精神を病んだ天才ピアニストの復活を描く感動作
実在の天才ピアニスト、デイヴィッド・ヘルフゴッドの半生を、「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズや『英国王のスピーチ』(2011)の名優ジェフリー・ラッシュ主演で描くヒューマンドラマ。
監督はスコット・ヒックス。第69回アカデミー賞で主演男優賞はじめ、数々の賞を受賞した傑作です。アーミン・ミューラー=スタール、リン・レッドグレイヴらが共演します。
幼い頃から父に厳しくピアノの指導を受けて育った主人公のデイヴィッド。父のエゴの強い愛に未来を阻まれた彼が、苦難の末に幸せをつかむまでを描く感動作の魅力をご紹介します。
映画『シャイン』の作品情報

(C)1996 Australian Film Finance Corporation Limited, Momentum Films Pty Limited, The South Austrarian Film Corporation and Film Victoria
【公開】
1997年(オーストラリア映画)
【原案・監督】
スコット・ヒックス
【脚本】
ジャン・サーディ
【編集】
ピップ・カーメル
【キャスト】
ジェフリー・ラッシュ、アーミン・ミューラー=スタール、ノア・テイラー、リン・レッドグレーブ、ジョン・ギールグッド、アレックス・ラファロウィッツ、グーギー・ウィザース、ソニア・トッド
【作品概要】
オーストラリアの実在の天才ピアニスト、デイヴィッド・ヒルフゴットのドラマチックな半生を描く伝記映画。監督はスコット・ヒックス。
過度のストレスによって精神を病んでしまったヒルフゴットが再生する姿を描きます。劇中では、ヘルフゴッド本人のピアノ演奏が使われています。
主演を「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズや『英国王のスピーチ』(2011)の名優ジェフリー・ラッシュが務め、第69回アカデミー賞主演男優賞を受賞しました。
共演はアーミン・ミューラー=スタール、リン・レッドグレイヴ。
映画『シャイン』のあらすじとネタバレ

(C)1996 Australian Film Finance Corporation Limited, Momentum Films Pty Limited, The South Austrarian Film Corporation and Film Victoria
オーストラリアのメルボルンで暮らすデイヴィッドは、音楽家の夢に破れた父に、幼少時からピアノの英才教育を受けて育てられました。やがてその才能を開花させます。
コンクールで優勝したデイヴィッドに、アメリカ留学の話が出ました。しかし、最初は自慢げだった父が態度を変え、息子が家族から離れることを暴力的に拒否します。
数年後、英国王立音楽院からの奨学生の誘いを受けたデイヴィッドを、またもや父は暴力と傲慢な愛で引き留めようとしました。
著名な作家プリチャードの励ましを得たデイヴィッドは、父に勘当されたまま、留学するためひとりロンドンへ渡ります。
デイヴィッドはセシル・パーカーに師事し、父にいつか弾きこなすよう言われていたラフマニノフのピアノ協奏曲第3番をコンクールの演奏曲に選びます。
セシルのもとで猛特訓したデイヴィッドは見事に演奏しました。しかし、過度のストレスによって精神を病んで倒れてしまいます。
映画『シャイン』の感想と評価

(C)1996 Australian Film Finance Corporation Limited, Momentum Films Pty Limited, The South Austrarian Film Corporation and Film Victoria
天才ピアニストの激動の人生
実在の天才ピアニスト、デイヴィッド・ヒルフゴットの苦しみと喜びを戦列に描いた感動作です。
デイヴィッドは威圧的な父ピーターにより、ピアノの英才教育を受けて育ちました。幼い頃、自身が大切にしていたヴァイオリンを父親に壊されたトラウマを持つピーターは、「お前は運がいい」と息子に言い続け、洗脳します。デイヴィッドをはじめ、家族の誰も父に逆らえませんでした。
ピーターは収容所で家族を失った経験から、かたくなに家族に固執していました。彼の厳しい人生には同情せずにいられませんが、あまりにも自分勝手で傲慢な愛は家族を苦しめるばかりでした。
デイヴィッドはもともと繊細な少年で、そのことも父が息子を手元に置きたくなる一因でした。しかし、息子の脆さを知りながら、ピーターは彼の心を打ち砕くような言動を繰り返します。
そんな脆さを抱えたデイヴィッドだからこそ、この世のものとは思えないほどに美しいピアノを奏でることができたと言えるでしょう。
誰もが認めざるを得ない素晴らしい才能により、アメリカ留学が潰えた後にも彼はイギリスによばれ、悲願のラフマニノフを演奏することとなります。
演奏し終えて精神を病んでしまったことも、真の芸術家ゆえの代償だったのかもしれません。それから後、ピアノを辞めさせられた10年間の時を越え、再び鍵盤をすべりはじめた彼の指は、行く先々で出会った人々の胸を打ち続けます。
生きる喜び、そしてピアノを奏でられる喜びを全身で表すデイヴィッド。精神を患ったからこそ、解放された生来の無邪気さ。抑圧する父のもとを離れて、はじめて彼は真の子ども時代を謳歌できるようになったのかもしれません。
名優ジェフリー・ラッシュの神がかった演技

(C)1996 Australian Film Finance Corporation Limited, Momentum Films Pty Limited, The South Austrarian Film Corporation and Film Victoria
主人公デイヴィッドを演じるジェフリー・ラッシュの神がかった演技に圧倒されます。デイヴィッド・ヒルフゴットの実際の姿を映し出したドキュメンタリーを観ると、あまりのそっくりさに驚かされることでしょう。いつも前屈みの姿勢でくわえタバコで、同じ事を早口で繰り返し喋る演技は、まるで本人が憑依したかのようです。どれほど緻密に役作りしたかが伺えます。
ラッシュは第69回アカデミー賞で、見事主演男優賞を受賞しています。素晴らしい演技が多くの人の心を強く揺さぶり、大きな感動を生み出しました。
ラッシュは幼少期に習っていたピアノの練習を再開し、本役に挑んだそうです。作中で披露するその腕前にも驚嘆します。バーで弾くコルサコフ作曲の難曲「くまんばちは飛ぶ」の演奏シーンは圧巻です。
子どものように純粋に生を楽しむ姿や、生涯の伴侶となったギリアンへのまっすぐな愛情に胸打たれます。
デイヴィッドは現実の世からはこぼれ落ちた存在かもしれませんが、そんな彼だからこそ世の人々に愛と喜びを与えられるのだということに、感動せずにはいられません。
まとめ

(C)1996 Australian Film Finance Corporation Limited, Momentum Films Pty Limited, The South Austrarian Film Corporation and Film Victoria
幼少期から神童と呼ばれた天才ピアニスト、デイヴィッド・ヒルフゴットの光と影の人生を映し出す傑作『シャイン』。
威圧的で傲慢な父の愛に翻弄され、音楽への強い愛と集中により精神が崩壊したデイヴィッドでしたが、全てのしがらみから抜け出したかのように、軽やかで純粋に生の喜びを享受して生きられるようになります。
デイヴィッドの全てを受け入れ、共に生きる喜びを分かち合ってくれる妻ギリアンは、神から彼への最高の贈り物といえるでしょう。人の喜びがいったいどこにあるのかは、最後まで誰にもわからないことを実感させられる作品です。


































