブラント。公邸に仕えるメイドのミーケと恋に落ち、互いに戦時下の緊張や孤独を埋めるように二人は求め合うようになり…。
ドイツ皇帝役には、『サウンド・オブ・ミュージック』で知られ、『ゲティ家の身代金』『ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密』などの名優クリストファー・プラマー。
映画『偽りの忠誠 ナチスが愛した女』のあらすじとネタバレ
第二次世界大戦中、ドイツの先の皇帝ヴィルヘルム2世はオランダに亡命していました。ナチス政権はヴィルヘルム2世の帝政復古への動きを監視する為、ドイツ人将校のブラントを皇帝護衛隊の隊長として赴任させます。
ブラント大尉はまた、ヴィルヘルム2世のもとに潜んでいるとされる英国のスパイを突き止める任務を負っていたのでした。
公邸に赴任した当日、ブラント大尉は皇帝の晩餐会への招待を届けにきたメイドのミーカと出会い肌を重ねようとしますが、過去に負ったブラント大尉の傷が痛み実現できずに終わります。
そして晩餐会の夜、ブラント将校が部屋に戻るとミーカが待ち受けており、彼女がリードする形で交わり二人は関係を深めていきます。
その後、英国のスパイの所在を捜査することを目的に、ブラント大尉は公邸内の部屋に移ります。本来、公邸内では男女の肉体関係はご法度とされていましたが、一つ屋根の下で暮らすなかで、ブラント大尉とミーケの二人は人目を忍び逢瀬を続け互いの心を通わせ合います。
愛を交わすなかでブラント大尉の体の傷が榴散弾の傷であることを知り、ミーケは自らユダヤ人であることを告白します。それでも彼は「いずれ人は死ぬ」と彼女がユダヤ人であることを受け入れます。
一方でメイドのミーカは買い出しに出る度に村の中央にある教会に立ち寄り、牧師と秘密の会談を実現させていたのでした。英国のスパイはミーケであり、彼女はヴィルヘルム2世を暗殺する使命を負っていたのです。
村の中央から発信される無線信号を傍受したナチス政権の秘密警察(ゲシュタポ)も公邸にやってきては、英国のスパイ検挙に躍起となるのでした。
映画『偽りの忠誠 ナチスが愛した女』の感想と評価
本作はデイビッド・ルヴォーの初監督作品となります。
第二次世界大戦下とは思えない美しいオランダの館の風景とともに、帝政時代の輝きを忘れられないヴィルヘルム2世とその妻、そして無垢な子供までを殺戮した現場を経験した苦しみを持つブラント将校、父親と旦那をナチスに殺されたミーケ、それぞれの思惑と使命が交差する中で、それぞれの人間性が細やかに描かれています。
静かに展開される人間模様の大半のシーンがヴィルヘルム2世の公邸が舞台に繰り広げられますが、秀逸なカメラワークにより常に奥行きのある撮り方から、その場の緊迫感や吐息を感じられそうな距離感が臨場的に伝わってくる映像美となっています。
邦題の「偽りの忠誠」からは、ナチスに反抗したようなストーリーイメージを連想させますが、実際には忠誠心だけではない人間としての深いところが描かれる戦争映画となっています。
実際、原題の『The Exception』はナチス政権が是とする当時の正義に反し、人の豊かさ尊厳を尊重し神の存在のもと信念を持ち続ける人たちのことを指しています。
また、ブラント大尉とミーケが夜を共に過ごすシーンやラストシーンで登場するニーチェの「善悪の彼岸」。その著書の中でニーチェが謳うのは、近代的個人の危険な状態と衝突することを恐れない積極的なアプローチであり、諸前提を盲目的に受け入れてはいけないというスタンスが本作の隠れたメッセージとなっているといえるでしょう。
非人道的かつ不条理な状況下でも「人」としての信念を持ち、正しいと思えることを選択し行う。それは現代にも通じるテーマです。
まとめ
第二次世界大戦中のナチス政権を背景にした映画は多くありますが、本作は戦時下の人間模様がサスペンスタッチに繰り広げられていることで、戦争ドラマを敬遠する人にも重い気分になることなく見られる作品となっています。
本作でリリー・ジェイムズは、これまでの可憐なイメージから脱皮するようにヌードを披露したラブシーンにも挑戦しています。
それに呼応する形のジェイ・コートニーが醸し出す色気と男の包容力。戦時下の不安や孤独からお互い求め合う二人のラブシーンは、緊迫感の中にも人と人が肌を重ねて覚える安心感を映し出し、人間らしい温かみのある情景がラブロマンスとしての華を添えています。
ヴィルヘルム2世の妻を演じるジャネット・マクティア、イーゼマン大佐を演じるベン・ダニエルズをはじめとする脇役陣も素晴らしく、いぶし銀のような存在感で戦争ヒューマンドラマとしての脇を固めています。
言わずもがな、名優クリストファー・プラマーが演じるヴィルヘルム2世は、その毅然とした風貌からまるで本人を見ているような錯覚を覚えるほど。第二次世界大戦下の歴史の一端を知る上でも、是非興味を持ってご覧ください。