映画『葬式の名人』は9月20日(金)より全国ロードショー!
ノーベル賞受賞作家・川端康成の作品を原案に、ゆかりの深い大阪府茨木市で撮影された映画『葬式の名人』が2019年9月20日(金)より全国公開されます。
突然去ってしまった友人のため、一風変わったお通夜を開く同級生たち。
前田敦子と高良健吾のふたりが主演を務め、愛憎入り混じった複雑な関係を演じます。
コミカルに描かれる本作の中に流れ続ける喪失感を、女優・前田敦子が体現してくれました。
映画『葬式の名人』とは
参考:『葬式の名人』ツイッター
『葬式の名人』の先行公開劇場であるイオンシネマ茨木では、懸垂幕も登場!盛り上がっています!8月16日から! pic.twitter.com/W6LGPWzLHQ
— 映画『葬式の名人』 (@soushikino) July 1, 2019
大阪府茨木市の市制70周年の記念事業として制作された本作。
2018年夏に、茨木高校をはじめ市内各地で様々なロケーションが敢行されました。
原案となったのは、日本初のノーベル文学賞を受賞した川端康成の作品群。川端康成は3歳から18歳まで茨木市で育ちました。
茨木市で過ごした少年時代をもとにした『十六歳の日記』、茨木中学時代(現在の府立茨木高校)の思い出を描いた『師の棺を肩に』『少年』、少年少女のみずみずしい交友を綴った『バッタと鈴虫』、ユーモラスなエッセイ風の『葬式の名人』、魔界と評される川端ワールドを堪能できる『片腕』をモチーフしています。
川端康成や茨木市にゆかりがなくても楽しめる本作ですが、知っていればさらに奥深い味わいとなること間違いなしです。
川端康成について
川端康成は1899年大阪生まれ。幼少期から中学生までを茨木市で過ごしました。
旧制茨木中学(現在の茨木高校)の後輩に評論家の大宅壮一、小学校の同級生に政治活動家の笹川良一などがいます。
茨木中学時代のことは、祖父の死を描いた『十六歳の日記』や寮生の後輩男子との交友を描いた『少年』に詳しいです。
数えの16歳で祖父を失い、天涯の孤児となった康成は、茨木中学在学中に文学者を志すように。
小説家としてデビューした後は、横光利一らとともに海外の前衛文学の手法を取り入れた新感覚派の旗手として活躍。
『伊豆の踊子』などの叙情したたる初期作から、代表作『雪国』を経て、戦後は源氏物語に代表される日本の美と幽玄の世界に沈潜し、『山の音』『千羽鶴』『古都』などで、日本文学の水準を世界に知らしめました。
1968年日本人初のノーベル文学賞受賞。茨木市名誉市民。
母校の茨木高校には、川端の筆による「以文会友」の石碑があり、本作にも登場します。
大阪府茨木市について
参考:茨木市のツイッター
【ついに本日(8/16)公開!映画「葬式の名人」】
イオンシネマ茨木で映画「葬式の名人」をご鑑賞いただく方には、ロケ地マップがもれなくプレゼントされます!
このマップは各ロケ地にも設置しますので、ご鑑賞いただいた後は、ぜひロケ地マップとともに茨木の魅力再発見の旅へ!本日上映時の様子 pic.twitter.com/ZIH4SDKbi4
— 茨木市 (@ibaraki_city) August 16, 2019
茨木市は京都と大阪のほぼ中間に位置し、古くから交通の要衝として栄えてきました。
弥生時代の東奈良遺跡から出土した銅鐸の鋳型をはじめ、数多くの大名が宿泊した郡山宿本陣、教科書にも掲載されている「聖フランシスコ・ザビエル像」が発見された隠れキリシタンの里など、貴重な文化遺産が多くあります。
また、日本で初めてノーベル文学賞を受賞し、本市唯一の名誉市民である川端康成が暮らしたまちとしても知られています。
現在も身近に文化が感じられる街を目指して、本市では、市ゆかりの現代美術作家ヤノベケンジ氏作「サン・チャイルド」をはじめとする芸術作品を街中に展開させるなど、ユニークな試みを通じて芸術作品に触れることができます。
2018年に市制施行70周年を迎えた茨木市。先人から受け継いだ歴史を大切にしながら、新しい文化・芸術を拓こうとしています。
本作は2019年8月16日(金)よりロケ地である茨木市にて先行ロードショーされています。
映画『葬式の名人』の作品情報
【日本公開】
2019年(映画)
【原案】
川端康成『十六歳の日記』『師の棺を肩に』『少年』『バッタと鈴虫』『葬式の名人』『片腕』『古都』『化粧の天使達』
【監督】
樋口尚文
【脚本・プロデューサー】
大野裕之
【劇中漫画】
やまだないと
【キャスト】
前田敦子、高良健吾、白洲迅、尾上寛之、中西美帆、奥野瑛太、佐藤都輝子、樋井明日香、阿比留照太、桂雀々、中江有里、大島葉子、佐伯日菜子、中島ボイル、信江勇、鷲尾直彦、多井一晃、上野宝子、大野秀典、福本清三、中島貞夫、堀内正美、和泉ちぬ、栗塚旭、有馬稲子
【作品概要】
日本人初のノーベル文学賞作家・川端康成の作品群をモチーフに、前田敦子と高良健吾が主演を務めて描いた青春群像ファンタジー。
前田、高良のほか、白洲迅、有馬稲子、尾上寛之、中西美帆、奥野瑛太、佐藤都輝子、樋井明日香らが顔をそろえました。
閉館した銀座シネパトスを題材にした『インターミッション』(2013)で初監督を務めた映画評論家・樋口尚文の監督第2作です。
映画『葬式の名人』のあらすじ
28歳の渡辺雪子(前田敦子)は木造アパートで息子・あきお(阿比留照太)と二人で暮らしています。
頼れる身内もいない雪子は、工場で働きながらたった一人であきおを育てているため、彼が熱を出しても仕事を休むわけにはいきません。
そこに、茨木高校時代の同級生・吉田創(白洲迅)の訃報が届きます。
野球部で吉田とバッテリーを組んでいた豊川大輔(高良健吾)ら、旧友たちが遺体の安置所に集まりました。
高校時代、ピッチャーだった吉田は、地方予選決勝で右腕を故障して棄権し、野球を断念。
卒業後の彼のことは、両親すら良く分かっていませんでした。
その無念を知る豊川は、「吉田をもう一度、母校・茨高(いばこう)へ連れて行ってやりたい」と提案。
吉田の棺桶をかついで茨木の街を練り歩き、久しぶりに母校を訪れ、思い出話で盛り上がります。
と、ここで熱血漢の豊川がささいなことで葬儀屋と喧嘩をしてしまい、彼らは母校の中で、吉田のお通夜を行うはめになってしまいました。
僧侶(栗塚旭)の読経も終わり、いよいよ吉田に別れを告げる時、雪子があきおにある真実を告げ…。
映画『葬式の名人』の感想と評価
人との別れは突然訪れるもの。
本作の吉田は10年ほど前に、友人たちの前からも、家族たちの前からも去って行きました。
そして一瞬だけ帰って来たかと思ったら、また不意に姿を消します。彼の空白の10年間は誰にもわかりません。
自由という名のボールを追い続ける彼の背中を見つめる事しかできません。
そんな、風のように駆け抜けた旧友の最期を、笑いに包みながら見送る本作。
不義理だった吉田に向けられるのは、たくさんの愛情と温かい思い出の数々。
雪子と豊川の雨のエピソードのように、作中で語られる思い出はあくまで語った人物の主観であり、真実とは限りません。
本作自体も川端康成の作品群が原案ということもあり、“通夜”という 此岸と彼岸のはざまのひと時を、虚構と現実の境界線を設けずに、軽やかに飛び交います。
雪子が笑えるようになるまで
本作は友人の死を描いています。ですが、そこにはカラッとした笑いが満ち、コメディ要素がちりばめられています。
死を前にして、少し不自然に感じる言動もありますが、そこをグッと押さえるのが、前田敦子演じる雪子の存在です。
仕事と子育てと家計のやりくりに追われ、疲れ切った彼女の顔には、高校時代に見せていた明るさも笑顔もありません。
追い打ちをかける吉田の訃報。吉田への複雑な想い、息子への愛情。
旧友たちが空元気のような明るさで過ごしていても、彼女だけは笑わず、必死に感情を堪えます。
彼女の存在が重低音として響き続けているため、本作の不思議な味わいが成立しました。
現在の笑わぬ雪子と、高校時代の弾ける笑顔の雪子という振り幅の広さも必見です。
時の流れ、人生の変化を感じさせながらも、雪子というひとりの人物として成立させた前田敦子の演技力に惹きこまれました。
まとめ
本作のカギを握る人物・吉田を演じた白洲迅もセリフが少ないながらも佇まいが印象深く、フッと消えてしまいそうな危うさと人懐こい笑顔が心に残ります。
そのほか、20代後半に差しかかり人生に迷い始めた同級生たちを、若手キャストが好演。
また、栗塚旭と有馬稲子が、本作独特の浮遊感にリアリティと説得力を与えました。
映画『葬式の名人』は9月20日(金)より全国ロードショーです。
ご期待下さい。